すてっぷ・じゃんぷ日記

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「もう1回したいなら、静かにするよ」

 「ぼくもやりたい!」(2024/6/29)で紹介したOくん。『街コロ通』でボードゲームへの敷居が下がったのか、他のゲームも「やりたい!」と言うことが増えてきました。「これ、なんだっけ?」(2024/7/20)で紹介した『ナナ』もその一つ。友だちが『ナナ』で遊んでいるのを見て、「ぼくもやりたい!」と友だちの輪に入ることになりました。

 ただOくんはまだ小学1年生。対してこのとき『ナナ』で遊んでいたのは小学5年生のTくんをはじめとしたお兄さんばかりのグループでした。Tくんたちは優しくOくんを受け入れて、ゲームスタート。Oくんはルールがよく分かり、順番も待って、正しく遊びに参加できています。まずこのこと自体がOくんのすごいところで、よくがんばっていました。Tくんたちもそのことが分かり、2回目、3回目とゲームを進めていきます。

 ただやはり、感情コントロールはまだ難しいOくん。当たって嬉しい時は「やった!」、外してくやしいときは「あー!」と声が大きくなりがちです。少し顔をしかめるTくんたち。しかしOくんがゲームに負けて本当に悔しくて「きー!!」と声にならない金切り声を上げたときには、さすがのTくんたちも耳をふさいでしまいました。

 職員が声の大きさレベルを提示したり、「そういうときは『負けた。くやしい』と言ったりするよ」と言い換えを示したりと、支援をしながら、もう1回『ナナ』で遊ぼうとした時のことです。Tくんからすばらしい声掛けがありました。

 「Oくん、もう1回したいなら、静かにするよ」

 職員が支援でも使う事前の約束。それをTくんが自分からOくんに提示したのです。「わかった」と答えるOくん。その後、少し大きな声になってしまうこともあったOくんですが、最初のころの金切り声などはなくなり、子どもたちだけでも遊びを続けられるようになってきました。

 夏休みになり、じゃんぷでも子ども同士で遊ぶ時間が増えてきた中で、子ども同士だからこそ、素晴らしいやり取りや関わりが生まれます。その機会を逃さず褒めて、コミュニケーション・社会性を育むとともに、自己肯定感を積み上げていきたいと思います。

「これ、なんだったっけ?」

 トランプは一番身近なテーブルゲームと言っても過言ではないでしょう。修学旅行にトランプをもっていって、友だちと遊ぶなんてことも、今でもまだ見られる光景かもしれません。

 トランプで友だちと遊ぶなら、最も有名なゲームの一つが「ババ抜き」です。他にも「神経衰弱」や、中学生になれば「大富豪」がよく遊ばれます。すてっぷやじゃんぷでも、友だちに誘われたときに「したことない」とならないよう、狙って遊ぶことで、ルールや勝ち方(負け方)を学ぶこともありますし、子どもから「ババ抜きしたい」と提案されることもあります。基本的にはトランプを混ぜて遊ぶのでランダム性があり、またシンプルなゲームが多いです。

 ただし、シンプルだからこそ実力差が出やすいものもあります。神経衰弱はそういったゲームの一つで、ランダムに伏せられたカードをめくっていくので運要素があるものの、一番大事なのはめくったカードの数字を覚えておく短期記憶の力になります。そしてすてっぷやじゃんぷに来ている子は、その短期記憶の力が弱いことが多いです。そのため、「神経衰弱」と聞くだけで、「絶対しない!」と大きな声で主張する子も少なくありません。

 逆に言えば、そういったゲームをする中で、短期記憶にチャレンジする場面を作ることができるかもしれません。そこで「ナナ」というゲームを紹介することにしました。「ナナ」は簡単に言えば、プレイヤーの手札と場に伏せられているカードで神経衰弱をするというゲームです。ただし手札のカードはどれでも出せるかというと、そこにルールがあり、自分や他のプレイヤーの手札からは一番大きな数字か一番小さな数字を出す(出してもらう)ことしかできないのです。

 先日はじゃんぷの子どもたちが、この「ナナ」にチャレンジしました。みんなで手札を配り、残ったカードをテーブルに伏せます。あとは「神経衰弱」と同じように、順番を回していきます。自分の番が回ってきたRくん。「Sくん、一番低い数字を見せて」とSくんに伝えます。Sくんが1のカードを出すと、「やった!」とRくんは喜び、自分の手札から1のカードを続けて2枚出して、3枚そろった1のカードはRくんのものになりました。最初は運要素で数字を揃えるRくんやSくん。ですが外れたときはその数字を覚えて手札や場に伏せて戻します。「これ、なんだったっけ」や、「Sくんの一番高い数字、なんだったかな」と悩むRくん。手札に同じ数があることを手掛かりに思い出し、「Sくん、一番高い数字を出して」と言って、Rくんは見事その数字を3枚そろえることができました。

 今では休憩時間でも「ナナがしたい」とリクエストする子も少なくありません。「神経衰弱は苦手」という子どもも、「やってみようかな」と参加することが増えています。もちろん中には、「苦手でやってみたけど、やっぱり外してしまうことがくやしい!」と、1回で終わってしまう子もいます。そういったときはあとで職員との1対1の場面を作り、リベンジすることで次につなげようとしています。楽しめる友だちがいるからこそ、集団作りに向けて個別にも丁寧に対応していきます。

ぼくの「恐竜園」!

 すてっぷやじゃんぷでは、定期的に新しいボードゲームにチャレンジしています。先日遊んだ中で「これ、おもしろい!」となったゲームが「ドラフトザウルス」です。「ドラフトザウルス」はみんなで順番に恐竜を選び、自分の動物園ならぬ「恐竜園」のオリに恐竜を入れていきます。このとき、オリのテーマ(同じ種類を入れる、全部違う種類を入れるなど)に沿って恐竜を入れることができると得点が増えていき、最終的に得点が高い=テーマに沿って恐竜を集められた人が勝利するというゲームです。

 このゲームのおもしろいところは、恐竜を選ぶときに自分の手の中で隠しながら1匹選ぶのですが、選ばなかった残りの恐竜は次の人に回すことです。つまり自分が選ばなかった恐竜を他の人が選ぶかもしれないということも考えられますし、次に自分に回ってくるのがどんな恐竜かわからない中で考えないといけないということです。そのことにいち早く気づいた小学生のDくん。「他の人の恐竜園を見るのがコツやな!」とみんなに伝えました! 気づき自体も素晴らしかったですが、それを友だちや職員に確認しながら共有しようという行動自体も、とても素晴らしい!と目を見張るものでした。

 次々に恐竜を選び、自分の恐竜園に置いてから、選ばなかった恐竜たちを次の人に回していく子どもたち。回ってきた恐竜たちに大喜びしながら、自分の恐竜園をテーマに沿って完成させていきます。他の人の恐竜園を見て「あの人が緑の恐竜集めてるから、緑をそろえるのはあきらめよう」と自分で決めることができた子がいれば、職員と一緒に「あの人が黄色の恐竜を集めてないから、自分に黄色の恐竜が回ってくるかも。それならこっちのオリに入れた方が…」と考える子もいました。1人でのゲームとはまた違い、駒やボードを使うことで友だちや職員と考えや予想を共有しながら、他の人の選択や考えを読もうと頑張る姿が見られました。
 

 また既存のものも含めてボードゲームにチャレンジし、取り組んだゲームの狙いをお伝えしながら、子どもたちのがんばりを紹介したいと思います。

「分かりやすすぎてダメなんやな」

 小学生グループで最近取り組んでいる遊びの一つが「Dixit(ディクシット)」というゲームです。ディクシットは有名な対戦型のボードゲームで、様々な(多くは象徴的な)絵が描かれたカードを使います。プレイヤーは順番に出題者になり、自分の手札からカードを1枚選んで、その絵を言葉で表現します。他の人は全員回答者になり、それぞれがその言葉にふさわしいと思ったカードを出した後、それらのカードが混ざった中から出題者が出したカードを当てるというゲームです。

 このとき、回答者が誰もカードを当てられなかったら出題者に得点が入らないのは分かりやすいのですが、このゲームの面白いところは、回答者全員が出題者のカードを当ててしまったときも、出題者に得点が入らないということです。そのため出題者は、全員にはわからないような、でも誰かは分かるような言葉を言うことがポイントになります。

 もともと小学生グループの子どもの中には、言葉で表現することが課題の子が少なくありません。そこで、ルールがある中(設定遊びやボードゲームなど)で、言葉で表現することに取り組んできました。「ある/ない」や「本当/うそ」といった0/100の表現が少しずつ言えるようになってきたところで、次の課題として、その間の表現が求められるディクシットに取り組み始めました。

 先日初めて取り組んだグループは、最初の説明で「頭から光が出ているっていう説明は分かりやすすぎてダメなんやな」と理解を示し、スタートしました。「人」や「水しぶき」といったイラストそのものを単語で表現することも多く全員から当てられてしまうこともありましたが、全員にはわからないよう、背景を見て「オレンジ」と表現するなど、工夫して言葉にすることにチャレンジする姿も見られました。出題することもですが、回答するときも身を乗り出して絵カードを見比べるなど、とても楽しみながら子どもそれぞれが表現したり友だちの表現を理解しようと取り組みました。終わった後、「楽しかった!またやりたい」と振り返った子どもたち。ディクシットや他の取り組みをする中で、0/100だけでなく、間の表現をすることにもチャレンジしていき、表現力を少しずつつけていきたいと思います。

手指を使うボードゲーム

 すてっぷやじゃんぷで取り組むボードゲームは、みんなで楽しく遊ぶことが第一目的ですが、第二以降の目的も持って、職員が課題設定しています。その日の集団や、一人一人が支援計画の目標を達成できることを考え、それに合わせたボードゲームを準備します。その狙いの一つが「手指を使うこと」です。

 手指を使うことが課題の子どもは少なくありません。工作や調理など、手指を使うことに取り組むこともありますが、子どもの多くは学校など他の場所ですでに体験しています。「またやってみたい」と思っている子であれば、スムーズに取り組みますが、中には失敗経験から苦手意識を持ち、「やりたくない」と最初から取り組めない子もいます。

 そこで楽しく遊べるボードゲームをする中で、手指を使うことにチャレンジすることがあります。「キャプテン・リノ」もその一つです。「キャプテン・リノ」は有名な対戦型のゲームで、長くても15分ほどで1ゲームが終わります。一人ずつ手札を持ってスタートし、順番に厚紙を二つ折りにした壁を設置していきます。そして同じく厚紙でできている手札のカードから一枚選んで、それを壁の上に設置して次の人に順番を回します。すると厚紙のタワーが次々と積まれていくことになります。どんどん高くなっていけば、次第に手札が少なくなっていき、一番初めに手札が0になった人が勝利です。ですが誰かが倒してしまうとその時点で終了、倒した人が負けになるというゲームです。

 先日も初めて取り組む子ばかりの中、この「キャプテン・リノ」にチャレンジしました。初めは慣れない中、また本人の持つ不器用さのためか、ポンと壁のカードを置き、タワーがぐらつく場面が続きました。しかしタワーが高くなるにつれ、緊張感も高まり、手指を慎重に使ってそっと置くようになっていきます。最後はタワーが倒れて終了しましたが、2順ほど順番が回り、7段まで積むことが出来ました。このときは時間がなく次のゲームに移りましたが、慣れてくると積み方も上手になり、タワーがどんどん高くなります。また手札には自分が得したり相手が損したりする効果があるカードがあります。相手を意識した駆け引きが生まれてくると、もっとおもしろくなってきます。またチャレンジしてみたいと思います。

『はらぺこバハムート』

 1月から導入したボードゲームで、子どもたちが特に気に入ったゲームの一つが『はらぺこバハムート』です。『はらぺこバハムート』はすてっぷに置いてあるボードゲームでは珍しく1対1で対戦するゲームです。

 これまですてっぷに置いていたボードゲームは、3人以上で遊べるものがほとんどでした。3人以上で遊ぶことで、コミュニケーションの幅を広げていくことが狙いの一つだからです。そういう意味で言えば、『はらぺこバハムート』は1対1の対戦ゲームですので、コミュニケーションを取る目的は、そう多くありません。ですが、すてっぷでボードゲームに取り組む狙いの一つ、見えないものを想像する機会がたくさんあるのが、この『はらぺこバハムート』です。

 『はらぺこバハムート』は、基本的にはカードを使った対戦ゲームです。カードに書いてある効果を使って、相手のライフポイントを減らし、相手を0にしたら勝ちと言うゲームです。『遊戯王』や『ポケモンカード』といったトレーディングカードゲームを例に挙げるとわかりやすいでしょうか。ただそれらと違って、『はらぺこバハムート』は16種類のカード1枚ずつしか使いません。面白いのは、対戦するお互いが手札はそれぞれ持つのですが、手札を増やすために引く山札、そして手札を使った後に置いておく捨て札が、一つずつで対戦相手と共有するというルールです。さらに山札がなくなっていて引けなくなったら、何があるかわかっている捨て札を良く切って山札にします。そのため、山札に何があるかわかってカードを使ったり、自分の手札と捨て札から相手の手札を推測して出すカードを変えたりという要素が生まれます。そこで、見えていないものを想像するという力が発揮されるのです。

 『はらぺこバハムート』をよくリクエストするのが、小学生のTくん。Tくんは違う場所で『はらぺこバハムート』をしたことがあったそうで、すぐにすてっぷでもお気に入りのボードゲームになりました。初めて『はらぺこバハムート』をする友だちにも、丁寧に分かりやすいようにとルールを説明します。そして何のカードを使うか悩んでいる友だちに、「いいよ。待ってるよ」と穏やかに伝えていました。友だちが慣れてきたころには、休憩時間でもTくんや友だちが『はらぺこバハムート』をする姿も。カードの一覧リストとにらめっこしながら、相手の手札や山札に何のカードがあるかじっくりと考えています。見えないものを想像するということが苦手な子も少なくありませんが、でもおもしろいと思えるきっかけになってくれたらと思いながら、支援しています。

「やさしいルール、どうする?」

 すてっぷの小学生たちが今はまっているボードゲームが「ごきぶりポーカー」です。ごきぶりというだけで、嫌なイメージのインパクトが強いかもしれません。ですがゲームとしてはシンプルで、相手が出したカードが宣言通りか、それとも嘘かを見抜くというゲームです。

 カードには8種類の生物が書かれています。どの種類も苦手な人がいるだろうという生き物ですが、どこか愛嬌のあるイラストになっています。そのカードを伏せながら対戦相手の1人に出し、それが何の生物かを宣言します。このとき、本当のことを言ってもいいですし、嘘のことを言っても構いません。出された人はその宣言が本当か嘘かを考えて返答します。本当でも嘘でも見抜けたら、カードを出した人にカードを返して、その人の手元に置きます。見抜けなかったら、そのままカードを出された人の手元に置きます。これを繰り返し続け、誰かの手元に同じ種類のカードが4枚たまるか、全8種類のカードがたまったら、その人の負けになります。

 このゲームの面白いところは、多くの人の手元にカードがたまってくる後半です。例えばごきぶりが3枚たまってきた人は、誰かにカードを出す時にごきぶりカードを選ぶと、本当でも嘘でも見抜かれたら自分の手元にごきぶりが4枚たまって負けてしまいます。それが相手にもわかっているので、本当か嘘かを見抜くときの判断材料になり、より推理がはかどります。またこのゲームは3人以上でも遊べ、すてっぷの小学生たちはむしろ5、6人で遊ぶときによくこのゲームを選んで、大人数でよりいっそう盛り上がっています。

 新年になって新しく用意したボードゲームの中で、特に子どもたちがはまってよくリクエストするようになったのが、この「ごきぶりポーカー」でした。大人数で遊べる中でも、基本的には1対1で相手が本当のことを言っているのか嘘を言っているのかを見抜くという内容がシンプルで分かりやすかったのかもしれません。また相手の言っていることを見抜く、または見抜かれないようにポーカーフェイスになるということは、すてっぷの小学生たちは苦手な傾向にありますが、だからこそおもしろいと感じて楽しめるのかもしれません。とは言っても、やはり苦手は苦手。中には6連続で見抜かれ続け、手元のカードがどんどんたまっていくという子もいました。そんなときは「やさしいルール」の提案。2連続でたまった人がいたら、次は他の人からというルールにしてみました。先日は始める前に、「やさしいルール、どうする?」と、採用するかどうか友だち同士で相談する姿も。一つのゲームから、新しくSSTの機会が生まれています。

「前よりも分かることが増えたよ」

 支援学校中学部のLくんと高等部のMくんの二人で、先日『街コロ』に取り組みました。二人で設定遊びに取り組むことは久々でしたが、支援学校で同じクラスだったこともあってか、何をするかスムーズに相談を始めました。Mくんははじめ、「『ワードバスケット』はどう?」とLくんに聞きました。そばにいた職員は、Lくんはどう答えるだろうと不安げに聞いていました。

 Lくんが小学生の友だちとボードゲームで遊んでいたときに、小学生の友だちがよくリクエストしていたのが『ワードバスケット』。言葉やアイディアを発想・表出したり、1ゲームの時間が短かったりという理由で小学生は『ワードバスケット』が好きだったのですが、Lくんは反対に発想・表出が苦手、でもじっくり考えて積み上げていくゲームが好み。でもLくんは小学生の友だちのリクエストを断れず、「いいよー」と受け入れて遊んでいくうちに、しんどさが積みあがっていってしまったということがありました。

 さてMくんにはLくんはどう答えるだろうと職員がそばで見守っていると、Lくんは「それはぼくは苦手だからできないよ」と答えたのです! 職員はその成長に驚きました。Mくんはその言葉を聞き入れ、「じゃあ『街コロ』は?」と聞くと、Lくんは「それならいいよ」と答え、『街コロ』をすることに決まりました。

 一方のMくんはボードゲーム自体が久々。高等部ということもあり、パソコン課題や作業課題など、個人の課題を優先してきました。ただ数年前に当時の小学生たちとボードゲームに取り組んだ時は、負けることへの耐性が低く、また運が悪いと投げやりになってしまいがちだったため、勝ち負けのあるボードゲームを避けていたという経緯がありました。『街コロ』はサイコロを毎回振るので運のよしあしがあり、また勝ち負けがはっきりつくゲームです。ですがMくんは、サイコロの運一つ一つは気にせずゲームを進め、落ち着いて最後までできたのです! 結果はMくんの勝ちだったので、負けのしんどさはなかったかもしれませんが、それでも終わりの振り返りのときに、「前にしたのは2、3年前だったし、前よりもわかることが増えててよかった。作戦も考えることができるようになってるし、理解もできるようになってて嬉しかった。2人だけど、このメンバーで出来てよかった。」とコメントしたことに、職員はMくんの成長を感じずにはいられませんでした。

 すてっぷの1年目から在籍しているLくんとMくんの日々の頑張りが、積み重なった成果として表れたんだと職員全員が感じられた取り組みでした。

楽しみながら言葉遊び

 新年になり、すてっぷでは新しいボードゲームにいくつかチャレンジしています。そのうちの一つが「ワードスナイパー」です。このゲームはいたってシンプル。ひらがな1文字(2文字のときもありますが)から始まる言葉のうち、お題に合わせたものを思いつけたら、得点が入るというゲームです。

 同じようにひらがなから言葉を連想するというところは、「ワードバスケット」によく似ています。「ワードバスケット」はすてっぷでも以前から取り組んでいるゲームで、カードを使ってしりとりをしていくというものです。ひらがなの書かれたカードを手札にしてスタート。最初の1文字からしりとりになるように次々と言葉を言いながらカードを出していきます。そして手札が無くなったら勝ちと言うゲームです。言葉を連想する必要があるので、取り組むメンバーに合わせて、2文字OKや連想しやすいような絵つきのあいうえお表を用意するなどの工夫をしてきました。

 一方で、この「ワードスナイパー」は手札はありません。山札の表には「食べ物」や「赤いもの」といったさまざまなお題が書かれています。そしてゲームがスタートしたら、山札の一番上のカードを裏にします。するとそこにはひらがなが。あとは、その文字から始まる言葉で、お題に合わせた言葉を早い者勝ちで宣言。その人がひらがなのカードを取ります。おもしろいのは、そのカードに書かれている得点が、カードによって違うこと。言葉が思いつきやすいひらがなは得点が低く、言葉が出てきづらいひらがなは得点が高くなっています。そのため、単純な手数だけでは勝負が決まらず、難しい言葉を1つでもぱっと思いつけたら有利になることもあります。

 さっそく「ワードスナイパー」にチャレンジしたEくんとFくん。学校の勉強が苦手なEくんですが、このゲームだとどんなお題でもじっくりと考え、言葉を出してきます。「ふ」から始まる「歴史上の人物」では、なんと「藤原道長!」と回答。職員を驚かせました。一方のFくんはさまざまな言葉を知っていますが、じっくり考えるのは苦手。Eくんが考える間は、諦めてふらふらしてしまいます。しかしこのゲームがEくんにとってよかったのは、「ワードバスケット」とは違って、誰かが思いつかなかったら次のお題に変わるというところです。さらにひらがなの選択肢も増えます。なので、誰も思いつかず進まないということはなく、次々とゲームが展開していくので、Fくんも飽きずに最後まで続けられました。

 すてっぷではまだこのゲームをしていない子も、またチャレンジしていこうと思っています。そのときのメンバーに合わせた工夫をして、楽しみながら言葉遊びができるようにしていきます。

「僕の数は何だろう?」

 相手の心理を読む要素のあるゲームは、なかなか難しいですが、だからこそ好きという人が多いのかもしれません。犯人は誰?(2022/6/24)で紹介した「犯人は踊る」も、隠れている相手の手札を読むことが、勝利につながります。ただし、ババ抜きしたり交換したりで、犯人カードがあっちにきたりこっちにきたりするので、心理を読むことが絶対条件というわけではありません。その点も「犯人は踊る」が好きな子が多い理由なのでしょう。詳しくは上記の記事をご覧ください。

 さて先日、「コヨーテ」というゲームに取り組みました。このゲームは逆に、自分の情報が分からないゲームです。どういうことかというと、ゲームの初めにある数が書かれたカードが一枚ずつ裏向きで配られるのですが、そのカードを裏向きのまま自分のおでこにつけます。つまり、自分のカードの数はわからないまま、ゲームが始まります。ではどのように推理するかというと、他の人から情報を読み解くしかありません。他の人は自分から見れば表向きにおでこに着けているのですから、その人の数が何なのかわかります。さらに、ゲームとしては、1人ずつ数を増やしながら、順番を回していきます。そして全部の合計数を超えてはいけない(正確には超えたことがばれてはいけない)という条件もあります。なので他の人の数の増やし方から、自分の数を推理することも可能ということです。

 先日取り組んだ時のことです。職員が3、Wくんが20、Xくんが4のカードでスタートしました。Wくんから数を言っていくことになり、Wくんはまず「5」と宣言しました。ところが次のXくんが「25」と宣言。職員の3、Xくんの4しか見えていないWくんからすると、Xくんが「25」と大きい数を言ったのは、自分の数が「20」だからではないかと推測できたのでしょう。案の定、Wくんは次の番で、自分の数と予想した20と、見えている職員の3、Xくんの4とを足して「27」と答え、それがまさしく合計の数。次にXくんが宣言した「28」が、アウトの数になってしまいました。終わった後で、Xくんとは「Xくんがいっきに20増やしたから、職員とXくんの数が見えているWくんは、自分の数が20だとわかったんじゃないかな」と振り返りました。

 自分の数が分からない中、相手の数と相手の宣言から、自分の数を推理するということもさることながら、相手の視点に立って、自分の発言が相手の思考にどういう影響を与えるのかを考えるということも、コミュニケーションのよいトレーニングになるかもしれません。ですが大事なのは、ゲームとして楽しめたかどうか。楽しい時間を過ごせた中で、何か一つ落とし込めそうなことを職員が見つけられたら、その点にしぼって、職員と振り返るようにして支援しています。