すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

周知の事実

スタッフのCさんが「子どもたちが食事中しゃべりすぎます」と言われたので、みんなが「?」となって、食事中にこどもはおしゃべりするのが当たり前だし、不注意な子どもの集団ならなおさらお喋りなのは仕方がないと言う反応でした。

テレビを見ている人ならすぐに「武漢ウィルス感染予防は食事中の沈黙が大事」とわかるのですが、若い人はテレビはそんなに見ないのです。無症状者の検査で陽性反応が出ても「感染者数がまた増えた」と毎日煽りまくるテレビからの「不安の感染」は、視聴していなければ「感染」しません。だから、予防が大事と言う意味がすぐには伝わらず、食事中おしゃべりが止まりそうにない子どもに「マナーとして注意してほしい」と伝わったのです。Cさんの真意は、「感染拡大中」は食事場所を分散して、壁に向かって食べさせたいという事でした。

これは実践現場ではだれにでも言えることですが、本人が当たり前だと思っていても周囲の人は必ずしもそうは思っていないことがよくあるのです。それを放置しておくと、組織内がだんだん疑心暗鬼になってしまうので、小さなことでも違うなと思った事は言いやすい職場づくりが大事なのはいうまでもありません。ただ、その時に違う考えが存在することも享受しなければなりません。

テレビ等大メディアが流す情報の信頼性が問われている今、テレビが報道しても誰もが見ているわけでも信じているわけでもないという事が、当たり前だと考える心得が、めんどくさい話ですが必要なようです。

課題分析・機能分析

Bちゃんにどのようにすれば線の中に色を塗ることが指導できるかという質問がスタッフからありました。スタッフが教えようとしているのは、ハートのマークに線をはみ出ずに色を塗って欲しいということです。「線を太くしてみたらどうか」「線を物理的に超えないように高くしてはどうか」「線の外は色がぬれないようにハートマークを切り出して色を塗らせてはどうか」といろいろ考えました。

対象者が目標を達成するために、スモールステップで行動を考えていくことを課題分析と言います。課題を順番に小分けにして教えることは支援者の工夫やアイデアが大事です。課題分析ができたら大事なことはあと一歩で完成するところから取り組むことです。つまり完成形を知ってもらうことです。それができたらもう一つ前から取り組むようにします。大人は一番初めから取り組ませようとするものですが、それでは目標が遠すぎることが少なくないからです。これをバックワードチェイニング(逆行連鎖化)といいます。身辺自立課題などではよく使う手法です。ズボンを膝まではあげておいて後を子どもに任せるやり方です。

ただ、道具や教材の教え方の工夫だけでなく、どうすればBちゃんが「やったー」「またやってみたい」と思えるかです。これを機能分析といいABC分析などが知られています。このブログで機能分析をしつこく取り上げているのは、子どもがその行動を利得に感じているかどうかが一番大切なことだからです。いくら上手に教えてもまた自分でやろうとしないなら再現性がない支援なのです。どうしても、我々は手元だけを切り取って考えてしまいがちです。子どもの行動を変容させたいなら、この両者の分析が大事なのです。

我慢をしてルール通りに参加する

ボーリングゲームでA君が負けるのが嫌で残したピンを手で倒したので、倒れるまで投げるように支援したという報告がありました。それは狙いが違うのではないかという話し合いになりました。

負けるのが嫌でズルをしてしまうことについて、その場で指摘すればきっとA君はひっくり返って怒るかもしれません。そして、それは適切な支援とはいえません。だからと言って、何回投げてもいいというのでは何が教えたいの?ということになります。

要は、A君が少し我慢をしてルール通りに参加することが「一番」なのだと教える工夫が必要です。まずは、A君とゲーム前に取引をするのはどうかと言う意見がありました。負けてもズルしなければ、A君の好きなビデオをいつもより10分多く見られるとか、大好きなオレンジグミを10個追加など契約をして臨めばどうかということです。そして、ルールを守った手柄に「えらい!すごい!日本1!」と褒めたたえて、やがては賞賛だけで契約が成立するようにならないかという話をしました。

ただ、ルール遊びが楽しめる小学生同士の課題というならまだしも、青年期になっても負けると嫌な気持ちになると分かっている人に、敢えて勝ち負けゲームを提供するメリットは無いと思います。ならば、こんな話し合いは必要ないと言われそうですが、二者択一のマニュアル対応ではなく、利用者をリスペクトした支援とは何か考え合うプロセスがスタッフには必要だと思うのです。

 

トイレ問題

帰宅準備をするなど、行動を大きく切り替える際にASDの人たちの中にはトイレなど静かな場所で行動を切り替える準備をする場合があることを以前書きました。「席をはずすのはいけない事か?07/03」や「トランジションカード 07/16」  で話題となった彼は、帰りの促しをすると声掛けだろうが、スケジュール(ワークシステム)だろうがトイレに入ってしまうというのです。

そこでスタッフから、トイレにタイマーを持ち込むのはどうか?5分前くらいからトイレに行かせてはどうか?と提案がされました。「家でも出かける前には長くトイレに入っている」という家族からの聞き取りも示されました。トイレは公共の場所だから独占させるのは良くないと言うのは当たり前です。ただ、当たり前だからといってタイマーをトイレに持ち込むだけで本当にいいのかということです。もしタイマーが通用しないならあとは実力行使しかありません。

その前に、いくつか工夫をして、彼との間で平和的に折り合いをつけるチャレンジがあってもいいのではないかというところで落ち着きました。さてどうなるやら、また報告します。

ビジュアルドライブ(視覚優位?支配?)

魚釣りゲームにあまり気のりしていないZ君にハッスルしてもらおうと、魚の代わりにZ君の大好きな「でこぼこフレンズ」のキャラクターを釣る設定にしました。確かに、でこキャラを釣りつくすまではZ君張り切りましたが、他のスターウォーズキャラや戦国キャラには見向きもせず、「はいおわりー」とばかりに早々とゲーム離脱。以前は気のりはしなくてもたくさん釣り上げようと最後まで参加していたのにと報告がありました。

ASDの人は視覚が優位なので、聴覚から入力した情報よりも視覚から入力した情報の方が優位に働きます。「たくさん釣りましょう!」というスタッフが話した情報よりも、大好きなでこぼこキャラが缶釣り対象となっているので誤解が起こり、「フレンズを全部釣って終わります」という情報に塗り替わってしまったのでしょう。これをASDのビジュアルドライブと言います。

確かに視覚で情報を示した方がわかりやすいのですが、逆に言うと示し方が不適切で、その視覚情報が強すぎて他の情報が吹っ飛んでしまうこともあります。「~してはいけません」を絵にかいて×マークで示すことがありますが、この×マークばかりを示して遠足ルールを説明した結果、「×ばかりだし、もう遠足行かない」と泣き出す子がいるくらい強烈な刺激になることがあります。ビジュアルドライブは、視覚的刺激に支配されてしまうという意味もあるので注意が必要です。