みんなちがってみんないい
「シェアハート」発足8年
発達障害、仲間と悩み共有「シェアハート」発足8年に
2020/11/8 18:00 【熊本日日新聞】
熊本県内の発達障害者でつくる団体「シェアハート」が、8日に開く例会で発足8年を迎える。毎月の例会は、対人関係がうまく築けず生きづらさを抱える当事者が、心を開いて話せるよりどころとなってきた。「発達障害の特性に苦しみ、孤独でいる人の力になりたい」。そんな思いで活動の輪を広げている。
「急にスケジュールを変更されるのがすごく苦手。コロナ禍で予定を立てづらく、不安が募った」
男性が告白すると、参加者が「いいね!」「分かる」と書いた紙を掲げた。人前での発言が苦手な人のために作ったコミュニケーションカード。共感を示し、安心して話せる環境をつくり出す工夫だ。
設立メンバーの井上裕介さん(36)=熊本市=は「良い所を褒め共感し合うことで、受け入れてもらえたという自信につながる。自分を変える大きなきっかけになる」と語る。
井上さんは大学卒業後、社会福祉士として高齢者施設に就職。しかし、入所者との意思疎通がうまくいかず、同時に複数をこなす仕事にもついていけずに1カ月で退職を勧められた。
その後、アスペルガー症候群と診断。「子どもの頃からコミュニケーションが苦手で、生きづらさに悩んできた。障害を知って自分のせいではなかったと思い、すっきりした」と振り返る。
ただ、周囲に同じ障害の人は見当たらず、悩みを打ち明ける場もない。「仲間と出会いたい」との思いから2012年11月、シェアハートを立ち上げた。月例会は毎回20人程度が参加する。
発足時から通う今坂祐太郎さん(33)=菊陽町=は小学生の頃からコミュニケーションが苦手。仲良くなりたいと思うほど余分な発言をし「しつこい」「うっとうしい」と毛嫌いされた。「場違いな発言で嫌な空気になった過去がフラッシュバックし、今でも苦しい」と打ち明ける。
江上房孝さん(31)=熊本市=は突然の大きな音が苦手で、運動会のピストル音や避難訓練の火災報知機の音に驚く度[たび]、周囲にばかにされた。冗談が通じず、ちょっとしたからかいも真に受けてしまい周囲から疎まれた。
メンバーの多くは自分に自信が持てず、人との関わりを避けてきた。職場でも孤立し、長続きしないなどの課題を抱えるが、シェアハートに通うことで「自分が変われた」という人は多い。
今坂さんは人との距離感がつかめなかったが「話を聞いてもらえることで、徐々に自分をコントロールできるようになった。自分自身と向き合うことを知った」。江上さんも「同じ悩みを持った人と出会い、発達障害者のいろんな特性を知ることができた。コミュニケーション能力が改善した」と話す。
月例会は新型コロナウイルス感染拡大で計4カ月間開けなかったが、再開を求める声が相次いだ。井上さんは「一人一人のニーズに応えようとこだわってやってきた。それぞれの長所を伸ばし、生かせる場としてこれからも仲間を増やしていきたい」と意欲的だ。(福井一基)
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発達障害のある人たちだけで運営する自助団体はSNSの中でもいくつも立ち上がってきましたが、長く続いているところをあまり知りません。最初はお互いの悩みをうちあけあうのですが、それをうまく調整する人がいないと自然消滅してしまいます。調整役の人も一人では難しく善意だけでは難しそうな印象がありました。
8年も続いているところがあるのは初めて知りました。主催者が根気強く開催してきたことに参加者の信頼が集まり、SNSではなく実際にみんなが会って、そこでも構造化支援などの配慮が見えるところが長続きの秘訣ではないかと思います。対人関係の困難があるからこそ、実際に会う工夫をすると言う逆説的な努力が功を奏したと思います。