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みんなちがってみんないい

睡眠障害…初の治療薬

発達障害の子に多い睡眠障害…初の治療薬寝付き改善

2020年9月26日【読売新聞】

寝付きが悪い、何度も目覚めてしまうなどの不眠は子どもにも起こり、情緒の安定や体の成長などに悪影響を及ぼす。特に発達障害の子どもに多く、問題行動の増加が懸念される。この夏、発達障害の子ども向けに、眠りにつきやすくなる国内初の治療薬が登場した。(野村昌玄)

鍵握るホルモン
睡眠には、脳や体が休んでいる「ノンレム睡眠」と、脳の一部が起きている「レム睡眠」がある。ノンレム睡眠中は、成長ホルモンが分泌される。このホルモンは、骨や筋肉の成長を促し、体の疲労を回復させる働きがある。

眠くなるのは、脳にある松果体から分泌されるホルモン・メラトニンが関わっている。夜に暗くなると眠りを誘い、日中は目覚めて活動的になるといったリズムを作る働きを持つ。ただ、夜更かしや寝坊などで生活リズムが乱れると、メラトニンの分泌が鈍り、夜の寝付きが悪くなる「入眠困難」や、寝ている途中に何度も目が覚めてしまうなどの睡眠障害が起こりやすい。

人との交流や意思疎通が苦手な自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害などの「発達障害」を抱える子どもは、睡眠障害の割合が高い。睡眠不足の影響を受けやすく、発達障害の症状が悪化しやすい。多動や興奮症状などが目立つようになり、問題行動の頻度が増える恐れがある。学校生活にも支障が出て、不登校につながることもある。

そこで、発達障害の子どもの睡眠障害の治療薬として、メラトニンを主成分とする「メラトベル」が公的医療保険で認められた。今年6月から医療現場で処方されるようになった。メラトニンは、欧米では睡眠薬やサプリメントがある。日本では従来、医薬品として承認されておらず、個人輸入などの方法で使われてきた。

睡眠障害を抱える発達障害の6~15歳の子ども99人を対象にしたメラトベルの治験では、服用から約半年間で眠りにつくまでの時間が27・5分~31・5分短くなった。昼間に強い眠気を催したり、頭痛が起きたりするケースがあったが、死亡などの重い副作用は確認されなかった。

小2からADHDの治療を続ける東京都内の小3男児(8)は、眠りの問題も抱えていた。深夜まで寝付けず、眠っても1時間に1回は起きてしまう。睡眠不足のストレスで学校での問題行動も増えるなど、悪循環の状態に陥っていた。男児は、7月上旬から、メラトベルで治療を始めた。1~2週間で寝付きが良くなった。毎晩服用から1時間半後の午後9時半には眠り、朝7時過ぎには起きられるようになった。母親(34)は「学校での態度も落ち着き、ありがたい」と喜ぶ。

生活習慣が重要
睡眠障害の治療には、生活リズムを整えることも欠かせない。朝日の光を浴びる、朝食をとる、昼間に体を動かす、といった生活習慣の改善も併せて進める。男児が通院する瀬川記念小児神経学クリニック(東京都千代田区)理事長の星野恭子さんは「睡眠障害の治療で、薬は補助的なものです。自然な眠りには生活習慣の見直しも重要です」と話す。

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子どものころから寝つきが悪かったですが、さすがにもう慣れました。眠ろうとすると苦しくなるので寝ないことを選択すると少しは眠れます。あとは、レタスを食べることです。レタスには催眠効果があるそうです。でも、この夏は、一玉が薬を買うより高価な買い物になるので諦めました。

メラトニンが睡眠障害に有効なことは昔からわかっていました。日本の薬事行政は、あれこれ理由をつけてなかなか認めようとしません。武漢風邪の早期治療薬としてアビガンの承認も5月にはと言いながらもうすぐ10月です。早期に使うなら町医者で使えるようにしなければ意味がないのに、大学病院のような倫理委員会のある病院でしか使えていません。

薬にだけ頼るのは間違ってはいますが、それをコントロールするのは医師と当事者や家族であって、お役所ではないはずです。治療の存在すら知らずに、自分はみんなと違うと自分を責めて、人知れず苦しんでいるいる人もいます。

また、他の人はこんなにクリアに見えているという眼鏡体験が目の悪さを当事者に気づかせるように、服薬して、自分以外の人はこんなに簡単に眠れているという実感が、眠れない自分の困難を気付かせる場合もあります。自分の身体に向き合う習慣がそこから生まれ、生活を見直すきっかけを作ることもあるのです。そのためには、なぜ服薬するのか理解できるように話す必要があるのはいうまでもありません。

 

コロナ下の運動会

長さ2mのバトン、掛け声は紙で、競技はテレビ中継…コロナ下の運動会

2020/09/27 18:50【毎日新聞】

新型コロナウイルスの影響で、学校の運動会も中止が春以降相次ぐなか、秋からは感染拡大防止と競技の多様性を両立させながら開催する動きが出てきている。

相模原市中央区の市立田名北小では27日、ウレタン製の棒にビニールを巻いた長さ2メートルの「ロングバトン」でソーシャルディスタンスを保って行うリレーや、かけ声を発さずに紙に書いて掲げながら踊るソーラン節など、工夫を凝らした12のプログラムが催された。

午前中の開催で、保護者の観覧は1家庭2人までに限定。校庭にいる児童と保護者を2学年ごとに入れ替え、待機している児童は教室でテレビ中継を見て応援した。

5年生の小菅優香さん(11)は「大きなバトンのリレーでは距離を保つことを意識できた。運動会が開かれるかどうか不安だったけど楽しい思い出になった」と喜んだ。【滝川大貴】

 運動会でソーシャルディスタンスを意識した長さ2メートルのバトンを使うリレーに臨む児童たち=相模原市中央区の市立田名北小で2020年9月27日午前11時11分、滝川大貴撮影(毎日新聞)

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中止、規模縮小…コロナで変わる運動会・体育祭

2020.9.29 11:00【産経新聞】

新型コロナウイルスの影響で多くの学校行事に影響が出るなか、運動会や体育祭も様変わりしている。中止とする学校が多く、開催する場合も来場者を制限したり、種目を減らしたりして規模を縮小している。落下事故などの危険性が指摘されてきた組み体操は、感染拡大につながる接触が多いとして行わない学校が増えそうだ。(木ノ下めぐみ)

6年生だけで
大阪府東大阪市の市立英田(あかだ)南小は1~5年生の運動会は実施せず、10月30日に6年生89人だけで行う。全学年での実施も検討したが、近隣には全面中止を決めた小学校もあり、参加者が多ければ感染症リスクも高まると判断した。

例年、6年生の花形種目となっている騎馬戦は、接触を防ぐため中止に。比較的子供同士の距離がとりやすい大玉転がしや棒引きなどの種目を中心に構成する。それでも狩元(かりもと)渚さん(12)は「騎馬戦ができないのは残念だけど、誰のせいでもない。今できることを全力で楽しむ」。植田修史さん(12)も「下級生の応援がないのは寂しい。でも運動会をとても楽しみにしていたので、中止にならなくてうれしい」と練習に励む。

6年生は修学旅行が中止となり、日帰りの校外学習に変更された。池田ゆり校長は「6年生に『コロナのせいで何もできなかった』と思わせたくない。一つでも多くの思い出を作りたい」と話す。

代替イベント検討
体育祭や運動会は春に予定していた学校もあったが、臨時休校の影響で中止を余儀なくされたところも多い。同府教育庁の調査では、府内の公立高校の約半数の74校が今年度の体育祭や運動会の中止を決めた。担当者は「体育祭は当日だけではなく、準備期間がかなり必要。授業日数の確保やコロナ対策など難しい部分もある」とする。

毎年5月に京セラドーム大阪(大阪市)で開いている体育祭を中止とした奈良県の私立西大和学園中学・高校は現在、代替のスポーツイベントを検討中だ。同校は「ドームで一丸となって競技を行うことは何ものにも替えがたい経験だが、中止はやむを得なかった」と振り返る。

バトン消毒、騎馬戦せず
体育祭や運動会を開催する場合も、各校は感染予防に細心の注意を払う。同府立岸和田高校(同府岸和田市)は29日、体育祭を開催したが、保護者ら来場者を入れず、生徒だけとした。競技も、リレーはレースごとにバトンを消毒。玉入れはマスクを着けたままで、球を投げる位置も決めて接触を減らした。また、騎馬戦などの種目は取りやめ、全体の時間を1時間半短縮した。

同庁がまとめた感染症対策マニュアルでは、体育祭や運動会については密集する競技を見直すよう求めている。このため、練習や本番で骨折などの事故が相次いでいて近年問題となった組み体操も、もともと実施しない学校が増えていたところに子供同士が接触することを考慮し、見送る学校が増えそうだ。

同庁の担当者は「具体的な種目名を挙げてやめるように通知したわけではないが、身体接触が多い組み体操は感染防止策を取りにくい。今年は中止を決める学校が多いのではないか」と話している。

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とうとう漫画のような競技が出てきました。そもそも戸外の空気感染はなく、物を触った手は洗えば良かったのだし、リレーをする状態にある子どもが感染者である危険性は限りなくゼロに近いです。

おそらく、企画している教員もこれで予防ができるなどとは思ってもいないのでしょうが、クレーマーへの先手を打っているのだと思います。もしも感染者が出ても、予防の努力はしたのだというアリバイ作りです。こうなるのは学校のせいではないです。メディアの煽りや感染バッシングを予防する意味でも、速やかに感染症2類相当を5類相当に修正してもらいたいものです。

 

代筆・代読

視覚障害者高いニーズ代筆・代読「支援充実を」先進自治体、ボランティア養成し派遣

2020年10月1日 07時19分【東京新聞】


視覚障害者の代わりに、郵便物を読んだり、書類に必要事項を記入したりする「代筆・代読」。日常生活に必要な支援で、市町村が家事援助などの障害福祉サービスとして行っているが、十分に知られていない。代筆・代読の訓練を受けた人を有料ボランティアとして派遣する自治体もあるが、まだ少数で、関係者は支援体制の充実を訴える。(長田真由美)

「飲み物のメニューもありますが、全部読み上げましょうか」
八月上旬、名古屋市であった、視覚障害者の代筆・代読をする支援員の養成講習。受講生のうち、支援員役の女性(49)が障害者役の女性(47)に食事のメニューを読み上げた後、尋ねた。視覚障害者役の女性は「全部読んでもらっても覚え切れなさそう。冷たい飲み物は?」と質問。支援員役の女性は希望をていねいに聞きながら、やりとりした。

講習は、視覚障害者の支援に取り組む社会福祉法人「名古屋ライトハウス」が同市の委託を受け、七月から実施。ライトハウスの相談員で、講師を務めた藤下直美さん(46)は「一語一句正確に話す音訳とは違い、代読は相手への伝え方が重要」。例えば、メニューを上から全部読み上げると、情報量が多い場合は、聞き手も覚えきれない。まず大まかなイメージを伝えたり、好みを聞いたりと、利用者が望む情報を伝える必要があるという。

一方、代筆は支援員が障害者の思いを推測するなどして自分の意思を持ち込まないのが原則。障害者の意思をしっかり聞き取り、誰が見ても読める字で書き、下書きをすることもある。同市は今年から、「意思疎通支援事業」として視覚障害者向けの代筆・代読に特化した支援を開始。二日間の講習を受けた人を支援員として登録し、十月以降、希望者のもとに有料ボランティアとして派遣する。希望者は無料で、一カ月上限十時間まで、市内の自宅や外出先などで利用できる。ボランティアの報酬は一時間千五百円で、市が負担。支援員はこれまでに一般の主婦や会社員、ヘルパーなど四十~八十代の三十一人が登録している。

代筆・代読の支援は従来、市町村が行う障害福祉サービスのうち、外出時に同行する「同行援護」と、調理や掃除など家事援助をする「居宅介護」の中で行われている。ただ、藤下さんによると、同行援護の支援は同行中に限られ、居宅介護も、優先度が高い掃除や食事などに時間が取られることが多い。また、家族に頼もうとしても書類が多くて気兼ねしたり、家族が不在だったりすることも。藤下さんも全盲で、今は夫に代読を依頼。一人暮らしの頃は、職場の同僚に自宅に届いた郵便物や書類を読んでもらったこともあった。「個人的な手紙など、友人や家族に読んでもらうのはちょっと…という時に気軽に利用できるサービスが今までなかった」と意思疎通支援事業に期待する。

同事業は一三年に施行された障害者総合支援法に基づき、市町村が実施。ただ、任意のため、導入している自治体は少ない。日本視覚障害者団体連合(日視連)による一八年度の調査では、回答した全国千百三十四市区町村のうち、同事業の枠で代読・代筆の支援を行うのは十四自治体にとどまる。一方、千葉県我孫子市は〇九年から市独自で代筆・代読のヘルパーを派遣する事業を実施するなど、先進的な自治体もある。

日視連が視覚障害者に行った調査では、回答した約四百八十人のうち、全盲の人の九割、弱視の人は八割が「読み書きに困る」と回答。一方、障害福祉サービスで代筆・代読などの読み書きを支援する公的な制度があることは、四分の一が「知らない」と答えた。日視連の担当者は「支援のニーズは多い。将来的には全国の成功事例をまとめ、モデルとして紹介したい」としている。

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昔は長屋の熊さん八っつあんが字が読めないので、大家のご隠居さんに読んでもらおうと文書を持っていきます。「何々・・・」とご隠居さんが読み始めてお話が始まるというのが長屋落語のパターンです。識字率が低かった昔、代読代筆は日常茶飯でした。視覚障害の人も読み書き障害の人も、御隠居さんや旦那衆に気兼ねなく代読代筆をお願いしていたのかもしれません。

今の時代も、読み書きの困難は視覚障害者だけではありません。字が流暢に読めなかったり書けなかったり、意味がつかみにくかったり、作文ができなかったりするのは、視覚機能だけでなく手の運動機能の障害、音韻意識の問題や知的障害など様々な原因で顕在化します。長屋のご隠居さんがいない今、視覚障害者用のサービスだけでなく、ICT支援も導入し、障害のあるなしに関係なく、障害の軽重に関係なく、代読・代筆サービスがどんどん広がればいいなぁと思います。

 

「強度行動障害」医療が果たすべき役割

家族や施設では支えきれず…「強度行動障害」医療が果たすべき役割は

2020/10/1 19:00【西日本新聞】

自傷行為や身近な人への他害なども見られる強度行動障害。家族や施設だけでは支えきれず、長期間、精神科病院に入院する人も少なくない。「医療」はどんな役割を果たすべきなのか-。治療や支援に詳しい国立病院機構・肥前精神医療センター(佐賀県)療育指導科長の會田(あいた)千重さんが福岡市内で講演。病院側も地域生活への移行を見据え、「普段から福祉や教育など関係機関と連携を密にし、暮らし全体を支えていく意識が大切だ」と訴えた。

「医師が1人でできることは限られている」。同センターで約15年、強度行動障害の患者の治療や研究に携わってきた會田さんは、冒頭からそう指摘した。行動障害が表れるのはもともと自閉症や知的障害の人が多く、その特性や周囲の環境のミスマッチが原因とされる。治療にも、表面上に表れた行動を分析し、検証しながら当たる必要があることから「患者の24時間の生活に接する多職種の力が欠かせない」と言う。

家族などの安全網
全国で強度行動障害のある人は療育手帳交付者の1%程度とされ、行動障害関連の福祉サービス利用者を含めると5万人を超える。多くは自宅で通所施設などを利用しながら暮らしたり、障害者施設に入所したりしている半面、地域の精神科病院や、国立病院機構など専門の医療機関で入院している患者もいる。

行動障害そのものを軽減する治療だけでなく「自傷行為による失明や、キーホルダーなどを飲み込んで開腹手術が必要になるなど、病院が関わらないと命を落としかねない例も少なくない」(會田さん)ためだ。福祉での短期入所が難しい場合は、同居する家族や施設職員の一時的な休息のための短期入院も受け入れており、医療が「在宅や福祉での対応が難しい人々のセーフティーネットの機能」を果たしていることは間違いない。

薬物療法から脱却
ただ精神科病院では、特に状況が切迫しているような場合など、行動障害を薬で鎮静化する薬物療法が一般的。「薬を使いすぎれば、消化管の動きやのみ込みが悪くなるなど副作用も心配される」。個室や保護室などで24時間、行動を制限する対応も珍しくない。このため會田さんが強調したのは、問題行動に至る前後の様子をよく観察し、本人が落ち着きやすいよう部屋などの環境を整え、写真や絵のカードを用いて意思疎通する-など、福祉施設などで実践されている支援を医療に取り入れる「非薬物療法」の重要性だ。

同センターには看護師だけでなく、保育士や心理士、児童指導員など多様なスタッフが所属。入院患者には一日の生活スケジュールに合わせて治療や薬の調整を行い、徐々に個室から出て、小グループでの活動など行動の場を広げていくようにしている。いずれも患者が「自宅や施設に帰ったときのギャップ」を回避し、スムーズに地域生活に移行できるようにする狙いがある。「地域の精神科病院でも、個室でその人が好きな音楽や絵本を提供するなど行動拡大を促す取り組みは可能では」(會田さん)

院内にヘルパーも
理想の支援のあり方として會田さんが思い描くのは、医療が「セーフティーネットの最終手段」ではなく、本人や家族を中心に福祉施設や相談支援事業所、行政、学校などがつながるネットワークの輪に「医療機関も当初から関わる」姿。外出時にヘルパーが付き添う行動援護など、福祉サービスの入院中の利用も病院が積極的に認める▽本人が得意な意思疎通方法など個別の情報を学校が提供し、関係機関で共有、統一する-などしてそれぞれが多様なサービスを行えば「地域に帰ったときの生活保障」につながるからだ。

しかし現状では医療と福祉の間でさえ分断しがちで「連携していても、一病院と一事業所がお互い何とかしようと無理を重ねる例が多く、限界が出てくる」。どうすれば関係機関が手を携えていけるのだろう。現在は入院患者が行動援護を利用している同センターでも、当初、看護師からは「抵抗」があった。「本人はヘルパーとの外出を楽しみに出掛け、機嫌良く帰ってくる。そんな効果を実感すると、今後も(福祉サービスを)入れましょう、と変わっていった」という。

大事なのは「患者が地域に帰った姿を想像しながら、支援者同士も、お互いを知っていく」こと。それが支援の地域格差の解消にもつながっていくと、會田さんはみている。(編集委員・三宅大介)

【ワードBOX】肥前精神医療センター(佐賀県吉野ケ里町)
1945年に「国立肥前療養所」として開設された精神神経疾患の基幹医療施設。計564床のうち、全国の国立病院機構でも数少ない「療養介護・医療型障害児入所支援病棟」(計100床)で、重い知的障害や自閉症などの発達障害があり、強度行動障害を伴う患者の治療や療育を行っている。

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機能的コミュニケーションが確立していない子どもの場合は、思春期から大人と子どもの力の逆転が起こり、行動障害が激しくなることがあります。行動の問題は小さい時と同じなのですが、力が強くなるので家族や事業所では耐えきれないようになってきます。そんな時に、入所施設や入院施設を頼るしかない場合があります。ただ、どこも何人も同じ境遇の方が空ベットを待っていますので、簡単には入所も入院もできません。

また、入所や入院をして落ちついたからと帰宅すると、行動障害のリバウンドのような現象や、当事者のいない生活に家族が慣れてしまい、入所・入院前より家族の養育力が落ちてしまうことがあり、なかなか地域に戻れないことがあります。

従って、医療や入所施設は最後の砦と考えるのではなく、日常的に幼少から利用して関係者が当事者情報を共有しておくことがとても大事です。家族がちょっと疲れたらレスパイト的な利用もしていくと、お互いの対応の違いにも気づきますし、当事者も慣れたところ安心できるところを増やしていくことになります。そういう意味で、精神科医療も関与したグループホームなどの設置がもっともっと地域に必要です。

行動障害の多くの原因は機能的コミュニケーションの不全から生じるものですが、それだけでは説明できない気分変動や感覚の問題などがあり、記事にあるような「非薬物療法」だけではうまくいかない方も少なくありません。記事の真意は服薬だけに依存しないで、当事者の特性に合わせた実践が必要だと言いたいのだと思います。服薬にも頼りながら表出コミュニケーションの力を伸ばしていく取組が求められるのだと思います。

 

 

 

障害支援区分調査

 

わが子を悪く言うようで…葛藤する障害程度の調査慣れてるつもりでも

2020年9月29日【読売新聞】
シリーズ:アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎 正直

「なんかやったな!」
キッチンで妻が叫んでいる。言われてみると、家じゅうにいい匂いが漂っている。これはシャンプーかボディーソープだろう。

匂いのする液体があると、洗面所に全部、流してしまうという行為に洋介がハマってしまったのは、この5年ほどだろうか。シャンプー類ならいいが、化粧品や洗濯用の洗剤や漂白剤などに手を出すこともあるので、気をつけなければならない。歯磨きのチューブも好きで、これは一気にギュッと絞り出す。大量に流れだすのが面白いのか、気持ちよいのか。たぶん、スカッとするのだろう。キッチンにも魅力的なものが多く、ペットボトルを逆さまにし、豪快に全部流してしまい、家族のひんしゅくを買うのだ。

なので、こちらもボトル類は隠し場所を決め、シャンプーなどの詰め替えの際には中身をいつも半分以下にキープし、流されても被害が少ないようにしている。しかし、敵もさるもので、家の中であればだいたい探し出すし、この日は買ってきたばかりの洋介用のトニックシャンプーが、一度も使わないまま餌食になってしまったので、買ってきた妻のショックは大きかった。「もう、洋ちゃんにはかなわないわ……」などと嘆きながら、妻はふと何かを思い出したもよう。「これも明日、言おうかな」

障害支援区分調査は“真剣勝負”
翌日は、市が洋介の障害支援区分を判定するため、面談をする日なのだった。洋介は最重度の「6」判定を受けている。区分は受けられる福祉サービスや事業所への報酬にかかわるから、この面談は思いのほか“真剣勝負”となる。本人の状態が現実に良くなってはいない以上、区分は維持したい。

しかし問題は、洋介にも一応、「よそ行きの顔」があって、知らない人の前だと妙におとなしく、妙に聞き分けがよくなってしまうことだ。普段の 狼藉ろうぜき ぶりが影を潜め、「実際よりも軽い判定を受けてしまうのでは?」と心配になる。

厚生労働省が示す調査項目は、「寝返り」「歩行」など身体的なことや、「食事」「入浴」「排泄はいせつ」などの自立度、「金銭管理」「電話」など社会的なことなど多岐に及ぶ。主治医の意見書も必要だ。面談で普段の様子を伝えるとなると、結局、わが子の「できないこと」「問題行動」を、親が自ら並べ立てる状況になる。「食事は一人でできません」「お風呂では自分でちゃんと洗えません」……。

前回は3年前で、市の調査員の前に、本人と妻と通所施設の施設長が臨んだが、畑仕事の途中だった洋介が顔じゅうに自分で泥を塗りつけた状態で登場するというナイスアシストがあった。

初めはつい息子を「擁護」して
最初に「判定」を受けたのは、洋介が小学校に入ったばかりのころで、場所は県の中央児童相談所だった。初めて「療育手帳」の交付を受けるためで、この時も、身の回りの自立度や言葉の発達などを聞かれたが、「できると思います」「できるときもあります」などと言ってしまうことが多かった。障害の判定をするのは支援のためだと頭ではわかっていても、つい、わが子の評価を良くしようという心理が働いた。心のどこかでは、依然として障害を受け入れられない気持ちが色濃かったのだろうと思う。

その時の判定は中度の「B」。これが、小学校高学年には「A」となり、成人の手帳に移行してからは、さらに重度の「マルA」となった。学校を卒業し、通所施設などを利用するようになってからは、市の障害支援区分や年金の手続きもあり、僕らも「できないこと」や発達の遅れを並べたてることに、少しずつ慣れてきた。

やっぱりその日の夜は…
日々の暮らしの中で、わが子が「重度」だという実感があまりないのは、特別支援学校などで洋介よりもずっと大変そうな子どもを多く見てきたからだ。そのため、こうした「判定」になると、「今度はランク引き下げかな?」などと思うのだが、今回の面談を担当した市の調査員の感触は「変わらないのでは?」ということで、やはり客観的に見て最重度なのには違いなさそうだ。「うちの子、何でもできそうに見えるから……」との心配も、親の欲目なのだろうか。

これまで、数えられないくらい経験した「評価」の場。平日の面談に出かけることが多く、僕よりもずっと慣れているはずの妻も、そんな日の夜はきまって頭が痛くなるという。平気なようでいて、息子を悪く言い続けるのは、やっぱり今も相当なストレスなのだろう。(梅崎正直ヨミドクター編集長)

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障害判定の記事はみなさんあるあるだと思います。小さなうちは完全にできないことでも「できるときもある」と表現し、大きくなるとできることでも「完全ににはできない」と表現が変わっていくのです。これは、支援か自立かというステレオタイプで見るのではなく、支援と自立は共存するという事がだんだん理解できてくるからだと言われています。

そして、実はこの判定内容が放デイのサービスにも影響します。放デイでは事業所内の放課後等デイサービス指標該当「有」の利用者が半分を切ると、区分1-1の事業所の平均収入では年間百万円以上変わります。つまり指標該当「有」は人手がいりますという判定です。しかし、この制度は個人への還元ではなく事業所全体の収入に影響するので良い制度とは言えないのです。そして、マンツーマンの療育を行う場合も、生活自立度は関係ありません。軽度の人にも人手は同じようにいるし、軽度の人のほうが長時間の療育になることもあるからです。

公平な判定というのは難しいものですが、重要なことはその人の自立度が支援付きでもよいのでどの程度向上するのかということです。そして、小さな時期の支援が少なく大きくなって支援が多くなるのでなく、小さな時期にたくさん投資的支援をして成人してからの自立度が向上するのが本来の支援のあり方のように思います。