すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「なんで、僕が勝ったやん」

小学2年生のWくんはじゃんぷに来て半年ほど。家ではお兄ちゃん勝りのお話上手で、じゃんぷでも5、6年生のお兄さんたちとも対等のようにお話を楽しんでいます。一方で外遊びで友だちと遊ぶことや学習といった、じゃんぷで取り組む課題はまだまだあるお子さんです。

 先日、Wくんと3年生のXくん、1年生のYくんとでフルーチェ作りをしました。最初に役割分担をし、①粉と牛乳を入れる、②混ぜる、③小さい器に移すの3つの役割を選ぶことになりました。Xくんは先に①を選んだのですが、WくんとYくんは二人とも②の混ぜるがいいと言いました。相談することも課題の1つ、と職員が様子を見ていると、Wくんは「じゃんけんで決めよう」とYくんに提案しました。

 じゃんけんで決めることは、よく子どもが提案する方法の1つです。Wくんもよくじゃんけんを提案していて、じゃんぷに来たばかりのまだ1年生だったころ、けん玉を誰が使うかで、Wくんとお兄さんとで相談することになりました。するとWくんは自分から「じゃんけんしよう」と提案したのです。そのときの職員はWくんに「じゃんけんで決めるということは、負けたら後になるということだよ」と確認しました。するとWくんは「分かってるよ」と答え、ジャンケンでけん玉の順番を決めたのでした。

 フルーチェの混ぜる役を決めるのにジャンケンを提案したWくん。もちろん負けるということは、混ぜることはできず、③の小さな器に移す役になるということです。「いいよ」と答えたYくんとさっそくジャンケンし、勝ったのはWくん。混ぜる役になるのはWくんのはずでした。ところが職員がYくんに「じゃあYくんが移す役ね」と言うと、Yくんは「しない! 混ぜる!」と言ったのです。「なんで、僕が勝ったやん」とWくんは言いますが、Yくんは首を振り、黙ってしまいました。そこで職員が「Yくんは負けたら混ぜるをしないということが分かってなかったんだね」と尋ねると、Yくんは頷きました。Wくんにとっては当たり前のことが、年下のYくんには分かっていなかったんだと受け止めたWくん。職員から「どうする?」と聞かれると、「譲ってあげる」と混ぜる役をYくんに譲ってあげたのでした。

 相談して決める、ということは子どもにとっては難しい課題の1つです。そこには、妥協点を見つける、折り合いをつけるという要素が含まれる場合があり、それがまだできない子どもも少なくありません。Wくんにとっては、ジャンケンで負けた、ということが妥協する理由になるのですが、Yくんにとっては今はまだ、そうではないということです。こういう課題に繰り返しチャレンジしていく中で、妥協点を見つける、折り合いをつけることを少しでも増やしていくことが、相談して決めるために必要な力になっていきます。子ども達が楽しみながら、前向きに取り組めるようにしながらも、そういったコミュニケーション・社会性の力をつけられる支援をしていきたいと思います。

体育館でボール遊び!

 いよいよ2学期が始まりました。今夏も酷暑となる日が多く、お出かけを控えた方もいらっしゃるかもしれません。夏休みは子どもが朝から夕方まで過ごす、すてっぷやじゃんぷ。暑いからと室内でずっと過ごしていると、子どもたちは体を動かせないイライラが溜まってしまう場合があります。

 そこで今年は、定期的に文化教養体育館の半面コートや小体育室をお借りし、室内でも思い切りスポーツできる日を作りました。日陰の過ごしやすい気温の中、子どもたちはボールやソフト積み木を使って、元気に体を動かします。そんな中で、職員が驚いた場面がありました。

 支援学校高等部生のUくんは公園ではブランコや草いじりが大好き。ボールで遊ぼうと職員が誘うと、その場でボールをポイっとしたり、職員と近い距離でパスができても気が逸れたりと、続けることの難しさがありました。そして先日体育館に行った時、もう一人の高等部生のVくん、職員といっしょに、ボールパスをすることになりました。それを遠目に見ていた職員が驚きます。なんとUくんとVくんとでボールパスを何度も続けることが出来たのです! 職員の声掛けや支援があるとはいえ、Uくんが何度もボールを返している姿を見て、職員はその成長をとても嬉しく感じました。

 後日、職員間でこの話を共有し、Uくんの成長を皆で分かち合いながら、体育館にはUくんの好きなブランコや草っぱらがないからかなと話しました。そう考えると、Vくんも公園では砂を蹴りがちでスポーツに集中できない場面があるのですが、体育館では当たり前ですがそういった行動は無く、ボールパスすることができました。当たり前と言えば当たり前ですが、子どもの活動をよりよくしていくためには、環境を整えることが大事だと改めて意識しました。

2024年夏季休業のお知らせ

 いつも「あゆみの広場 いっぽ」「育ちの広場 すてっぷ」「学びの広場 じゃんぷ」の活動に、ご理解・ご協力いただき、誠にありがとうございます。

 「あゆみの広場 いっぽ」「学びの広場 じゃんぷ」は8月14日(水)から8月16日(金)まで、「育ちの広場 すてっぷ」は8月15日(木)から8月17日(土)まで、夏季休業となります。

 営業再開は3事業所いずれも、8月19日(月)からになります。

 よろしくお願いいたします。

「え~! それだけの違いで?」

 夏休みに入り、すてっぷやじゃんぷではさまざまな場所に社会見学に行っています。先日もじゃんぷで防災センターにお出かけしてきました。

 最初はいろんな電話を使って通報体験ができるコーナー。今時はあまり見かけない公衆電話や、お家によってはないかもしれない固定電話があります。大事な勉強ではありますが、子ども達は一通り体験はしてみるものの興味なさげ。そこそこにして、次のエリアに行きました。

 次のエリアは実物大の防災ヘリコプターが中央にあり、四方にさまざまなコーナーがあります。その一つにゲームセンターにあるようなゲーム筐体が置いてありました。中身は消防士になって火を消すゲームや、防災に関わるアイテムを集めるゲームです。一人が遊び始めると自然と全員がそのコーナーに集まりました。他のコーナーに行ってほしいという大人心を少し抑え、「あと10分したら次のコーナーに行くからね」と予告し、順番交代で遊ぶ時間にしました。順番を待つ、次の人に譲るといった社会性の課題にもチャレンジ。1回ずつ遊べると、ほとんどの子は次のコーナーに移っていきました。

 それからは、防災ヘリや消火器、地震などさまざまなコーナーで体験してきた子ども達。子ども達が体験して驚いたことの一つが、水害時の自動車の中を再現したコーナーでした。そこでは車内からドアを開けようとしたときに、浸水時だとどれだけの力が必要か、実際にドアを押して体験できました。30cmの浸水だと、子どもの力でも軽く開けられます。ところが40cmになると力いっぱい入れてなんとか開きますが、50cmではまったく開きません。大人でも開けないほどでした。その後、ドアと比較できるように描かれている水の高さを見て、「え~! それだけの違いで??」と驚いた子ども達。実際にドアの重さを体験することで、少しの差でそんなに違うのか、と印象深く感じたようでした。

 子どものときの体験というのは、学習を始め、大人になっていく中でのさまざまな学びにとって、とても大事なものになります。例えば上記の体験でも、水圧という学習をする上では、とても重要な気付きになります。またそういった経験を大人がいっしょにしたり、別の場所で経験してきたことを話しておいたりすることで、子どもが学ぶ場面で思い出させたり共感することでより気づきを深めたりすることができます。体験や気づき、共感を大事にしながら、子どもの成長の機会をたくさん作っていきたいと思います。

「もう1回したいなら、静かにするよ」

 「ぼくもやりたい!」(2024/6/29)で紹介したOくん。『街コロ通』でボードゲームへの敷居が下がったのか、他のゲームも「やりたい!」と言うことが増えてきました。「これ、なんだっけ?」(2024/7/20)で紹介した『ナナ』もその一つ。友だちが『ナナ』で遊んでいるのを見て、「ぼくもやりたい!」と友だちの輪に入ることになりました。

 ただOくんはまだ小学1年生。対してこのとき『ナナ』で遊んでいたのは小学5年生のTくんをはじめとしたお兄さんばかりのグループでした。Tくんたちは優しくOくんを受け入れて、ゲームスタート。Oくんはルールがよく分かり、順番も待って、正しく遊びに参加できています。まずこのこと自体がOくんのすごいところで、よくがんばっていました。Tくんたちもそのことが分かり、2回目、3回目とゲームを進めていきます。

 ただやはり、感情コントロールはまだ難しいOくん。当たって嬉しい時は「やった!」、外してくやしいときは「あー!」と声が大きくなりがちです。少し顔をしかめるTくんたち。しかしOくんがゲームに負けて本当に悔しくて「きー!!」と声にならない金切り声を上げたときには、さすがのTくんたちも耳をふさいでしまいました。

 職員が声の大きさレベルを提示したり、「そういうときは『負けた。くやしい』と言ったりするよ」と言い換えを示したりと、支援をしながら、もう1回『ナナ』で遊ぼうとした時のことです。Tくんからすばらしい声掛けがありました。

 「Oくん、もう1回したいなら、静かにするよ」

 職員が支援でも使う事前の約束。それをTくんが自分からOくんに提示したのです。「わかった」と答えるOくん。その後、少し大きな声になってしまうこともあったOくんですが、最初のころの金切り声などはなくなり、子どもたちだけでも遊びを続けられるようになってきました。

 夏休みになり、じゃんぷでも子ども同士で遊ぶ時間が増えてきた中で、子ども同士だからこそ、素晴らしいやり取りや関わりが生まれます。その機会を逃さず褒めて、コミュニケーション・社会性を育むとともに、自己肯定感を積み上げていきたいと思います。

「これ、なんだったっけ?」

 トランプは一番身近なテーブルゲームと言っても過言ではないでしょう。修学旅行にトランプをもっていって、友だちと遊ぶなんてことも、今でもまだ見られる光景かもしれません。

 トランプで友だちと遊ぶなら、最も有名なゲームの一つが「ババ抜き」です。他にも「神経衰弱」や、中学生になれば「大富豪」がよく遊ばれます。すてっぷやじゃんぷでも、友だちに誘われたときに「したことない」とならないよう、狙って遊ぶことで、ルールや勝ち方(負け方)を学ぶこともありますし、子どもから「ババ抜きしたい」と提案されることもあります。基本的にはトランプを混ぜて遊ぶのでランダム性があり、またシンプルなゲームが多いです。

 ただし、シンプルだからこそ実力差が出やすいものもあります。神経衰弱はそういったゲームの一つで、ランダムに伏せられたカードをめくっていくので運要素があるものの、一番大事なのはめくったカードの数字を覚えておく短期記憶の力になります。そしてすてっぷやじゃんぷに来ている子は、その短期記憶の力が弱いことが多いです。そのため、「神経衰弱」と聞くだけで、「絶対しない!」と大きな声で主張する子も少なくありません。

 逆に言えば、そういったゲームをする中で、短期記憶にチャレンジする場面を作ることができるかもしれません。そこで「ナナ」というゲームを紹介することにしました。「ナナ」は簡単に言えば、プレイヤーの手札と場に伏せられているカードで神経衰弱をするというゲームです。ただし手札のカードはどれでも出せるかというと、そこにルールがあり、自分や他のプレイヤーの手札からは一番大きな数字か一番小さな数字を出す(出してもらう)ことしかできないのです。

 先日はじゃんぷの子どもたちが、この「ナナ」にチャレンジしました。みんなで手札を配り、残ったカードをテーブルに伏せます。あとは「神経衰弱」と同じように、順番を回していきます。自分の番が回ってきたRくん。「Sくん、一番低い数字を見せて」とSくんに伝えます。Sくんが1のカードを出すと、「やった!」とRくんは喜び、自分の手札から1のカードを続けて2枚出して、3枚そろった1のカードはRくんのものになりました。最初は運要素で数字を揃えるRくんやSくん。ですが外れたときはその数字を覚えて手札や場に伏せて戻します。「これ、なんだったっけ」や、「Sくんの一番高い数字、なんだったかな」と悩むRくん。手札に同じ数があることを手掛かりに思い出し、「Sくん、一番高い数字を出して」と言って、Rくんは見事その数字を3枚そろえることができました。

 今では休憩時間でも「ナナがしたい」とリクエストする子も少なくありません。「神経衰弱は苦手」という子どもも、「やってみようかな」と参加することが増えています。もちろん中には、「苦手でやってみたけど、やっぱり外してしまうことがくやしい!」と、1回で終わってしまう子もいます。そういったときはあとで職員との1対1の場面を作り、リベンジすることで次につなげようとしています。楽しめる友だちがいるからこそ、集団作りに向けて個別にも丁寧に対応していきます。

「ぼくもやりたい!」

 「1+1は何?」 大学時代に私が数学教育課程の先輩から尋ねられた問いです。子どもならいじらしく「田んぼの田!」と答えるかもしれません。大人なら当たり前に「2」と答えるでしょう。このとき私も「2」と答えました。続けて先輩が問います。「どうして2になるか分かる?」さて、みなさんはどう思われるでしょうか?

 「そう決まってるから?」「そうそう」このときの私の答えを、先輩はよしとしました。つまり2というものは「1+1」、3は「1+1+1」、10進法なら同じように9まで続きます。10からはその規則通りに増えていきますが、1から9に関しては、そう定義されているものなので、そのまま覚えるしかありません。

 小学校1年生のOくんはじゃんぷに通い始めて1ヶ月。工作や公園遊びが大好き。宿題はやらない!と初めは言っていましたが、スケジュールで見通しを持つことで、楽しみにできる事を励みに学習に取り組めるようになってきました。ただ見通しを持てても、算数の宿題を渋ることがたびたびありました。他の職員に聞くと、どうやら数唱が5までも出来ていないのでは、というのです。それで宿題を見てみると、バスに乗り降りする動物たちの絵が描いてあり、その動物たちを数えるというプリントでした。数唱が出来ないのでは、何を書けばいいかさえもわからなかったでしょう。このときは全部したくないと言うOくんと、1問はじゃんぷでやって、残りは家ですると約束し、「まる」で終われるようにしました。同時に1から9まで書いた表を用意して、それを使って1問解き、残りの問題も同じ表を持ち帰ることで、家で取り組んでもらえるようにしました。

 さて、Oくんの算数への支援をどうしようか考えていた矢先のことです。Oくんが公園遊びから帰ってくると、お兄さんたちが遊んでいた「街コロ通」というボードゲームが机の上に置いてありました。「これ、やりたい!」とOくんが先生に伝えます。Oくんには難しいかも…。待てよ、数唱の学習にいいかもしれない、と考え、いっしょに遊ぶことにしました。「街コロ通」はサイコロの目を数えたり、お金を数えたりと、数唱がいろんな場面で出て来ます。最初に1コイン5枚をもらい、値段に注目して買うお店を決めていくOくん。準備ができて早速サイコロを振ると、自分からサイコロの目を数えようとします。数が出てこない時は先生に教えてもらいながら、Oくんもいっしょに数を数えます。もらって貯まったお金が10を超え、12コインのお店を買うときは数えるのをあきらめかけますが、先生が10コインを見せると喜んで1コインを10枚数え両替。両替したお金で12コインを数えて、お店を買うことができました!

 遊びを通じて数を数えることの抵抗感がなくなって来たのか、最近のOくんは、学習の時間でも表を使って算数の宿題をやり切れるようになってきました。学習と同時に遊びや生活のなかでも、数を数えることが意欲的にでき、成功体験ができたことが、学習の場面にも生きてきたのでは、と思います。

「あの隠すやつ、ください」

 小学校で定番の宿題と言えば、漢字ドリル。ドリル内に漢字を書き込むページもありますが、印象に残りやすいのは短文をノートに写すことの方ではないでしょうか。学年が上がるにつれて短文の数が増え、またノートのマス目も小さくなっていきます。そして短文を書き終わると余りのマスに、その短文で新しく習った漢字を書くことまでセットなことが多いです。

 漢字ドリルをノートに写すことが苦手な子のなかには、ノートとドリルとを交互に見るときに、今どこを書いていたのか分からなくなる子がいます。今書いていたところをすぐに忘れてしまったり、見る情報が多くて視点が定まらなかったり、その子によって要因は様々です。

 先日も漢字ドリルに取り組んでいたLくん。ノートからドリルに目線を戻すたび、「えーっと…」と目が泳いでいました。そこでドリルをスタンドで立たせるとともに、今書いている行だけが見えるように、厚紙の真ん中を縦長な四角形で切り抜いたものを、ドリルの上に重ねました。するとMくんはすぐにやりやすさを実感したようで、「ありがとう!」と言ってスムーズに書き進めていきました。

 また向かいに座っていたNさん。「漢字嫌だー」と職員にずっと話しかけ、手が進みません。そこで同じように切り抜いた厚紙をドリルの上に重ね、その行が書けたら次の行に厚紙を移動して書く、と手順を教えました。すると「いやだ」の声は減っていき、3行目からは自分で厚紙を移動させ、静かに書き進めることができました。

 上で紹介した支援は、学習支援の場ではよくある支援の一つだと思います。ただ大事なのは、その道具を使ってよかったと実感すること、さらに言えば、自分から使おうと思い、使ってスムーズにできるかどうかではないでしょうか。実際に次にMくんが漢字ドリルをするとき、職員は声をかけずにいたのですが、Mくんは「あの隠すやつ、ください」と職員に伝えに来ました。そして厚紙を使いながら、漢字をスムーズに書いていきました。中学生のOくんにいたっては、その厚紙を使って漢字ドリルを書き終わった後で、「先生、これ持って帰っていい?」と職員に伝えました。「いいよ」と答えると、喜んで筆箱にしまったOくん。以来、Oくんの筆箱にはその厚紙がずっと入っています

ゲームでも「寄せて」

 すてっぷに来ている子は、社会性やコミュニケーションの課題がある子が少なくありません。距離感が近かったり、自分の物と他人の物の区別がつかなかったり…。トラブルの元をたどれば、その子たちの課題に繋がっていることがほとんどです。そして現代の子どもらしく、トラブルがゲーム(昔で言うテレビゲーム)の中で起こることもあります。

 ゲームにもいろんな種類がありますが、大別すると一人用ゲーム、多人数ゲームに分かれ、多人数の中には集まっている人同士で遊ぶものや、ネット上の顔も知らない人と遊ぶものもあったり、また対戦ゲームや協力ゲームなどもあります。すてっぷでは相互コミュニケーションが取れるゲームとしては、パソコンでのマインクラフトがあります。

 先日、Jくんが困ったような、半分泣いているような顔で職員に相談に来ました。Jくんが言うには「先生、Kくんがマインクラフトに寄せてくれない」。マインクラフトにもいろいろなモードがあるのですが、Kくんや他の友だちが協力してサバイバルをしているところに寄せてくれないと言うのです。そこで職員がKくんに理由を尋ねました。するとKくんはこう答えました。「だってJくん、人のものを取ったり、自分だけクリエイティブモード(好きなものを出し放題、壊し放題できるモードです)に変えるんやもん」

 確かにマインクラフトで友だちといっしょに同じ世界で遊ぶときは、友だちがアイテムを入れた箱から、違う人がそのアイテムを取り出すことができます。またモードを変更し、冒険を楽しむのか、モノづくりを楽しむのかと遊び方を変えることもできます。ですがそれは協力したり、同じ遊び方で楽しもうと決めたりするなど、便利なようで実はコミュニケーション・社会性が求められる場面になります。

 ですが、だからこそコミュニケーション・社会性の課題に挑戦する絶好のチャンス! 職員はKくんが言ったことをJくんに確認します。Jくんも悪気があったのではなく、衝動的にしてしまったこともあったようです。そこで「ホワイトボードに約束を書いたら、約束を守れるかな?」と聞くと、Jくんは「うん」と答えたので、Jくんと一緒にKくんのもとへ。Kくんにも「ホワイトボードを見て約束を守れたら寄ってもいい?」と聞くと、「それならいいよ」と答え、Jくんも参加していっしょにマインクラフトで遊ぶことができました。

 ゲームにより制約はありますが、一緒に遊ぶものだからこそ、コミュニケーション・社会性が求められる場面があります。そういった場面では楽しいゲームをいっしょにしたい!だからがんばりたい…!と思う子が少なくありません。そういった機会は逃さず、課題にチャレンジできるよう、また失敗を繰り返さないよう支援をしていきます。

「じゃあそっちは分配法則ってこと?」

じゃんぷでは、中学生も授業後や部活後にやってきて、学習に取り組んでいます。多くの中学校では、来週から1学期の中間テスト。じゃんぷの中学生たちも、自分に合わせた勉強方法を職員と相談しながら、テスト勉強に取り組んでいます。

 先日、数学ドリルに取り組んでいたIくんが手を止めました。見ると、多項式の因数分解の問題です。職員がその問題をホワイトボードに書いて、解き方を教えます。「そうなんだけど…」と納得のいかない様子で、答えまでは書きましたが、以降の問題は同じように解けません。様子を見ていると、どうやら解き方を全く知らないわけではなさそうです。続きのページにあった、足したら○、かけたら△になる数字は?という問題はすらすら解いていました。ですが、続けてまた因数分解の問題になると、多項式をさらに細かく書こうとして、()すら出てきません。

 そこで職員が大きなホワイトボードに、展開と因数分解について書いていると、同級生の友だちや他の職員も参加して、ミニ講義のような形になりました。友だちが「因数分解は…」と先生と話していると、Iくんも会話に参加。「素因数分解のときは…」と友達に言います。ここで初めて、素因数分解と因数分解で解き方が混ざってしまっているのではと職員が気づきました。そこで「因数分解というのは数×数の形にすること。素因数分解は素数×素数にしているよ」と伝えると、Iくんは少し納得したようで、「じゃあそっち(展開)は分配法則ってこと?」と尋ねます。職員が「そう。分配法則を使って()を外しているよ」と答えると、納得したようでドリルに戻りました。

 じゃんぷに来ている子の中には、授業で聞いたことや昔教えてもらったことが大きく残っていたり、1対1の状況では緊張が増してしまう子もいます。Iくんも初め、職員から因数分解を教えてもらっても、頭に入っていないようでした。ですが友だちや他の職員も入り、みんなで自由に話せる機会が持てたことで、1対1では言えなかったことを言うことができたり、友だちや職員がホワイトボードを見て考えているのと同じように考えて自分の意見を言うことができました。1対1の学習にこだわらずに、同級生を交えて一緒に考える雰囲気を作ることで、自分の考えや思っていることを言いやすいこともあると感じた場面でした。

「サーカスを見に行ったよ」

 すてっぷの小学生グループの外出で、サーカスの観覧に行ってきました! 会場は大阪と少し遠い場所で、電車で片道約1時間。いつもより長い時間ですが、行くメンバーがすてっぷでお出かけを何回も経験してきた子ども達だったので、その時間で計画を立てました。
朝は少し余裕をもって出発。この間、小学生グループはICOCAで電車に乗る練習をしています。券売機でのチャージもスムーズにできるようになってきました。 乗車駅と降車駅、それぞれの時間をスケジュールで確認します。1つ終わったら職員が赤字でチェックし、次の確認。「次に乗る電車のホームはこっちかな」「〇〇行に乗るよ!」と、子ども同士でも会話が飛び交います。


 昼前に無事最寄り駅に到着。やよい軒で昼食を食べてから、徒歩でサーカス会場へ。待ち時間が長いのもサーカスを見るため、仕方ないとばかりに、子ども達はいつも以上に我慢強く待ってから、会場内に入りました。


 会場内に入ると薄暗い中、照明がたかれ、音楽も静かながら響いています。一人の子どもはボソッと「思ってたのと違った」と言いました。職員が声をかけると、その子は「大丈夫」と答えましたが、隣りの子は「音がしんどそう」と答えました。そんなときに役立つのがイヤーマフ! 事前にサーカスに行ったことのある職員に聞き、イヤーマフが必要だろうと準備していました。イヤーマフを付けると、その子も「大丈夫」と答え、いざ開演! 10分ほどの休憩を挟んで、合計2時間。途中「あと何分?」と確認する子に時間の見通しを持たせながらでしたが、全員がしっかりと上演を見終わることが出来ました!


 帰り客の多さや電車の送りで少しバタバタしての帰路にはなりましたが、「サーカス、楽しかった」「何が楽しかった?」「僕は――」とみんなで感想を言い合いながら帰りました。楽しみのために我慢して待ち、2時間ほどの上演を楽しみ、「~だったけど、楽しかった」で無事終われたことに、子ども達の成長を強く感じた職員でした。

「かけっこしよう!」

 少し遅めの桜が咲き誇り、2024年度が始まりました。春休みは「もう6年?」「学校始まってないから、まだ5年やで!」などと子ども同士で盛り上がっていましたが、あっという間に始業式。1日時点で6年生になるみたいだよと大人からわざわざ言わずとも、新たな学校・学年になりました。

 すてっぷの小学生グループも新しい6年生のGくんがリーダーとして引っ張ってくれています。新しいメンバーも増えてきて、集団を盛り上げたり、ケンカを仲裁したりと大忙しです。

 先日もGくんをはじめとした小学生グループ5人で公園へ出かけました。公園に着くと職員はあえて指示を出さず、様子を見守ります。すると自然と全員でかけっこをすることになりました。Gくんがはりきって提案します。「こっちからあっちの橋げたまでかけっこしよう!」Gくんや他の高学年生が「よーい、スタート!」と合図を出し、一斉にかけっこ! 何度も繰り返して遊びました。

 ただ何度か繰り返していく中で、「ビリの人は一番端っこに行って、もう1回!」と、だんだんシステマチックに。すると2回連続でびりになったHくんが少し落ち込んでしまいました。Hくんはこの日のグループの中では一番年下で、すてっぷ歴も一番浅い子です。Gくんが気づくかな、Hくんが自分で言うかな、と少し見守っていた職員ですが、今日は職員から遊びの提案をすることにしました。

 Gくんがもう一度ビリの人から並ぶよう言ったときに、職員が「じゃあ(ビリ側)こっち側の人は少しゴールに近づこう!」とハンデを提案しました。Hくんはハンデを受け入れ、やる気に。「よーい、スタート!」でまたみんなといっしょにかけっこしていきます。最後には子どもリレーVS職員1人で勝負することに! Hくんも含めみんな笑顔でかけっこを終えることが出来ました。

 今回は職員がアイディアを出すことにしました。Gくんが気づくのを待つ、Hくんが言い出すのを待つ、などいろいろな支援が考えられましたが、この日は見本を見せることに。Gくんにはどのように映ったでしょうか。また振り返りの中で、職員の思いや考えを紹介しながら、リーダーとしてのGくん自身の思いや気持ちを育てられるよう支援していきたいと思います。

もう一人の卒業生

 「3人の卒業生」(2024/3/16)

で紹介した卒業生3人に加え、すてっぷではもう一人のお子さんが卒業されました。

 小学校を卒業したEくんは、すてっぷで6年、つまり1年生の始めからずっとすてっぷを利用されました。まだ年長さんの時に見学に来て、見学時間が終わってもまだ遊びたいと泣いてお母さんに訴えていたのが昨日の事のようです。

 でも実際はこの6年でEくんは大きく成長しました。活動に見通しを持つことで、安心して過ごせることが増えました。すてっぷではしばらく最年少で、あこがれのお兄さんお姉さんといっしょに遊びたい、いっしょに過ごしたいとがんばってきて、自然とお兄さんお姉さんのいいところ、すごいところを学んできました。上級生のみんなが卒業し、最高学年になることが不安で泣いていた3月。6年生になった4月には覚悟を決め、リーダーとしてがんばり始めました。先輩に教わったことを思い出して、同じようにやってみるとうまくいった!と自信を積み、様々な形で持ち前のやさしさや思いやりを発揮するようになりました。

 そんなEくんの集大成の活動が、最後の外出計画です。調べるという事、電車など公共交通機関を使う事、集団をリードすることなど、Eくんの力となることを願い、職員が支援して取組んできました。まずは外出とは関係なく(取り組んだみんなは意識していたかもしれませんが)、日本や世界で行ってみたいことをタブレットを使って自分で調べることに取り組みました。Eくんは電車で行ける範囲のLOFTや中華街、飲食店(かに)を挙げ、理由もいっしょに友だちに発表することができました。そして2回目では、実際に行ける場所としてLOFTを調べる事にしました。LOFTの近辺を調べると猫カフェの文字が。実はすてっぷの後輩のFくんが猫好きなことを知っていたEくん。「ここ気になるな。Fくん、猫好きだし喜びそう。河原町はたくさんお店あるからいろいろ見たいなぁ。」と調べを進め、外出計画をまとめました。そしていざ当日、LOFTのある町まで電車を使い、みんなで移動しました。LOFTへの道中も気になったお店をみんなで相談しながら、ディズニーストアなどを巡りました。LOFTでウィンドウショッピングをした後、例の猫カフェへ。Fくんを含めた希望者で入店し、猫と一緒に少しの時間でしたがくつろぎの時間を過ごしました。

 Eくんはこの6年間をどのように振り返るでしょうか。できなかったことの方が先に思いつくでしょうか。でもこの2、3年でその姿はぐっと変わりました。マイナスの事が思いついても、「でも、こういうことができるようになってきたしな」と続けて、自信を積み上げてきたことを自分で思いつけるようになりました。卒業後Eくんは、じゃんぷに通うことになりました。これからも「できた!」をいっぱい積み上げていきましょう!

 卒業、おめでとうございます。

ぼくの「恐竜園」!

 すてっぷやじゃんぷでは、定期的に新しいボードゲームにチャレンジしています。先日遊んだ中で「これ、おもしろい!」となったゲームが「ドラフトザウルス」です。「ドラフトザウルス」はみんなで順番に恐竜を選び、自分の動物園ならぬ「恐竜園」のオリに恐竜を入れていきます。このとき、オリのテーマ(同じ種類を入れる、全部違う種類を入れるなど)に沿って恐竜を入れることができると得点が増えていき、最終的に得点が高い=テーマに沿って恐竜を集められた人が勝利するというゲームです。

 このゲームのおもしろいところは、恐竜を選ぶときに自分の手の中で隠しながら1匹選ぶのですが、選ばなかった残りの恐竜は次の人に回すことです。つまり自分が選ばなかった恐竜を他の人が選ぶかもしれないということも考えられますし、次に自分に回ってくるのがどんな恐竜かわからない中で考えないといけないということです。そのことにいち早く気づいた小学生のDくん。「他の人の恐竜園を見るのがコツやな!」とみんなに伝えました! 気づき自体も素晴らしかったですが、それを友だちや職員に確認しながら共有しようという行動自体も、とても素晴らしい!と目を見張るものでした。

 次々に恐竜を選び、自分の恐竜園に置いてから、選ばなかった恐竜たちを次の人に回していく子どもたち。回ってきた恐竜たちに大喜びしながら、自分の恐竜園をテーマに沿って完成させていきます。他の人の恐竜園を見て「あの人が緑の恐竜集めてるから、緑をそろえるのはあきらめよう」と自分で決めることができた子がいれば、職員と一緒に「あの人が黄色の恐竜を集めてないから、自分に黄色の恐竜が回ってくるかも。それならこっちのオリに入れた方が…」と考える子もいました。1人でのゲームとはまた違い、駒やボードを使うことで友だちや職員と考えや予想を共有しながら、他の人の選択や考えを読もうと頑張る姿が見られました。
 

 また既存のものも含めてボードゲームにチャレンジし、取り組んだゲームの狙いをお伝えしながら、子どもたちのがんばりを紹介したいと思います。

3人の卒業生

 先週の3月8日(金)は支援学校高等部生の卒業式。すてっぷでは3人のお子さんが卒業を迎えました。おめでとうございます!

どの子も5年以上すてっぷに通い、友だちとふれあって笑顔な日も、時間をかけて取り組んできたことが実を結び喜んだ日も、自分の思い通りにならず怒った日も、たくさん経験してきました。

 Aくんは友だちや先生が大好き。一緒に過ごすだけでもうれしい気持ちがあふれ出すかのように、声を出して喜びます。どうやったら気持ちが伝えられるかな。コミュニケーション練習にこつこつ取り組みながら、なるべく友だちといっしょの活動、過ごしの場を共有できるように積み重ねてきました。

 Bくんはすてっぷで過ごせることがなかなか見つけられませんでしたが、塗り絵やペーパークラフトなど一人でできることを少しずつ増やし、編み物はコツコツと取り組んで何mもの生地を作り上げました。またコミュニケーション練習にも日々取り組んだり、がんばり表の目標を先生と相談しながら自分で決めたりして、できることを積み上げてきました。

 Cくんは友だちと関わるのが大好き。関わり方をコントロールできるよう、ずっとがんばってきました。疑問に感じたことを先生に確認しながら、自分なりに友だちや学校、社会についての理解を深め、今では年下の子も慕う優しいお兄さんになりました。また同級生のAくんとは散歩をいっしょに楽しんだり、Bくんとはバスケでお互いに励ましながら目標の得点目指して頑張るなど、お互いのかけはしになりました。

 3人とも、次の進路は決まっています。3月末まですてっぷに通いますが、4月からはお子さんではなく大人として、また会える日を楽しみに、がんばってほしいと思います。さて来週は小学校の卒業式。すてっぷでも一人のお子さんが卒業されます。どんな姿を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。

「落ち着く時間だね」

 すてっぷでは、小学校と支援学校の子どもたちがいっしょに放課後を過ごしています。個別対応が必要な時間も子どもによって大小なりとありますが、一方で狙いをもって集団での過ごし、集団での活動に取り組んでいます。
 先日も小学校の子どもと支援学校の子どもの4人グループで近くの公園に行く予定をしていました。一緒に行くメンバーの1人、支援学校のUさんは友だちとのお出かけが大好き。ですが、日によって一緒に行きたい人が変わったり、逆に今日は行きたくないと言う日があるなど、気持ちの調整が課題でした。一緒に行くメンバーを予告したり、日によっては選択できるようにするなど支援していく中で、少しずつ受け入れられることが増えてきたUさんでしたが、この日はひさびさの爆発。別グループの職員と一緒に行きたいとパニック状態になって泣いて暴れてしまいました。
 Uさんが気持ちを落ち着けるようになるまで待っていたのですが、天気が悪くなり雨が降り出してしまいました。職員の判断で公園遊び自体は中止したのですが、このままだとUさんが『泣いて暴れたら、行きたくないという要求が叶った!うれしい!」と誤解してしまうかもしれません。そこで一緒に行く予定だったメンバーといっしょにドライブすることにしました。小学校グループのVくん、Wくん、Xくんに、Uさんが誤解しないようにという理由を説明します。すると3人とも理解を示し、Vくんが「俺も一年生のころ、何度も泣いて暴れまわってた。Uさんも落ち着く時間があったほうがいい。」と答えました。Wくんも「そやな。すぐに帰ったらあれやし少しだけドライブやな。」と続けます。Xくんも「そうやなぁ、Uさん暴れすぎや。Uさん、しっかり落ち着いたほうがいい。」と答え、いっしょに10分ほどドライブしました。
 ドライブから帰ってきてしばらくして、Uさんは徐々に落ち着きを取り戻し、おやつ、休憩に切り替えていつも通りにやさしい言葉で要求を伝えられることができました。小学生グループも帰ってから集団遊びを保障し、いつもの休憩に入っていきました。
 この日はUさんにとっては決して万全とは言えなかったと思いますが、職員の支援で誤学習することなく、徐々にパニックを抑えることができました。そこには理解を示してくれ、いっしょに付き合ってくれた小学校の友だちたちの存在があったからかもしれません。小学校グループの子どもたちも、職員の話を聞いて、友達を理解しようと努め、ひいては自分のことの気づきにもつながっているかもしれません。いっしょに過ごす場だからこそ、学びあえる機会がいくつも生まれているように思います。

「怖くないよ」

 すてっぷでは2月までに、ありがたいことに多くのお子さんが体験に来られました。今年は近隣の児童発達支援事業に通われている方にも来ていただき、グループ体験を学校時間中に行いました。普段過ごしている利用者がおらず、またいっしょに児発に通っている友だちもいる中で、比較的スムーズに体験に参加できたお子さんもいらっしゃったかと思います。
 一方で個別に体験を希望された方は、放課後の利用者が過ごしている時間に体験に来ていただきました。普段の施設内の様子も見ていただけるので、自分がその場で過ごす姿や環境をよりリアルに感じていただけると思います。ただ、自分の知らない子どもや大人が多いという状況は、体験されるお子さんによってはより緊張が増してしまうかもしれません。先日、体験に来ていただいたお子さんも、見てわかるほどに緊張されていました。そんなときに頼りになるのが、いっしょに体験に参加するすてっぷのメンバーたちです。
 この日、いっしょに体験に参加したのは、小学生グループのRくん、Sくん、Tくん。3人とも同じ学年で、すてっぷに来始めて2年ほど。この半年ほどで、それぞれ違う形ながらも、リーダーとして引っ張ったり、役割を果たそうとしたりするなど、上級生としてのがんばりを見せてくれるようになってきました。この日いっしょに取り組んだ遊びは「ワニワニパニック」。普段は職員がワニを出して、子どもがピコピコハンマーで出てきたワニを叩き、叩けた回数を競う遊びです。この日はワニを出す役、タイマーで時間を測る役をメンバーで役割交代することに。さっそくRくんがワニを出す役になり、Tくんがタイマーで測る中、見本を見せるSくんにワニを出します。するとRくんは自分から、ワニを出す時にワニの声を出したり、出す動きに変化をつけたりするなど、遊びをより盛り上げる働きかけをしたのです! 見本が終わり、次は体験の子が叩く番に。ですがやはり、とても緊張しているようです。それを見てRくんはSくんやTくんに「知らないとこに来たら緊張するよな」と共感を求めます。そして体験の子に「怖くないよ」と声をかけました。 それを聞いて体験の子も無事に遊びに加わることができました!
 その後、SくんがTくんに「ワニを早く出していい?」と遊びを盛り上げるなど、最後まで楽しみながらいっしょに遊んだ体験の子とメンバーたち。体験の子は笑顔で帰っていきました。もうすぐ新年度。最高学年のメンバーが卒業し、新1年生を含めた新規利用のメンバーが数名ほど入ってくることになります。この3人は次期高学年のリーダーとして、年下のメンバーたちを引っ張っていってくれることでしょう。メンバーたちが持ち前のリーダー力や優しさを発揮できるよう、普段の支援を積み重ねていきたいと思います。

「自分で注文できたよ」

 すてっぷに通う支援学校の子どもたちは、おやつやおもちゃで遊ぶ時間など、動機付けがしやすい機会でPECS(絵カード交換式コミュニケーション・システム)の練習に取り組んでいます。そして、よりコミュニケーションを取る機会を増やせるよう、それ以外の場面でPECSに取り組むことがあります。その一つが買い物学習です。

 普段から買い物学習に取り組んでいるコンビニやスーパーなどでも、「温めますか?」「おはしをつけますか?」などのコミュニケーションの機会はあります。ただ事前に練習し、また「○○ください」と伝えやすいのはやはり、食べ物を注文するお店です。その中でも多くの子どもが大好きなのがマクドナルドです。

 先日も支援学校のQくんが、トークンを貯めたごほうびに、職員と一緒にマクドナルドに行きました。事前に何を注文するか、メニューで確認していたQくん。ブックから「ソフトツイスト」「ポテト」「メロンソーダ」を文カードに貼り、最後に「ください」を貼って、レジカウンターに置きます。そして一つずつ指差しをして、「ソフトツイスト、ポテト、メロンソーダ、ください」と店員さんに伝えることができました!

 店員さんはQくんの注文したものを確認し、「サイズはどうされますか?」と聞いてきます。このときの対応は子どもによって、また状況によって変わってきます。事前に値段を計算したうえで「ポテトMサイズ」「メロンソーダMサイズ」などのカードを用意した方がいい場合もありますし、職員がメニュー表を見ながらどれにするか子どもに尋ね、子どもが答える場合もあります。後ろに並んでいる人がいるときなど、職員で答えることもやむを得ない場合もあります。

 このときは職員がメニュー表のМサイズを指差し、Qくんが「Мサイズください」と伝えて、無事商品を受け取ることができました。アイスから一つずつ、ゆっくり味わったQくん。次のトークンの目標は買い物学習にしたいそうです。いろんな場面でコミュニケーションができた経験を積み上げていきます。

ホップすてーしょんよりお知らせ(2月からの事業所のご案内)

 平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。特定非営利活動法人ホップすてーしょんは2018年に「育ちの広場 すてっぷ」、2020年に「学びの広場 じゃんぷ」を開業し、保護者様・関係機関のご理解・ご協力の元、利用者様・保護者様への過ごし・支援のサービスを行ってまいりました。

 このたび、鶏冠井町稲葉にあります「学びの広場 じゃんぷ」は、放課後等デイサービス事業のみ(小~中学生)が独立し、上植野町薮ノ下に移転することになりました。また、児童発達支援事業(未就学児)は鶏冠井町稲葉に残り、名前を「あゆみの広場 いっぽ」と改めることとなりました。

 2月からは「あゆみの広場 いっぽ」、「育ちの広場 すてっぷ」、「学びの広場 じゃんぷ」の3事業所でスタートします。今後も職員一同、利用者様・保護者様へのよりよい過ごし・支援に努めてまいります。皆さまの変わらぬご支援・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

「そんなこと言わないでよ」

 「ぼく、卒業しようかな」(2023/10/20)で紹介した小学生のIくん。この数か月で目まぐるしい成長を見せてくれています。

 Iくんはすてっぷに来始めて、もうすぐ2年になります。怒りっぽく、人の話を誤解しやすいところもあり、来始めた頃はトラブルがあればその中心にいることがよくありました。自分のしたいこと、したくないことがはっきりしていて、友だちと相談したり譲り合ったりということが難しく、「じゃあ遊ばない!」と友だちから離れることも珍しくありませんでした。

一方で賢いところがあり、大人が以前話したことを覚えていて、「こういうときはこうしたらいいんやんな」と確認しながら、よりよい行動をしようと意識することがありました。そしてこの1年間は特に、年下の小学生メンバーが増え、また支援学校の友だちとの活動も活発になってきました。そんな中でIくんは、持ち前の優しさを年下の子や支援学校の友だちに発揮したのです。

 この時期にはみんなで決めた遊びにほぼ入れるようになってきていたIくん。参加する友だちのことを考えて職員がおにごっこのルールを決めたりする中(もちろんIくんを考慮したこともありました)、次第にIくんは自分から「○○さんはタッチ返しありがいいよね」など、友だちをおもんばかった提案をしてくれるようになりました。また帰宅時の送迎車の中では、誰もが前の席(助手席)に乗りたがります。Iくんも初めは自分が助手席に乗りたい!と口論になることもしばしばありました。ですが今では、「前は○○さんが後ろだったから、今日は○○さんが前ね。僕たちは後ろ!」と自分から提案します。運転する職員がOKを出すと、Iくんは友だちにも提案し、友だちも受け入れられるようになりました!

 衝突しがちだった同級生や年上の友だちにも、最近は優しい言葉を返せることが増えてきたIくん。友だちが違う友だちとの雑談で「死ね」と(もともとよくない言葉ですが)言ったとき、Iくんは自分に対して言ってきたと勘違いしてしまいます。昔なら怒って叫んだIくんですが、今は違います。「そんなこと言わないでよ」と友だちに落ち着いて伝えました。友だちがキャラクターに対して言ったんだよと説明すると、「そうなんだ」と切り替えられたIくん。確かに卒業が近づいているかもしれません。