すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「7が一番出やすいんだ!」

 学問に興味を持つきっかけは、どんなところに転がっているかわかりません。さかなクンが海の生き物に興味を持ったのは、友だちがノートに書いてきた、タコの落書きだそうです。筆者も数学が好きですが、好きになった理由の一つは、小学校の算数ルーム(算数の少人数授業用の教室)に貼ってあった「サイコロを2個転がして、出目を足したときに一番出やすい数はなんだろう?」というポスターでした。おもしろかったのは、ポスターに答えが書いてあるのでなく、考えてみようという出題形式だったことと、回答するときは文章ではなく、実際にサイコロを転がして試して結果で答えてもよいと書かれていたことです。さいころを何回転がしたらいいんだろうと疑問に思った筆者は算数教室の先生に聞きに行きました。すると先生は「1000回くらいかな」と答えました。100回くらいは試して記録したのですが、明確な違いが出ず、そのときはあきらめてしまいました。中学校で改めて確率の学習があって答えが分かってからも、ずっと記憶に残っています。

 さいころ2個の出目を足すということは、さいころを使った遊びでけっこう採用されています。ルールの凝ったすごろくで見ることもありますし、家族で遊べるテレビゲームで有名な「桃太郎電鉄」シリーズの急行カードなどもそうです。すてっぷにあるボードゲームでも、「カタン」は毎回出目を足しますし、「ハンデをあげる」(2022/6/17)で紹介した「街コロ」でも必要な時があります。「街コロ」でおもしろいのは、はじめはサイコロ1つを振ることから始まることです。途中で「駅」という物件を買うと、次の番からサイコロ2つを振ることが「できる」ようになります。つまり、自分や他の人の状況を見て、サイコロ1つの出目と、サイコロ2つの出目を足した数の確率をそれぞれ考えて、どちらにするかを決めることになるのです。

 先日、「街コロ」に取り組んだ中学生のVくんも、「サイコロ2つだと、何が出やすいんだろう」と職員に尋ねてきました。職員はホワイトボードに1~6を縦、横にそれぞれ書いてマトリックスにして、足した数を書いて教えました。「7が一番出やすいんだ!」と見てわかったVくん。その後も「3は出にくいなぁ。9と10はそれぞれは出づらいけど、合わせたら出やすいな(9と10どちらかが出たらよい物件があり、確率は36分の7になるということです)」と考えながら取り組みました。

 事業所でボードゲームに取り組むときは、様々な狙いを持って設定しています。勉強に結び付く、または勉強の成果を発揮するということばかりではありませんが、楽しく遊ぶ中で無理なく勉強の要素を使うということは、前向きにとらえ、興味を持てるようになる一つのきっかけになるかもしれません。ボードゲームに限らず、取り組みの1つ1つが、子どもたちの興味を引き出せるように、工夫して設定していきます。

どうぶつずかんを読もう!

宿題への苦手意識が強いA君がここ最近積極的に宿題に取り組んでいます。

A君は読み書きが苦手で,文字を読む,書くことにエネルギーを使ってしまい,その後の「思考する」ことがとてもしんどい様子でした。宿題の取り組む量を減らしたりするもののこれまで積み重なった苦手意識は中々拭えるものではありませんでした。

A君は動物にとても興味があり,家で図鑑などを読んでいるようです。わからない漢字は教えてもらいながら夢中になって読み,大人でも知らないような知識をたくさん持っています。

そこで宿題の取り組みにトークンシステムを用い,「スタンプが5つ溜まったらどうぶつシールと簡単な図鑑をもらえる」ということにしました。

それで目を輝かせ,今A君は積極的に宿題に取り組んでいます。

トークンのどうぶつ図鑑は筆者が作った稚拙な物ですが,とても喜んでくれています。ご褒美を渡したとき,書いてある文章を読ませるようにしています。おおよそ3年生までの簡単な漢字を用いていますが真剣に読み,「そうやったんや~!」と感想を言っています。

こういったことから少しずつ漢字の読みに興味を持ってくれないかな…と思っています。やはり学習の引き出しは興味から,と改めて感じた瞬間でした。

あまりのあるわり算

先日じゃんぷに通っている小3の子どもの宿題で以下のような問題が出ていました。

その子は最初答えを「8きゃく」と答えていました。「あまりのあるわり算」の単元では文章問題の答え方が2パターンあります。最初は下の画像のように「〇個できて△あまる」といった答え方と初め紹介したような「〇個必要」といったものです。

文章を読むことが苦手な子どもにとって文章の意味の違いを理解し,答え方を変えることはすぐに出来るものではありません。その時は問題を2つのパターンに分けました。

1.「〇個できて△あまる」と答える問題だよ!

2.「答えに+1する」問題だよ!

このように子どもがわかりやすいように整理し,宿題に取り組みました。本来は「いくつ必要なのか」を読み取り,問題の意味を違うことを考えさせることが目的なのですが,読み書き障害のある子どもにとってはそこでつまづいてしまい,苦手感を持つきっかけになってしまうかもしれません。まず本人がわかりやすいように問題を取り組めるよう支援し,その後ゆっくり問題の意図を理解できるように今回は支援をしました。

「きょうはフリスビー!」

 先日、支援学校高等部のUくんといっしょに公園に行ってきました。Uくんは運動自体できますが、スポーツ競技に興味があるわけではありません。職員が誘うとサッカーやキャッチボールなどしますが、あまり長い時間は遊べません。ブランコといった遊具は好きで、自発的に遊ぶ姿がよく見られます。ただその日に行った公園は、遊具がない人工芝の公園でした。職員は自発的に選んでほしいと思い、Uくんが選びやすいように、バレーボール、野球ボール(グローブ)、フリスビーを並べました。すると、Uくんはおもむろにフリスビーを手に取りました。

 Uくんは、フリスビーをひょいと投げました。そして、芝に落ちたフリスビーを拾って、職員がいない方向へ歩いて行きました。職員が(Uくん、フリスビーを選んだのかな? それとも、1回投げただけで、別のところに行こうとしてるのかな・・・?)と様子を見ていました。するとUくんは足を止めて、職員の方に体を向けました。それは以前、Uくんと職員がフリスビーで遊んだ時と同じくらいの距離でした。そしてUくんは、職員に向かってフリスビーを投げたのです。その後、Uくんと職員でフリスビーを投げ合って遊びました。

 フリスビーを遊んでいる途中に、職員はUくんが他のボールでも遊ぶかもしれないと思い、Uくんが手に取らなかったバレーボールや野球ボールを「いくよー」と声をかけて投げてみました。Uくんはそれぞれのボールは拾いに行きましたが、職員に投げ返すことはなく、それぞれのボールを最初に置いてあった位置に置いて戻しました。それを見て職員は「フリスビーをしっかり選択できていたんだ!」と感心しました。職員が「フリスビーしよっか」と声をかけてフリスビーを投げると、Uくんはキャッチしてから投げ返して、そのままフリスビーを続けて遊びました。

 自発的に選ぶということは、「楽しむ」ということに大きく関わっているように思います。子どものおやつも、大人が選んだものばかり与えられるよりも、自分でおやつ売り場に行き、どれがいいか選んで、レジに買いに行くという活動の方が、食べるときにより楽しみが大きくなるではないでしょうか。「自分で選ぶことができる」ということが、Uくんにとっても遊びや運動をより楽しくするとともに、選択肢を広げることで活動の幅を広げていけると思います。これからもUくんがいろんな活動の中で、選択できる機会を増やしていけるように支援していきます。

「きんようび、ホットケーキ♪」

 支援学校小学部のWさんは休憩中のタブレットが大好き。お気に入りのピンク色のカバーがついたタブレットがほしいと、「ピンクのタブレットください!」と職員に伝えます。ただ友だちが使用中で、職員が「まってね」というと、「ピンクタブレット~!」と大声で叫んでしまうことがたびたび見られました。大声を出したら要求が叶った経験があったのかもしれません。

 そこで、こつこつトレーニング(2022/10/4)で紹介したVくんと同じように、「まって」トレーニングをすることにしました。最初の数秒から少しずつ長くして、職員と交渉して待っていたら約束を守ってもらったという経験を積んでいきました。30秒待つ練習の頃から「まって」カードといっしょにタイマーを渡すようにすると、Wさんには分かりやすかったようです。そこから時間を長くしていっても、じっとタイマーを見て待つことができるようになってきました。また同時に、ほしいタブレットを友だちが使っていたら、友だちに「ください」と要求を伝えに行くトレーニングを進めました。友だちとの交渉には職員が支援に入り、「〇時になったら交代ね」とホワイトボードに書いて示します。そしてWさんにタイマーを渡して、時間になったら交代して友だちからタブレットを受け取れた経験を積み上げていきました。

 これらのトレーニングを、要求が出るたびにこつこつと2年以上続けてきました。すると先日、驚きの成果が! Wさんが公園から帰ってくると、友だちがホットケーキを作っていました。Wさんはそれを見て、「ホットケーキください」と職員に伝えます。しかし材料はその友だちの分しかありません。職員が間に入り、友だちに「1切れください」と伝えてみました。うなずかない友だちを見て、職員が「また今度ね」とWさんに伝えると、Wさんは「きんようび、つくる!」と言いました。次の利用日が金曜日と分かって言ったのです。日をまたぐ交渉ができたのはすてっぷでは初めて。それも自分から! 「きんようび、ホットケーキつくろうね。たのしみ♪」と言って帰っていきました。

 金曜日、事業所に着くなり「ホットケーキつくり、たのしみ♪」と職員に伝えてきたWさん。一緒にホットケーキを作り、職員が勧めたシロップを断り(!)、プレーンのホットケーキを満足げな表情で食べて、お片付けまで完璧に終えました。「あー、おいしかった、ごちそうさま~♪」

長さ・重さ・かさ

久しぶりのじゃんぷ日記です。

今,小学3年生の算数は「重さ」の単元です。一人の子どもが「先生,この問題の意味がわからへん。」と質問して来ました。

その子は計算問題(2kg500g+1kg700g=等の重さを計算する問題)をスラスラと解いており,この単元は何も問題がないかな,と思っていました。

質問してきた問題が「トンネルの長さ 2□(□に適切な単位を書く)」といった問題でした。「ん?トンネルの『長さ』を聞いてる問題でしょ?長さの単位って何だっけ?」と尋ねると「グラム?キログラム?あれ…?」と戸惑った様子でした。

つまり1000g=1kgや,1200m=1km200mといったことはわかっていても,そもそもの距離や重さの感覚が実感としてわかっていなかったようです。

数字はわかっていてもその意味がわかっておらず,例えば家からじゃんぷの距離は大体「km」で表せるといったことは「?」な様子でした。

まず,「長さ・重さ・かさ」の単位を整理し,それぞれの距離感や重さ,かさの感覚を教えました。「そういうこと?」と理解した様子でしたがまだ定着出来ていないとは思うのでスモールステップで定着を図っていこうと思います。

こつこつトレーニング

 支援学校中学部のVくんは、なかなか待つことができませんでした。友だちといっしょに山登りに行けば、どんどん先に歩いて行きます。友だちと協力して空き缶つぶしの作業をするときも、先に先にと箱から空き缶を取り出してどんどんつぶし、プルタブを外す友だちが間に合わずに箱の中が空になるということがよくありました。

 そこで、Vくんに「まって」のトレーニングをすることにしました。ただ、山登りや作業といった、Vくんが大好き!というわけではない活動から取り入れても、うまくいくとは限りません。そこでVくんが大好きなおやつの場面から練習することになりました。ちょうどおやつのときも、待てないことが課題にあがっているときでした。

 PECSの「まって」トレーニングの方法に従い、初めは「ください」を言ってから数秒待ってもらうところからスタート。待つ時間を少しずつ長くしていきました。そしてタイミングを見計らい、作業でも「待って」トレーニングに挑戦! 友だちがプルタブを外すまで、「まって」カードを渡すと、Vくんは見事待つことができ、友だちから空き缶を受け取ってからつぶすことができました。

 驚いたことにトレーニングはその1回だけ。以降は「まって」カードがなくても友だちを待って、作業ができるように。また山登りでは友だちと同じペースで歩いたり、遅い友だちを休憩場所で待ったりできるようにもなったVくん。いきなり変わることが難しくても、毎日少しずつトレーニングすることで、できることが増えていきました。すごい!

ともだちといっしょ2

 「ともだちといっしょ」(2022/7/22)で紹介した小学生のMくん。小声とおやつの持ち帰りのブームがずっと続いていました。しかし小声はともかく、おやつは学童や他の事業所ではしっかり食べていると言います。そこで、すてっぷでも食べてほしいと工夫することにしました。

 そもそもMくんはなぜ、おやつを持ち帰りたいと言うようになったのか。それは友だちが持ち帰りと言っていたのを真似して始まったのではないかという話になりました。ではその状況を変えるのも友だちから、ということで、友だちといっしょにおやつを食べる機会を作ることにしました。公園や山登りへのお出かけ時といった特別感を出してみました。

 ある日公園で遊んだ後、公園でそのままおやつにすることにしました。すてっぷから持参したおやつをMくん以外のみんなが食べ始めた横で、職員がMくんに「おやつ食べる?」と聞くと、Mくんは「食べる。おやつ食べる。」と答え、おやつを美味しそうにぱくぱく食べ始めました。途中で食べ止めることもなく食べ終わりました。職員がMくんに「おやつ、美味しかった?」と聞くと、「美味しかった。」と元気に答えてくれました。

 その後もMくんは公園でおやつを食べています。みんなといっしょに公園でおやつを食べた日から、「おやつ、もちかえり。」というMくんの言葉は聞かなくなりました。それはきっと、Mくんの「おやつをもちかえること」というブームが、「おやつをみんなで食べるとおいしい。」というブームに変わったのだと思います。公園への道中で、友だちのにぎやかな輪に入るうちに、小声ブームも薄れていき、だんだんと大きな声になってきました。友だちのいいところを学びあえるように、支援を工夫していきます。

休憩のトレーニング

 支援学校中学部のUくんは、すてっぷの休憩時間に過ごせることがなかなか見つけられませんでした。もともとはアニメが大好きで、よくDVDを見ていたのですが、1年ほど前から観なくなりました。それからは手持無沙汰になったように、指のさかむけを剥こうとしたり、服の糸をひっぱったりと、なかなか落ち着いて過ごせません。休憩にできることを複数提案し、どれにするか選択できるようにしても、自分では選ぶことはできませんでした。それどころか、職員が「どっち?」と聞くと、Uくんは「どっち?!」と過剰反応することも見られることがありました。

 そこでスケジュールから休憩時間をなくし、代わりに「せんせいとべんきょう」を入れて、かるたを職員と一緒に遊ぶ時間にすることにしてみました。他にも「さぎょう」でシュレッダー作業を入れるなどして、まずはやることがある状況の中、適切に活動できた(過ごせた)時間が長くなるようにしながら、それを褒めていくようにしました。

 次第に不適切行動や選択への過剰反応が少なくなっていったUくん。少しずつ、何もしないで横になってリラックスする休憩の時間を作ったり、視覚的に選択肢を提示して選んだりのチャレンジを増やしていきました。1年経った今では、公園で体を動かした後で運動か休憩かを聞くと、自分で休憩を選んでベンチでごろんとリラックスして過ごせるようになりました。スケジュールでも休憩時間を入れるようにして、休憩時間に先生と遊ぶか休憩かを聞くと、横になってリラックスすることも選べるようになりました。

 「休憩時間に好きなことができるよ」と提示しても、自分で過ごし方を見つけるのが難しい子もいます。休憩時間をその子に任すのではなく、必要に応じて休憩と選択をトレーニングとして取り組んでいます。

メリットのないコミュニケーション

 半年前のTくんは、自分なりの理由やマイルールでよく動いていました。同級生とテレビゲームで遊んだ後、帰る時間になってからの片づけではいち早く抜けて、ほかの子がまだ片付けているのにも関わらず、先に帰る準備を始めます。職員が「まだ片付け終わってないよ。他のみんな片付けているよ。」と伝えると、Tくんは「片付けたよ。」続けて、「だって俺が準備したの、あれとこれの2つだけだし。これ以上片付けると俺が片付けすぎて損や。」と言うのです。下級生とも、「えー俺は別に遊びたくないから。」と言って、関わろうとしませんでした。

 メリットとデメリットを考えて行動するTくん。友だちと上手に関われる機会を増やすために、まずはTくんがメリットのある自分のしたい遊びから支援していくことにしました。具体的には、Tくんがしたい遊びができることを保障し、「でもその前に下級生を誘ってほしい」ということを伝えるようにしてみたのです。自分がしたい遊びなので、Tくんは進んで、「〇〇くん、〇〇ちゃん遊ばへん?」と下級生に声をかけるようになりました。最初は下級生も乗ってきません。Tくんとの関係性がまだできていないからです。でも職員は「遊びに誘うことできたね。偉いね。また今度も誘ってみようよ。」と褒めました。そうして下級生を誘う練習を繰り返し実施していくうちに、Tくんも自信をつけていき、下級生との関係性もできてきました。

 半年後の今では、Tくんの伝え方も上手になりました。声のかけ方が優しくなるとともに、言葉だけでなく身振り手振りを混ぜて、わかりやすく伝えられています。下級生も遊びの誘いに乗ってくれるようになり、Tくんも一緒に遊べて嬉しそうでした。公園から帰る時も、その子の落ち着きがなかったのですが、「△△ちゃん、俺と手を繋いで帰ろうよ。」と気遣って、優しいお兄ちゃんの一面も見せてくれました。手を繋いでいると、○○君が、「ぼくともつなごうー。」とTくんの手を握ってきました。両手を下級生のお友達に奪われたTくん。照れくさいようでしたが笑顔いっぱいで帰路につきました。

 この半年間で、Tくんは「下級生に優しくしたら、下級生と仲良くなれた。」という経験を積めました。メリットに思っていなかった下級生に優しくするという行動が、結果として下級生が自分から近づいてきてくれたというメリットになったことをフィードバックできたのではないかと思います。テレビゲームの片づけも、今ではメリットを気にせず同級生とも協力してできるようになったTくん。「すごいね!」と毎日のように職員から褒める言葉が積み重なっています。