すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

2024年新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年は大変お世話になりました。

 新年から衝撃的なニュースが続いています。直接の被害がなくても、ニュースを見てショックを受けるお子さんもおられるかもしれません。ニュースでは決まったフレーズや映像が繰り返し流される場合があります。特性によっては、そういったフレーズや映像が焼き付いてしまい、スリップしてしまうことがあります。もし不安を訴えるお子さんがおられたら、その気持ちを受け止めながら、気分を変えられるもの(好きな遊びやDVDなど)を提案するのも一つの方法かと思います。ご家庭で悩まれることがありましたら、お子さんを知っておられる学校や関係機関にご相談ください。すてっぷやじゃんぷも、お子さんやご家庭と寄り添いながら、よりよい過ごしができるよう努めてまいります。

 本年もよろしくお願いいたします。

 

2023年度年末年始休業のお知らせ

 平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。本年は大変お世話になりました。来年もすてっぷ・じゃんぷ職員一同、利用者・保護者の皆様へのよりよい支援・活動を心がけてまいります。来年も保護者の皆様の変わらぬご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 すてっぷ、じゃんぷともに、2023年12月29日から2024年1月3日まで、年末年始休業となります。すてっぷは4日から通常営業、じゃんぷは4日放デイのみ営業、5日から通常営業となります。

 来年もよろしくお願いします。良い年末をお過ごしください。

「ありがとう!助かったよ」

 チェックリストで忘れ物確認(2023/12/16)で紹介したチェックリストですが、使い慣れていない子へは職員が子どもに提示することでルーチン化を図ってきました。ただ、中には使うことをめんどくさがる子もいます。

 小学生のPくんも、その一人。使い始めたころは、チェックリストに対し「なんでこんなの、しないといけないんだよ」と面倒くさがっていました。もともとPくんは忘れ物をしてしまうことがあり、本人もその意識があってか、連絡帳などすてっぷで必要なものは手提げ袋に入れて持って来ています。忘れ物をしやすいPくんにとっては、チェックリストを使うこと自体を忘れてしまうのかもしれません。

 そこでルーチン化を図りながら、Pくんにチェックリストを使う意味を繰り返し伝えました。またPくんが忘れ物をしてしまった時は、落ち込んだり怒ったりするPくんの気持ちを受け止めながら、「次はこうしよう」とチェックリストを示すなどの支援を行ってきました。

 次第に、忘れ物をしてしまいやすい自分のことを落ち着いて受け入れられるようになっていったPくん。先日は、チェックリストで忘れ物確認もOKと自分でチェックしてから送迎車に乗ったのですが、車中で水筒を忘れてしまったことに気付きました。以前なら怒ったり人のせいにしたりしていたPくんですが、運転者の職員に「僕が(忘れ物確認にチェックしながらも)忘れ物確認で棚を見なかったのが悪かったんだね」と言ったのです! そして別の日も、買い物学習で買ったゼリーが冷蔵庫に入ったままで、職員が「ゼリーは持った?」と聞くと、Pくんは「ありがとう! 僕は忘れやすいから助かったよ」と落ち着いて答えることができました。

 忘れ物をする=失敗経験を増やさないように取り組んでいるチェックリストですが、使う意味が分からない子どもにとっては面倒くさいものです。自分で使えるようになるためには、それを使うことで成功したという経験を積んでいくことが大事ですが、そこには大人の適度な手助けが必要です。適度、というのが難しい所で、職員も模索しながら日々の支援に取り組んでいます。

チェックリストで忘れ物確認

 すてっぷに来ている子どもは、程度や方法によっての違いがありますが、覚えることが苦手な子が少なくありません。仲のいい友だちでも名前を覚えられず、つい「お前」と言ってひんしゅくを買ってしまう子もいれば、伏せられたカードの数を覚えられず、「神経衰弱で遊ぼう」となると「ぜったい嫌だ!」と参加できない子もいます。そして覚えることが苦手な子が特に失敗体験を積んでしまうことが忘れ物です。

 忘れ物をしてしまうのは、上記の覚えられないことが要因の一つですが、それ以外にも(あるいはそれと関連したり、重複したりですが)、他のことに気を取られてしまう、雑音などで気が散ってしまう、書いたり読んだりが苦手でメモの習慣がつかないといったことが挙げられます。いずれにせよ、他人(大人)からの「忘れ物あるよ!」という声掛けが続けば、おのずと忘れ物への恐怖感がつのっていきます。

 それを防ぐ方法の一つは、自分で忘れ物に気づけるようになることです。そのためにすてっぷでは、帰る前にチェックリストを自分で使えるように取り組んでいます。チェックリストには、すてっぷで使う(または置いておく)基本的なものがイラストといっしょに書かれています。また自由欄を作り、その人の(その日の)持ち物に合わせて記入できるようにしました。そしてルーチン化して自分で使えるようにするために、帰る準備ができたら自分が乗る送迎車の職員に、チェックリストを見せるようにしました。

 この1年ほどの取り組みで、多くの子は自分でチェックリストを使い、自分で忘れ物確認ができるようになってきました。買い物学習で買った大好きなゼリーを家で食べたいからと、すてっぷの冷蔵庫に入れたまま忘れて帰ってしまった子も、次の時にはチェックリストに書いてあるゼリーの文字に気づき、帰る前に「ゼリー出してください」と言えるようになりました。

 自立的にできるということが、何よりも自信につながっていきます。そのためには大人からの声掛けだけでなく、「視覚優位」「ルーチン化に強い」といった、その子の強みを生かした支援が役立つのではないでしょうか。「忘れ物をした」という失敗体験からでは次のチャレンジがしにくいからこそ、「忘れ物確認が自分でできた」という成功体験を積んでいってほしいと思います。

「楽しかった」よりも「ドキドキ」

 小学生のOさんはすてっぷに来始めてもうすぐ1年。少しずつですが、友だちと談笑するなど、笑顔を見せることが増えてきました。遊びのこだわりがあり、来た当初はしないことは絶対にしないと固いところもありましたが、最近は苦手な遊びでも参加するようになっています。

 そんなOさんの課題の一つがコミュニケーション表出、つまり自分の思いや気持ちを他人(職員や友だち)に伝えようとすることがまだまだ少ないことです。上記の通り、「しない」ことは伝えられますが、どうしてしないのかという理由や、では代わりに何をするかという代案を、自分から伝えることはまだできません。他にも感想を聞かれても「楽しかった」と答えるのみで、他の感想、特に自分の気持ちを他の言葉で表現することはなかなか見られませんでした。

 そこで活動選択からコミュニケーションの表出に少しずつ取り組み始めました。Oさんは好きな活動は「する」、したくない活動は「しない」と答えるので、好きな活動を保障しながら、「しない」と答えた活動を一部だったりルールを変えたり(おにごっこをふえおににするなど)といった交渉をしました。そして少しずつ見えてきたOさんが「しない」という理由を、職員からOさんに聞いてみて、うなずいたことを言語化して伝えていきました。

 また同時に、感情カードを使って振り返りをすることも始めました。言葉で聞いても「楽しかった」と答えるだけだったOさんですが、感情カードはイラストと文字とを見てマッチングできるので、他の感情も少しずつ分かるようになってきたようです。先日初めて行った公園で友だちといっしょに、遊具やボールでアグレッシブに遊んできたOさん。すてっぷに帰ってきた後、感情カードで振り返りをすると、初めて「楽しかった」ではなく、「ドキドキ」を選びました! そして別の日は、宿題をしているところに「その問題はこう解くんだよ!」としきりに声をかけてきた友だちに、初めて「イヤ」と言うことができたのです。まだまだ「ドキドキ」の理由が言えたり、自分から「イヤ」と伝えたりすることは難しいですが、感情カードを使うことで、少しずつ表出が増えてきたOさん。「伝わってよかった」「伝えてよかった」となることで、より表出を増やしていけるよう、丁寧に支援していきます。

「行けないの、かなしい」

 「○○くんたちと遊びたい!」(2023/11/4)で紹介したJさん。週間スケジュールで見通しが持てることで、落ち着いて過ごせることが増えてきましたが、自分の要求が伝わらないと泣き叫ぶような大きな声を出すことがまだ見られます。

 そういうときは感情カードで、落ち着いて他人(はじめは職員から)に伝えていくことに替えていきます。ただ感情カードを見せるだけでは、なかなか自分から伝えることにはつながりません。実際にJさんも、感情カードを見て絵の意味は分かっても、使う(伝える)ことの意味はなかなか分かりませんでした。

 そこで職員がJさんの気持ちを受け止めることからはじめました。先日「公園に行きたくなーい!」と叫びながら帰ってきたJさん。まずは職員が「お話しよう」と向き合っていっしょに座ります。職員が「どうしたの?」と聞くと、「公園行きたくない!」とJさんは答えます。すかさず職員は「行きたくないんだね」とJさんの気持ちを受け止めます。次第に落ち着いてくるJさん。職員が「どうして?」と聞くと、「寒いから」とJさんは答えました。職員が「そうだね。寒いね」と共感し、「ジャンパー着ていこううか」と言うと、Jさんはジャンパーを取りに行き、着るとそのままお出かけに向かっていきました。次のときも同じように「寒いから」と公園に行きたくないことを伝えるJさん。ですが前回よりも穏やかにやり取りでき、この日は室内での勉強に活動を変えました。

 そうしておだやかにやり取りすることが増えてきた中で、「(小学生グループの)買い物、行きたい」と伝えてきたJさんに、気持ちを受け止めながら感情カードを見せると、Jさんは自分から「かなしい」と感情カードを示しながら答えました! 今では「かなしい」や「ざんねん」などおだやかに自分の気持ちを伝え、気持ちを受け止めてもらうことで、交渉や切り替えに向かえることが増えてきたJさん。この数か月で一気に成長した姿を、日々見せてくれています。

「譲ってあげるよ」

 すてっぷの小学生グループのみんなはブランコが大好き。公園に着くと一番にブランコに走っていきます。ただ公園に設置されているブランコは2連のものがほとんど。地域の子がいなくて空いていても、すてっぷのグループの人数では足りません。早い者勝ちとばかりに走っていく子どももいますが、最近では職員が声をかけずとも、子ども同士で「譲って」と交渉する姿が見られるようになってきました。

 先日、4人ほどのグループと職員とで、2連ブランコのある公園に出かけた時のことです。先に着いたKくんとLくんがブランコに乗って遊んでいました。遅れて到着したMくんとNくんもブランコのところにやってきました。そしてそれぞれ、ブランコで遊んでいる2人に声をかけます。MくんはKくんに「代わって」とお願いしました。まだ遊びたいKくんは「60秒したらいいよ」と答え、Mくんは了承。交渉が成立しました。

 一方のNくんも「代わって」とLくんに伝えます。Nくんはすてっぷに来て半年。この2か月ほどでグッと成長を見せ、落ち着いて交渉することが増えてきました。ですが自分の思いが通らないと泣いてしまうことがまだ見られるため、このときも職員がそばで見守っていました。「代わって」と言われたLくんは「もう少ししたらいいよ。」とNくんに答えました。NくんはLくんの言葉にしっかり耳を傾けていますが、とまどっているようでした。そこで職員がLくんに「もう少ししたらじゃなくて、KくんとMくんみたいに時間を決めたら?」と提案しました。Lくんが「30秒したら」とNくんに言うと、Nくんは「いいよ」と答えました。そしてNくんは30秒間、静かに待ち、Lくんが降りてから切り替えよくブランコに乗ることができました!

 社会性やコミュニケーションの課題がある小学生グループの子どもたちも、子ども同士で相談したり交渉したりという力が育ってきています。そこには職員のちょっとした支援に加えて、子ども同士(集団)で学び合うことが、子ども自身の成長につながっているのだと思います。

 この後、Nくんがブランコで遊んでいると、Mくんが遊び終わって空いた席をめぐって、KくんとLくんとでじゃんけんを始めました。するとNくんは2人に声をかけます。「譲ってあげるよ。」Nくんはブランコを降りました。譲ってもらった2人は「Nくん、ありがとう」と伝え、2人いっしょにブランコで遊び始めました。お礼を言ってもらったNくんの顔は、どこか誇らしげでした。

「分かりやすすぎてダメなんやな」

 小学生グループで最近取り組んでいる遊びの一つが「Dixit(ディクシット)」というゲームです。ディクシットは有名な対戦型のボードゲームで、様々な(多くは象徴的な)絵が描かれたカードを使います。プレイヤーは順番に出題者になり、自分の手札からカードを1枚選んで、その絵を言葉で表現します。他の人は全員回答者になり、それぞれがその言葉にふさわしいと思ったカードを出した後、それらのカードが混ざった中から出題者が出したカードを当てるというゲームです。

 このとき、回答者が誰もカードを当てられなかったら出題者に得点が入らないのは分かりやすいのですが、このゲームの面白いところは、回答者全員が出題者のカードを当ててしまったときも、出題者に得点が入らないということです。そのため出題者は、全員にはわからないような、でも誰かは分かるような言葉を言うことがポイントになります。

 もともと小学生グループの子どもの中には、言葉で表現することが課題の子が少なくありません。そこで、ルールがある中(設定遊びやボードゲームなど)で、言葉で表現することに取り組んできました。「ある/ない」や「本当/うそ」といった0/100の表現が少しずつ言えるようになってきたところで、次の課題として、その間の表現が求められるディクシットに取り組み始めました。

 先日初めて取り組んだグループは、最初の説明で「頭から光が出ているっていう説明は分かりやすすぎてダメなんやな」と理解を示し、スタートしました。「人」や「水しぶき」といったイラストそのものを単語で表現することも多く全員から当てられてしまうこともありましたが、全員にはわからないよう、背景を見て「オレンジ」と表現するなど、工夫して言葉にすることにチャレンジする姿も見られました。出題することもですが、回答するときも身を乗り出して絵カードを見比べるなど、とても楽しみながら子どもそれぞれが表現したり友だちの表現を理解しようと取り組みました。終わった後、「楽しかった!またやりたい」と振り返った子どもたち。ディクシットや他の取り組みをする中で、0/100だけでなく、間の表現をすることにもチャレンジしていき、表現力を少しずつつけていきたいと思います。

がい数の意味

 算数と数学の違いでよく聞かれるのが、「算数は実生活で使うものが多い」ことです。その一つが、およその数、『がい数』です。がい数は小学校4年生で習います。新聞やニュースで面積や人口を見る時は、たいていがおよその数で表されています。また買い物に行く前に、買うものの値段と財布に入っている金額を、およその計算で比べる人も少なくないでしょう。

 がい数を求めることに必要な作業が四捨五入です。「6400や6700はだいたい何千?」と聞かれた時に、感覚で分かっている人はすぐに答えることができるでしょう。先日じゃんぷで、がい数の予習に取り組んだ子も「6000」「7000」とすぐに分かりました。どうして?と聞かれると、「近いから」と答えました。この『近い』という表現になかなか納得できない子もいるかもしれません。教科書に書かれているように数直線で見ると、「確かに近いな…」と納得できるでしょうか。実のところ、この『がい数』は、ひき算わり算や分数小数などと同様に、子どもにとって混乱しやすい内容です。四捨五入の作業ができ、がい算(がい数の計算)ができるようになっても、がい数の意味を理解したり意味やよさ(実生活での有効性)に気付いたりできないままということもあります。その子に合わせた分かりやすい方法で学んでいく必要があります。

 『がい数』の学習で子どもが混乱しやすいポイントの一つが、『〇の位までのがい数』や『上から□けたのがい数』という表現です。これを見て、〇の位や上から□けたの数を四捨五入してしまうことがあります。求める位の一個下を四捨五入すると教わりますが、このとき、求める位の数の後に縦線を引き、次の数を四捨五入することを、線を引く操作と関連付けて覚えることが効果的な子もいます。がい数にしたあとに、〇の位や上から□けたが0になっていないかという確認も有効かもしれません。「9900→10000」などの例外もありますが…。

 ところで、この『がい数』の課題を準備するときに、職員の間で話題になったことがあります。文章題でがい算(がい数の計算)の答えは『約』をつけて答えるのに、がい数を求める問題は答えに『約』が付いていないのです。調べてみると、東京書籍のQ&Aに次のようなことが書かれていました。

答えが概数であるかが明確になっていない場合は、答えに「約」をつける必要性が高いと考えますが、(中略)問題文で「がい数にしましょう」と概数で答えることが明確な場合は、答えに「約」をつけていません。それは、概数で答える数に必ず「約」をつけますと、概数を答える問題では必ず「約」をつけなければいけないという誤解や、「約」がついていない数は概数でないという誤解を生む恐れがあるからです。

 (【東京書籍】 会社案内 お問い合わせ よくあるご質問Q&A 教科書・図書教材:小学校 算数 (tokyo-shoseki.co.jp)

 問題文に「約何万円になりましたか」や「がい数で答えなさい」など、しっかりと書かれていれば、解く子どもも分かりやすいですが、あいまいな問題もあります。教える大人ががい数の意味をしっかり理解して、教えていきたいと思います。

「○○くんたちと遊びたい!」

 「男の子たちと遊びたい!」支援学校小学部のJさんが、少し前までよく職員に伝えていた言葉です。Jさんは下校時間の違いもあり、支援学校の友だちとよく公園に行っていました。以前はブランコや砂場での一人遊びが多かったのですが、たまたまお出かけ先が一緒だった小学校グループの子どもたちがやってくると、職員の誘いもあり、少しずつ一緒に遊ぶようになってきました。

 そして去年の冬くらいから、自分から小学校グループの友だちと遊びたいと職員に伝えるようになりました。ちょうどコミュニケーションの課題として、要求することに取り組んでいたJさん。自分からしたいことを伝えられたことを褒め、小学校グループの友だちとの活動を増やしていきました。

 次の課題は、要求が叶わないときへの対応です。何も支援がないと、Jさんは友だちと遊べないからと大声で叫ぶなどパニックになってしまいます。そこでトークンエコノミーシステムも関連付けた、一週間の予定表を提示することにしました。曜日ごとで、支援学校の友だちと遊ぶ日、小学校グループの友だちと遊ぶ日を提示し、それぞれ友だちと遊べた時はシールを貼るようにしました。また支援学校の友だちと遊ぶときは、たいてい2つのグループがあるので、どちらのグループと一緒に遊ぶかを、視覚的な枠を提示して、自分で選んで貼るようにしました。

 最初は大声で叫ぶこともあったJさんですが、予定表の意味が分かるようになり、今では落ち着いて切り替えられるようになりました。支援学校の友だちと遊ぶ時間、小学校グループの友だちと遊ぶ時間、それぞれで自分の課題に取り組んでいます。最近は小学校グループの友だちと一緒のタイミングで「宿題する!」と職員に伝え、学習プリントにも取り組むようになりました。普段は会わない友だちですが、放課後に一緒に過ごす中で、様々な良い影響を受けています。放課後等デイサービスだからこそできる、支援の形の一つだと実感します。

手指を使うボードゲーム

 すてっぷやじゃんぷで取り組むボードゲームは、みんなで楽しく遊ぶことが第一目的ですが、第二以降の目的も持って、職員が課題設定しています。その日の集団や、一人一人が支援計画の目標を達成できることを考え、それに合わせたボードゲームを準備します。その狙いの一つが「手指を使うこと」です。

 手指を使うことが課題の子どもは少なくありません。工作や調理など、手指を使うことに取り組むこともありますが、子どもの多くは学校など他の場所ですでに体験しています。「またやってみたい」と思っている子であれば、スムーズに取り組みますが、中には失敗経験から苦手意識を持ち、「やりたくない」と最初から取り組めない子もいます。

 そこで楽しく遊べるボードゲームをする中で、手指を使うことにチャレンジすることがあります。「キャプテン・リノ」もその一つです。「キャプテン・リノ」は有名な対戦型のゲームで、長くても15分ほどで1ゲームが終わります。一人ずつ手札を持ってスタートし、順番に厚紙を二つ折りにした壁を設置していきます。そして同じく厚紙でできている手札のカードから一枚選んで、それを壁の上に設置して次の人に順番を回します。すると厚紙のタワーが次々と積まれていくことになります。どんどん高くなっていけば、次第に手札が少なくなっていき、一番初めに手札が0になった人が勝利です。ですが誰かが倒してしまうとその時点で終了、倒した人が負けになるというゲームです。

 先日も初めて取り組む子ばかりの中、この「キャプテン・リノ」にチャレンジしました。初めは慣れない中、また本人の持つ不器用さのためか、ポンと壁のカードを置き、タワーがぐらつく場面が続きました。しかしタワーが高くなるにつれ、緊張感も高まり、手指を慎重に使ってそっと置くようになっていきます。最後はタワーが倒れて終了しましたが、2順ほど順番が回り、7段まで積むことが出来ました。このときは時間がなく次のゲームに移りましたが、慣れてくると積み方も上手になり、タワーがどんどん高くなります。また手札には自分が得したり相手が損したりする効果があるカードがあります。相手を意識した駆け引きが生まれてくると、もっとおもしろくなってきます。またチャレンジしてみたいと思います。

「ぼく、卒業しようかな」

 放課後等デイサービスに通い始める小学生の中には、失敗経験を繰り返してきた子どもが少なくありません。すてっぷに来た小学生のIくんも「ぼくはコミュニケーション障害があるからすてっぷに来てる。」と受け止めていました。

 すてっぷに来た頃のIくんは、自分本位の言動がよく見られました。その言動から、友だちから反感を受けてしまい衝突することが毎日のようにありました。また集団遊びをするときも、Iくんは「(友だちが提案した○○は)ぼくは絶対にしない。嫌だ!」と強い拒否感を示し、泣きだして怒ることもありました。

 そこでまずは、Iくんが集団で一緒に遊べる経験を増やしていきました。そのために、「どういうルールならできるの?」、「何分(何回)だけしてみよう。」、「後でIくんのしたい遊びもするから、まずはこれをチャレンジしてみよう。」など、職員から声を掛け、交渉することを続けました。また上級生の友だちにも働きかけ、Iくんが友だちと交渉する機会を増やしました。次第にIくんは、「おにごっこしようよ。」と誘われると、「僕がおに役なると誰も捕まえられないから嫌だ。したくない。」と答えるなど、理由を言えるようになっていきました。職員が、「じゃあおに役が固定のおにごっこやおに役が増えるおにごっこは?」などと交渉し取り組みを続けていると、同じような状況になったときに職員がいなくても、上級生の友だちが、Iくんに同じように交渉し、子ども達だけで集団遊びを作ることが出来てきました。すると、Iくんからも「じゃあ、けいどろならいいよ。ふえおには絶対嫌だけど。」など自分から交渉することが出来たのです!。

 最近のIくんといえば、上級生のお友達と何して遊ぶかを相談・交渉するだけでなく、同級生の友だちと遊ぶ時に「○○君は何して遊びたい?」と尋ねたり、年下の友だちと遊ぶ時には、「○○君と○○ちゃんはおに役になったらタッチするの大変だろうから、あの二人はタッチ返しありにしようよ。僕たちはタッチ返しなしのルールのままでいいから。」など提案したりするなど、どの友だちとも交渉したり配慮したりできるようになりました。1年半前と比べると、穏やかに遊んで過ごせる日がとても多くなりました。

 先日、Iくんがふと言いました。「ぼく、来年、すてっぷ卒業しようかな。すてっぷに来た時は、コミュニケーション障害あったけど、もうなくなったと思う。」 職員が、「Iくん、みんなと仲良く遊べてるもんね。」と言うと、Iくんは、「うん!」と言いました。実際には卒業までの課題がまだあると職員は考えていますが、少なくともIくんの中で、これまでの失敗経験を超える数の成功体験を積めたのだと思います。

「ラーメン美味しいね」

 支援学校高等部のHくんは、すてっぷでトークン・エコノミー法を活用しながら、生活自立や対人コミュニケーションのトレーニングに取り組んでいます。トークン・エコノミー法は行動療法のひとつで、トークン(疑似通貨のことで、支援の場ではシール・コイン・スタンプなどがよく使われています)を使うことで、がんばったこと、褒められたことが視覚的見て分かります。さらにトークンを溜められたら好きなことが出来るという約束を大人(支援者)と事前に決めておき、より自分でがんばれることを増やしていけます。

 Hくんがトークン・エコノミー法でがんばっている行動目標は以下の通りです。

・準備や片付け(友だちとの活動の中で)

・適切な対人距離(具体的に何歩の距離で会話するなど)

・休憩時間に適切に過ごす事(暇だと感じた時に、室内でボール遊びをするなどの不適切な行動をするのではなく、座って遊べることや職員と会話することなどを選んで要求できるように)

これらの行動目標をすてっぷに来たら職員と確認し、帰宅前に振り返って、達成できた項目はチップを貰って貼っています。この支援を半年ほど続けてきました。

 最近のHくんは、適切な対人距離を保てたり、準備や片付けを率先して行ったりする中で、友だちとのコミュニケーションが以前よりも適切にとれる姿が多くなっています。以前は、Hくんとあまり話すことが少なった友だちも、Hくんが準備や片付けを行う姿や、Hくんが「お茶、欲しい人?」とお茶汲みの手伝いをする姿を見て、「Hくんありがとう。」とお礼を伝えています。友だちからHくんに話しかけることも増えてきました。もともと自分からコミュニケーションを取ろうとするHくんですが、人からのアクションを受け止めて応えることは苦手で、一方的なコミュニケーションになりがちでした。なので、友だちと双方向でコミュニケーションが取れる機会が増えたのは、とてもいいことだと職員は感じています。

 さて、職員とトークンを溜めた時のお楽しみを約束していたHくん。最初のころは大好きな古墳巡りに行っていましたが、先日行ってきたのは来来亭。Hくんは事前に何を注文するかを調べたり、来来亭公式の配信動画もチェックしたりなど、気合を入れて準備してきました。楽しみにしていたラーメンを食べるHくん。いっしょに食べている職員に「美味しいね。美味しい?」と尋ねます。いっしょに味わえたということも、ご褒美のうちだったのでしょう。また次の楽しみに向けて、日々の目標を頑張っていきましょう。

もうすぐ運動会

 秋とは程遠い暑さが続きますが、10月に突入するということで運動会開催を控えた小学校も多いでしょう。すてっぷにも、秋の運動会開催を控えた小学生がたくさんいます。そしてすてっぷに帰って来ると、みんな口をそろえて「運動会の練習疲れた。」と教えてくれます。

 そして始まる井戸端会議。「ダンス踊るの覚えられん」、「もう無理やー。」など、運動会の練習の不満を子ども同士で話しています。けれど、ネガティブなことだけではなく「俺の学校は、○○するで。」と友だちの前で踊って見せたりもしています。すると「○○君、そんな踊りできるんや。すごいなぁ。」とポジティブな感想が返ってきます。

 特性として、「変化に弱い」子どもたちばかりですので、いつもの学校生活に加えて、運動会の練習という変則的なスケジュールになると、体力的にも精神的にも疲れやすい傾向があります。そんな中でも、すてっぷで少しずつ積み重ねてきた友だちとのコミュニケーションの輪の中で、友だち同士で話す機会を作っている小学生たち。自分の気持ちを受け止めてもらえたり、自分だけでなく「○○君も運動会の練習頑張ってるんや。」と知れたりと、自分の気持ちを整理することで、また運動会の練習に向けて気持ちを作っているのかもしれません。

 友だちとの関わりが、運動会という行事を乗り越える際によき助けになるのではないかと思います。運動会に直接行くことは難しいですが、みんなが自分の力を発揮できるよう、職員一同心から応援しています。運動会が終わった後、どうだったか話を聞けること楽しみに待っています。いい運動会になりますように!

「僕もまた行っていい?」

 9月は面談月間。すてっぷでは利用者さんの全員ではありませんが、半分以上の保護者の方に、この期間に事業所まで来ていただき、支援計画更新の面談をしています。普段から送迎時などで保護者の方からお話を聞く機会はあるのですが、面談の時は1時間ほど時間をいただき、ご自宅の様子など聞かせていただける貴重な時間です。先日、小学校高学年のGくんの保護者様から、ありがたいお話を聞かせていただきました。

 Gくんは興味のあることや学校で聞いた印象深い話をしっかり覚え、職員や友だちにそらんじて話す賢い子です。一方で出来なかったり負けたりと言ったネガティブなことがあると、イライラなどの負の感情をコントロールできず、友だちとのトラブルになる事もしばしばありました。ですがすてっぷに通い、負の感情をコントロールできたという経験を積んだことで、ご自宅でも成長した姿を見せてくれたそうです。

 Gくんはパソコンに興味があり、新しくパソコン関連の習い事を始めることになりました。パソコンの操作ができるようになってきたGくんですが、やはり新しく習うことなので、すぐにはできないことがありました。それを見ていた保護者様(便宜上、お母さんとさせていただきます)は経験上、(イライラする!やめる!)と言い出すのではないかと思われたそうですが、なんとGくんは「教えてください」と落ち着いて聞けたそうです。また別の日、Gくんは友だちの家に遊びに行きたいとお母さんに相談しました。これまでは友だちの家に遊びに行ってもトラブルが続いていたGくん。お母さんはどうしようかと悩んでいたところ、Gくんから「心配なら4時にいったん帰ってくるよ」と言ったのです。お母さんがそれならとOKしたところ、約束通り4時に戻ってきたGくん。「だってお母さんと約束したから。でもみんな6時まで遊ぶんだって。僕もまた行っていい?」とお母さんに言いました。お母さんはGくんの成長を感じながらまた送り出されたそうです。

 このブログでは普段、子どもたちの事業所での様子や成長を書いていますが、やはり自宅や学校が生活の主軸です。そういった場面での子どもの成長や頑張りを聞かせていただくと、その成長の一端となれたことをとてもうれしく感じます。事業所での活動や支援が子どもたちの支えになるよう、気を引き締めて取り組んでいきます。

最高学年リーダー!

 すてっぷに通う小学校6年生のEくんは優しく、友だち思い。もともとは積極的に友だちに声をかけて行くタイプではありませんが、最高学年のリーダー役として、持ち前の優しさを発揮しています。

 先日のことです。小学校中学年のFくんは送迎車がすてっぷに着いた後、車からなかなか降りられないことがあります。そんなときは友だちから声をかけると、スムーズに降りられる日が続いていました。この日も車から降りられないFくん。そこで職員からEくんに声をかけてもらうようお願いしました。するとEくんはFくんのところに行って送迎車のドアを開けると、テンション高く「何してるの?」と言ったのです。続けて「出てきて」と声をかけると、Fくんは笑顔で車から降りてすてっぷに向かいました。

 普段のEくんからは考えられないテンションと言い方です。気になった職員が後でEくんに尋ねると、○○のキャラクターの話し方だと教えてくれました。○○はすこしややこしいのですが、某有名Youtuberの二次(三次)創作のキャラクターで、Fくんが大好きだと言うのです。Fくんの好きなキャラクターを狙って模倣して声をかけたEくん。職員は脱帽です!

 そんなEくんは取り組みの中でもリーダー役をがんばっています。ある日の公園遊びではドッチボールのチーム決めを5年生のGくんと一緒に引き受け、「チーム決めするよ!」と元気に声をかけていました。この日はスムーズにいかず、Eくんも暑さでばててしまったようで、職員が支援に入りましたが、もうじき運動の秋。涼しくなってくる中、Eくんがリーダー役を果たせたという経験を積めるよう、しっかりと支援していきます。

中学年リーダー!

 すてっぷに通う小学校中学年のDくん。この夏、目をみはるばかりの成長を見せてくれています。

 今の小学校グループは、2年前のリーダーたちが卒業してから新しく入ってきた子たちが中心です。高学年の子もいますが、どちらかというと年下をリードするというタイプではありません。子どもたち主体で話し合う場面(公園で何をして遊ぶ?など簡単な設定)は作りながらも、職員が支援しながら進めてきました。

 Dくんはこれまで、こういった話し合いの場面では、積極的に発言することはありませんでした。「ドッチボールがしたい!」など単発的に発言をすることはありましたが、みんなで決めるという過程のなかにはなかなか参加しません。それは言い方が強すぎたり、提案が通らなかった時に感情コントロールができなかったりなどの失敗経験があったのかもしれません。

 そこですてっぷでは友だちと楽しく遊べたという経験を増やしていくとともに、話し合いの機会を作る中で友だちと話すことや折り合いをつけるなどのコミュニケーション・社会性課題の成功体験を増やしていきました。そしてDくんの年下の子も増え、迎えたこの夏。Dくんは見事!リーダーシップを発揮してくれています。友だちに「何をする?」と聞いてくれたり、「グッパでチームを決めよう」と提案してくれたり。また年下の女の子に気遣って「やさしく投げようか」と声をかけるなど、相手の立場に立った提案をしてくれています。

 友だちへの優しい声掛けや提案が増えたDくん。一方で突発的に強く反応したり否定してしまったりということもまだ見られます。失敗経験につながってしまわないよう、丁寧に支援を続けていきます。

「7,8、10ありがいい!」

小学校に通う子どもたちのグループで今はやっているのがトランプゲームの大富豪。ボードゲームの取り組みの際に、子ども一人ひとりがやりたいゲームを持ち寄って、みんなで遊びや順番を決める機会を作っているのですが、最近は「大富豪がいい!」と声が上がるようになりました。

 大富豪はトランプ遊びでポピュラーなものですが、この1年程はすてっぷではあまり取り組んできませんでした。小学校グループの大半が入れ替わったタイミングで、みんなが知っているゲームよりも、誰も知らないゲームを導入から楽しむということを狙ってきたからです。ですが高学年も多くなり、修学旅行など普段はあまり遊ばない学校の友だちと遊ぶ機会も増えてくるだろうと、大富豪を職員から提案することにしました。

 さてこの大富豪、ご存じの方も多いと思いますがローカルルールが大変多いゲームです。8切りは大富豪を知っている人ならほとんどが知っているルールだと思いますが、それ以外にも10捨て、7渡しなどのルールもよく導入されます。すてっぷでも、ここまでのルールを最初に導入しました。他には5スキップ、9リバースなど(UNOが元ネタでしょうか)調べれば調べるほどローカルルールが出てきます。ただ子どもたちには「大事なのはどのローカルルールを採用するか事前に相談して決めること」を伝えています。みんなが知っている遊びだからこそ、普段は遊ばない友だちとはすれ違いが起きる可能性があります。なのですてっぷで取り組むときも、始める前に「どのルールありにする?」と子ども同士で相談する機会を作っています。

 先日も職員から子どもたちに提起したところ、「7、8、10ありがいい!」「7って何?」「なんでもいいから1枚次の人に渡す」「それ分からんからなしがいい」と次々と意見を出し合うことができました。まだ相談して決めることは難しいので職員が支援に入っています。この日は8切り、10捨てがありのルールで遊び、10捨てを駆使した子が見事1位になりました。ところで大富豪で有名なルールの革命は?というと、2枚出しならまだしも、3枚出し、4枚出しは経験が少なくてわからない!という子が多く、さらに4枚出しなら強さが入れ替わるよと言うとさらに??となるようです。まだまだすてっぷで経験を積む必要がありますが、普段は遊ばない友だちから「大富豪しよう!」と誘われたら、「いいよ! どのルールありにする?」と応えられるよう、今から少しずつ取り組んでいきたいと思います。

支援計画

先日とある研修に行きました。

放課後等デイサービス以外の、様々な福祉施設の方と一緒に相談支援計画を元に事業所内での支援計画を話し合いながら作成する、というものでした。

架空のAさんの事例を基にグループで話し合って作成していくのですが想定された事例のAさんは29歳の施設を利用している方、という設定でした。筆者は小学校教員→放課後等デイサービスで働いた経験しかないため大人の障害を持った方のことを全く知らないな、と思い知らされました。

同じグループ内には就労支援であったり作業所であったりと、大人の障害を持った方と関わる仕事をされている方が多く、筆者が思いつかないような支援が次々と出て、大変勉強になりました。それと同時にすてっぷ、じゃんぷで関わっている子ども達が将来について今より少し具体的に想像できるようになったと思います。

どの分野の方も、「子ども(利用者)中心に考え、支援計画を作る」ということを前提に考えられていました。研修はあくまで架空のものなので多少現実的ではないようなことも「これは〇〇さんにとって面白い活動なのではないか!?」とアイデアが出ましたが、利用者が望む生活、楽しめる活動を目指して計画、活動を考えることはやはり教育でも福祉でも大事なことだと改めて考えさせられた時間でした。

「これ持ってるとざんねん?」

 支援学校小学部のAさんは、2~3語文で話し、タブレット端末やおやつなどのほしいものを伝えることができます。友だちにも興味があり、友だちの予定も書かれている全体のスケジュールを見ながら、「○○くん公園、(自分の名前)公園」と一緒に行きたいことを伝えてきます。最近は小学校に通う友だち(Bくんたちの集団)と遊ぶことに強いモチベーションがあり、機会を見て鬼ごっこやトランプ遊びなど集団遊びを狙ってきました。

 ただ、友だちの活動の都合もあり、Aさんの要求が叶えられないことも。また集団遊びの中でAさんがなりたい『1番』になれないこともあります。そんなとき、以前のAさんはよく泣き叫んだり、怒ったりして、要求を叶えてもらおうとしていました。そこで、このブログでもたびたび紹介してきましたが、適切に要求できるようにコミュニケーション練習(PECS)を行うとともに、叶えられる要求で「まって」トレーニングに取り組んできました。少しずつ適切に要求し、待てるようになってきたAさん。次は表情と感情がセットになった絵カードを使って、さまざまな感情を表現するトレーニングに取り組みました。特に要求が叶わないときは「ざんねん」と大人に伝え、受け止めてもらえることで切り替えられることが少しずつ増えてきました。

 すると先日、AさんとBくんたち3人の友だちとでトランプ遊びに取り組んだときのことです。この日はすてっぷでは二度目の挑戦になるババ抜きにチャレンジ。始める前にAさんと職員とで、カードを見えないように手札を揃える練習に取り組みました。それに合わせてルールの復習をしていると、Aさんがジョーカーのカードを見せながら職員に尋ねました。「これ持ってるとざんねん?」。ルールを『ざんねん』という言葉で理解を示しているAさんに少し驚きながらも、職員は「そうだよ」と答えました。練習や準備も終わり、いざ本番。Aさんにとっては運悪く、友だちが先に抜けていきます。するとAさんは、先に抜けた友だちに「Bくんおめでとうー」「Cくん勝ちー」と声を掛けました。そして最後の友達が抜け、Aさんの手にはジョーカーのカードが残ってしまいました。ですが負けて悔しがったり、怒ったりするでもなく、「(自分の名前)の負け―。残念―。」と言って、次の活動に切り替えたのです!

 自分が好きな『1番』になれなくても、練習で身に着けた『ざんねん』という言葉を、自分から使うことができたAさん。とても素晴らしい成長を見せてくれました。その後もジェンガやアイスクラッシュなどゲームを変えながら、45分ほど友だちといっしょにボードゲームをすることが出来ました。全部遊んだ後に、職員から何が一番楽しかったかを尋ねると、Aさんは「ぜんぶ楽しかった!」と答えました。Aさん、すごい!