すてっぷ・じゃんぷ日記

2022年12月の記事一覧

「僕に任せて!」

 先日、支援学校高等部生のQくんが、同級生のRくんといっしょに、ペットボトルつぶしの協力作業に取り組んでいました。自分たちで作業の準備を終えると、Qくんは職員に手のしぐさでサインを出しました。「自分たちで作業するから、離れていて」。そして二人で作業を始めます。ペットボトルのラベルを外すのに苦戦しているRくんに、Qくんはそっと手を差し出し、「R君、手伝っては僕に言って。」と言いながら、ペットボトルを受け取るとラベルの端をこすり、ラベルを取りやすい状態にして、Rくんに渡しました。そして二人でペットボトルつぶしをやり切り、職員に「2人で終わりました」と報告しました。

 Qくんは少し前までは、作業に自信を持てていませんでした。ドッグ棒(ホットドッグ用の太くて先が丸まっている串)を10本ずつまとめる作業では、やり切れるか不安で職員を呼び、それでも本数の間違いや、向きの間違いがたびたび見られました。自立してできるようになってほしいと職員は一考し、10本並べてから袋に入れられるようにジグ(補助道具)を作成しました。

 ジグを見るとQくんは「これなら僕にもできそう。」と言って、すぐに飛びつき、作業に前向きに取り組むようになりました。ジグを使って作業に正しく作業を終えられることが増えてくると、Qくんの姿に変化が。自信を持って作業に取り組めるようになり、職員にも「離れてて」と示して、自分でやり切れることが増えていったのです。空き缶やペットボトルつぶしの作業も自信を持ってやり切れるようになっていき、それが協力作業にもよい影響を与えるようになりました。

 自立的にチャレンジするということは、時には不安が付きまといます。その不安を職員が受け止めるだけではなく、こうしたらうまくいくということを提示することも、支援の大事な中身です。自立して作業できるようになったことで自信を持てるようになり、協力作業で友だちを手伝ってあげている(それも友だちができる部分を残す形で!)Qくんを見ていると、この仕事をやっていてよかったと心から思えてきます。

ソーシャルスキル

先日友人からこのような話を聞きました。

「Aさんと買い物行ったときに〇〇円以上買ったら特典がつくんやって。それでAさんの金額が少し足りなかったから俺の買おうとしてたやつを『勝手に』会計一緒にされたんやけど(笑)」

その話を聞いた時に「なぜだろう?」と考えましたが,Bさんの視点から考えると「もう少しで特典がもらえる」→「一緒に買っちゃえばいいよね」→「よし一緒に買おう」という思考になったのではないでしょうか。

この話のどこに問題があったかというと「『勝手に』会計を一緒にした」というところです。友人も(笑いながら)「一言言ってくれればよかったのにな~」と話していました。

この話を聞いた後にソーシャルスキルのことを思い出していました。ソーシャルスキルトレーニングでは、対人関係や集団生活を営みやすくするための技能(スキル)を養います。

子どもでもよくあることで,特に対人関係において人の表情を読み取る,場の空気を読む等が苦手な子どもはソーシャルスキルトレーニング(以下SST)を学習の中で取り組むこともあります。

じゃんぷに来る子ども達は「自分の話聞いて~!」と自分語りが止まらない子ども達もいます。そういった子ども達に対しては最初にスケジュールを見せ,学習の合間に「お話タイム」という項目を作って「この時間に話聞くから楽しみにしてるね!」とポジティブになるような言葉を使いながらSSTをしている子どももいます。

こういったことに関しては同法人のすてっぷの方がよく取り組んでいます。今までの記事にもSSTとは書いていませんがそれに繋がることを書いている記事がたくさんあるのでぜひ読んでみてください。

 

体重移動の学び方

 すてっぷでは、支援学校の中学部生や高等部生の作業課題として、アルミ缶やペットボトルの分解・つぶし作業に取り組んでいます。つぶす本数を始めに確認し、自分で準備片付けをして、終わったら報告するまでを自立して行えるように練習しています。協力作業が課題となる子らが複数で取り組むこともあります。

 中学部のPくんも、アルミ缶つぶしの作業課題に取り組んでいます。ただ、アルミ缶をつぶす際に、すてっぷではプレス器に足を乗せて、ぐっと体重をかけてつぶすのですが、Pくんはこの体重移動がなかなかうまくできず、缶をきれいにつぶせませんでした。しばらくは自立的に行うことや、協力作業の際のコミュニケーション課題と並行して行ってきましたが、プレス器の使い方はなかなか上達しませんでした。

 ある日のこと、この日もPくんはアルミ缶つぶしの作業課題に取り組んでいました。やはり、アルミ缶は上手につぶせず、職員が見本を見せていました。すると、Pくんは近くにあった「てつだって」の絵カードを手に取り、職員に渡してきたのです。職員が「わかったよ。じゃあいっしょにつぶそう」とPくんの手を取り、プレス器を踏むのを待ちました。そしてPくんがプレス器を踏むと、ぐっと手を引き寄せ、Pくんの体重がプレス器にぐっとかかるようにしました。そして、それを何回か繰り返しました。

 するとPくんは、体重移動のコツをつかみ、次の日から自分だけでプレス器を上手に使えるようになったのです。上からの指導や指示ではなく、本人のアクションに合わせて本人本位の形で伝えられたことが、功を奏したのかもしれません。今ではPくんにとってアルミ缶つぶしの作業は、自信をもってやり切れる課題の一つになり、協力作業でも友だちをリードすることが増えてきました。自立してできるようになったことが本人にとってとてもよい影響があったことをうれしく思うと同時に、これからもどんどん増やしていけるように支援していきたいと思った出来事でした。

自立学習の時間

じゃんぷでは子ども達が自分で学習をする「自立学習」の時間を作っています。子ども達が自分で学習を選び,順番を決め,自分がやりやすい学習方法を確立していく力をつけるために取り組んでいます。

集中するため,時間を意識するための道具を使ったり,解きやすい方法を個別の学習の時間の中で教え,自立学習の時にそれを使って自分で学習を進めるためです。

最初はこちらで取り組む内容を決め,子どもと相談しながら調整をしています。また,1人では難しい宿題等もあるため,そういうときは「先生に質問しても良い」というルールを設けています。しかし「わからないことがあったら質問したらいいよ~」と伝えていましたが中々質問が出来なかったりどうしたらいいのかわからないまま終わってしまうことが多々ありました。

そこで子どもそれぞれに「ヒントカード」を作り,「〇〇〇を貸してください。」「教えてください」といった言葉を書き,それぞれの子どもの前に張り出しました。そして使えた言葉には花丸をしたり,ヒントカードにはない言葉を使った時はそれを書き,「今の言い方もいいね!」と評価をしています。

するとどんどん子ども達が「教えてください」「〇〇を貸してください」と自分に必要な物を借りたりわからないところを聞いたりするようになりました。

具体的にどのような言葉を使えばいいのかわからなかったようです。子ども達の吸収力はさすがです。時間の意識が難しかった子が「タイムタイマー貸してください」感覚がないと集中が続かない子が「足のマットを貸してください」わからない問題を放置してしまっていた子が「この問題を教えてください」と要求するようになりました。