すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

枠組みと交渉

絵カードコミュニケーションのP君が家庭で明日のスケジューリングの際に、学校の後の放デイ事業所のカードを外して、明日は行かない意思を示しました。おうちの方は、こんな要求は珍しいから何か理由があるのだとその要求を認めました。それから本人はずっとどこの事業所も行かない意思を示し続けています。

P君にしてみればたまたま要求が叶ってどこにも行かず家で過ごしてみると、なかなか快適だったのかもしれません。この場合、どういう課題があり、どういうアイデアがあるのでしょう。要求は、社会の中で一定の約束(枠組み)の中で認められます。今回は、交渉と契約、視覚的強化システム(PECSマニュアル13章)の課題とアイデアが必要になってきていると思います。(続く)

なぜ子どもは崖登りが好きなのか

子どもは不安定な場所での移動が好きです。道端の溝蓋の上や境界ブロックの上を歩いたり、コンクリ階段の手すりの上に上がってわざわざ歩こうとしたり、斜面を見ると走って上がろうとしたり、手ごろな樹木を見ると登ってみようとしたり、一見エネルギーの無駄遣いみたいな行動をします。

でも、これは前回「11/18感覚統合アプローチ」に書いたように身体と脳の統合的発達にはとても必要な行動です。不安定なところで平衡感覚(前庭覚)を使いながら、全体の力の調整をとりつつ必要なところで瞬発力(固有覚)を発揮して走破していく突破していくことによって、脳と身体の発達の基盤的システムの高次化を達成します。コンピューターでいうなら基本プログラム(WindowsとかmacOSなど)を走らせる前段階の電源やCPUやメモリーやキーボードやモニターなどの統合的な調整をするオペレーションシステム(OS)のバージョンアップと言えます。

なんのこっちゃと思われる方は、10か月頃の赤ちゃんが何度も立ち上がろうとする行動等、遺伝子にもともと仕込まれている発達行動にスイッチが入っているから、子どもはわざわざ「できそうでできなさそうなことをする」と言えばイメージができるでしょうか。てなことで、子どもが崖を上ったり下りたりするのは意味があるという話です。そして現代には、その発達の土壌である崖がなかなかないので、支援者は手ごろな崖を求めて彷徨うわけです。

再びスケジュール考

スケジュールについては「9/19効果のでないスケジュール」や「5/30視覚支援」で述べましたが、その趣旨は、大人が子どもを管理するためにするためのものではなく、支援を受ける側の方々が、理解しやすく、不必要な混乱をしない、つまり、生活の主人公になるために行うものです。

そのほかにもスケジュールによる視覚支援は、短期記憶の弱い人の記憶の代わりになり、作業や学習を進めるにあたっていちいち人に頼らなくても、自分で自立してすすめられるという利点があります。つまり便利なのです。

ただし、やりたくもない課題、必要性を感じない内容については、いくら手順を示してもやりたくないものはやりたくないのです。つまり主人公たる本人のやりたいことが、自分の力で実現できるから、スケジュールをはじめとする視覚支援を本人が使おうとするのです。自分にとってメリットがあるから使うのです。座らせたり、片づけさせられたり、準備させられたりするためにスケジュールは使われるのではありません。それは、ABAの理論に基づいた動機付けの工夫が別に必要です。スマートなスケジュール支援はそこまで考えた総合的な教育支援になっているものです。

 

見学・体験会

最近、次年度や新学期に向けての見学・体験会が当事業所でも開催されています。本日は低学年女子が体験に来ました。一緒にストラックアウトを取り組むことになった女子のNさんは、とても嬉しそうです。

何しろ当事業所の女子率は3割いないので毎日になると一人か二人、低高学年の区別まで入れるとほぼ一人の日もあって、ガールズトークができないという弱点があります。女子低学年の皆さんどうぞ見学にお越しください。

一人でできることの大事さ

以前「就労メニューとワークシステム8/9」でプットイン課題について紹介しました。認知の障害の重い人や、目と手の協応が苦手な人でも取り組める初歩の自立課題であることを述べました。

最初は大きな重さのあるものを穴に入れるだけの課題から、徐々に軽いもの、小さいもの、薄いものへと進んだり、大きさの違うものを入れ分けたり、形の違うものを入れ分けたり、時間を長くしたりして発展させていきます。

よくある光景は、プットイン課題を勉強を教えたり指導のように考える方がいます。こういう方は、自立課題の意義そのものを間違えていて、ゴールが見えていません。自立課題は、自立して作業する気持ちよさを教えることが目的であって、ステップアップして難しいことをさせることが第一の目的ではないということです。一人でできる喜び、自分だけの力で達成する喜び、「GOOD JOB!」「おつかれさん」と言ってもらえる喜びを教えるのが自立課題なのです。そのために、子どもにわかりやすい作業をしてもらうために手を変え品を変え課題を作っているのです。

10ピースのパズルができたから20ピースのパズルを与えるのではなくいろいろな種類の10ピースのパズルが一人ででき気持ちのいい終わり方ができることが大事なのです。ゴルフボールが入れられたら、ピン球も入れられ、ビー玉も入れられ、という幅を広げる展開を考えてほしいです。