「キーボードください」
高等部3年生のAくんはすてっぷに来て6年以上が経ちます。発語はほぼなく、来た当初は自分からコミュニケーションを取ることも、大人からのコミュニケーションを理解することも難しいことの方が多かったお子さんです。机のものをひっくり返したり、投げたりしては、大人の反応を見て、ケラケラと笑う姿が、よく見られました。
来てしばらくしてから、視覚スケジュールと絵カードコミュニケーションに取り組みました。スケジュールは大きい絵カード2枚から、絵カードコミュニケーションは大きく段ボールで作った「ください」カードからのスタートでした。少しずつ取り組みを続けてくる中で、スケジュールカードは3枚、4枚と増えてきました。「ください」のコミュニケーションもだんだんと成立しだし、次は離れている人へ、次はいつもと違う人へと、コミュニケーションの幅が広がり出しました。絵はどうやって見分けてるかな? イラスト? 色?と職員も工夫しながら、少しずつ見分けて使い方を覚え、使える絵カードも増えていきました。
今では、スケジュールカードは6枚ほどの見通しを持ち、自分で終わった取り組みのカードを外して、次の活動が何かわかって、自分できりかえるようになりました! また絵カードコミュニケーションも、いろんなカードがしまってある自分のブックから、今はおやつと分かってヨーグルトカードを取り出して職員に渡しに行きます。そしておやつが終わったら、次はキーボードカードを取り出して、職員に要求しています!
少しずつ成長してきたAくん。こだわると動けなかったり、気が散って寄り道してしまったりと、まだまだ職員に頼ることはあります。ですが、これだけ自立してコミュニケーションを取れるようになってきたのは、Aくんが積み上げてきた力です。卒業まであと5ヶ月ほど。次の場所でも活躍できるよう、職員と一緒にできることを増やしていきたいと思います。