すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

アセスメント

支援で最初に重要なものはアセスメントです。医療でも診断がまず大事です。どこが痛いのかまず調べます。頭が痛い人に消化薬を処方したり、腹痛の人に頭痛薬を出さないのは当たり前です。ところが、教育や福祉の現場ではそれがちょくちょくあって、悪意はないがいつまでも頭痛の人に消化薬を出し続けていることがあります。この間違いの多くの原因は教条主義とアセスメントを動的に捉えられないPDCAサイクルの欠如です。

K君は表出のコミュニケーションが弱いと言われてきました。ASDの人ならある程度言語がわかるのに不適切な行動をしている場合は、まず表出のコミュニケーションの弱さを疑います。それで大体の子どもはアセスメントOKですが、うまくいかない場合があります。表出を支援している場所なのに不適切行動が減らない時や、他の生活場面では不適切行動がないとするなら、表出以外に何かあるなと考えてこれまでのアセスメントを疑ってみます。

課題が難しい、生活がつまらない、褒められることが少ない等が考えられます。しかし、どんな子でもそんなに自分のことは分かってはいません。ですから、「自分はOK」と思える生活かどうか、「好きなことがある」のかどうか、「君なかなかやるね」と褒められる人がいるかどうか等をトータルに見直す必要があります。また、弱いところだけに着目した療育は必ず失敗します。必ず強みや得意なこと楽しいことと組み合わせて実施できているかも重要です。K君の生活を見渡せるほどの放デイの利用回数がないので分析は難しいのですが、定点観察をしながらアセスメントをすすめたいと思います。

カタトニア

J君に、大好物のおせんべいをメニューに示しているのに「おやついりません」といいます。どうも調子が悪いようです。顔色もよくありません。他の様子を観察すると、自立的なスケージュール行動はできていたはずなのに、その日はスタッフが誘導しないとなかなか動けませんでした。

J君にはカタトニアが時々出ます。カタトニアが出ているなと判断した際は、J君のタイミングで行動が切り替えられるように、いつもより本人と距離を取って待つようにしています。ただ、どれくらい待てばいいか、状況を見ていつ声掛けをするかは、本人の状態もあるしスタッフによって差があるもの事実です。

ASDにカタトニアの症状が出るのは、10代中盤の中学生ぐらいから20代前半ごろと言われ、期間も数ヶ月程度のものから数年間にわたる物まで幅広いです。カタトニアと思われる症状には、動作の停止、動作の遅れ、行動のやり直しなどが有ります。

飲食時の動作では、飲食の際に自分から動き出せずに止まってしまったり、摂取する動作が非常に遅く定められた時間内に食べられない事があります。本人のお腹の調子が悪かったり食べたくないのかと思い片付けると、「食べる」と訴え最後まで食べることもあります。場合によっては自分ではお皿から口まで食べ物を運べなくなってしまい、周りの大人が介助をして食べさせることもあります。飲食の遅れがあると時間内に食べ切れず、体重が減ってしまう事もあり注意が必要です。

室内の移動や屋外への移動、車に乗り込む際などに動けなくなったり、移動がとても遅くなる事があります。動けなくなってしまったときにカウントダウンや様々な声かけで促したりしても動くのが難しく、移動するのにとても時間がかかる事があります。自宅でも外出時には1時間ぐらい前から移動を促したりしても、学校のスクールバスなどに間に合わない事もあります。また、移動の際に部屋の敷居や段差などがあると、そこをまたごうとする行為で止まったり、何度もまたぐ動作をやり直したりする行動が見られる事もあります。

トイレで排尿の際に便器まで行きズボンとパンツを下ろしますが、そこで止まってしまい排尿をする事もパンツやズボンをあげる事もできなくなることもあります。また、本人は既に何度も行って理解している作業や動作にもかかわらず途中で止まってしまい、周りからの指示や促し、場合によっては体を押して前に進ませたりさせないと次の動作が行えなくなってしまう事もあります。

カタトニアは、指示をしても抵抗して嫌がる場合もある(周囲には嫌がっていることも伝わらない時がある)ので穏やかにかかわる必要があります。治療方法には薬(向精神薬等)による治療方法があります。カタトニアの原因や症状により治療方法や服薬する薬が変わってくるため、専門の医療機関での診断が必要です。

 

 

ホームページのお休み

毎度ご愛読いただきありがとうございます。
ホームページ等のメンテナンスのため12/16水曜まで掲載をお休みします。しばらくお待ちください。

しんどいです!

前回お話していたW君の交渉は進行中なのですが、先日W君は自分で契約した回数ができないと訴えてきたのです。10本を二回やると契約したのですが、2回目の時に「しんどいです。やりたくないです」と訴えてきたのです。スタッフの偉いところは「たかが缶潰し10本じゃないの」とはいわずに、「そうですか。では今日はやめましょう」と受け止めたことです。

W君のしんどい中身は良くわかりませんが、作業中にこんなことを言ったのは初めてなのです。たいがいは、始まるまでに「いやです」「しません」か少量付き合い程度に作業するかだったので、今回のような中断の要求は出しようがなかったとも言えます。でも作業中に彼としては思うところがあったのでしょう。その契約の内容がまずかったのか、本当に途中でやるせなくなったのかはW君にしかわからないことですが、彼の発言は尊重したいし、契約の仕方にもう少し工夫ができないかどうか次に生かそうと話し合いました。

熱い心と、冷たい頭

子どもの検査所見にはいろいろあります。観察は素晴らしいのに、で、どうするの?と具体的な支援が見えない場合があります。『何を指示しても嫌だ嫌だと拒否するI君(4歳児)の相談があったので、検査を行いました。検査者と関係が持ててきたので、模写課題をやってみようとしました。I君検査者が持っている模写カードを盗み見していて「簡単なのは嫌やで」というので難しいかなと思ったのですが正方形模写(3:6)に挑戦してもらいました。

「見んといてや」と隠すように正方形模写に一生懸命取り組みました。できた模写を見てみてみると、四角の頂点がどうしてもうまく描けず、何度も修正してモデルの絵に近づけようとした軌跡が描かれています。なりたい自分への葛藤というI君の願いがそこには表れていました。嫌だと言うI君を頑張れと追い込むのではなく、I君が自分の力で取組もうとしたり修正してくるタイミングを大事にしてあげたいものです』

I君への思いが美しい表現で綴られています。でも、これでは「ちゃんとしなさいと追い詰めないで待つように。そのうち自分で取組むと思うよ」としか読めません。嫌の原因はできないかもしれないという不安が高まるからだというのは良くわかりますが、大人の側が追い込んでいるからというだけが理由だろうかと、応用行動分析では考えます。「課題の与え方がボトムアップでゴールに届きそうにないから嫌なのかもしれない。トップダウンで見通しのある届きそうなところから取り組ませれば自信になりはしないか」と環境側にその原因を求めます。

子どもの内面の物語(スジ書き)を作ってしまうと、環境側や大人側の課題が見えなくなる可能性があると思うのです。子どもの内面だけでなく、子どもの外側に問題がないかどうか考えてみること、できるために何が足りないのか考えてみること、それが子どもをリスペクトする専門家の仕事だと考えています。学生の頃、お花畑のようなことを言って、先生から「情緒的な言葉は時として私たちから真実を遠ざけることもあります。熱い心と冷たい頭を持ちなさい」と言われたものです。
『熱い心と、冷たい頭をもて』アルフレッド・マーシャル (イギリスの経済学者)