すてっぷ・じゃんぷ日記

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ゲームでも「寄せて」

 すてっぷに来ている子は、社会性やコミュニケーションの課題がある子が少なくありません。距離感が近かったり、自分の物と他人の物の区別がつかなかったり…。トラブルの元をたどれば、その子たちの課題に繋がっていることがほとんどです。そして現代の子どもらしく、トラブルがゲーム(昔で言うテレビゲーム)の中で起こることもあります。

 ゲームにもいろんな種類がありますが、大別すると一人用ゲーム、多人数ゲームに分かれ、多人数の中には集まっている人同士で遊ぶものや、ネット上の顔も知らない人と遊ぶものもあったり、また対戦ゲームや協力ゲームなどもあります。すてっぷでは相互コミュニケーションが取れるゲームとしては、パソコンでのマインクラフトがあります。

 先日、Jくんが困ったような、半分泣いているような顔で職員に相談に来ました。Jくんが言うには「先生、Kくんがマインクラフトに寄せてくれない」。マインクラフトにもいろいろなモードがあるのですが、Kくんや他の友だちが協力してサバイバルをしているところに寄せてくれないと言うのです。そこで職員がKくんに理由を尋ねました。するとKくんはこう答えました。「だってJくん、人のものを取ったり、自分だけクリエイティブモード(好きなものを出し放題、壊し放題できるモードです)に変えるんやもん」

 確かにマインクラフトで友だちといっしょに同じ世界で遊ぶときは、友だちがアイテムを入れた箱から、違う人がそのアイテムを取り出すことができます。またモードを変更し、冒険を楽しむのか、モノづくりを楽しむのかと遊び方を変えることもできます。ですがそれは協力したり、同じ遊び方で楽しもうと決めたりするなど、便利なようで実はコミュニケーション・社会性が求められる場面になります。

 ですが、だからこそコミュニケーション・社会性の課題に挑戦する絶好のチャンス! 職員はKくんが言ったことをJくんに確認します。Jくんも悪気があったのではなく、衝動的にしてしまったこともあったようです。そこで「ホワイトボードに約束を書いたら、約束を守れるかな?」と聞くと、Jくんは「うん」と答えたので、Jくんと一緒にKくんのもとへ。Kくんにも「ホワイトボードを見て約束を守れたら寄ってもいい?」と聞くと、「それならいいよ」と答え、Jくんも参加していっしょにマインクラフトで遊ぶことができました。

 ゲームにより制約はありますが、一緒に遊ぶものだからこそ、コミュニケーション・社会性が求められる場面があります。そういった場面では楽しいゲームをいっしょにしたい!だからがんばりたい…!と思う子が少なくありません。そういった機会は逃さず、課題にチャレンジできるよう、また失敗を繰り返さないよう支援をしていきます。

「じゃあそっちは分配法則ってこと?」

じゃんぷでは、中学生も授業後や部活後にやってきて、学習に取り組んでいます。多くの中学校では、来週から1学期の中間テスト。じゃんぷの中学生たちも、自分に合わせた勉強方法を職員と相談しながら、テスト勉強に取り組んでいます。

 先日、数学ドリルに取り組んでいたIくんが手を止めました。見ると、多項式の因数分解の問題です。職員がその問題をホワイトボードに書いて、解き方を教えます。「そうなんだけど…」と納得のいかない様子で、答えまでは書きましたが、以降の問題は同じように解けません。様子を見ていると、どうやら解き方を全く知らないわけではなさそうです。続きのページにあった、足したら○、かけたら△になる数字は?という問題はすらすら解いていました。ですが、続けてまた因数分解の問題になると、多項式をさらに細かく書こうとして、()すら出てきません。

 そこで職員が大きなホワイトボードに、展開と因数分解について書いていると、同級生の友だちや他の職員も参加して、ミニ講義のような形になりました。友だちが「因数分解は…」と先生と話していると、Iくんも会話に参加。「素因数分解のときは…」と友達に言います。ここで初めて、素因数分解と因数分解で解き方が混ざってしまっているのではと職員が気づきました。そこで「因数分解というのは数×数の形にすること。素因数分解は素数×素数にしているよ」と伝えると、Iくんは少し納得したようで、「じゃあそっち(展開)は分配法則ってこと?」と尋ねます。職員が「そう。分配法則を使って()を外しているよ」と答えると、納得したようでドリルに戻りました。

 じゃんぷに来ている子の中には、授業で聞いたことや昔教えてもらったことが大きく残っていたり、1対1の状況では緊張が増してしまう子もいます。Iくんも初め、職員から因数分解を教えてもらっても、頭に入っていないようでした。ですが友だちや他の職員も入り、みんなで自由に話せる機会が持てたことで、1対1では言えなかったことを言うことができたり、友だちや職員がホワイトボードを見て考えているのと同じように考えて自分の意見を言うことができました。1対1の学習にこだわらずに、同級生を交えて一緒に考える雰囲気を作ることで、自分の考えや思っていることを言いやすいこともあると感じた場面でした。

「今って○○していい?」

 支援学校中学部のCくんは、毎日宿題に取り組んでいます。すてっぷでは活動を優先することを前提にですが、休憩などの空き時間で宿題に取り組む際はスペースを提供しています。Cくんはすてっぷで宿題を終わらせてすっきりしたいという気持ちがあり、自立課題(パソコンなど一人で取り組む課題)とスケジュールを入れ替えて先に宿題に取り組みたいなどの交渉を、自分から職員に伝えることもありました。

 先日は学校から帰ってきてすぐに中学部、高等部の友だちと公園に行く予定でした。ですが友だちの一人が制服から私服に着替えるため、Cくんは予定外の待ち時間が10分ほどできました。もしかしたら宿題をしたいと交渉に来るかもしれないと職員がCくんを見ると、Cくんはスケジュールを公園遊びにした後、ぐるぐると室内を歩き回っていました。おそらくCくんは、自分だけのスケジュールであれば交渉に来るところ、友だちを待つという自分では時間が分からない状況だと、何をすればいいのかわからず、気持ちも落ち着かずに歩き回っているのだと感じました。ただ、友だちが着替えるのを待つという状況はこれまでも何度もあったので、Cくんも待つ時間をある程度把握できているだろう、であれば交渉も自分からできるようになるのでは、と考えました。

 そこで職員はCくんに話しかけ、まず状況を整理しました。Cくんは「Dさん、○○くん、△△さんと行きます。」「公園に行くのを待っています。」と答えます。そして職員が「なんで待っているのでしょう?」と尋ねると、Cくんは少し考え、「Dさんが着替えているから?」

と答えました。そこで職員は「Dさんが着替えるときは10分くらい時間ができるから、職員に交渉してもいいよ。」と伝えました。そして「今日みたいな場合によってできる時があるかもしれません。自分がすることだけじゃなく、お友達がすることも考えて、何ができそうかを自分で考えたり行動してみたりするのは大事な力になるよ。」と話をしました。

 職員が話をした翌週、さっそく同じ状況がやってきました。Cくんは自分のスケジュールと活動全体の予定が書かれているホワイトボードを見てから、職員に「公園の出発まで宿題していいですか?」と自分から交渉できたのです! 職員はあえて「どうして?」と尋ました。するとCくんは「Dさんが着替えを持って、着替えに行ったから。」と答えました。職員はCくんが交渉できたことをほめ、「友だちの着替えが終わったら、宿題が途中でも切り替えてね」と約束して、Cくんを宿題をするスペースへ案内しました。そして職員が「Dさん準備できたみたいだよ。」と伝えると、約束通り、宿題を途中で切り上げて、公園へ出かける準備に向かうことができたのでした。

 現在では、公園へ行く前の時間だけでなく、他の友だちを待つような状況でも、自分や全体のスケジュールを見て、宿題をする時間を見つけたら職員に交渉することができるようになりました。自分のことなら予定が分かってスケジュール交渉できていたCくんでしたが、その力を友だちとの予定の中でも発揮できるようになったことは、社会性、コミュニケーションの課題があるCくんにとって大きな前進であったと思います。取り組み前の時間にも支援のタネがいっぱいありますね。

「今度はこおり鬼!」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した支援学校小学部のPさん。友だちのことが大好きで、今日は友だちと遊べるかな?と思いをはせて帰ってきます。すてっぷに着くと、まずは自分や友だちの予定が書かれているホワイトボードを確認。下校時間の都合でPさんが先に公園に行くことが多いのですが、友だちと遊べることを心待ちにしていて、「〇〇くん、もう来る?」と職員に尋ねる姿も見られるようになってきました。

 友だちとの遊びは、職員が支援しながら行っています。鬼ごっこは職員との1対1からスタート。最初は逃げるだけだったのが、タッチされたら鬼が交代して、今度は自分が追いかけるということが理解できるようになってきました。職員が付いて、友だちと一緒に鬼ごっこすることにも最近取り組んでいて、今は「こおり鬼」にチャレンジしています。鬼の交代がなくPさんにとって分かりやすい中で、こおりの人を助けたり、逆にこおりになっているところを友だちに助けてもらったりと、友だちと関わりながら遊んでいます。

 先日のこと、Pさんは一足早く大きなU公園へ行き、友だち達は学校が終わって集まり次第、近くのV公園へ行くことになっていました。すてっぷに帰ってきたPさんはいつも通りホワイトボードを確認。するとPさんは、「1番U公園、2番V公園!」と職員に伝えました。最初にU公園に行って職員と遊び、次にV公園に行って友だちと遊びたいと伝えたのです。Pさんが自発的に伝えられたことを職員はほめ、友だちの来る時間に合わせてU公園からV公園に移動しました。V公園は比較的狭い公園で、「田んぼの田」をすることに。Pさんはいつもの鬼ごっこのように田のエリアに気づかず逃げていきます。ですが職員がPさんに田のエリアを注目させると、友だちの動きをまねながら、田のエリア内をぐるぐる逃げ回るようになりました。次は大繩での八の字跳び。これも始めはその場跳びになっていたのですが、後半は友だちの動きをまね、外から縄に入ろうと伺うように。職員がタイミングを教えることで、見事縄に入って一度跳んでから外に出るという、八の字跳びの動きができて、友だちと一緒に続けることができました。

 学校が違っても一緒に遊べる場を作れることが放課後等デイサービスの強みの一つだと紹介してきましたが、そこで発揮される子どもの能力のすごさには改めて驚かれるばかりです。それと同時に、その機会を逃さないためには、適切に支援できる能力が必要であり、職員としては身を引き締まる思いがします。Pさんの保護者の方によると、Pさんは家でも姉妹やその友だちも意識して、いっしょに遊ぼうとする姿が見られるようになってきたそうです。Pさんを初め、すてっぷの子どもたちが豊かな放課後を過ごせるよう、励んでいきます。

「いっしょにあそべたよ」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した小学生のUくんは、1年生のときからすてっぷに通っています。設定遊びなどは小学生のお兄さんお姉さんたちといっしょに取り組むことが多かったのですが、支援学校の友だちとも一緒の場で過ごしてきました。Uくん曰く、「お兄さんお姉さんに教えてもらった」そうですが、当時のお兄さんお姉さんたちよりも自然に、どの友だちにも分け隔てなく関わっていたように思います。Uくんには感覚過敏があり、友だちの状況によっては嫌がることもありましたが、我慢するのではなく友だちだから伝えようとする姿も見られました。

 また、Uくんは友だちの素晴らしいところを見つけるのも得意。「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)のPさんのことも、「Pちゃんはおにごっことかだるまさんがころんだが分かってなかったけど、分かるようになって交代できるようになったんやで」とお母さんに報告したそうです。そしてお母さんからそういった報告を聞いた職員はほっこり、ということが何度もありました。

 先日、取り組みも一通り終わり、ゆっくりと休憩していたときのことです。支援学校小学部のQさんは言葉でのコミュニケーションは難しく、身振り手振りで「ください」「いらない」と伝えることを職員と練習中。また遊びを見つけることが難しく、友だちと関わる機会をなかなか作れませんでした。このときも座って一人で休憩していたQさん。職員は遊びに誘おうと「ボールする?」とQさんに声をかけていました。すると近くにいたUくんが、「Qさんはボールよりもクッションがいいやろ」と、丸い大きめのクッションを持ってきたのです。そしてそのまま、クッションをQさんに渡しました。初めはポトッと落とすだけだったQさんですが、それに対してUくんは「お~!」と反応し、またクッションを渡してきます。するとQさんはUくんをしっかりと見てクッションを両手で受け止め、すぐにUくんの方へ両手で押し返しました。それを見ていた小学生の友だちが「僕もやる!」と加わり、職員と合わせて4人でクッションパスの遊びの輪が。QさんはUくんや友だちが渡してくるクッションをしっかり見て、自分に来たらUくんだけでなく友だちの方にもクッションをはじき返します。パスを受け止めた小学生たちの「やったー!」という声で遊びが盛り上がり、Qさんも遊びの雰囲気を楽しみました。

 Uくんの友だちに対する理解のし方やかかわり方は、小学生の後輩たちにも良い影響を与えています。それは支援学校の友だちのことに限らず、小学生同士でトラブルが起きがちだった関係が、ここ数か月で随分と柔らかなかかわり方に変わってきました。今の小学生たちにとっては、Uくんが「教えてくれるお兄さん」になっています。

 

「友だちが褒めてくれたよ!」

 先日、小学生のJくんが学校の休み時間で描いたという絵を、すてっぷに持ってきて、職員と友だちのKくんに見せてくれました。絵は、2枚あって1枚はアニメのキャラクター。もう一枚はゲームのキャラクターの絵でした。Jくんは、「こっち(アニメのキャラクター)の絵は上手に描けたと思う。こっち(ゲームのキャラクターの絵)はあんまり上手に描けなかった。」と自信なさげ。ですがKくんは「○○じゃん。」と、Jくんが描いたゲームのキャラクターが何かすぐわかりました。そして、「おぉー!すごーい!」というようなリアクション。職員も「2枚とも上手に描けてると思うよ。」と伝えました。Jくんは、「ここを描くのが大変で…」と伝えたいことをKくんにずっと話をしていて、Kくんも「うん。うん。」と頷きながら話を聞いてくれていたので、Jくんは嬉しそうでした。

 翌日、「昨日、Kくんに見せたけど、(今日すてっぷに来る)Lくんにも見せたいから。」と、Jくんはこの日も2枚の絵を持ってすてっぷへ。Lくんには、ゲームのキャラクター(○○)の絵も、堂々と「見て見て」と伝えました。Lくんは開口一番に「〇〇じゃん。上手いなぁ。」とJくんに伝えました。その後も、「今までで一番上手いんちゃう。」と褒め、「この右手の辺りが上手に描けてて凄い。」や「絵上手に描けていいなぁ。」などたくさんの言葉を使って、Jくんが描いた2枚の絵を褒めていました。Jくんもたくさん褒められたので上機嫌になっていました。

 職員はJくんの2枚の絵を見て、「2枚とも上手い。」と正直に感じました。ただJくんは、「1枚は上手に描けたのだけれども、もう1枚の絵はあまり上手に描けなかった。」という気持ちが強かったようです。ですが、職員、Kくんに絵を褒めてもらう事で、「あまり上手に描けなかった。」から「そんなことないのかな。上手に描けているのかな。」と気持ちが和らぎ、Lくんにも堂々と見せることができたのだと思います。普段、職員たちが意識している「褒めて伸ばす。」ということが、子どもたち同士でもあるのだなと、ほっこりしたできごとでした。

ともだちといっしょ2

 「ともだちといっしょ」(2022/7/22)で紹介した小学生のMくん。小声とおやつの持ち帰りのブームがずっと続いていました。しかし小声はともかく、おやつは学童や他の事業所ではしっかり食べていると言います。そこで、すてっぷでも食べてほしいと工夫することにしました。

 そもそもMくんはなぜ、おやつを持ち帰りたいと言うようになったのか。それは友だちが持ち帰りと言っていたのを真似して始まったのではないかという話になりました。ではその状況を変えるのも友だちから、ということで、友だちといっしょにおやつを食べる機会を作ることにしました。公園や山登りへのお出かけ時といった特別感を出してみました。

 ある日公園で遊んだ後、公園でそのままおやつにすることにしました。すてっぷから持参したおやつをMくん以外のみんなが食べ始めた横で、職員がMくんに「おやつ食べる?」と聞くと、Mくんは「食べる。おやつ食べる。」と答え、おやつを美味しそうにぱくぱく食べ始めました。途中で食べ止めることもなく食べ終わりました。職員がMくんに「おやつ、美味しかった?」と聞くと、「美味しかった。」と元気に答えてくれました。

 その後もMくんは公園でおやつを食べています。みんなといっしょに公園でおやつを食べた日から、「おやつ、もちかえり。」というMくんの言葉は聞かなくなりました。それはきっと、Mくんの「おやつをもちかえること」というブームが、「おやつをみんなで食べるとおいしい。」というブームに変わったのだと思います。公園への道中で、友だちのにぎやかな輪に入るうちに、小声ブームも薄れていき、だんだんと大きな声になってきました。友だちのいいところを学びあえるように、支援を工夫していきます。

メリットのないコミュニケーション

 半年前のTくんは、自分なりの理由やマイルールでよく動いていました。同級生とテレビゲームで遊んだ後、帰る時間になってからの片づけではいち早く抜けて、ほかの子がまだ片付けているのにも関わらず、先に帰る準備を始めます。職員が「まだ片付け終わってないよ。他のみんな片付けているよ。」と伝えると、Tくんは「片付けたよ。」続けて、「だって俺が準備したの、あれとこれの2つだけだし。これ以上片付けると俺が片付けすぎて損や。」と言うのです。下級生とも、「えー俺は別に遊びたくないから。」と言って、関わろうとしませんでした。

 メリットとデメリットを考えて行動するTくん。友だちと上手に関われる機会を増やすために、まずはTくんがメリットのある自分のしたい遊びから支援していくことにしました。具体的には、Tくんがしたい遊びができることを保障し、「でもその前に下級生を誘ってほしい」ということを伝えるようにしてみたのです。自分がしたい遊びなので、Tくんは進んで、「〇〇くん、〇〇ちゃん遊ばへん?」と下級生に声をかけるようになりました。最初は下級生も乗ってきません。Tくんとの関係性がまだできていないからです。でも職員は「遊びに誘うことできたね。偉いね。また今度も誘ってみようよ。」と褒めました。そうして下級生を誘う練習を繰り返し実施していくうちに、Tくんも自信をつけていき、下級生との関係性もできてきました。

 半年後の今では、Tくんの伝え方も上手になりました。声のかけ方が優しくなるとともに、言葉だけでなく身振り手振りを混ぜて、わかりやすく伝えられています。下級生も遊びの誘いに乗ってくれるようになり、Tくんも一緒に遊べて嬉しそうでした。公園から帰る時も、その子の落ち着きがなかったのですが、「△△ちゃん、俺と手を繋いで帰ろうよ。」と気遣って、優しいお兄ちゃんの一面も見せてくれました。手を繋いでいると、○○君が、「ぼくともつなごうー。」とTくんの手を握ってきました。両手を下級生のお友達に奪われたTくん。照れくさいようでしたが笑顔いっぱいで帰路につきました。

 この半年間で、Tくんは「下級生に優しくしたら、下級生と仲良くなれた。」という経験を積めました。メリットに思っていなかった下級生に優しくするという行動が、結果として下級生が自分から近づいてきてくれたというメリットになったことをフィードバックできたのではないかと思います。テレビゲームの片づけも、今ではメリットを気にせず同級生とも協力してできるようになったTくん。「すごいね!」と毎日のように職員から褒める言葉が積み重なっています。

「みんなで登れば楽しいね」

 もう夏休みも終わりですね。この夏休みは真夏日が続きましたが、室内での過ごしばかりで体がなまらないように、運動にも出かけていました。日陰のある公園に行ったり、西山に行ったり。特に山は木陰で涼しい中で歩けて、よい運動になります。先日は小学生、中学生、高校生混ざった学年バラバラのみんなで山登りに行きました。暑い中、淡々と登るより、みんなで楽しく登れたほうがいいだろうと思って、登る前に職員は、「今日はみんなで楽しく登りましょう。」と、親睦を深められるようにお話していいことを伝えていました。

 さて、出発してすぐに顔が曇ってきたEくん。Eくんは運動は好きですが、暑いのは苦手です。職員に「暑い。疲れた。もう帰ろうよ。」と伝えてきました。「一つ目の休憩はすぐだからね」と励ましながら休憩地点へ。そこで休憩していると、友だちみんなで話していたのが盛り上がり出しました。Fくんが「俺のこのモノマネ見て何のキャラか当ててや。」と言うと、Gくんは「クイズ出すからみんな参加してよ。」とみんなに声をかけ、Hくんが「Eくん。Eくん。あのね…」とEくんを誘います。みんなの話に混ざっていくと、Eくんも笑顔になってずっと笑っていました。

 元気な気持ちを取り戻したEくんは、登山を再開すると最初は後ろのほうをゆっくり歩いていましたが、お友達と話して盛り上がっているうちに歩くペースが速くなっていきました。いつの間にか先頭に立って、笑顔ではきはき歩いているEくん。しんどかった気持ちが楽しい気持ちに切り替わっていく様子は、歩くペースに表れているようです。その後もEくんは職員に「暑い。」と言いながらも、「帰ろう。」とは言わずに歩き続けました。そして、目標の折り返し地点に到着! 達成感いっぱいのみんなは、お話も大盛り上がり。Eくんもテンションがマックスになり、楽しそうに爆笑していました。下山もスムーズで、職員からの「楽しい?」という問いに「楽しい!」と答えました。

 Eくんにとって、「気持ちを立ち直らせる経験」ができてよかったと感じた職員。夏休みも終わり、2学期がいよいよ始まりました。子どもたちが夏休みと学校の「気持ちの切り替え」ができるように職員も支援していこうと思います。

友だちといっしょ

小学生のMくんはここ最近、2つのマイブームがあります。一つはひそひそ声で話すこと。職員に話しかけられても、ささやくように返事をします。もう一つはおやつを持ち帰ること。なので、スケジュールで次がおやつだとわかると、職員に「もちかえります」と伝え、職員がおやつを見せて「どれがいいですか?」と聞くと、「これ」と答えます。

 先日、Mくんと支援学校高等部のNくんとがいっしょの車で公園にお出かけしました。しかしNくんは公園に着いても車から離れません。先に公園に行っていたMくんがそのことに気づくと立ち止まり、「Nくんは?」と職員に尋ねます。職員は「車かな」と答えると、Mくんは車の方を気にして動きません。「迎えに行く?」と聞くと、Mくんはうなずき、職員と一緒に車に戻りました。

 迎えに行くとNくんは車から離れ、Mくんといっしょに公園までやってきました。ですが、Nくんは見晴らしのいいところまで来ると、そこから動こうとしません。Mくんも、職員にボールで遊ぼうと誘われますが、Nくんのそばを離れません。そこで職員はMくんに、「Nくんを誘いに行く?」と尋ねました。うなずいたMくんといっしょにNくんのもとへ。職員が「Mくんがいっしょに行こうって言っているけど、どう?」と聞いてみました。するとNくんは、いいよと言わんばかりにMくんの近くに歩いてきます。そのままMくん、職員と一緒に公園を散歩して、ぐるっと大回りの一周を歩きました。

 職員が言っても動かなかったNくんが、友だちの誘いで長めの距離を歩けたこともそうですが、Nくんを気にかけたMくんにも驚いた職員。今回は職員が声をかける形になってしましましたが、次回はお誘いのカードを持って行って、Mくんが友だちに手渡しして伝えられるようにしたいと思っています。