すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

節目だから進路を考えられる

土曜にG君が昼過ぎにやってきて「また、やってしまった」と朝から来られなかったことを反省していました。週末は自分へのご褒美に、平日我慢しているゲームを夜中までやることにしているそうです。そして、今度こそは朝から放デイに行くぞと決意するのですが、朝目覚めても「もうちょっと寝よ」と昼まで寝てしまうそうです。

6年生の2学期ともなれば、子どもは中学校の生活に思いを馳せてあれこれと情報を友達などから収集するものです。でも、不登校の子どもにはリアルに情報を得る機会もないし、節目の時期の雰囲気も感じることができません。親や周囲の大人は進路についてあれこれ相談したり、悩んだりしますが、進路について正面から考える機会を与えられていない子どもには、その内容も親の思いも十分には伝わりません。大人は配慮のつもりで学校の事を話すのを控える場合が少なくありませんが、それではますます子どもは情報が得られません。

進路選択という節目の時期は子どもにも親や関係者にも大変な時期ではありますが、成長の時期でもあります。親や関係者は新しいステップに進むための情報を子どもに示し、子どもはできれば実際に見て自分の進路を考える機会です。これは節目の時期だから出来ることで、いつでも出来ることではないです。当然、大人と子どもは知識量が違うので意見の食い違いもあるし、正しいとわかっていていても反発することもあります。けれども、それは双方にとって殻を破るときの痛みです。自分の選択を表明することは、自問自答を深めます。「またやってしまった」という彼の言葉に「次こそは」という可能性を感じながら、進路のことを考えさせられました。

VOCAセットできました!

前回「VOCA 09/15」に掲載したように、LさんにVOCAに取り組んでみてはどうかというお話をお母さんにしました。Lさんにはボタンの意味を理解してもらうために、お散歩犬玩具をケーブルでつないでボタンを押せば鳴きながら歩く、手を離すと止まるというセットを作りました。そこからボタンを押せば変化が起こることを伝えようという事です。

それと並行しながら、ボタンを押せば「もっとー」とか「おかーさん」とか「せんせーい」と呼び声を録音して、手遊びをするとか、散歩に出かけるとか、おやつのおかわりをするなどのVOCA(Voice Output Communication Aid)に取り組んでもらいます。何と言っても学校の生活時間が一番長いので、学校で取組んでもらえるようにお母さんからお願いしてもらいます。ただ、おもちゃのボタンなのですぐに潰れるかもです。

 

BOOKOFF

K君が本棚に並べてある「結界師(田辺イエロウ 小学館)」の欠番があるのが気になって「全部揃えたい」と前から言っていたので、BOOKOFFに探しに行きました。ただしBOOKOFFですから必ずあるとは限りません。あちこちのお店を探すことになります。でも、そろえたいK君には嫌なことではありません。

放デイの漫画本は欠番だらけですから、そのうちK君文庫ができるかもしれません。1冊110円もうちょっと安くならんかね。結界師は全35巻だけど10冊くらい欠番で、ちょっと出費が痛いです。

結界師は妖怪退治のお話で、結界師である主人公が、夜の学校を舞台に「結界術」を使い妖怪を退治していく物語。平成18年度(第52回)小学館漫画賞少年向け部門受賞。2020年6月時点で、累計発行部数は1700万部を突破している人気漫画。ジャンルとしては「鬼滅の刃」と同じジャンルのようです。などというとファンに怒られます。主人公が鬼と化した妹を人間に戻す方法を探すために戦う姿を描く和風剣戟奇譚の「鬼滅の刃」は、22巻で1億部を突破しているので足元にも及ばないというべきなのです。

メモ書きと読み書きの苦手

他所で受けた検査の結果から、空間や位置の把握が苦手そうなAちゃんが、紙粘土で作ったおかずを、お手本通りお弁当箱に詰める課題に取り組んでいました。いちばん大きなおにぎりでも、指でつまめる位のサイズです。手先の不器用なAちゃんにとっては少し難しいところもあったと思いますが、よくお手本を見比べながら、丁寧に詰めていました。

楽しかったようで、いろいろアレンジがしたくなったAちゃん。スタッフに作っておいてほしいおかずが次々と思い浮かぶので、ふせんに書き出すことにしました。

ただしAちゃんには読み書きの苦手があります。『レ…タ…ス』と書きたいけれど、すぐに『タ』が想起できず、鉛筆が止まります。ほんのいくつかの単語を書くだけでも一苦労です。

こういう時に、どういう支援をしたらよいか。予め想定していた学習の場面ではないので、スタッフも書字支援の十分な準備がありませんでした。読み書きの練習場面ではないので、細かい字の間違いを指摘せず、楽しく『書いて伝える』ことそのものを楽しんでほしいのです。この時は、わからない字をスタッフがモデリングして、それを写しながら仕上げました。Aちゃん、ふせんを3枚も自分で書きました!次回のお弁当作りを楽しみにしています。指導後、事業所で相談すると『iPadなどで音声変換してみたら』とアイデアをもらいました。次回、同じような機会があれば試してみたいと思います。

読み書きの困難がある場合、ちょっとした『読む』『書く』に伴う、易疲労性を無視することはできません。本人が、『今は字を勉強する時間』と構えを持っているときならともかく、遊びの場や、読み書きが情報整理の手段でしかない場合、読むことや書くことの辛さで、やりたいことや考えたいことを止めたり諦めたりすることはとても残念なことです。

じゃんぷはLD支援に積極的に取り組んでいこうとしていますが、読み書きの困難と向き合うというのは、本人にとってはどういうことか、読み書きの苦手がありながら目の前の事に達成感を持つにはどうしたらよいか、そのことをお子さんやご家族と考えていける場でありたいなと思っています。

スタッフの療育の理解

J君が自立課題をするのを若手スタッフに任せました。内容はビー玉をつまんで穴に入れるプットイン課題です。スタッフは丁寧に一つ一つJ君がビー玉をつまむように指示し、穴に入れるたびに「すごいねーできたねー」と励ましていました。それを見ていたスタッフが、自立課題というのは自分の力で最後までやり遂げることを目的にした課題で、声掛けや行動プロンプトはできるだけ少ないほうがいいとアドバイスしました。

「なんでですか?」と若手スタッフの質問にアドバイスしたスタッフは驚いたそうです。若手と言ってももう1年以上実践しているスタッフから「初心者あるある」の質問を受けたことに驚いたというのです。確かにスタッフには常勤のスタッフだけでなくアルバイトのスタッフや経験の浅いスタッフがいますから、毎日、子どもへの指示の出し方や距離の取り方も説明はしています。

しかし、なぜ自立課題に取り組ませているのか?なぜ、声掛けを少なくするようにしているのか、なぜ、子どもとの距離をつめないようにしているのかについて、その目的を話したことはありません。支援のハウツーは話すけど、ここの療育が何を目指しているのか説明したことがありません。そんなことは自明の理だと、当たり前のことだと常勤スタッフが思っているからかもしれません。でも、結構このコンセプトは普通の人には当たり前ではないのです。人は励まされたり、お世話されて頑張ろうとすると理解されているからです。そして、もしもそれが真実ならなぜJ君がこれまでそうならなったのかという想像力が必要になります。

どんなに障害が重くても、どんなにハンディーがあったにせよ、人間は自分の力でできることで自尊心を育てるのです。できることならお世話はされたくないし、一人でやりたいのです。これは障害があろうがなかろうが同じです。もしも、成人のあなたがあれこれができなくていちいち人の手助けや励ましがいるとすればこれほどめんどくさいことはないという想像力が必要です。

そんなわけで、月曜から1週間、スタッフに「子どもたちが少しでも一人で自立して行動できるように、スタッフのみなさんの工夫をお願いします。次週はそのアイデアをお一人ずつ話してください。」というアナウンスをすることにしました。さてどんなアイデアが出てくるか楽しみです。