すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

放デイは何するところ?

近頃五年生のU君が宿題をすてっぷでやらなくなりました。理由を聞いてみると、1.すてっぷは勉強する場所ではない。2.一緒に勉強する人がいない。とのことでした。今までもきっとそう思ってたんでしょうが、5年になってやっと言えた感じです。

すてっぷは狭義で勉強する場所ではないのはその通りです。ただ、高学年の場合は短い放課後の時間を遊びに当てるなら、帰宅してから1時間は勉強時間をとる必要があります。その時間はどこでとるのか彼と話をする必要があります。また、みんなが遊んでる中では自分も勉強する気になれないのはわかるので勉強ルームがあれば30分でも集中して宿題などができるのか話し合う必要があります。子どもが言ったことはそのままにせず、ではどうするのがうまくいく方法なのか話し合って終わらないと、せっかくの子どもの発言をリスペクトしたことにはなりません。

異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション

高等部のT君は、新しく来た女性スタッフの脚が気になってしかたがありません。吸いつけられるように見てしまい、接近してきます。スタッフが2階へあがると階段の下から「ちょっと、ちょっと、おねーさん!」と下に降りてくるように声を掛けます。

ASDの人は、社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーションのそれぞれに質的な偏りがみられる「3つ組の障害」があります。他者と相互的な交流を行うことが困難という社会性の特性。自分の好みのことを一方的に話し続けることや、言葉を字義通りに受け取ってしまう、言葉の裏を読むことが苦手という社会的コミュニケーションの特性。ただ蒐集することだけで満足したり、目に見えない物(イメージ)の共有は苦手という社会的イマジネーションの特性です。こうした特性を持ちつつ、子どもの頃からの特性に合わせた「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」の支援がないと、異性に興味を持った場合、周囲から嫌がられたり怖がられたりすることが少なくありません。

相手の了解なく一方的に近寄ったり、「今はだめ」なら後ならいいんだと思ったり、気に入った部位を見続けたりすることで怖がられて社会参加の機会を失ってしまう人もいます。「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」に、T君と取組んで行こうと思います。

 

お庭の裸足教育

Sちゃん、公園の砂地を見つけると靴を脱いで走り出します。それはまだいいのですが、川遊びの時も頑として怪我防止のための靴を受け付けてくれません。砂地と水は裸足と決めているようです。

最近はだいぶん少なくなってきたのですが、就学前の施設の園庭で裸足保育を推奨しているところがあります。足裏の感覚刺激は脳への良い刺激となり良い発達の一助になるという昭和伝説です。欧米では、赤ちゃんの頃から家の中でも靴を履き、はだしは風呂と寝るときくらいです。裸足保育で過ごした子どもの身体、認知、情緒面での発達が統計的に有意に高いと言うデーターもありません。どうやら、裸足が良いという科学的根拠はないようです。

就学してきたASDの子どもの中には、砂地を見つけると靴を脱いで走る子が時々います。就学前施設に引き継ぎに行ってみると子ども全員が裸足で園庭で遊んでいたというケースが多いです。ASDの子どもは、場所と行動がセットになり、なかなかそれを変えてくれません。Sちゃんには、公園には遊び靴の入った靴袋を、川遊びには川遊び靴の靴袋を運んでもらい遊びと靴はセットだよと教えるプロジェクトを検討中です。

 

読み書き指導どうしましょう

自粛開けの新学期が始まって、放デイスタッフはお迎えの際に利用者の子どもたちの担任の先生方に御挨拶をしています。そこで、昨日掲載したような子どもたちの視覚支援による見通しの持たせ方をお互いに交流したりもします。

小学校では、特別支援学級の担任の先生とお話しすることが多いですが、そこで話題になるのが、子どもたちの読み書きの学習の進捗です。全般的に遅れのある子どもには、発達に合わせた課題を与えていけばうまくいくので、そう大きな問題にはならないのですが、発達性読み書き障害が疑われる子どもの場合は、子どもの見方からずれが生じてしまう事が少なくないので、少し情報を交換するくらいでは、今後の学習指導の見通しが持てないことが多いです。

先日もR君の書きの指導についてどうすればいいか、考えあぐねているという話を先生から聞きました。「どうすればいいんでしょうねー」と言われるので、「生活型の放デイは行動の問題については療育的アプローチができます。ただ、学習障害への支援はいくつか提案できますが、取り組みの機会はあまりないので是非学校で取り組んでください」とお願いしました。

読み書き障害の支援の全国的な傾向は東高西低のようです。関西にも大阪医科大学LDセンター等の民間センターはあります。しかし、関東は市川のLD・Dyslexiaセンターが筑波大陣営、四ツ谷のスマイルプラネットは学芸大陣営と連携しています。そして、港区には老舗のディスレクシア支援団体であるNPO法人 EDGE(エッジ)がLD支援の詳細な研修まで引き受けています。そんなわけで、読み書き障害の支援策は民間からの情報量の多い関東の先生方は関西の先生方より良く知っているのかもしれません。関西でも急速に読み書き障害の存在と最新の支援策を広げて現場の先生方に知ってもらう必要があります。

 

 

送迎トラブル

毎日放デイの送迎車は、支援学校や小学校にお迎えに行きます。低学年や障害の重い人にとっては、今日はスクールバスに乗って帰るのか、放デイの送迎車に乗ってどこの事業所に行くのか覚えるのは困難です。Qさん、今日も放デイのお迎えでスクールバスに乗るつもりが崩れて大泣きです。

そこで、視覚支援が登場するわけですが、多くの場合の誤解は、視覚でわかるようにしておけば理解できるだろうと考えてしまうことです。もちろんそれでOKな人も少なくないですが、低学年時などはそもそも不注意で、記憶にとどめる時間が短いとか、覚えていたけど違うものを見た瞬間に選択が変わってしまうなどいろいろ課題があります。

こういう人の場合は、教室から「本日の行き先カード」(写真でも絵でもいい)を本人が昇降口まで運んで、乗り場のカード入れにマッチングさせると自分の行動について記憶が保持しやすくなる場合があります。自閉症支援・視覚支援と言ってもその人の状況に応じてやり方を工夫する必要があります。効果があると言われる支援はどんな場合も、個別化してカスタマイズしてこそ威力を発揮します。