すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

カームダウン

「T君、さっきはなんであんなに暴れて怒っていたのかな?」スタッフが聞くときっかけは覚えていないと言います。何しろ今まで皆が自分をディスって来たストレスが一気に爆発したのだといいます。でも、みんなはT君に声がうるさいとか近寄りすぎてボディータッチしないでとは言いますが、彼をのけ者にしたり馬鹿にしたりしたことは一度もありません。

T君はとても興奮しやすい子どもで、盛り上がってくると声が大きくなり、必要以上に友達に近づいてボディータッチが増えます。そもそもパーソナルエリアを侵されるのが嫌いな子が多いので、寄らないでということは何度も言われたかもしれません。それをT君は自分が避けられていると誤解しているのです。

怒りで興奮しそうな時に使う技を教えたけど覚えているかと聞くと、深呼吸という言葉は覚えていましたが使えていないようです。今度は、怒りで爆発するのをレベル5だとすれば、噴火前のレベル4では制御不能みたいだから、レベル3で深呼吸してみよう提案しました。そして、その結果を職員に必ず教えてほしいと伝えています。伝えてもらうことで、上手く行ったときにほめるきっかけが作れるからです。

ASDの子どもたちの場合、対人への誤解はかなり多いです。自分は嫌われている、遊んでもらえないと勝手に誤解しているのです。確かに相手との距離感がつかめないとか、一方的なところがあるのでトラブルが多く、叱られることが重なって自己イメージを悪くしやすいという課題はあります。しかし、大人が上手に介入すれば当事者も周囲の子どもも上手に学んでいきます。T君だけではありませんが、上手くサポートしたいと思います。

人の気持ちになる

みんなでおやつ作りをしていた時の事です。R君がおやつ作りに参加せず、暗い顔をしてソファーに寝そべっていました。当然、他の小学生たちは「R君何してるん?」と声をかけます。それを見ていた2年生のS君がみんなにそっと言います。「R君、さっきブチギレて暴れていたから、自分でカームダウンしてはんねん。落ち着けるまでそっとしてあげてな」と。すると、他の小学生たちも「そうなんかー」と納得してR君に声をかけるのをやめました。

2年生でこんなに上手にカームダウンの説明が他の仲間に出来ていることに職員は驚きました。S君は最近通所してきた子どもで、見かけも実際の言動も穏やかな優しい2年生です。こんなに穏やかな子どもの何が課題なのかわからないと、職員から疑問があがっていました。家庭の主訴によると、学校で友だちにいじられるとブチ切れて、その後自己イメージが悪くなって集団参加ができないとのことでした。なるほど、S君はR君の姿を見て自分を投影していたのです。

大人は、子どもに人の気持ちになってみなさいと言いますが、実は簡単なことではありません。人の気持ちになるには、自己体験と他者の様子を重ねた時が最も深く理解できます。もちろん、道徳をテキストとして理解することは理由や規則を理解する6歳前後の発達の力があればできますが、心情として理解するには自己理解や他者理解の力が不可分です。悲しい体験の心情をS君はソファーで落ち込んでいるR君にかぶせました。「そっとしてあげて」と周囲の仲間に促せたのはS君だからできたのだと思います。そして、そんな体験の多い子どもたちだからすっと理解したのは、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになりました。

段ボール倒し遊び

Qちゃんは物を掴んで投げたり倒したりする癖のある子どもです。手持ち無沙汰になるとおやつの皿やゴミ箱を倒そうとします。

しかしQちゃんに口頭で注意しても理解してもらうことは難しいです。倒されては困るものは周囲には置いておかないようにします。倒すのが楽しいならそれを遊びにできないかと思い,安全な段ボール箱を積み,「この中の段ボール箱なら好きに倒してもいいよ。」という空間を作りました。Qちゃんははしゃいで段ボール箱を次々に倒し,職員が直すとまた倒しに行きました。

いつも止められている遊びを決められた範囲で「やってもいいよ。」ということだったのでQちゃんは大喜びです。

どうせならこれを更に発展させられないか,と思いました。Qちゃんはボールを投げることが出来るのでボールのやり取りをしたり,少し難しいものだと他の子どもがスポンジブロックを使いピタゴラスイッチ的な装置(もしくはドミノ)を作り,スタートをQちゃんが倒す…等々

それを見てQちゃんが喜ぶかはわかりませんが,他の子どもと交流する機会にもなるので一度試してみようと思います。

工作楽しい!

先日は支援学校の子ども達と工作をしました。一般的に「ぴょんぴょんカード」「飛び出すびっくり箱」等という名前で呼ばれているおもちゃを作ります。

子ども達がどのように切ったら良いかわかるようにはさみで切るところを線を引いて支援をしました。Uちゃんはぴょんぴょん跳ねる紙パックがとても面白かったようで意欲的に取り組んでいます。

この工作では紙パックを「途中まで」切る工程がありますが,Uちゃんは「線が書いている所は全部切るんだ!」という理解なので途中まで切る所も全て切ってしまいました。

幸いパニックにならず「もう1個作ろうね。」と促し,次はUちゃんと一緒に「ここまでだよ~」と一緒に切り,おもちゃを完成させることが出来ました。

工作の時は一つ一つの工程を写真や動画で指示し,スモールステップで進めようと思います。特に支援学校の子ども達にはそういった支援が必要です。次は「パッチンカエル」で子ども達が「工作楽しいね!」と思える活動をしたいと思います。

できない事だけに注目せず、できる事から始めよう

Y君は注意転導が激しく多動な子どもです。じっとすることが苦手なのか座っておやつを食べている時に突然立ち上がって部屋の中を一周したりします。

設定遊びでストラックアウト(的当て)やボウリングをする時,友達の番の時は座っているのですがY君はそれが苦手なので走っては「座って待つんだよ」と注意を受けます。そしてその繰り返しとなってしまいます。

では必然的に動く役割を与えてはどうかと思い,ボウリングの時に「(Y君も含めて)みんなが倒したピンの数を数えて報告してくれないかな?」と役割を伝えました。これだと座る時間も短くなり,動くことにも必要性が出て来ます。Y君は数字にも興味があるのでピッタリだろう,と思いピン数えの役割を作りました。

Y君は見事に与えられた役割を果たしてくれました。ピンを数えないといけないのでしっかり友達が投げている様子も見ています。ピンが倒れると「1、2、3…」と数えて報告もしています。皆で「Y君ありがとう!」と褒めることが出来ました。

もちろん座って待てるようになることも大事です。今はY君に合った役割を与え,その中で座ることが出来た時に評価を重ねていき,少しずつ座れる時間を伸ばしていきたいと思います。