すてっぷ・じゃんぷ日記

2022年10月の記事一覧

「宿題ちょうだい」

 小学生のXくんは、夏休みまでは宿題や勉強をすることにかなり強い抵抗がありました。「宿題するのはわかっているけどしたくないないなぁ。」と言っていて、学校以外の場所ではなかなか取り組めません。宿題をしてから下校するという形で、家庭学習に代えているようでした。ですが夏休み中は、Xくんは学校以外の場所で勉強に取り組んでいくしかありません。

 そこですてっぷでも学習の基盤が作れるように、Xくんを含めた小学生の子どもたちには、この夏休みに学習をする時間を作ることにしました。すてっぷに到着したら、宿題か学習プリントに取り組むことにしたのです。用意したプリントは間違い探し、迷路、そしてロジ算(Dekanga × ちびむすドリル コラボ企画教材https://happylilac.net/dkg2017-019.html)の3種です。ロジ算は3×3などの正方形のマス目に、縦横それぞれ1列ずつの合計が外枠にある数と一致するように、マス目の数を埋めていくいうものです。

 Xくんは「ロジ算」が気にいったようでした。Xくんは、「なんでここの答えの数字があわないんだぁー。」と怒り出すこともありましたが、解けた時は、「あーすっきりした。」と嬉しそうでした。そして夏休みが終わり、新学期。Xくんはすてっぷに来ると、「先生、宿題ちょうだい。」と言うようになりました。職員が「ロジ算にする?」と聞くと、Xくんは「うん。」と即座に頷きます。日によっては「うーん」と頭を悩ませながら帰ってくるXくんですが、このロジ算には前向きに取り組むことができています。

 すてっぷは宿題をするための場所ではありませんが、子ども達自身の生活の中のメリハリや自立した活動の一部として、「自分で学習できる力」は大切だと考えています。夏休みを機会に友だちと一緒にプリント学習に取り組み、問題を解けてすっきりした!という良い経験を積んだXくん。この夏の経験を経て芽生えてきた「自分で学習に向かえる力」を、今後も育んでいきます。

文章になると…

じゃんぷに来ている3年生の子どもが「今日の宿題は苦手な問題だから個別の時間に教えてください。」とお願いをしてきました。

下の画像のような「円と球」のプリントでした。

「どの問題が不安なの?」と聞くと,最後の2問を指さして「これがわからへんねん。」と教えてくれました。

・半径2cmの円があります。この円の直径は何cmですか?

・直径12cmの円があります。この円の半径は何cmですか?

上記のような文章だけで書かれた問題でした。図がある問題だとすらすらと問題を解いていましたが,文字だけで書かれるとどのような意図の問題なのか途端にわからなくなるようです。

半径を赤のマーカーで,直径を青のマーカーで示し,「この問題は半径を聞いています。」「この問題は直径を聞いています。」と図に示すと問題を答えることが出来ました。しかしこれでわかったのは「半径」「直径」の言葉の意味がまだ落ちていない,ということでした。

文章だけで書かれた問題を答えるためには言葉の意味を理解していなければなりません。今回は色分けと図を示して問題を答えることが出来ました。少しずつ抽象化していき,言葉の意味が理解できるよう支援をする必要がある,と感じました。図を見ると問題を答えることが出来るので,「半径は?直径は?」とクイズ形式にして次週取り組もうと考えています。

 

英単語は音の足し算!

以前英語学習の支援の一環として「フォニックス読み」というものを紹介しました。(フォニックス読み : 06/27)

じゃんぷに通っている子どもの中にもフォニックス読みに取り組んでいる子どもが何人か取り組んでいる子がいます。先日その内の一人が「英語の読み方のパターンが何となくわかってきた!」と教えてくれました。

効果があったなぁ,と筆者は感じています。他にも英語は読めるようになりたいが苦手意識が強い子にも勧めてみようと思っています。

これを始める時には子ども達に「英語は音の足し算やで!」と伝えています。下記の画像のようにフォニックスの基礎発音を一つ教え,それに言葉は足した者を一緒に読んでいきます。

 

[c](ク)+[at](アト)=[cat](クャット) [b](ブ)+[at](アト)=[bat](ブァット)と,読み方のパターンを示し,それをたし算していく。すると子どもは段々とパターンを覚え,読むことが出来るようになっていきます。下記の動画でより詳しく紹介がされています。興味のある方はぜひご覧ください。

 

コンパス

小学3年生の算数「円と球」の単元で初めて使う道具で「コンパス」があります。

コンパスを使う導入として下のような図を描き,楽しみにながらコンパスの操作に慣れる,という活動をします。

しかしコンパスの操作は意外と難しく,6年生の子どもでもうまく扱えないこともあります。手先がうまく扱えない子どもは特に最初につまづくことも多いかと思います。

まずコンパスを持つ前に指でコンパスを回す練習を空中でしたり(漢字の空書きのようなイメージですね)少し硬い紙(画用紙等)の方が書きやすいのでそれで練習をしたりと,様々な工夫が出来ます。

ただそれでも難しい場合もあります。そういう時は「操作しやすいコンパス」を使います。下記の画像のコンパスは持ち手の部分がくるくる回る仕様になっています。極端な話,手がグーになっていても円を書くことが出来ます。

「円と球」の単元で大事なことは「コンパスをどれだけ上手に扱えるか」ではありません。「円,球について知ること。また,それらの中心,半径,直径について知ること。」「二等辺三角形や正三角形を定規とコンパスを用いて作図する活動」です。子どもたちそれぞれに合った方法,道具を使ってこれらのことが学習出来るよう支援を心掛けています。

しんどいの伝え方

 先日、支援学校高等部のWくんのおやつを食べる手が止まりました。見るからに元気がなくなっている表情のWくん。職員が「大丈夫?」と声をかけると、Wくんは「しんどい・・・。」と小さな声で答えました。職員が「どうしんどいの?何かあった?」と聞いても、Wくんは「うーん・・・。」と言葉にできないようです。まわりがうるさいのかな?と考えた職員が「別室で休憩しようか?」と提案すると、Wくんは「うるさいわけではないし、嫌なきもちでもない。」と始めは答えましたが、「先生も一緒に行く?」と職員に尋ねました。職員が「行くよ」と答えると、Wくんは「じゃあ行く」と別室に移動しました。

 別室に行き、座って休憩を始めたとき、Wくんは「紙をください」と職員に伝えました。職員が紙を渡すと、紙に言葉を書きだしたWくん。書き終わると職員に渡してきました。そこには「うるさいわけではない。気持ちがしんどいわけでもない。しゃべるのがしんどいほど体がしんどいことをわかってほしい。」と書かれていました。読んだ職員が「うるさいわけじゃないんだね。体がしんどいんだね」とWくんの気持ちを受け止めると、Wくんは頷きました。そして職員が差し出したお茶を飲んで、リラックスして過ごしました。帰る前に、「気持ちをわかってくれてありがとう」と職員に伝えてから、送迎車に乗って帰りました。

 送迎車の中でも「さっきよりはしんどくなくなってきた。」と職員に伝えたWくん。「声を出して話をするのが面倒なくらい、さっきは体がしんどかった。」と、紙に書いて伝えたことを、今度は言葉でも職員に伝えられました。そして、Wくんがふと、「今日、学校でもしんどい時間があったけど伝えられなかった。声を出すのがしんどい時は紙に書いて伝えるといいんかなぁ。学校でも使えるかなぁ。」と言いました。職員は、「そうだね。話をするのがしんどい時はその手もいいかもしれないね。」と伝えると、少しほっとしたようでした。

 Wくんが「紙に書いてみたらよかったのでは。」と自分自身で使える伝え方(気持ちの表出方法)に気付くことができたことに、職員はWくんの成長を凄く感じました。アンガーマネジメントでも言える事ですが、子どもたちが興奮しているときや困ったときなど何かを伝えたいときに、自分自身で気持ちの表出方法を身に着けているのはとても重要なことだと思います。Wくんが自身で気づけたことに習い、年下の子どもたちも身に付けられるように支援していきたいと思います。