今日の活動
中学年リーダー!
すてっぷに通う小学校中学年のDくん。この夏、目をみはるばかりの成長を見せてくれています。
今の小学校グループは、2年前のリーダーたちが卒業してから新しく入ってきた子たちが中心です。高学年の子もいますが、どちらかというと年下をリードするというタイプではありません。子どもたち主体で話し合う場面(公園で何をして遊ぶ?など簡単な設定)は作りながらも、職員が支援しながら進めてきました。
Dくんはこれまで、こういった話し合いの場面では、積極的に発言することはありませんでした。「ドッチボールがしたい!」など単発的に発言をすることはありましたが、みんなで決めるという過程のなかにはなかなか参加しません。それは言い方が強すぎたり、提案が通らなかった時に感情コントロールができなかったりなどの失敗経験があったのかもしれません。
そこですてっぷでは友だちと楽しく遊べたという経験を増やしていくとともに、話し合いの機会を作る中で友だちと話すことや折り合いをつけるなどのコミュニケーション・社会性課題の成功体験を増やしていきました。そしてDくんの年下の子も増え、迎えたこの夏。Dくんは見事!リーダーシップを発揮してくれています。友だちに「何をする?」と聞いてくれたり、「グッパでチームを決めよう」と提案してくれたり。また年下の女の子に気遣って「やさしく投げようか」と声をかけるなど、相手の立場に立った提案をしてくれています。
友だちへの優しい声掛けや提案が増えたDくん。一方で突発的に強く反応したり否定してしまったりということもまだ見られます。失敗経験につながってしまわないよう、丁寧に支援を続けていきます。
「7,8、10ありがいい!」
小学校に通う子どもたちのグループで今はやっているのがトランプゲームの大富豪。ボードゲームの取り組みの際に、子ども一人ひとりがやりたいゲームを持ち寄って、みんなで遊びや順番を決める機会を作っているのですが、最近は「大富豪がいい!」と声が上がるようになりました。
大富豪はトランプ遊びでポピュラーなものですが、この1年程はすてっぷではあまり取り組んできませんでした。小学校グループの大半が入れ替わったタイミングで、みんなが知っているゲームよりも、誰も知らないゲームを導入から楽しむということを狙ってきたからです。ですが高学年も多くなり、修学旅行など普段はあまり遊ばない学校の友だちと遊ぶ機会も増えてくるだろうと、大富豪を職員から提案することにしました。
さてこの大富豪、ご存じの方も多いと思いますがローカルルールが大変多いゲームです。8切りは大富豪を知っている人ならほとんどが知っているルールだと思いますが、それ以外にも10捨て、7渡しなどのルールもよく導入されます。すてっぷでも、ここまでのルールを最初に導入しました。他には5スキップ、9リバースなど(UNOが元ネタでしょうか)調べれば調べるほどローカルルールが出てきます。ただ子どもたちには「大事なのはどのローカルルールを採用するか事前に相談して決めること」を伝えています。みんなが知っている遊びだからこそ、普段は遊ばない友だちとはすれ違いが起きる可能性があります。なのですてっぷで取り組むときも、始める前に「どのルールありにする?」と子ども同士で相談する機会を作っています。
先日も職員から子どもたちに提起したところ、「7、8、10ありがいい!」「7って何?」「なんでもいいから1枚次の人に渡す」「それ分からんからなしがいい」と次々と意見を出し合うことができました。まだ相談して決めることは難しいので職員が支援に入っています。この日は8切り、10捨てがありのルールで遊び、10捨てを駆使した子が見事1位になりました。ところで大富豪で有名なルールの革命は?というと、2枚出しならまだしも、3枚出し、4枚出しは経験が少なくてわからない!という子が多く、さらに4枚出しなら強さが入れ替わるよと言うとさらに??となるようです。まだまだすてっぷで経験を積む必要がありますが、普段は遊ばない友だちから「大富豪しよう!」と誘われたら、「いいよ! どのルールありにする?」と応えられるよう、今から少しずつ取り組んでいきたいと思います。
支援計画
先日とある研修に行きました。
放課後等デイサービス以外の、様々な福祉施設の方と一緒に相談支援計画を元に事業所内での支援計画を話し合いながら作成する、というものでした。
架空のAさんの事例を基にグループで話し合って作成していくのですが想定された事例のAさんは29歳の施設を利用している方、という設定でした。筆者は小学校教員→放課後等デイサービスで働いた経験しかないため大人の障害を持った方のことを全く知らないな、と思い知らされました。
同じグループ内には就労支援であったり作業所であったりと、大人の障害を持った方と関わる仕事をされている方が多く、筆者が思いつかないような支援が次々と出て、大変勉強になりました。それと同時にすてっぷ、じゃんぷで関わっている子ども達が将来について今より少し具体的に想像できるようになったと思います。
どの分野の方も、「子ども(利用者)中心に考え、支援計画を作る」ということを前提に考えられていました。研修はあくまで架空のものなので多少現実的ではないようなことも「これは〇〇さんにとって面白い活動なのではないか!?」とアイデアが出ましたが、利用者が望む生活、楽しめる活動を目指して計画、活動を考えることはやはり教育でも福祉でも大事なことだと改めて考えさせられた時間でした。
「これ持ってるとざんねん?」
支援学校小学部のAさんは、2~3語文で話し、タブレット端末やおやつなどのほしいものを伝えることができます。友だちにも興味があり、友だちの予定も書かれている全体のスケジュールを見ながら、「○○くん公園、(自分の名前)公園」と一緒に行きたいことを伝えてきます。最近は小学校に通う友だち(Bくんたちの集団)と遊ぶことに強いモチベーションがあり、機会を見て鬼ごっこやトランプ遊びなど集団遊びを狙ってきました。
ただ、友だちの活動の都合もあり、Aさんの要求が叶えられないことも。また集団遊びの中でAさんがなりたい『1番』になれないこともあります。そんなとき、以前のAさんはよく泣き叫んだり、怒ったりして、要求を叶えてもらおうとしていました。そこで、このブログでもたびたび紹介してきましたが、適切に要求できるようにコミュニケーション練習(PECS)を行うとともに、叶えられる要求で「まって」トレーニングに取り組んできました。少しずつ適切に要求し、待てるようになってきたAさん。次は表情と感情がセットになった絵カードを使って、さまざまな感情を表現するトレーニングに取り組みました。特に要求が叶わないときは「ざんねん」と大人に伝え、受け止めてもらえることで切り替えられることが少しずつ増えてきました。
すると先日、AさんとBくんたち3人の友だちとでトランプ遊びに取り組んだときのことです。この日はすてっぷでは二度目の挑戦になるババ抜きにチャレンジ。始める前にAさんと職員とで、カードを見えないように手札を揃える練習に取り組みました。それに合わせてルールの復習をしていると、Aさんがジョーカーのカードを見せながら職員に尋ねました。「これ持ってるとざんねん?」。ルールを『ざんねん』という言葉で理解を示しているAさんに少し驚きながらも、職員は「そうだよ」と答えました。練習や準備も終わり、いざ本番。Aさんにとっては運悪く、友だちが先に抜けていきます。するとAさんは、先に抜けた友だちに「Bくんおめでとうー」「Cくん勝ちー」と声を掛けました。そして最後の友達が抜け、Aさんの手にはジョーカーのカードが残ってしまいました。ですが負けて悔しがったり、怒ったりするでもなく、「(自分の名前)の負け―。残念―。」と言って、次の活動に切り替えたのです!
自分が好きな『1番』になれなくても、練習で身に着けた『ざんねん』という言葉を、自分から使うことができたAさん。とても素晴らしい成長を見せてくれました。その後もジェンガやアイスクラッシュなどゲームを変えながら、45分ほど友だちといっしょにボードゲームをすることが出来ました。全部遊んだ後に、職員から何が一番楽しかったかを尋ねると、Aさんは「ぜんぶ楽しかった!」と答えました。Aさん、すごい!
夏休みの宿題
お盆が明け、夏休みももう少しになりました。じゃんぷに通う子ども達は宿題をほとんど終わらせ、休みを満喫しているようです。
子ども達は夏休みの宿題を持ってきますが、形はさまざまです。学年の宿題をそのまま持ってきている子や、少し内容に配慮がされている子。〇日に〇ページをやる、と計画を作ってきている子もいれば、学校支給のタブレットに宿題が全部入っており、それが夏休みの宿題だという子もいました。(学校統一でタブレットに宿題を入れているそうです。ICT先進校は流石ですね!)
筆者が感じたことは今年の宿題は全体的に宿題が少なくなったような気がしました。教員時代どちらかといえば長期休暇の宿題を少な目に出していた身としては良い方向に進んでいるのかな、と感じました。
宿題は子ども達が自分で取り組むものなので自力で取り組めないようなレベルや量の宿題を出しては家庭の負担にもなるし本人にとって良い経験を積めません。子ども達が必ず出来る量とレベルの問題を渡し、もう少し勉強したい人は学校に私がいる日を夏休みの学級便りに載せ、ステップアッププリントを渡す、という方法をとっていました。
今年は大体の学校で読書感想文や工作が自由だったり、宿題の量も例年に比べ減っており子ども達も実感していました。みんなが黙々と自分んのペースでやっても問題ない宿題の量です。「あとちょっとやー!」「もう終わったで!」と今年はプラスの発言が子ども達から多く出たように思います。
夏季休業のお知らせ
2023年度夏季休業のお知らせです。
「育ちの広場 すてっぷ」は8月12日(土)から15日(火)まで、「学びの広場 じゃんぷ」は8月14日(月)から16日(水)まで夏季休業となります。
営業開始は「育ちの広場 すてっぷ」は8月16日(水)より、「学びの広場 じゃんぷ」は8月17日(木)よりとなります。
よろしくお願いいたします。
「ぼくもバスケシュートする!」
支援学校高等部のYくんはほしいものやしたいことの絵カードを持って渡す練習(PECS)をしています。興味のあること・ないことの差も大きく、公園では大好きな風が感じられるブランコがお気に入りですが、一方でボール遊びは興味が持てませんでした。職員が誘ってボールを渡しても、あらぬ方向へ投げて職員の反応を見ることの方が面白いと、なかなかボール遊びに進みませんでした。
そこで公園ではサッカーボールのドリブルなど自分で出来るボール遊びをすることにして、集団遊びは室内で取り組むことにしました。室内の方がスタート・ゴールを設定しやすく、また待つための椅子を分かりやすい位置に設置できます。ちょうど小学部の子ども達も集団遊びを始めていたので、体の小さなYくんも合同で行い、ここしばらくはゴールシュートに取り組んでいました。
すると先日のことです。Yくんは他の中高等部のZくんたち(普段はY君とは集団遊びを狙わないグループで、この日も別の活動をする予定でした)と一緒に、バスケゴールのある公園にお出かけしました。公園でZくんたちは順番交代でバスケシュートのゴール20本にチャレンジ中。そこへYくんは誰に言われるでもなく自分からZくんたちの近くまでやってきました。Zくんたちはついに20本達成し、休憩へ。すると空いたゴールのところには、なんとYくんが。それも転がっていたバスケットボールを持っています。そしてなんと、ゴールへシュート! しかもシュートが外れてもボールを取りに行き、またゴールの下へ。何回かシュートを繰り返して、最後は見事1本ゴールを決めたのです!
まだ一人遊びの域ではありますが、バスケシュートという友だちと共有しやすい遊びに、自分から取り組めたことは職員一同驚きの成長です。その様子を動画に撮り、帰ってからYくんと動画を見ながら職員が褒めると、Yくんはにっこり嬉しそうにうなずきました。すごい!Yくん。
「こうやって片づけたらいいんだよ」
5月からすてっぷに来ているVくんとWくん。夏休みに入り、休憩時間のお気に入りはテレビゲームです。時間を決めて友だちを誘い合い、わいわい楽しんで遊んでいます。そして休憩時間が終わり、テレビゲームを片づけることに。するとXくん(去年からすてっぷに来ていて、VくんとWくんにとってはすてっぷでの先輩です)が、職員に言われるのではなく自分から、「こうやって片づけたらいいんだよ」とVくんとWくんに片づけ方を教えていました。実はこの姿、これまではあまり見られないものでした。
以前からすてっぷでは、テレビゲームは常時置いておけないため、子どもが自分たちで準備・片づけをしていました。ゲームを始める前にバラバラで収納箱に入っている状態から取り出し、コードをつなげて設置します。そしてゲームが終わったら、コードを外し、また収納箱に片づけます。ですがこのとき、『早くゲームをしたい』『片付けをさっさと終わらせたい』という気持ちから焦り、接続・設置、分解・片付けが雑になってしまうことが多くなっていました。そして電源アダプタが故障したのを機に、ゲーム機の設置・片付け方法をリニューアルすることにしました。コードをつないだまま収納箱に入れられるよう、ゲーム機とコードをすっぽり覆う外箱を段ボールで作り、その段ボール箱ごと準備したり片づけたりできるようにしたのです。
さっそく子どもたちが新しい片付け方に挑戦。片づけ方がシンプルになったことで、より積極的に片づけに参加する子が増え、かつポンポン投げ込むようなこともなく(一つの大きいものになったので当然ですが)、丁寧に片づけるようになりました。そして思わぬメリットが前置きによかった点がもう一つ。片付け方がシンプルになり、子どもたちが自分で説明できるようになった(簡単になった)ことで、子ども同士で教え合ったり、協力して片づけたりする姿が増えたのです。
準備や片付けの手順が多かったり、そのもの自体が多かったりと乱雑な中では、なかなか子どもだけで上手に行うことは難しいものです。そこで準備片付けの手順や約束を視覚化することも一つの手ですが、今回はゲーム機やコード類を子どもだけでも片づけやすいように物理的に工夫しました。これも一種の構造化と言えるかもしれません。休憩時間の中でも、子どもたちが自分でできた!という経験を増やせるよう、工夫していきます。
手指を使った計算
計算が苦手な子どもの多くは手指を使ってたし算ひき算をしていることが多いです。ただそれには理由があり、手指を使うことが手軽ということや10の補数がわかっていないために数えているというわけではなく、10の補数を瞬時に思い浮かべることに困難さがあるなど「数的処理」を補うための外的手段として手指を使うと考えられています。
手指を使って計算している子どもの中にも大きく分けて3つのパターンがあります。そのタイプによって子どもがどこまで計算について理解をしているのかを知ることが出来ます。
①すべて数える方略
「1、2、3、4、5。。。」と被加数と加数を全て数える方略。両手指を使うことが多い。
②数え足す方略
被加数に「3、4、5」と加数のみを足していく方略。加数の指だけを使うことが多い。
③小さい方を数え足す方略
被加数と加数(例えば2と3)のうち、大きい3に小さい2を「4、5」と数え足す方略。この段階では②と同様、小さい2の数だけ手指を使って数えたり指をはっきり立てるのではなくほんの少し動かしながら計算する場合もあります。
このように一般的には手指を使用した計算とひとくくりにすることがほとんどですが、その方略にはいくつかの段階があり、それによって支援を考える必要があります。
今回は①の支援について紹介します。
①の場合、数を唱える際に被加数の次の数を瞬時に思い浮かべられないことがあります。すらすらと数を唱えるためには頭の中で数列を瞬時に思い浮かべる必要があります。したがって数をスムーズに唱えられるようにあんることを支援することから始める必要があります。数を途中から数え上げることや、ひき算で数え引きをするために必要な数え下げなど、基本的な数の理解に基づき数唱がスムーズにできるようになることを目指します。
「『よせて』って言えたよ!」
小学生のUくんは5月からすてっぷに通い始め、3か月ほど経ちました。緊張も解けてきたのか、だんだんとUくんらしさが見られるようになってきました。
先日は小学校グループが2つに分かれて、Uくんのグループは公園に行ってきました。もう一つのグループはボードゲームを終えて一足先に休憩へ。休憩時間はテレビゲームをすると言っていたUくんでしたが、公園から帰ってきたところに、先に休憩していた友だちがしているタブレットが目に入り、「タブレットがしたい!」と気持ちが変わったようです。ところが自分が続きをしたかったタブレットはすでに友だちが使 っていました。するとUくんは「なんでできないの」と泣き出してしまいました。
実はUくん、すてっぷの過ごしの中で、要求が叶わないと思うと声を上げて泣き、適切に要求することが難しいという姿が見られます。このときも職員が「友だちがテレビゲームをするのはどう?」と提案すると、Uくんは「する」と答えました。切り替えはできたUくんでしたが、「じゃあ(先にゲーム機の準備をしている)友だちに『寄せて』とお願いしに行こう」と言われると、「できない!」とより大きな声で泣きだしました。
大きな声で泣いていると、自分から動かなくても、要求が叶ったという経験があったのかもしれません。Uくんは自分から伝えに行くという行動に拒否感を示します。そこで職員は、Uくんをゲーム機が見えない場所に誘導し、カームダウンの時間を取りました。「落ち着いたらおいで。いっしょに伝えに行こう」と声をかけると、しばらく泣いていたUくんでしたが、泣き止んで職員のところにやってきました。1回目はいっしょに行くのを嫌がり、またカームダウンエリアに戻りましたが、2回目はすっと職員と一緒に友だちのところへ行きました。そして「どうしたらいい?」と職員に尋ねました。職員が用意していたメモ(『よせて』と書いていました)を見ながら、テレビゲームの手を止めUくんの方に向いてくれていた友だち(事前にお願いしていました)にUくんは見事!「よせて」と言うことができました。
無事成功体験で終えられたUくん。このときばかりと職員も大いにほめました。子どものネガティブな行動に大人が反応すると、ネガティブな行動がより増長する場合があります。このときはUくんのポジティブな行動(落ち着いた状態で自分から友だちのところに行こうとしたところ)に注目して支援したことで、成功体験に繋げられたのだと思います。
帰る時間になり、テレビゲームを終えようとした時も、「まだしたかったのに」と切り替えづらかったUくんですが、帰りの車で職員に「次は最初から(よせてと)言う」と落ち着いて伝えられました。自分から『次はこうしよう』と気づくことができたUくん。少しずつ成長しています。