すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

PDCAサイクル

今週はすてっぷの職員でこの2月に自己評価集計結果から検討した内容が実施されているかどうか、中間調査をしています。そもそも、「事業所の保護者及び自己評価集計結果」の公表は義務付けられており、公表しなかった場合は通常の放デイで年間約500万円程度の減算になります。そういうわけで、各事業所のHPには必ず1年に1回のペースで集計結果が公表されています。

しかし、1年に1回では忘れた頃に点検する感じになるので、PDCA(PLAN DO CHECK ACTION)サイクルで事業を改善するには間尺に合いません。そこで年度中間のこの時期に検討した内容が実施できているかどうか職員のみの自己点検調査を実施することにしました。組織体は目標が達成ができているかどうか、こうした文章を作って点検しますが、点検そのものが形骸化して文書を作った段階で改善できたような気持ちになってしまうことが多いです。

同じようにPDCAサイクルで点検するものに個別支援計画があります。これも、職員で時間をかけて協議して仕上げる割には、その後半年経つまで、振り返ることがなかなかありません。目標は具体的に「~をする」と書くようにしているので、半年たって実施していなかったことが明らかになったりします。そこで、目標を忘れないために、日々の利用者の記録の際に、半年間の目標が職員の目に触れるように運営アプリケーションで確認できるようにしています。作成した文書は、ファイルBOXの中で眠らせず、みんなで活用ができるように実践に生かせるように工夫していきたいと思います。

ショッピング支援は万全の準備を

Fさんに昼食をコンビニで買ってもらおうと、いつものお気に入りのナポリタンスパゲッティーのリマインダーを持って買いに行きました。買い物支援の必要なFさんとG君の二人でコンビニ内に入ったのが失敗でした。G君が会計をしているので職員がFさんから目を離した間に、Fさんは店内を見て回り、お気に入りのハイチュウーを手に取っていたのでした。それも、もう商品を開けていました。

ここで「やりなおし」と交渉しても店内ですから開封した商品を返すわけにもいかず、交渉のトレーニングもできていないので、修正すればFさんは大騒ぎになるのが必至です。せっかくショッピングの練習に来たのに、商品を勝手に開封するのを見過ごすしか方法がありませんでした。お客さんがいるのにFさんともめて迷惑をかけるわけにはいかないからです。次回も繰り返してしまう可能性があるので、商品を開封してしまったことを忘れるまでは店に入るわけにはいかなくなりました。

結果的に、Fさんのショッピングの機会を遠ざけてしまったことがとても残念です。行動問題のある方のショッピングはどうしても遠ざけがちになってしまいます。それは、店員の方や周囲のお客さんに迷惑をかけられないし、障害のある方を誤解をしてほしくないからです。行動問題のある方のショッピングは、支援者は練習に練習を重ねて、様々なイレギュラーも想定して挑む必要があります。必ず成功させようとする準備がないと、当事者の可能性を狭めてしまうからです。たかが買い物されど買い物です。購買行動は障害者があってもなくても、その方の権利です。買い物は楽しく選ぶという人生を豊かにする中身をたくさんもっています。障害の重い方にも適切に購入できるように支援したいと思います。

 

楽しみ

F君は、10か月前までは職員の気を引くために外に飛び出して、近所のマンションのエレベーター遊びをしていました。職員が追いかけて走っていくとげらげら笑ってまた逃げるという繰り返しでした。注目要求と自立 : 07/17 でも書きましたが、彼には大人に注目してほしい要求があり、適切な行動は注目しているよという反応を返すことで、ぱたりと不適切な注意喚起行動がなくなったのです。

もう一つは、彼の好きなものをご褒美にして課題設定をしたことです。F君の好きなものは「野外ラーメン」とサイダーです。夏前まではラーメン準備ワークシステムを見ながら、ひとりコッフェルやバーナーをリュックに詰めていそいそと山登りに出かけていました。本当に気に入っていたようで、スクールバスから降りてくる時に「今日ラーメンは?」と聞いて「あります」と答えて欲しくて送迎車の中で何回も職員に聞いていました。

それが、暑さと雨が続いたことで3か月近くラーメンが途切れています。それでも作業課題への職員の注目と、作業後の一杯のサイダーを糧に頑張ってはいるのですが、たぶんつまらないだろうなと思います。野外ラーメンはF君にとって至福の時なのです。そういえば、最近、職員がスクールバスに迎えに行っても、乗降タラップ所での「無動」「やりなおし行動」が激しくなってきているのです。もしかして、放デイ通所が楽しくないのかもと案じています。

子どもが適切な行動がとれるようになると、職員はのど元過ぎれば熱さ忘れるで、普通に扱ってしまいます。実は子どもは楽しみがなくなっていて、かといって自分から要求ができない表出性コミュニケーションの弱さで言い出せていないかもしれません。これは好きだからと、年がら年中同じことを提供するのもどうかとは思いますが、好きなことを支えに人の生活は成り立っているものです。そろそろ、「野外ラーメン」には良い季節ですので出かけようかと話しています。

服薬

すてっぷに来る子どもの過半数が行動の問題で服薬をしています。最も多いのが、ADHDの多動性や不注意を軽減するコンサータやインチュニブです。以前はストラテラが多かったのですが、新薬インチュニブの登場でこちらが一気に増えた感じです。ただ、インチュニブの効果がなかったり副作用が強い場合は、中枢刺激薬のコンサータの選択や、同じ中枢刺激薬の新薬ビバンセを選択している子どももいます。

ASDの子どもの行動問題に使われている薬は、最近利用は少なくなりましたが、激しい興奮を抑制するセレネースやテグレトール等です。ただ、これらは副作用も多いので、ASDの子どもに多く使われているのは、比較的副作用が少ないとされるリスパダールやエビリファイです。また、数は少ないですが不安や固執性を原因としたASDの行動問題にADHD適用薬を服薬している子どももいます。

激しい行動問題で、家庭や学校で大変なのは分かるのですが、毎回、服薬量が増えたり種類が変わる子に限って、行動問題が増えているように感じます。行動問題が深刻だから服薬量や種類が変わるのは当たり前だと言われそうですが、深刻な子に限って薬の量や種類が変わっても沈静化せず、むしろ行動問題が増えている印象が強いです。医療の話なので量や種類について素人が口をはさむべきことではありませんが、子どもの変化については動画なども用いて正確に医療に返していくことが大事だと家族の皆さんには伝えています。

重度の知的障害を伴うASDの行動問題の多くは、表出コミュニケーションの障害が大きな原因です。上手く伝えられないことによってストレスが生じ情緒不安定になるのだし、うまく伝わらないから激しい行動で相手が振り向くように行動する事が多いのです。このどちらも、表出のコミュニケーションが育っていない事が原因です。これらは服薬で解決できるものではありません。もちろん、学習が成立する程度の感情調整を服薬に期待することはあるし、本人が成長するまで行動問題を見過ごすこともできませんから、服薬で乗り切る時期もあるかもしれません。

しかし、行動問題を抱えたASD児の関係者(特に学校教員)が服薬に期待するのは、自閉症のコミュニケーション問題が重要な原因だと考えていない場合が多いです。もちろん、コミュニケーションの支援だけ全てが解決するわけではありません。喋れる子どもでも様々な問題は起こすものですが、その問題一つ一つに服薬を求める大人はいません。

コミュニケーション支援に取組めば、子どもの表情は和らぎ大人との信頼関係はぐっと深まります。安心して生活ができれば、行動問題の修正も支援しやすくなります。子どものコミュニケーションに真面目に取組む環境に変わるだけで、服薬以上の効果が認められたケースは少なくありません。

それと並行して、子どもはソーシャルスキルを学び、周囲の大人もペアレントトレーニングやティーチャートレーニングをうけて上手に子育てや教育をすすめるスキルを身に着ける必要があります。激しい症状には子どもが楽になるという意味で服薬は必要ですが、それは対症療法であり治療ではないという事を知る必要があります。

そして、支援学校に在籍している子どもの行動や服薬の事で困ったら、支援学校で精神科校医として勤めている校医さんに相談するのが良いと思います。精神科の校医さんは子どもの様子を教室に行って見ていますから実態は一番よく知っています。服薬のことも聞けるのでセカンドオピニオンとしても相談されるのが良いと思います。

 

 

運動会とDCD

D君がぶつくさ言いながら登所してきました。運動会練習の季節なのです。「あのな、V字バランスってあるよね」ハイハイ「あれな足も頭も上げてバランスとってていうけど、俺には至難の業なんや」ソウヤネ「頭を意識すると足がわからんようになるし、足を意識したら頭側がおろそかになるねん」協調動作ガムズイ?「そうやねん。俺不器用やからいっつもハズイ目にあっているねん」タシカニ…。

2つ以上の動きを同時に行うことを「協調運動」と言います。 発達性協調運動(症)障害(DCD)とは、2つ以上の動きを同時に行うことが困難になる障害です。例えば自転車に乗るときに手でハンドル操作をしながら足でペダルをこぐなど、異なる動きを同時に行うことが難しい状態です。

2:1~7:1で女子より男子の方が発症しやすいといわれており、5~11歳までの子供では5~6%の確率で発症すると考えられています。発達性協調運動障害(DCD)の原因は、まだ詳しく解明されていないのですが、特徴としては、次のような障害が挙げられます。

1.筋肉の制御に対する障害(筋肉をうまく動かせない)
2.神経発達過程の障害(視覚的な運動機能の障害)
3.運動技能の欠如(日常生活内の動きが困難になる)
これらの障害により、発達性協調運動障害の子供は年齢や知能に比べ、運動能力が著しく低かったり、日常生活の簡単な動作にも不器用さが見られるようになります。

発達性協調運動障害はADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)の症状も同時に見られることがあるため、こちらの障害に包括されてしまうことが多いです。発達性協調運動障害とADHDを同時に持っている子供は、ADHDのみを発症している子供に比べて、強い症状が現れます。

発達性協調運動障害(DCD)は運動機能だけに障害があるので、運動機能を改善させるための接し方としては事実と理屈で示していきます。発達性協調運動障害(DCD)の子どもは、自分がうまく動けていないことに気がついていない場合もあります。鏡に映したり、スマホで見せてあげたりするとよく自覚してくれます。

運動機能を高めていくには、まず自分の苦手なところを発見することから始めます。そのためには、大人が子どもをよく観察してあげる必要があります。運動会の時期に先生方は大変でしょうが一肌脱いであげてください。そして、正しい力の入れ方を感覚と言語のWルートで理解させてください。だんだん正しい運動の感覚が理解できるようになってきて、少しずつ出来ていくので上達したらたっぷりと褒めてあげることが大切です。

この練習はできれば毎日続けてやった方が効果的です。間を空けると、せっかく覚えた感覚を忘れてしまうので、ある程度できるようになるまでは続けて練習してください。みなさんの周りにもきっとD君やEさんが2~3人いるはずです。