すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

宿題

すてっぷでは、宿題がある人はしてもいいことになっています。子どもたちが帰って来ると「今日宿題はありますか?」と聞きます。「ない」と言う人の中には、「(宿題をやりたく)ない」という場合があります。大概は、その子の苦手なものか、弱いところが配慮されていない宿題です。

Yさんは、とってもお喋りが上手で目先がきく活発な子どもです。宿題が「ない」というので、カバンの底を探すとくしゃくしゃになった国語のプリントが一枚出てきました。「お話を読んで、あてはまるものに○をしなさい」というプリントでした。あんなに饒舌にしゃべっていたYさんはたどたどしく文章を読んでいます。読むだけで100パーセントの学習パワーを使ってしまう読み方です。とても考えるところまでエネルギーが残っていない感じです。結局、読んであげればすぐに正しい回答を考えることができました。学校の先生はYちゃんのこの苦労と屈辱を知っているのかと気になっています。

板書を見ながらの作業

登り人形「7/24 登り人形」の工作をしました。W君はお喋りが上手で記憶力も優れた子どもです。スタッフから、登り人形の作り方をホワイトボードに丁寧に書いているのに、W君全く違うものを作るのでなんでだろうという話がありました。手元の手順書で仕事を進めるのと、板書を見ながらの作業では天地の差に感じる子がいるのです。

発達性協調運動症(障害)については前回「11/22 発達性協調運動障害」で掲載しました。それには様々な原因がありますが、原因の一つである「見る力」について考えます。日常生活の中で、不器用さに悩んでいる子どもは意外と多いのです。のりを使えば手や机までベトベト・・・。ハサミで画用紙を切ったらガタガタ・・・。折り紙を折ればぐちゃぐちゃ・・・。これは手先の問題ではなく「見る力」に問題があるのかもしれません。

1.両眼視の問題
左右眼の視線を揃え、右目と左目に移った像を重ね合わせて一つの映像として知覚し、遠近感や立体感を捉える眼と脳の働きのことを「両眼視」といいます。この機能がうまく働かないと、遠近感や立体感を正しく把握することができないため不器用さにつながります。
2.視知覚・視覚認知の問題
形や空間の情報を分析し、それらの刺激を過去の経験に照らして解釈する力のことを「視知覚・視覚認知」といいます。この機能がうまく働かないと、遠近感や立体感を正しく把握できず、不器用さにつながります。
3.目と手の協応の問題
目から取り込んだ情報と連動して、手や身体の運動を調整する力が弱いため、正確で素早い動きができず、不器用さにつながります。視覚と運動の連動をトレーニングする「7/16 ビジョントレーニング」が効果的です。

このように、「見る力」と不器用さは様々な点で関係があることが分かります。日本では、見え方=視力と考えてしまいますが、視力がいくら良くても、視覚機能に問題があるケースも多いです。米国、カナダ、ヨーロッパには、オプトメトリストといった、視覚機能の検査・訓練を行う専門職があり、国家資格になっています。日本ではあまり聞かれませんが、アジアでも、フィリピン、韓国、中国など、オプトメトリストが認められている国、認められつつある国があります。米国では、視覚機能に問題があるために学習能力を発揮できない子どもたちや、視覚機能に問題があったり、より視覚機能を高めたいスポーツ選手、また、一般の人でも、見え方に何か異変を感じたら、まずがオプトメトリストのクリニックを訪ねるのが当たり前になっています。

私たちは調理など手順が必要なものは一人一人手順書を渡しています。それは手順を覚えておらず、作業速度が各人違うということもありますが、板書まで視線を移動させて視覚情報を短期記憶して保持したまま手元の作業に戻るということが難しい方が多いからです。もちろん板書だけで理解できる子もいますが視知覚や短期記憶が苦手な人に合わせて準備しておけば誰も困らないわけで、これが障害者差別禁止法に定められている合理的配慮(特定の障害者を対象としている施設ではただの準備不足)です。

暖冬

今日、光明寺の梅のつぼみが膨らんでいました。来週遅くには開花する感じです。西山を登っていくと、展望広場からは京都が一望でき京都タワーや五重塔もくっきり見えていました。登り始めるとジャケットはいらないくらい暖かいです。もう寒くはならずこのまま春を迎えるのでしょうか。昨日は山間部や北部では降雪があったそうです。京都市内の降雪観測が始まった1961年以降、降雪記録がない年は2013年以外ありません。今年は2回目の無雪年かと案じてたら、5日(水)頃から冬型の気圧配置が強まり、関西の上空1500メートル付近にマイナス6度以下の寒気が入る予想が発表されました。これは今季で最も強いだけでなく、数年に一度レベルの強さなので、降雪が期待できるかもしれません。

京都PECSサークルのご案内

 

京都PECSサークルのご案内

PECSを使ってのコミュニケーション指導を実施している人たちが集う学習や実践交流の場として,「京都PECSサークル」への積極的なご参加をお待ちしています。
■ 対 象:PECSレベル1ワークショップ受講者

■ 活動概要
オフライン(研究会)・オンライン(ZOOM・ML)でのマニュアルの学習,実践交流
*日 時:ほぼ3か月に1回 最終金曜か土曜
*場 所:現在は「ZOOM」、令和元年までは「こどもみらい館」
*地下鉄のご利用 地下鉄烏丸線「丸太町」 徒歩5分
■事務局
代表    門 眞一郎(児童精神科医フリーランス)
      久賀谷 洋(合同会社 オフィスぼん)
      澤 月子 (南山城学園SV)
      楠田 千佳(臨床心理士)
      灘 明日香(京都市発達障害者支援
                                                         センターかがやき)
      真鍋 由香(京都市立東総合支援学校)
                      辻村 文緒(京都府立丹波支援学校)
      加藤 健 (南山城学園)

【お問い合わせ、お申し込み先】
E-MAILにてご連絡ください。 owner_kpecs@googlegroups.com
アットマークは小文字にして送信してください。

学童保育と放デイ

学童保育と放デイを両方利用している利用者は多いです。乙訓地域の場合は放デイの支給量が通常週3回に制限されているので、他の地域より学童保育を利用する方は多いかもしれません。障害のあるなしに関わらず誰でも受け入れていこうというのが社会の流れですが、全ての学童保育施設でどんな子でもそのニーズに応えられているわけではありません。インクルージョンという考え方が福祉や教育の世界で言われていますが、まだまだ言葉だけの理想的概念と言わざるを得ません。公的金銭的な設備投資は難しいにしても、工夫すれば一歩前に進める事例でも、これまでの指導の考え方や同調圧力が邪魔をして踏み切れない現場や職員マネジメントの困難さがあります。

放課後や長期休業中も、その子なりに多様性のある社会の中で生きてほしいという考え方を保護者が持つことは大事なことです。しかし、騒々しい環境が苦手な発達障害の子やそのグレーゾーンの子にはストレスが多いのも事実です。「どうしたら学童クラブでストレスなく過ごせるか?」と学童クラブの指導員も保護者も悩むことがあると思います。障害に合わせて環境を調整する合理的配慮という言葉がありますが、先に述べたようにお金の問題ではない現場マネジメントの課題があります。一人でも納得しないと新しいことに踏み出せず、議論の堂々巡りをしている現場ほど、分担すると個人責任にしてしまいがちな傾向があります。頑張って新しい提案をしても、失敗したら自分だけが責任を問われるのでは提案する気にはなりません。この問題を解決するリーダーの配置こそが必要なのだと思います。

また、保育園では子どもの力も弱く、動作も比較的ゆっくりで、予測できないことも限られるため、行動をある程度は制することができます。幼児はそもそも生活のほとんどに支援が必要なので、障害があるないで支援の考え方にあまり差がありません。保育園では受け入れてもらったのに就学したら冷たいと思っている保護者には、先述のように保育園とは違うという説明が必要です。

また、行動問題が生じて他の子と違う個別の支援が必要なのに、行動問題は障害や発達の問題なので仕方がないとされていたり、反対に加配スタッフが子どもに寄り添い過ぎて自立に必要な支援になっていない場合も、障害があるのだから大人が寄り添えば良いという「善意の誤解」があります。

学童保育の職員の質の問題などか取り沙汰されますが、放デイが整備されつつあるので、学童クラブの障害児保育の需要は下がってきています。子どもにとっても、10人ほどの集団で過ごす方がよほどストレスなく過ごせるからです。それなら学童保育から特別な支援を要する子どもはいなくなっていいのでしょうか?それは違うと思います。今、インクルーシブを掲げて障害のある子どもの施策が進められていますが、その結果、障害児の囲い込み(エクスクルーシブ)とも言われる現象が起こっています。ちょっとクラスでついていけなくなると支援学級に入級する流れが起こっています。その結果支援学級に知的に遅れのない児童が増え、結果、支援学校小学部に軽度の知的障害の子どもが増えるという現象が見られる地域もあります。これは特別支援教育が進む上での発展途上の中間現象かもしれませんが、振り子がブレ過ぎているように感じます。

私たちは学童保育に隣接した障害や発達についての専門技術を有する放デイがあればインクルージョンは進むと考えています。何もかもを満たす施設を望むのではなくお互いのいいところが発揮できるように、物理的に近づけて設置すればいいのです。隣同士であればスタッフの交流も進むし、様々な支援スキルも伝えることができます。教育だ福祉だと縦割り行政の壁にはまり込まず(学童保育は小学校内にあるので教育行政管轄が多いです)、自治体のトップが相互乗り入れのグランドデザインを描いて実行することが求められます。

少数の子どもの施策がなかなか進まないのは児童期が短く成長変化の多い時期のために、要求が実現するまでに子どもは次のステージに上がってしまうので、組織的な動きになりにくいのです。けれども多様性を認めた社会を作るためには、児童期にインクルージョン環境の中で特性に応じた支援が必要な子どもに行われ、それを他の子が日常的に見ていることがどうしても必要です。このプランを市民全員で共有できるなら共生社会は早い時期に実現できるのではないでしょうか。