すてっぷ・じゃんぷ日記

2020年6月の記事一覧

高学年ゲーム教材の工夫

放デイは日常生活や遊び活動で社会性の伸長を図っていきます。ただ、放デイに来ている子どもは低学年から高学年まで6年という年齢の開き、重度知的発達症(知的障害)から知的には遅れがないけどASD等の発達障害を持つ子や知的発達症も併せ持つ子など様々な特性を持つ子どもが通所しています。毎日、ある程度グループ分けはしていますが、どうしても低学年や知的発達症の子どもに合わせた内容になりやすいので、高学年や遅れのない子どもにとっては物足りなさがあります。

昨日も高学年のC君がボーリングゲームから逃げ出してきました。「D君が邪魔するからもうゲームやりたくない」と言いますが、高学年の彼にしてみれば幼稚なゲームから逃げる理由を探していた節があります。以前も単なる的当て(ストラックアウト)ゲームではなく、ポケットモンスターをみんなで仕上げるゲームしたら取り組み方が変わったことがあったことから、工夫が足りないんじゃないかということになりました。

そこでスタッフで話し合いました。「やることは繰り返しの幼稚なものでも、D君が好きな戦国武将倒しゲームならボーリングを楽しめないだろうか」「お城好きなので、ただの磁石魚釣りではなく、騎馬隊を釣ったり足軽を釣ったりする城攻めの釣り合戦ではどうだろうか」「時代物はD君は嫌いだけどスターウォーズシリーズでキャラ釣りすればどうだろうか」などアイデアが出されました。同じゲームでも高学年の子どもたちの興味関心をつかんでゲームを提供していけば、必ず気に入ってもらえるあそび教材が開発できると思います。ヒットしたものができたらここでまた掲載しようとおもいます。

具体的な目標

放課後等デイサービスでは、半年に1回個別支援計画を書き直します。1万4千の事業所が23万人弱の子どもたちに書いて保護者に説明していることになります。もちろん、放デイだけで考えるのではなくて、相談事業所が家庭や地域での目標も含めて当事者からの聞き取りやアセスメントを経たサービス利用計画として大枠の目標を設定し、それに沿う形で放デイの目標が決まります。

気になるのは、どの計画をみても誰にでも当てはまりそうな目標が並んでいることが少なくない事です。支援計画とは、文字通り支援の計画ですから、何をどのように支援すれば子どもが自立的に活動できるのか、みんなと活動に参加できるのかが記述されている必要があります。

勿論、生活経験を重ねる中で自然に子どもたちが気づいて力をつけていくことが望ましいのですが、子どもを取り巻く環境は必ずしも子どもが自分で学べる環境ばかりではありません。その環境の調整も含めてスタッフは子どもの支援を考えていく必要があります。そして、放デイの取り組みだけで子どもが成長していけるものでもありません。家庭や学校、他の事業所も利用している子どもはそれもふくめて考える必要があります。

となってくると、あまり大上段に振りかぶった大きな目標よりは、1回2時間ほどで週2~3回の放デイでできることを目標にしなければなりません。具体的に書くことは今まさに必要なリアルな支援が展開されている証拠でもあるのです。

 

計画的無視の誤解

応用行動分析で使う「計画的無視」について誤解されていそうなやりとりを目にすることがあります。というのも、なんとなく「無視だけで問題行動が収まる」かのように誤解されている方が多いのです。A君がイライラしてものを投げているのに無視。Bちゃんがスケジュールカードの意味が分からなくて床に落しているのに無視、などです。その結果、「無視は効かない」「あの子には合わない」と結論づけたとしたら、それは計画的無視を誤解していることが原因です。

「計画的無視」は、名前が有名な割に単独で主力になる場面はそんなに多くありません。少なくとも、無視だけで効果を出そうとすることはあまりないです。なぜなら、無視のみでは重要な視点が抜けている上にリスクもあるからです。計画的無視というのは基本的に「それはダメだよ」ということを伝える側面が強いです。しかしそれだけでは「じゃぁ何はOKなのか」が伝わりません。そのため、「こうすると良いよ」の部分をきちんと伝える視点が大事です。子どもが低年齢だったり自閉傾向が強かったりすればするほど非常に重要な視点です。

応用行動分析でいう「何がOKかを示して促す」というのが、歌で言えば『こっちの水は甘いぞ』と比喩できます。そして、『あっちの水は苦いぞ』に当たるのが応用行動分析で言う「計画的無視」なのです。この二つの対応のコントラストが効けば効くほど、無視されるような行動よりは、褒められたり要求が通る行動に移っていくことを狙っているのです。要するにやる事(お得な事)がわかってないのに無視しても意味がないのです。

例えば、事業所の集まりの時間などで、「がおー!!」などの奇声をあげて注目が得られている状況では、「不適切場面での奇声は相手にしない」のような方針が出てきます。そうして何をどうやって無視するかといったことが議論されます。勿論これでも「無事にやりきれれば」効果は出るでしょう。条件次第で万事解決も十分あり得ます。しかし、極端な話、これでうまくいってもそれは「たまたま」や「子ども頼み」に近いと言わざるを得ません。

計画的無視のみで対処することには以下のような最低3つのリスクがあります。
①最終的には収まるが、無視を始めて一旦奇声が悪化する際の程度が激しい(→踏ん張れないとエスカレートの危険)
②奇声はなくなるが他の問題行動が出る
③本人にはきつそうで自傷や通所しぶりなどがみられる
等です。

そこで、そうしたリスクを下げつつ更に成功率を上げるため、先程の「何ならOKかを示す」という視点から一工夫加えます。「奇声は相手にしないけど、その時の話題に関係のある話だったら少し譲歩してでも話を拾う」この後半部分が、「じゃぁどうしたらOKなのか」の視点による対応です。むしろ、実際はそちらがメインで、【無視はあくまでサブ・補助】と考えた方が良いです。

大きなポイントは以下の3つです。
ポイント①:「これならOK」とした行動は本当に今の本人にできそうなものか
ポイント②:特別扱い過ぎないか。自然に認められる範囲を逸脱しすぎていないか
ポイント③:その行動をして本人にとってのいいことはあるか⇔ただ大人側に都合の良い行動をさせようとしていないか

もし、相談機関など専門家に【問題行動を無視することばかり強調された場合】にはぜひ「代替行動(だいたいこうどう)についてはどうしたら良いですか?」と聞いてみましょう。「代替行動」というのが先程の「何ならOKか」の部分にあたるものです。おそらくこれを聞けば、今回の話にあたる内容を説明してくれると思います。逆に言えばこれを検討もしていない専門家だとすると、それはちょっと心配な方です。

私たち抜きに私たちのことを決めないで

以前、お買い物でリマインダーの重要性について掲載しました。コンビニでお買い物03/19 自分で選ぶこと決めることの重要性03/25  コンビニ作戦04/06 結構このシリーズはたくさん掲載しています。

さて、ℤさんは今回はもうスパゲッティー弁当って言うに決まっているから、スタッフがお決まりのスパゲッティー弁当のリマインダーを持たせて買い物に行きました。そうすると、突然以前の「コンビニ→飲み物」モードが蘇って、お茶を買わないと帰れなくなりました。

突然の行動で考えられることは二つです。Zさんが、お弁当買うならお茶も買おうとたまたま思いついたか、もう一つは、いつものスパゲティーだからと選択の機会を奪われて納得がいかなかった上の行動かの、どちらかです。しかし、今となっては証拠がないので何とも言えません。

従って、以下のスタッフの思いは全くの憶測ですから、正しいかどうかはわかりません。Zさんのたまたま思いついた行動かもしれないというのも否定できません。しかし、あえて、Zさん達の支援をするときに心にとめておきたいことだから書いておきます。

リマインダーは記憶を助けますが、それは自分で選んだものを記憶して購入できたからこそ自立心や自尊感情が育つのです。言われるがままに自分が食する弁当を買っても、それが結果的には自分の欲しい同じものであっても、選ぶと言うプロセスが抜けているのです。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というのは障害者権利条約の肝ですが、これは日々の彼女らの自尊感情の育ちにも大きく影響していることだと考えています。

 

 

 

 

ご褒美制とトークン

Z君は省エネタイプで、気持ちが乗らないと車からも「降りません」といって時間がかかったり、山歩きでも「行きません」と座り込んだままだったり、事業所で作業課題があっても「やりません」と言ってソファーで寝てしまったりすることがありました。

Z君は本当にやる気がないからやらないのか、やることが十分わからないからやろうとしないのか、自分にとって価値がないからやらないのかよくわからないなぁという話になりました。でも、やる気などと言う抽象的なものは調べることができないので原因としては除外しました。何をして終わったらどうなるのかスケジュールでは示しているけどよく理解していないのではないかという議論になりました。事業所に来た時に、スケジュールの説明をするときに「~が終わったら~だよ」それでも「~しない」と言ったときは、「じゃぁご褒美にこれ食べますか」「食べます」というふうに契約を成立させて取り組んでもらう事にしました。今後は、一回一回ではなく、何回か目標が達成出来たらお気に入りのものを話し合ってボーナスを出すというトークンエコノミー法を取り入れていけるようになったらいいねと言う話をしています。

毎日6時間授業

Y君は毎日6校時で疲れ果てて家にたどり着くので、もう放デイに行くパワーがほとんど残っていません。Y君だけではありませんが、武漢ウィルスによる学校休業のために、学校は休業中の時間を取り戻そうと低学年でも6校時授業です。

おまけに、プールの授業はないし宿泊活動や校外学習など特別活動を省略して教科授業に振り替えていますから、息抜きもなく勉強です。高学年でも、かなりハードな日程と言えます。

ただ、ASDの子どもたちにしてみれば、3密を避けたカリキュラムは対人接触を遠ざけても変とは思われにくいですし、イレギュラー場面の多い学校行事も少ないですから授業場面さえこなせば、いつもの学校よりストレスは少ないかもしれません。疲れつつもY君が登校できているのはそんなこともあるのかもしれません。何が功を奏するかわからないものです。

4ステップエラー修正

X君は、絵カードで欲しいものを離れている人に要求できるのですが、弁別ができないために選ぶことができません。例えば、お茶よりカルピスジュースが欲しい、ボールより音楽が鳴る絵本が欲しいなどです。具体物では選べるはずですが(あまり取り組んでいません)カードでは選べそうにないとスタッフがあきらめていたからです。理由は認知レベルが弁別まで達していないだろうということです。本来PECSは「アセスメント(検査)フリー」の支援方法です。健常者を標準にした発達検査器具には反応しなかったかもしれないけれど、それがPECSの成功不成功を判断するものではないという考え方です。

X君は最近拒否が強くなってきたのはいいけれど、拒否だけではその先がありません。何が欲しいのか選ぶことができれば彼の姿はまた変わってくるはずです。具体物でできるならカードでもできるかもしれません。そこでフェイズ3Aに取り組んでみてはどうかと話し合っています。フェイズ3Aは、エラー修正が重要です。子どもが間違えたら教えることは良くありますが、修正方法が人によって違うと子どもは混乱してわかりません。修正方法を統一することでX君のフェイズ3Aのエラーが修正できないか取り組んでいこうと話し合っています。

【フェイズⅢA】
・このフェイズからコミュニケーションパートナーは一人で良い。
・要求カードを2枚に増やす段階。しかし2枚のうち1枚は必要な物、1枚は本人にとってどうでもよいもの(ダミー)にする。ダミーは本当に興味のないものを使うが、大嫌いなものを使ってはいけない。コミュニケーションカードが嫌いなってしまうから。
・欲しいものvs欲しくないもので始めて、欲しいアイテムを手に入れることと、欲しくないアイテムを避けること(分化強化)を覚える。

★ダミーのカードを渡してきたら
・人的強化子は与えずに実物を渡す。ダミーで遊んでしまったら、強化子になった可能性があるので次回からはダミーを変える。また、強化子自体も飽きてしまっている可能性も考えられるため変える。
・正しい(期待する)絵カードをブックから外せた瞬間に「そうそう!」「すごい!」など人的強化子を与える。
★ダミーを拒否したら
・4ステップエラー修正。スイッチの内容は毎回変えること。
・2~3回試行して失敗を繰り返すなら、フェイズⅡへ戻り、時間を経過してから再度スタートする。また、代替方略(絵カードの大きさを変える、カード同士を話す、空白のカードに少しずつダミーを色を加えていく、ダミーカードを小さくし、少しずつ大きさを一緒にするなど)を用いる。

熱がこもりやすい肢体不自由児

毎日夏日の気温となる今日この頃、Wさんの体温を計ると37.8度です。肢体不自由の子どもの中には体に熱がこもりやすかったり、また反対に冷えやすい人がいます。熱が上がったあとWさんは、衣服が全部濡れた様になるまでブルブル汗をかきます。汗を拭いて衣服を着かえ、給水すると体温は下がっていきます。通常は徐々に汗をかいて体温上昇を防ぐのですが、Wさんはこの調節がうまく働かないようです。

発熱の原因として、脳に障害のある子どもの場合、以下のような関連が考えられます。

   感染症・感染症以外の炎症性疾患・心因性
            ↓
体温調節機能不全 ⇔ 発熱 ⇔ 筋緊張亢進
 ↑          ↓↑
環境の高温      脱水

肢体不自由の人で体温調節機能が弱い人は少なくないです。汗をかけと言う脳からの指示が遅くて熱がこもったり、発熱し汗をかき続けて脱水すると言う悪循環や、発熱が筋緊張を誘発してさらに発熱する場合もあります。

筋緊張の亢進が第一原因であると考えられる場合には、リラックスできるように身体を丸めるような姿勢で横にします。感染や外気温などが原因であると考えられる場合には、アイシング、室温や衣服を調整したりするなど、原因に応じて的確に対応することが重要です。

 

絵カードスケジュールは何のために貼るのか

V君が久々に通所してきました。V君はトイレの個室が苦手です。原因は分からないのですがドアを開け放っておくか、人が付いていく必要があります。今日も、声掛けなしには行けなかったので、どうすればひとりで行けるんだろうと話し合いました。

考えられることは、トイレへの拒否感もあるが、その繰り返しから大人が促してトイレに行くと言う行動ルーティンが形成されおり、自分で尿意を感じて一人で行ったり、外出の前に自発的に行く行動は形成されていないのではいかという話になりました。それなら、まずはスケジュールにトイレタイムを設定して通所時に示して意識してもらい、忘れているようならトランジッションカードを渡してトイレタイムにまず自ら気づいてもらうことが大事だと話し合いました。

トイレに一人で行くかどうかの前に、まず自分でトイレの時間に気づくことが必要で、大人が必要ならついてきて欲しいと言ってもいいということにしました。ついでに、話はそれたのですが、スケジュールはASDの方のためだけではなく、記憶できない子だからと大人に頼るのではなく、一人で日課を過ごす自立性と自尊感情を育てたいと言う目的から使っているという話もしました。

放デイは何するところ?

近頃五年生のU君が宿題をすてっぷでやらなくなりました。理由を聞いてみると、1.すてっぷは勉強する場所ではない。2.一緒に勉強する人がいない。とのことでした。今までもきっとそう思ってたんでしょうが、5年になってやっと言えた感じです。

すてっぷは狭義で勉強する場所ではないのはその通りです。ただ、高学年の場合は短い放課後の時間を遊びに当てるなら、帰宅してから1時間は勉強時間をとる必要があります。その時間はどこでとるのか彼と話をする必要があります。また、みんなが遊んでる中では自分も勉強する気になれないのはわかるので勉強ルームがあれば30分でも集中して宿題などができるのか話し合う必要があります。子どもが言ったことはそのままにせず、ではどうするのがうまくいく方法なのか話し合って終わらないと、せっかくの子どもの発言をリスペクトしたことにはなりません。

異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション

高等部のT君は、新しく来た女性スタッフの脚が気になってしかたがありません。吸いつけられるように見てしまい、接近してきます。スタッフが2階へあがると階段の下から「ちょっと、ちょっと、おねーさん!」と下に降りてくるように声を掛けます。

ASDの人は、社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーションのそれぞれに質的な偏りがみられる「3つ組の障害」があります。他者と相互的な交流を行うことが困難という社会性の特性。自分の好みのことを一方的に話し続けることや、言葉を字義通りに受け取ってしまう、言葉の裏を読むことが苦手という社会的コミュニケーションの特性。ただ蒐集することだけで満足したり、目に見えない物(イメージ)の共有は苦手という社会的イマジネーションの特性です。こうした特性を持ちつつ、子どもの頃からの特性に合わせた「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」の支援がないと、異性に興味を持った場合、周囲から嫌がられたり怖がられたりすることが少なくありません。

相手の了解なく一方的に近寄ったり、「今はだめ」なら後ならいいんだと思ったり、気に入った部位を見続けたりすることで怖がられて社会参加の機会を失ってしまう人もいます。「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」に、T君と取組んで行こうと思います。

 

お庭の裸足教育

Sちゃん、公園の砂地を見つけると靴を脱いで走り出します。それはまだいいのですが、川遊びの時も頑として怪我防止のための靴を受け付けてくれません。砂地と水は裸足と決めているようです。

最近はだいぶん少なくなってきたのですが、就学前の施設の園庭で裸足保育を推奨しているところがあります。足裏の感覚刺激は脳への良い刺激となり良い発達の一助になるという昭和伝説です。欧米では、赤ちゃんの頃から家の中でも靴を履き、はだしは風呂と寝るときくらいです。裸足保育で過ごした子どもの身体、認知、情緒面での発達が統計的に有意に高いと言うデーターもありません。どうやら、裸足が良いという科学的根拠はないようです。

就学してきたASDの子どもの中には、砂地を見つけると靴を脱いで走る子が時々います。就学前施設に引き継ぎに行ってみると子ども全員が裸足で園庭で遊んでいたというケースが多いです。ASDの子どもは、場所と行動がセットになり、なかなかそれを変えてくれません。Sちゃんには、公園には遊び靴の入った靴袋を、川遊びには川遊び靴の靴袋を運んでもらい遊びと靴はセットだよと教えるプロジェクトを検討中です。

 

読み書き指導どうしましょう

自粛開けの新学期が始まって、放デイスタッフはお迎えの際に利用者の子どもたちの担任の先生方に御挨拶をしています。そこで、昨日掲載したような子どもたちの視覚支援による見通しの持たせ方をお互いに交流したりもします。

小学校では、特別支援学級の担任の先生とお話しすることが多いですが、そこで話題になるのが、子どもたちの読み書きの学習の進捗です。全般的に遅れのある子どもには、発達に合わせた課題を与えていけばうまくいくので、そう大きな問題にはならないのですが、発達性読み書き障害が疑われる子どもの場合は、子どもの見方からずれが生じてしまう事が少なくないので、少し情報を交換するくらいでは、今後の学習指導の見通しが持てないことが多いです。

先日もR君の書きの指導についてどうすればいいか、考えあぐねているという話を先生から聞きました。「どうすればいいんでしょうねー」と言われるので、「生活型の放デイは行動の問題については療育的アプローチができます。ただ、学習障害への支援はいくつか提案できますが、取り組みの機会はあまりないので是非学校で取り組んでください」とお願いしました。

読み書き障害の支援の全国的な傾向は東高西低のようです。関西にも大阪医科大学LDセンター等の民間センターはあります。しかし、関東は市川のLD・Dyslexiaセンターが筑波大陣営、四ツ谷のスマイルプラネットは学芸大陣営と連携しています。そして、港区には老舗のディスレクシア支援団体であるNPO法人 EDGE(エッジ)がLD支援の詳細な研修まで引き受けています。そんなわけで、読み書き障害の支援策は民間からの情報量の多い関東の先生方は関西の先生方より良く知っているのかもしれません。関西でも急速に読み書き障害の存在と最新の支援策を広げて現場の先生方に知ってもらう必要があります。

 

 

送迎トラブル

毎日放デイの送迎車は、支援学校や小学校にお迎えに行きます。低学年や障害の重い人にとっては、今日はスクールバスに乗って帰るのか、放デイの送迎車に乗ってどこの事業所に行くのか覚えるのは困難です。Qさん、今日も放デイのお迎えでスクールバスに乗るつもりが崩れて大泣きです。

そこで、視覚支援が登場するわけですが、多くの場合の誤解は、視覚でわかるようにしておけば理解できるだろうと考えてしまうことです。もちろんそれでOKな人も少なくないですが、低学年時などはそもそも不注意で、記憶にとどめる時間が短いとか、覚えていたけど違うものを見た瞬間に選択が変わってしまうなどいろいろ課題があります。

こういう人の場合は、教室から「本日の行き先カード」(写真でも絵でもいい)を本人が昇降口まで運んで、乗り場のカード入れにマッチングさせると自分の行動について記憶が保持しやすくなる場合があります。自閉症支援・視覚支援と言ってもその人の状況に応じてやり方を工夫する必要があります。効果があると言われる支援はどんな場合も、個別化してカスタマイズしてこそ威力を発揮します。

学童保育

これまで機嫌の悪かったP君がニコニコして登所してきました。たぶん、学童保育問題が解決したのでしょう。学童保育で、年を重ねていくと子どもの集団の中でそれなりの関係性が築かれていきます。

ところが加配職員がついている場合、本人と子ども集団との関係性が悪くなる時があります。この関係性は微妙なので、スタッフ同士の連携が欠かせません。小3頃から子どもたちは同世代で徒党を組み、いわゆるギャング集団を形成します。ところが加配スタッフの動きが目立つと、この絆がうまく築けないことがあります。この関係性を構築するにはスタッフ自身が集団に直接介入する場合もありますが、子どもだけの群れに本来の意味があるので良い介入とは言えません。ここは、学校の学級集団とは質が違う集団だと言う理解が必要です。

最近の学童保育集団は縦関係が非常に弱いので、少し空気が読めなかったり、タイミングを合わせるのが遅かったりする子どもは、ナチュラルサポートしてくれる先輩がおらず、なかなか集団に入るのが難しくて本人もしんどい思いをすることが多いようです。私たちは、しんどい思いまでしていく必要はないと考えています。学童保育は学校といわゆる地続きなので、学校までが嫌になってしまうからです。もしも、他に方法があるなら、遊ぶため、ほっこりするための放課後を無理して過ごす必要はありません。というわけでP君やっとストレスから解放されてすっきして学校にも登校でき、すてっぷでも機嫌よく過ごせた模様です。

 

学生アルバイト

N君に、学生アルバイトのOさんに一緒に帰ろうと声をかけて欲しいというと「わかったー♪」と喜んで声をかけてくれました。隣で聞いていたP君は「本当は先生が一緒に帰りたいのとちがうの?」と話しかけてきます。P君も一緒に帰るのがまんざらでもない様子です。

子どもたちにとって、父母や祖父母ほど離れているスタッフと過ごすのとは違い、少し自分の未来の姿がイメージできる学生さんは特別な存在のようです。女子学生の応募が多いのですが、男子学生も募集中ですので、お知り合いの方がおられましたらご連絡ください。

リビング京都西南版のリビング求人案内にも募集要項が出ています。ご覧ください。

凸凹特性

M君が「うろうろするのは何症候群て言うの?」と聞くので「多動性症候群」とスタッフがこたえます。矢継ぎ早に「その他にも合わさっているんやなぁ」と質問します。「不注意が重なることもある」と言うスタッフに「なんていうのそれ?」とたたみかけて来るので「ADHDともいう」。スタッフの本棚を見て、あーこれかーと「ADHDのおともだち(ミネルバ書房)」絵本を手に取って読み始めました。「不器用とかもあるんやなぁ」「うわっ 部屋汚い」と読み進めます。

学校が始まって頑張ろうと思えば思うほど、自分が気になる時期でもあります。高学年ならなおさらです。自分のことが知りたいときに、凸凹な状況を説明してあげるのは大事なことです。ご家族と話し合って、できれば主治医も含めて話し合い、計画的に持続的に肯定的に説明しようと思います。

田んぼの田

L君たちを呼んで、「田んぼの田」ゲームをしました。他府県では十字鬼ともいいます。走り回って遊べるのが楽しいゲームです。

一辺が4~5mの四角形を描きます。その中に十字を書きます( 田の字 )。十字の部分は「鬼の道」です。幅50cmぐらいの道幅にします。「鬼」を一人決めます。鬼以外の人は「子」になります。

子をスタート位置(升の一つ)に集めます。子が4つの升を何周するのか、鬼は、「○週!」と決め宣言します。鬼は「鬼の道」を行ったり来たりしながら子をタッチします。子は鬼にタッチされないように「田の字」のコートを鬼が決めた回数だけ回ります。子は鬼の道には入ってはいけません。鬼の道を飛び越えながら進みます。コートは右回りでも、左回りでも良いです。但し、途中で回る方向を変えてはいけません。

「鬼にタッチされる」「鬼の道に入る」子はアウトです。子が決められた回数を回ることが出来たら子の勝ちです。すべての子を鬼がタッチ出来たら鬼の勝ちです。サブルールとして、「人数が多い時は鬼が2人」「タッチされたら鬼になり、鬼がどんどんと増える」というルールやチーム対抗戦にして、チームワークを楽しむ高学年版もあります。

はさみチョキチョキ

Kちゃんが初めて鋏に挑戦しています。線に沿ってチョキチョキ切っていくのですが、紙をうまく固定するのが難しいようです。鋏のコツは実は添える手が重要です。みんな鋏の利き手に注目しがちですが、紙は固定しないとうまく切れません。紙をどう固定するのか、どこを持つのか、どのくらいの力で固定するのかを、鋏の利き手と連動させてつまんだり添えたりするのです。

就学前で鋏を使わなくても、教えればだんだん上手になるので心配はいりませんが、実はこうした手先の活動は粗大運動と並んで重要なのです。ものを変化させる(紙を切る)ために、自分の方が力や位置を調整しながらモノに働きかけていく活動は、自己コントロールの力を育てていきます。もちろん粗大運動でもこの力は育つのですが、対象物が変化するところが重要なのです。Kちゃん口をひん曲げて上手に切ろうと頑張っています。

泣くことの理解とトランジッションカード

Jちゃんはようやくスケジュールを見て一日の流れが分かるようになってきました。それでも、何かの拍子に事業所の入り口の前で泣きだすことがあります。おそらく、何かいつもと少しシチューションが違って、見通しが持てなくなる時に泣くのではないかとスタッフで話し合いました。

そこで、トランジッションカード(スケジュールを見てきてねカード)を渡して「今日は何があるかな」と言ってスケジュールボードへの移動を促すようにしました。この作戦で、Jちゃんは、ほとんど泣かなくなりました。要するに、悲しいから泣くと言うより、分からないから泣いていたということです。もちろんJちゃんは言葉がないわけではありませんが、言葉が機能的に利用できることをまだ知りません。それよりも、泣くことで解決した事が多かったのだと思います。たまに要求が実現するので繰り返そうとすることを間欠強化行動と言います。ギャンブル依存もこの一種です。

案の定、公園からご機嫌で帰ってきたJちゃんがまたまた玄関の前で大声で泣きだしました。トランジッションカードをスタッフが渡すのを忘れていたのです。他のスタッフが気付いてカードを渡すと、スケジュールに行っておやつがあることがわかって泣き止んだのでした。ここで重要なことは、毎回繰り返される行動であっても、スケジュールやトランジッションカードが頼りになるということは忘れてしまう子がいるという事です。そして身についた行動(トランジションカードで移動する)が理解を助けるという事です。あべこべみたいですけど、Jちゃんは、わかることができることにつながるのではなく、できることがわかることにつながるのです。行動が認知を助けるのです。