すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

子どもの行動に対しての「何故」「どうして」を大事に

S君の支援計画作成会議で行動の切り替えが悪くふてくされていたりしんどそうにすることが多いので、感情の表現カードを教えたいという提案がありました。子どもたちに「うれしい・悲しい・元気・しんどい・好き・嫌い」等の感情の表現を教えることは大事です。その感情を絵で大人に理解してもらい不適切行動を爆発させずに、カタルシスを得ることは、ASD利用者のケースで私たちは経験してきています。

S君の場合、家への帰り際に「帰りたくない」と固まったり、トイレにこもったりするので、同じように感情の表現ができればうまくいくという提案です。でも、S君は「帰るのは嫌だ」と表現しているのですから感情表現ができていないわけではありません。S君は「帰りたくない」その理由をうまく言語化できないことに問題があり、理由を述べる6歳前に芽生える論理力がまだ未成熟だということです。

しかし、S君の言語力を引き上げることは急には難しいです。S君は自力で通所はできるのですが、事業所から一人で帰ると言う切り替え時に、気持ちが行ったり来たりするようです。私たちは、半年間、彼のためらいを見守ってきたのですが、どうも彼だけの力で決断は難しそうでした。5月からは「約束だから、帰りなさい」と促すように変えました。

嫌な理由の言語表出が苦手で「カタルシス作戦」が望めなくても他の方法があります。しんどいと言ったりトイレにこもる彼の行動が、注意喚起だとすれば、良い行動にたくさん注目してその「勢い」で帰宅行動に切り替える、つまり「さすがは高等部!」と褒める事かなと話し合いました。S君はできて当たり前で失敗すると注意を受けるタイプの子どもなので、褒められて注目されることは少ないからです。

何かの手法で成功しても、成功したのはあれこれの手法の前に的確な分析があるからです。間違った手法を使う事で成果が出ないばかりか、子供に悪影響を与える事もあります。支援者の子ども理解が不十分なことが原因なのに、あたかも手法が問題であるかのように「構造化は無駄。視覚支援は意味ない。PECSは効果ない」等と誤解されるのはとても残念なことです。子どもの行動に対して、「何故?」「どうして?」と常に問いかけ最適解に近づこうとする支援者の姿勢が大事だと思います。

ボタンキラキラBOX2号機(改良型)

前回、VOCAが使えるようになるには、まずボタンに興味を持つことが必要で、そのための玩具の開発が必要(ボタンキラキラBOX1号機: 04/22)と書きました。しかし、1号機のボタンはパナソニック製で頑丈ではあるのですが、イルミネーションセットのボタンには適していないオンオフ切り替えのオルタネイトスイッチです。また、Rちゃんは机のものはなんでも投げるので固定しやすい安価なボタンを探していました。

探せばあるものです。アーケードゲーム機用の直径6cmドーム型スイッチが12V LEDランプとモーメンタリのマイクロスイッチ付きで460円という手ごろな値段で売り出されていたのです。ボタン自体も押せば光るパターンと押せば消えるパターンの両方の設定ができます。後者は通常ボタンが光ったままで興味は持たせやすいですが電池がすぐに消耗するので前者にセットしています。そしてかごを机にくくりつければボタンは動かすことができないので投げられることもありません。

さて、これでRちゃんにボタン押しに興味を持ってもらう事はできるでしょうか。これでだめなら部屋中がイルミネーションで光るボタンを考えようかと思っています。法人は大赤字なのにヒットしない玩具開発にいくら注ぎ込む気かと背中に突き刺さる職員の眼差しが痛いです。

 

平等と公平

Pちゃんのお気に入りの紫色のタブレットを高学年のQさんが使っていたので、Pちゃんが「替わってください」と言いました。Qさんは、「まだおやつ食べているでしょ」とPちゃんに言いました。Pちゃんはおやつ食べたら替わってくれるものと思い、おやつを大急ぎで食べて「替わってください」と言いました。「いやや」とQさん。Pちゃんの誤解とは言うもののQさんの御無体な対応に、Pちゃんは大泣きです。その上に、「大声で泣いてはいけません」だのと職員から言われるので、泣きっ面に蜂です。

高学年のQさんには指導が必要でした。言葉が十分伝わらない低学年の子どもには丁寧に伝える工夫やそれが難しいなら譲ってあげることも必要だという事です。そして、誤解を与えたなら謝ってあげることも大事だということです。しかし、小学校高学年の子どもたちの間では、「俺らは、約束を守らされるのに、支援学校の子は守らなくてもいいのは不公平だ」とちょくちょく言っています。私たちは、彼がそう口走ったときはそのまま放置しないことにしています。きっと彼らも他の場面では知らないところで不公平だと誹りを受けているからです。

言葉がわからなかったり、ルールがわからない時期は君たちにもあったはずだし、今だって、漢字が書けなかったり計算が遅かったりする君たちに不公平だからと同学年と同じだけ宿題が出ているかと聞きます。同じように、言葉がわからなかったりルールがわからない支援学校の子どもは、言葉やルールの勉強中だが、その意味がまだ分からない場合に君らと同じルールにすることが公平だと言えるか?と聞いています。

大抵の子どもたちはしばらく考えて「わからん」と言います。それでいいと思います。感情的な平等論が世の中にはあふれかえっています。その中で彼らは生きているのですから簡単に答えは出ないはずです。でも職員は彼らの疑問を聞き過ごしてはいけないし押し付けてもいけないと考えています。平等と公平は考え方の質が違います。民主主義社会は公平を是とする社会です。公平とは何かを何度も考える機会を作りたいと思います。

 

何故調子がいいのか?

「頭打ちの自傷行動も見られるNさんが今日はにこにこして調子が良かった」「発作の続いているO君は今日もソファーの上でじっとしていて調子が悪かった」などと言う調子の良い悪いだけでなくその調子の理由も考えて報告する必要性を前にも書きました。(調子がいい理由: 04/20

調子が良いなら、何故調子が良いのか、悪いなら何が原因だと思うのか、その時の環境の変化や本人の体調の変化(排便・歯痛・睡眠)、支援者の支援の変化なども同時に観察して報告しないといつまでも因果関係がわかりません。喉元過ぎれば熱さ忘れるで、調子が悪い時はあれこれ理由を考えますが、良くなると「調子が良かった」「穏やかだった」で終わりでは支援者の名が廃ります。

理由も想像や憶測ではなく、具体的な事実に基づいた理由が必要です。そのためには、保護者や学校にも協力してもらい、バイタルのチェックリストや人も含めた環境チェックが必要となります。子どもの行動を「何故」と問う姿勢が支援の質を高めていきます。

 

自立課題と個別課題

支援学校のLさんに、自立課題をしてもらったという報告があったので、「なんのために」と聞くと特に理由はないとのことでした。Lさんは低学年の漢字ドリルや計算ドリルをしている人で、週1回の利用者です。課題が適切であれば宿題は自分でできる人にマッチングや分類、組み立てやパズルが中心の自立課題を提供する意味がありません。意味がないのに時間つぶし程度に与えていることに気付いてほしかったのです。

逆に1年生のM君は、じっとしていることがなく衝動的に動き回っている子どもです。彼には一人で課題を一定時間こなす経験の積み上げが必要です。「なぜM君には自立課題を与えないのか」と職員に質問すると、通常学校の小学生グループだから考えなかったそうです。在籍が通常学校の子どもでも支援学校の子どもでも、一定時間座って課題に取り組むことは必要な事です。M君にはまず自立課題で一定時間一人で課題をやり遂げる経験が必要なのです。

子どもの課題内容は子どもの在籍学校で決まるものではありません。その人の特性や経験そして与えられた利用時間で決めるものです。どちらも、新しい通所者だったので、課題が分からずに与えたのかも知れないですが、そのために支援計画はあるのですから半年に一度見るのではなく、毎回ことあるたびに振り返ろうと話しています。個別課題は子どもの特性に応じた課題一般の事を指し、自立課題は一人で自立達成できる課題のことです。