すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

強化子を探そう

C君が設定遊びの時に椅子に座らないので、どうしたものかと困っていました。するとC君がうろうろしながら本棚から絵本をとったのです。これは使えるかもと思い立ち、その絵本を渡してもらい、設定遊びが終了したら絵本を渡すという設定をしました。設定と言っても、まだスケジュールが良く理解できていないので、絵本の実物を職員が持ったままゲームを行い、C君が1回ゲームが終わるたびに絵本を渡すという方法をとりました。

するとC君何もなかったかのように椅子に座り自分の順番を待つ様になりました。恐るべし強化子の威力です。100の「座りなさいよ」の言葉かけより、100の身体誘導より1回の強化子提示で、交渉が成立するのです。私たちは視覚支援が大事だと何度も言いますが、合わせて行動の強化子(ご褒美)を鵜の目鷹の目で探すことが支援の第一歩だなと改めて感じています。

「ご褒美で釣っても、ご褒美がなくなれば動かない子になる」という人がいますが、言葉かけや強制力だけでは変わらない子どももいます。意味のわからない言葉かけや、大人の距離が詰まると自分の行動が制限されると誤解し大人を信用しなくなると双方が困ります。ご褒美だろうが何だろうが、自己決定した行動は強力です。強い自発行動が起これば、ご褒美=強化子はやがて賞賛の言葉に代替できるチャンスがあります。このプロセスを私たちは大事にしたいのです。

ご意見番

A君が近頃、後輩や障害の重い人への気遣いがとてもよくできるようになったと、みんな驚いています。それまでは、自分の話を相手にすることしか興味がなく、仲間の話など全く聞いていないしその内容に興味もないというのがA君の姿でした。

低学年の面倒見もものすごくよくなって、後輩の話もよく聞いてくれるので低学年からも慕われています。今日も公園で模型のゴムプロペラ飛行機で遊んでいる時に、うまく飛ばないので困っている後輩たちに、機首をもう少し上げて飛ばした方がよいなどとアドバイスをしていました。

ところが、A君は、模型飛行機を飛ばしたことはないのです。B君が持ってきた模型飛行機をみんなで回して遊んでいるのですが、A君は自分が飛ばしてみようとは1回もしていないのです。1回も飛ばしたことがないのに、後輩にあれこれ助言しているのです。

そういえばと他の職員が、カードゲームの時もA君はルールは良く知っているはずなのに、やり方が違うと後輩に意見して周囲がフリーズしていたことがあったと報告してくれました。ゲームリーダーはA君なので、結局通常のルールで良いとA君決済で進んでいったというのです。もしかして、後輩に『ご意見』がしたいだけなのではないかという疑惑がもたれはじめたのです。

つまり、これまでは、他者に対して自分の話を一方的にするという行為が、「しつこい」とか「他の人の話も聞いて」といろいろ注文がつくので面倒になり、低学年ご意見番ならみんな話を聞いてくれるし高学年だからリスペクトされてクレームもつかないし「一石二鳥」という「ご意見技」を編み出したという見立てが出てきました。後輩の話をよく聞くというのも、次のテイクの「ご意見ネタ」になるから聞いているというのです。ホンマかいなというA君びいき派の反論もありますがしばらく様子を見ようという事になりました。

 

字義通り

4年生のY君の検査をしました。基礎的学力を測るものの中に、文章で書いてある通りに振りをする課題での出来事です。検査者が初心者の事もあって、上手く提示が出来なかったこともあったかもしれませんが、「バナナを剥く」を読んで、しばらく考えてキッチンに行こうとしたのです。「振りだけ、エアーでやってね」でやっと提示の意味を理解したのでした。

つぎに困っていたのは、「拳骨を作る」の「作る」に困っているのです。作るには材料が必要という認識なので、身体で作るという意味が取れないのです。私たちは、その言葉を普段使わなくても推測で意味をとっていきますが、彼は使った事がない言葉には躊躇するのです。長考して正解していましたが、これらは低学年の課題です。むしろ中学生や高校生向けの長い説明の文意の方が彼は掴みやすいようで、彼の得点は同年齢で100人中16番の得点でした。

知能検査は認知の力を測るものですが、Y君の同学年でも上位の文の理解得点と、振りをしたり比喩暗喩を理解する、認知することを認知するようなメタ認知の力は知能検査の得点には表れません。発達検査や知能検査の能力の数値プロフィールは子どもの得手不得手の原因を知るのに、多くの子どもには役立ちはしますが完全とは言えないのです。

Y君は「近くの人を指しなさい」という課題で何やら躊躇しながら顔を背けて検査者を指してくれました。「お母さんに人は指すもんじゃないって言われているから・・・」と言うのです。「いやいや、検査は現実とは別でしょう」というのは簡単です。しかし、こうした字義通りの理解がY君の4年生の生活を息苦しくさせているのが手に取るように分かった検査でした。

言うこと聞いてほしい!

4年生のV君が「下の学年の子が僕の言うこと聞いてくれへん...」と悩んでいます。

同じ学校の2年生の友達がすてっぷに来る,と分かった時は大喜びしていましたが最近は「あいつはダメや!」と怒っています。

理由を聞くと「俺の言うこと全然聞いてくれへんねん!」と話します。「言うこと聞いてほしいの?何で?」と尋ねると「年上の言うことは聞くもんやろ。」と返します。設定遊びの場面で揉めている様子はないので休憩の場面を見ました。

休憩中,2人で一緒のゲームをして遊んでいます。休憩が終わるとV君が「次の休憩もこれで遊ぼう。」と言います。すると「次は違うゲームで遊びたいな。」と返されます。また,「大乱闘スマッシュブラザーズ」という様々なキャラクターを使って遊ぶゲームをしているときはV君が「○○君このキャラ使って。」と言います。「え,俺使いたいキャラあるんやけど…」と返されています。

傍から見ると「そりゃそう言われるよな。」ということばかりですがV君にとっては「なんでよ!」と感じるのです。

思えば2年程前にV君が「なんで大人は子どもに言うことを聞かせようとするんや!」と言っていたなぁ,と思い出しました。V君ごめんね…と思いつつも「妥協点」「折り合いをつけること」について教えていこうと思います。

表出コミュニケーションと連携課題

T君が送迎車から頑なに降りようとしません。「T君降りようね~。」とすてっぷの写真を見せますがT君は泣きながらシートベルトにしがみつくだけです。

「車で公園に行きたいのかな?」と思って公園の写真も見せますが泣きわめく一方…。結局は「車の中で寝ていたい。」ということでした。

こういう時は「寝るのは部屋の中でするよ。」と教えますがパニックになった状態では中々子どもには理解できません。(そもそも放課後等デイで寝させるのは適切ではないですが…)

T君には「寝るのはソファでします。」と視覚支援で教えていこうと思っていますがT君が要求の時に泣きわめく理由を考えました。

やはりそれで要求が叶った経験があるのでしょう。そうではなく,適切な拒否の表現を教えていく必要があります。(手や首を振る,代替の活動を選択する等…)

ただT君は1年生の子どもなのでどの場所でも丁寧に取り組む必要があります。あらゆる場所で指導方針が違うと子どもは混乱し、不適切行動が増えるかもしれません。各機関との連携が必要ですが、双方の考え方が違うとこちらのほうが子どもの支援より更に難しい場合があります。