すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

神の足

(ランニング : 01/31 )で取り上げたX君はすてっぷに来た日は必ず10分~20分程走っています。走るのはとても好きなようで,極度の指示待ち(分かっていても指示がないと動けない)になっているX君も走るときは指示がなくても自分から靴を履きます。

先日は練習の成果を見ようと,すてっぷから久世橋まで走りました。距離にすると片道約4.5km。往復約9kmの道のりです。初めて走る道だったのでX君も不安かな…と思ったのですが,信号以外ノンストップで軽快に走りました。

X君は約9Kmの道を1時間30分で走ることができたのには驚きました。男性の10Kmの平均タイムは62分です。X君なら練習を重ねれば軽く超えていくと思います。

小さい時は親の目を盗んで走っては行方不明になり,注意ばかりされていたX君にとって「走って褒められる」ことは真逆です。「早いね。すごいね」と褒められても「なんのこと?」と最初は意味が分かっていない様子でした。最近ようやく意味がわかってきたようで走れない日は残念そうにしています。次は近くの神足神社まで走りに行って,足の健康を願いに行こうと思います。

※神足(こうたり)神社:桓武天皇(737年~806年)の見た夢によって創建されたと伝わる神社。「神の足」と表記されるので陸上選手やサッカー選手など足を武器に戦うスポーツ選手が度々参拝に訪れます。

 

全集中 友の呼吸!

(みんなと歩調を合わせる: 01/14)で書いたことを実践しています。先日は荷物運びを実践している2人とL君の3人で西山登りをしました。L君は友達と歩くのが楽しいのですが,友だちに振り向いてもらうために奇声を出します。結果、うるさくて友だちが離れていくので,また奇声を上げて注意を引くという悪循環が起こります。

自立課題をしている時など,集中している時は奇声がないので,友だちと歩く時も気持ちを向ける方向性を作るために、L君に友達と荷物運びをしてもらいました。既に友達が見本としてL君に見せてくれていたのでやり方はわかっていたようです。二人で棒を持って間に荷物をぶら下げて後ろの友達が棒を落とさないように歩調を合わせて歩きます。

L君は降りるまでの間,ずっと後ろの友達が棒を落とさないようにしながら歩きました。そうすると奇声を上げることがなくなりました。友達の存在に意識を集中しているようです。

自転車に興味を持ったので跨らせてみるとL君は自転車が倒れないように注意して歩きます。自転車歩きはめんどくさかったみたいですが奇声は出ません。L君が奇声を出さずに友達と取り組めることが他にもありそうです。まずは山登りの後にみんなと飲むサイダーを入れたリュックを友達と運んでもらおうと思います。

譲らなあかんねんで!

新入りの2年生のU君が「タブレットは早い者勝ちやねん,俺が一番に取ったろ。」と言うとV君が「タブレットは障害の重い子に譲らなあかんねんで!俺らはパソコンでも漫画でも遊びいっぱいあるやろ!」と言いました。さらにその後「○○ちゃんは車いすやろ、せやから(だから)...」「○○君はパソコンとかの操作は難しいやろ、だから...」と理由の説明を始めました。

私はとても驚きました。確かにV君にはここ半年程「(タブレットに拘りのある)Wちゃんがきちんとお願いをしに来たら約束をして譲ってあげてね」と交渉の練習をするよう伝えていました。

しかしいつもは「え~」「しゃあないなぁ…」と言いながらWちゃんと交渉していたV君が,U君の言葉に同調するのではなく「違うで!」と言い切り,さらに理由まで説明したことに驚きました。

最近,小学生をきちんと理由を説明するとタブレットを障害の重い子に譲ってくれます。(平等と公平: 2021/05/20)の時は支援学校に通う友達と自分たちの配慮の違いについて「わからん!」と言っていた子ども達が「最初は嫌やったけどやっと理由わかったわ」と言っています。この中にはもうすぐすてっぷを卒業する子もいます。あと少しですが,新しく入った後輩にそんな姿を見せてくれていることがとても頼もしく思います。

予告をしてください

Gちゃんが公園から帰ってくると「タブレット~~~!!!」と大騒ぎし,Pちゃんが使っていたタブレットを取ろうとしていました。Gちゃんはタブレットの中でもお気に入りの物があり,それを他の子が使っていると「私が使うつもりだったのに~!」とパニックになります。

Gちゃんは今スケジュールで活動の見通しを持つ練習をしているところです。「きゅうけい」のスケジュールの時は「あのタブレットで遊ぼう!」と決めているのでしょう。

しかしGちゃんの好きなタブレットを他の友達が使っていても混乱しない時があります。「他の子が使ってるよ」と事前に予告をした時です。公園遊びが終わった後,「すてっぷに戻ったら何するの?」と聞くと決まって「おやつして,ピンクタブレット!」と答えます。その時に「あ~…でも○○ちゃんが音楽聞いてるかもよ~?その時はどうする?」と返すとGちゃんは「ポポちゃん?(人形の名前)おままごと?」と代替案を出し,すてっぷに着くと自分で他の遊びを始めます。

上記のように関係性が出来ている職員なら口頭のやり取りでも見通しが持てますが,最初は「すてっぷ」「タブレット」「友達の顔写真」「他の遊び」のカードをセットにして「帰ったらこれ(タブレット)したいんだよね。でも○○ちゃんが使っていたらどうする?この中から選んでね。」と練習をしていました。それを繰り返す内に練習に取り組んでいた職員とは口頭で約束が出来るようになったのでしょう。

Gちゃんの中では「きゅうけい」=「ピンクタブレットで遊ぶこと」になっています。(これは「きゅうけい」カードが抽象的なことも原因ですが…)それが突然崩されるとパニックになるのも当然です。Gちゃんが安心して過ごせるよう,事前の予告を徹底していきたいと思います。

手伝ってください

O君は通所したての頃は好きなことが中々見つからず,結局は大人の注目を得るために不適切行動をしてしまう子どもでした。インスタントラーメンとサイダーが好きなことがわかったので,ここ1年程「山登りの後ラーメン作りね。」というプログラムを設定していました。O君にとって「大人に見てもらえる。」「好きなラーメン,サイダーが貰える。」ということがわかったので徐々に不適切行動はなくなっていきました。

室内での過ごしは休憩時間が多く,O君にとって「何をしたらいいかわからない!」という時間もありましたが最近はさみを使う活動が好きなことがわかり,牛乳パックを切ったりペーパークラフトを作る活動を取り入れています。

簡単なペーパークラフトなら一人で作れるO君ですが,しきりに「○○さん,手伝ってください。」と援助を要求します。「どうしたの?」と見に行くとまた一人で黙々と作業に取り掛かります。

結局は「先生,見ててね。」ということでした。近くにいると「手伝ってください。」とは要求しません。不適切行動もなくなり,様々な好きなことを見つけているO君ですがやはり最大の強化子は「大人の注目」なのです。

「ずっと見てるわけにはいかんけどなぁ…」と思いつつ得意なことに取り組んで「見ててね。」と要求している方が今までの姿の何倍も良いです。O君のことを褒めながら,少しずつ離れ,それでも「見ているよ。」とゆっくりO君を見守ろうと思います。