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子どもの性被害どう防ぐ?

学校や保育の現場での子どもの性被害どう防ぐ?法改正に高いハードル

2021年1月5日 17時14分【毎日新聞】

子どもへの性犯罪で処分を受けた教員や保育士の免許や資格に制限をかけるための制度改正を巡る議論が政府・与党で本格化している。子どもへの性犯罪は再犯率が高いとされるが、自分の犯歴や処分歴を隠し、職に復帰することも可能だからだ。しかし、法改正には高いハードルがある。

「法制上、乗り越えられない課題があり、法案として提出できる状況には至らなかった」。萩生田光一文部科学相は昨年12月25日、わいせつ行為で懲戒免職となり、免許を失効した教員が再取得できないようにする法改正を断念する方針を明らかにした。

教員の子どもへのわいせつ行為について文科省は原則懲戒免職とするよう求めてきた。しかし、教育職員免許法(教免法)では懲戒免職処分を受けると免許は失効するが、最短3年で再取得できる。これを無制限に延ばすことが検討されてきた。

背景には、子どもへのわいせつ行為が「高止まり」していることがある。同省は昨年12月、2019年度にわいせつ行為やセクハラを理由に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は273人で過去2番目の多さだったことを明らかにした。勤務校の児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもに対する行為での処分者は126人に達した。

保育でも同じ課題を抱える。昨年4月以降、ベビーシッターマッチングサイト「キッズライン」の登録シッター2人が相次ぎ性犯罪の容疑で逮捕された。うち1人は保育士。同7月には被害児童の母親や保育事業者が記者会見して「性犯罪者を保育・教育現場から排除する方法がない」と訴え、犯歴照会のデータベース整備と、保育・教育現場で働く人が事業者に「無犯罪証明書」を提出するよう義務付けるよう求めた。英国で運用されている犯罪歴確認制度「DBS(Disclosure and Barring Service)」の日本版にあたる。

子どもへの性犯罪は再犯率が高いとのデータがある。16年の法務省法務総合研究所の性犯罪研究によると、性犯罪者の約3割には性犯罪の前科があった。2回以上、性犯罪の前科がある人のうち、同じ「小児わいせつ型」の犯歴を持つ人の割合は約85%だった。

こうした犯歴のある保育士や教員を現場から追放するのは難しい。保育士は児童福祉法上、児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪による罰金刑や、その他の罪で禁錮刑以上を受け、保育士登録が取り消されても、2年後に自分から手続きを取れば再登録が可能となる。

厚生労働省は18年、逮捕段階で勤務先の保育所が都道府県に報告を徹底するよう通知。都道府県にも、犯歴照会と登録取り消しの徹底を求めた。ただ保育士は登録や犯歴に関する情報が自治体間で共有されなければ、別の自治体で登録して働ける余地がある。自治体間の情報共有や再登録状況について厚労省は「把握できていない」としている。

そもそも犯歴は、個人情報保護法で「特に配慮を要する個人情報」に位置づけられている。同法は、自身の個人情報であっても、刑罰に関するものはアクセスできない、と定める。

与党内では議員立法で制度改正を目指す動きもある。自民党の野田聖子幹事長代行ら与党有志による検討チームは、学校や保育所などの施設の設置者に被害防止の努力義務を課す(児童買春・ポルノ禁止法改正)▽教免法について「児童買春・児童ポルノ法違反罪などで罰金刑を受けた者」を免許を取得できない「欠格事由」として追加する法改正――を柱とする政策骨子案をまとめた。医師、看護師、保健師などについても、子どもに対する性犯罪で罰金刑以上を受けた場合、免許を取ることを一律に不可能とする「絶対的欠格事由」に定める関連法改正案を秋の臨時国会に提出することも視野に入れていた。

しかし、各省庁は調整段階で難色を示した。理由の一つは「刑の均衡」。性犯罪だけを取り出して他の犯罪よりも厳しい扱いにするのは困難、という理屈だ。

萩生田文科相も法改正の断念理由に挙げたのが「刑の消滅」だ。刑法では、懲役刑や禁錮刑だと刑を終えてから10年、罰金刑なら5年の間に、再び刑を科されなければ刑の言い渡しは効力を失い、前科に伴う資格制限がなくなる。DBSも、刑法や、憲法が定める「職業選択の自由」との兼ね合いが課題となる。

与党の検討チームでは、児童買春・ポルノ禁止法違反罪の法定刑を引き上げる案も浮上。昨年12月には、上川陽子法相に「日本版DBS」を創設するよう申し入れた。メンバーの一人は「子どもへの性犯罪は露見しづらく、教育・保育の場から逃げることも難しい。幅広く検討している段階だ」と話す。自民党・性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟も「教員免許の再取得を禁止する方向で検討すべきだ。保育士なども同様の対応を検討すべきだ」との提言案をまとめた。

教員の場合、懲戒免職で免許を失効すると名前は官報に掲載されるが、記載漏れの事例も相次ぐ。閲覧期間は従来3年(昨年11月からは5年に延長)で、処分歴を隠して採用されたケースもあったため、この情報を検索できる期間を2月から40年に延ばす。失効理由が「わいせつ行為」であることが分かる記載とするよう省令も改正する。

厚労省も保育士の性犯罪に関する実態調査や法改正の検討を始めた。しかし、厚労省幹部は「人権の制約につながるため政府として提案できる法改正には限界がある。ただ、子どもを守るため永久追放すべきだという世論が根強いことも理解できる。立法府の議論を注視したい」と話す。【中川聡子、大久保昂】

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必要なことがすぐに決定できない、決めたことがなかなか変えられないのは民主主義社会だからと言う人もいますが、それにしても我が国の役人の動きは遅すぎるように思います。武漢風邪についても最初は感染症の実態がよくわからないからペストなどにあたる二類感染症相当の決定は仕方がなかったかもしれません。しかし、夏が過ぎた段階で感染症の実態がほぼ明らかになり、欧米と比べてもほとんどの人は極めて軽症で済むことがわかってきました。そして、二類感染症相当指定のままで冬に突入すると、無症状や軽症の人まで隔離しなければならないことになり、結果医療崩壊を起こしかねないと誰もが警告していたのです。結局政府は10兆円の予備費を医療支援にも使わず、かといって感染症指定を変えるわけでもなく漫然と成り行きに任せていたと言われても仕方がありません。

子どもの性被害の多くが公的な機関で生じているのに、これまた法律の整合性が合わないからなかなか変えられないと役人は重い腰を上げません。票に結びつかないのか政治家もこの問題を取り上げません。保育士登録も教員免許も性犯罪で失効してから最短2~3年で再取得できるという制度のほうがおかしいのです。おかしな制度は変えればいいのに人権の制約につながると二の足を踏むのです。性犯罪者の人権と子どもの人権を考えればどちらを守るべきか優先すべきものが見えてくるはずですが、武漢風邪の対応を見ているとなんとなく政府の言い訳が理解できてしまうのが悲しいです。