すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

キッチンラーメン、バイバイ

P君が大好きな西山登りと頂上でラーメン作りの取組をしています。今日も事業所に来るなり、いそいそと自分でリュックにラーメン調理七つ道具(チキンラーメン・水・バーナー・ガスカートリッジ・コッフェル・カップ・箸)を詰めて準備完了です。雪のちらつく中意気揚々と西山の道を上がり頂上での調理も手慣れたものです。

あーおいしかったと頂いた後、「キッチン(チキン)ラーメン、バイバイ」と職員に向かって言ったそうです。さすがに飽きたかなということでした。これからはコンビニに行って好きなものを本人と選んでからでかけたらどうとかという提案と、ソース味が好きだしインスタント焼きそばを調理したらどうかと言う提案がありました。

これも日清とサッポロがありますので、粉ソースの日清も液体ソースのサッポロも両方試してみればどうだろうということでした。焼きそばと言うとペヤング・一平ちゃん・UFOというカップ麺御三家がありますが袋麵焼きそばはほとんど子どもには知られていないので、どんな反応をしてくれるか楽しみです。

みんなで歩けば楽しい

N君に今日はOさんと一緒に西山登りに行くことを伝えると二つ返事で快く了解してくれました。先日、ブログで【みんなと歩調を合わせる: 01/14】 で、相手を意識しながら歩けるようにと、荷物を棒にくぐりつけて二人で担いで歩く山登りを提案しました。これを二人だけで取組んだのではあまりにつまらないので、仲間を増やしてみんなで運んだり、代わりばんこに運んだりするためにN君とOさんに協力してもらったのです。

N君はOさんが大好きなので、何を取り組んでも楽しいのですが、取り組んでみると、Oさんもげらげら笑って楽しそうに取組んでいます。何が楽しいのと聞いても「何でかわからんが楽しい」そうです。二人は学校も違いますから週に1回しか会いません。ちょっとした共同作業でも、気の合う男女同士だと楽しいということです。

その二人の楽しさに巻き込まれてか、最近眉間にしわを寄せて機嫌悪そうに歩いているP君も今日はニコニコしています。歩調合せる課題のあるQ君もなんとかみんなを意識して歩くことができました。重度の人の場合どうしてもマンツーマンになったり集団が小さかったり固定した集団になりやすいですが、N君やOさんがいることでまた違ったムードが作れます。ASDだからいつも同じメンバーが良いと言うわけではないのです。

自分のことの教え方

いつもゲームでM君が大声で仕切るので他の子どもはうるさくてトラブルの原因になっていました。職員も1か月くらい前からM君の声がやけにでかくなって以前に戻った感じがすると報告しあっていました。それをM君に話しても、「え?大きいかなぁ?」と全く自己フィードバックしていませんでした。

先日、カードゲームをしていて今回もゲームを仕切ろうとするので、それを嫌って他の子どもが今回はM君提案を却下しようという発言がありました。職員はこれはひともめするなと構えていたら、M君「あ、そう。じゃぁ撤回」とあっさり引き下がったので、職員も子どもも肩透かしをくらいました。あの場面なら確実に高学年同士のマウンティングの取り合いになるので、M君なら大声を上げて譲らなかったはずだと職員は言います。

連絡帳を読むと、昨日からコンサータが増えたと記述されていました。服薬のM君への効果はてきめんのようです。しかし、これだけ違うと改めてM君の言動はM君の性格や背景になる環境が問題なのではないということが分かります。ただ、M君を褒めると「薬のせいやし」と言うので、薬のせいで性格が変わったのではなくその姿が本来の姿だと伝えたいのですがこれがなかなか難しいです。心理学的医学教育を医療・教育・福祉の誰が行うのかはっきりしない中で私たち自身も模索をしています。

 

 

みんなと歩調を合わせる

外出する機会に、一人で歩ける子どもはできるだけ一人で歩けるようにしています。ただ、困ったことに全体に合わせると言う歩きができない人が多いと職員の手が足りなくなり、早い人を見失ったりしやすくなります。別に特別に早いわけではないのですが、とても遅い人がいてこの人に合わせると普段の倍ほど時間がかかります。

L君にしてみれば、これまで誰かが手をつないでくれていたので、遅いと引っ張られたり背中を押されて歩いていたのです。手を離されると、全体の速度などはお構いなしにどんどん遅れてしまい最後には前の人が見えなくなってしまいます。この場合に、背中を押したりひっぱたりしないで歩けないかどうか職員で話し合いました。

とにかく、周りが気にならないならそれは無理だということになり、その前に自分とともに歩いている人を意識できるようにするのが先だと言う話になりました。ではどうするか、いつもはできないけど山登りの時にリュックに入れて荷物を運んでいるのをやめて、交代で二人で運ぶのはどうかという案が出ました。担ぎ棒を二人で担いで棒に荷物をくぐりつけるのです。これなら少しは相手を意識しないだろうかと言う提案です。

できることは何でもやってみようという事で明日から取り組んでみようという事になりました。コミュニケーションが取れない人の場合、一人でできるけど周囲が不安なので何でも介助されて、自分の意志と関係なく依存性が高まります。結果、周囲に合わせるという経験の機会を失い、周囲に合わせられないというレッテルを貼られて一生過ごすことが少なくありません。個別化するとは一人一人がばらばらでいいと言っているのではありません。個性は認めつつもお互いに工夫や折り合いをつけて共生しようとするのが個別化の目的です。ただ言うは易し行うは難しです。

 

子どもの遊びを作る仕事

Kちゃんが最近公園に行きたがらないし、公園に行っても以前は車いすから降りてブランコや滑り台に歩いて行ったのに今は車いすから降りようともしないと報告がありました。理由を聞くと、お母さんは寒くなるといつもそうだと言われるようです。外は寒くていやだということです。先日も、外に行くのでオーバーパンツを履かせようとすると執拗に嫌がったと言うのです。防寒着を着れば外に行くと知っているという事です。

Kちゃんの場合は交渉がまだできず、イェスかノーしか表現できないから、防寒着を押しやったり払いのけたりする「嫌ですサイン」が出たら無理に外出せずにわかったよと受け止めてあげればよいと話しました。でも、寒いのが嫌なのは分かったけど、寒くない部屋では車いすのベルトを外すとそこら中うろうろして棚のものを引きずり出したり、机の上のものを落とすので目が離せないと言います。

それは外で遊べずエネルギーが余っているわけだから無理もないよねと話しました。物を引っ張り出したり、落としたりして楽しむのは乳児期後半の遊びですが、その事が楽しいならプレイエリア内で引き出したり落としたり遊びをしてはどうかと話し合いました。段ボール箱を倒したり落としたりして楽しむ遊びや倒した段ボールトンネルをくぐったり等いくらでも遊びができそうです。障害の重い子どもの遊びは少ないからこそ、大人から仕掛けて遊びを作る必要があります。家では困る事でも事業所内なら遊びにできる事もあります。

 

手伝ってカードは難しい

作業が難しくてできない、探しているものが見つからないなど、困ったことがある時「手伝って」カードを使う指導をします。PECSのフェイズではフェイズ3で教えます。離れたところでも自分の欲しいものが絵カードで伝えられるようになる時期と並行します。J君はフェイズ3Bで欲しいもの同士の絵カードが正しく弁別できるようになっています。(3Aは欲しいものといらないものの弁別)

ここで「手伝って」が教えられるはずなのですが、J君にとっては、欲しいものが見つからない助けてと、作業を手伝ってほしいの手伝ってはどうしても同じものには思えないようです。それよりも、音絵本の電池が切れたから「手伝って」と職員に示すより、絵本と「K先生」の写真を持って2階に上がっていくほうが分かりよいみたいです(K先生の顔写真をK先生に渡して電池交換しての意味を伝えています)。「手伝って」カードは手のひらカードに助けてと書いてあるだけのもので、かなり抽象性が高いので、J君にはわかりにくいのだと思います。

くつも一人で履けない時に、手伝ってカードではわかりにくく、靴を履かせている写真の方が具体的で分かりやすいんじゃないかと話しています。ただ、手伝ってカードはお助けのワイルドカードで、これ一つで困ったときに援助が来るよという意味合いを理解させるツールなのでいつかは理解してほしいとは思うのですが、マニュアル通りには使えないようなので、しばらくは場面ごとの具体的支援内容のわかる手伝ってカードを準備するようにします。

 

涙の訳

H君が涙ぐんでいるので、職員に話を聞くと、昼食準備の時間なのにPCをかたずけるのが嫌で職員から急かされて泣いたと言います。あとでこっそりH君に理由を聞きました。「H君ともあろう人がそんな事で泣くのは不自然やなぁって思うねんけど」と。「あのな、かたずけは関係ないねん。6年に口の利き方が生意気やってずっと言われていて、それが積み重なって今日はとうとう泣いてしまってん」と胸の内を話してくれました。

H君は生意気な新入り低学年だと高学年たちからディスられている子どもです。さすがに高学年ですから、面と向かってはあまり言わないのですが、たまに高学年の堪忍袋の緒が切れて今回のようになります。それでも、相手の気持ちが読みにくく自己フィードバックも弱いH君には、みんなと同じようにしているじゃないかと、いわれなき非難として受け止めているのです。

でも、どうして他の職員にはかたずけが嫌だったなどと嘘をついたのかと聞くと、「そんな悪口くらいで泣いてしまう自分が恥ずかしかったから、別の理由を言った」というのです。H君それだけ自分をカムフラージュできるなら、なんで高学年の前でもカムフラージュしないのと思いますが、そこは違うようです。

「悪口で泣くのは恥ずかしいが、大人の指示を嫌がって泣くのはまだまし」変な基準ですが、友達とのトラブルでは泣いてはならじというのがH君の掟のようです。同じ低学年でもタメ口でなんともない子もいるのにH君だけアウトな問題については、100%タイミング問題なんだけど、それをH君に理解させるのは至難の業なので、職員みんなで解決策を探っています。

先輩風

最近、小学校から何人か新しい見学者が来ています。大抵は低学年なので、高学年のみんなには「おもてなし」をお願いしています。昨日はF君が見学に来たので、同じ学校のG君は「F君いい子やねん」と何日も前から見学に来るのを楽しみにしていました。実はG君はお気に入りの6年生がすてっぷを卒業してしまうのが寂しくて、自分も通所を止めようかと悩んでいたのです。そんな矢先にF君の見学を知ったのですから、G君の嬉しさはよくわかります。

ただ、6年生も「おもてなし」ミッションに応えようとしていますし、ここは最高学年としてマウンティングしておく必要があると考えるのは無理もないことです。低学年のF君も知り合いのちょっと先輩のG君より先輩風吹かす6年生の言う事に従う必要がありますからG君は捨て置かれることになります。結局あれこれの遊びのエスコート役は6年生に奪われてしまい、G君のF君へのお世話はWiiリモコンの電池切れを直してあげるくらいでした。

2階に上がってG君がしくしく泣いているので、職員が問いただすと「僕が先輩だからお世話しようとしたのに、F君ちっとも僕のこと気にしてくれない」と言います。職員の話によると、その他にもG君が落ち込む原因があると言います。G君が6年生に「F君は僕の親友」と説明したのにF君が「親友と言うほどではない」と発言したこともショックだったようです。まず「親友」定義がF君とG君で食い違っていることをどこかで説明しなくてはいけませんが、学校で唯一の遊び友達である後輩F君の言葉としては痛かったのだと思います。でも、それって先輩風じゃないけどなぁと思いつつ、対人関係の機微が分からず友達関係で苦労する子どもの姿を垣間見たような気がします。

 

 

待ってパニック

Cちゃんが階段のところでかなり長時間泣き続けていました。パニックを起こしたことは分かったのですが、原因は職員から聞かないとわからないので次の日に報告を聞きました。要するに、交渉が成立していたのにその交渉が打ち切られたと勘違いして、驚いて悲しくて泣き続けていたということでした。

Cちゃんはご機嫌で外で遊んで帰ってきました。ドアを開けると目の前でD君がこれまた楽しそうにタブレットで遊んでいたので、「ピンクのタブレットください」とE職員にお願いしたのです。「今D君が使っているから、先生と遊ぶか40分待つかどちらにしますか」と職員が言うので、「待ちます」とCちゃんが言うので、40分間のタイマーをセットしました。Cちゃんこれまでタイマーで待ったこともない長さですから、かなり頑張っていたのだと思います。

それを見かねて、横からF職員が「公園で遊んで来たら終わっているよ」と公園カードを示したと言うのです。それが原因で、先の大パニックが起こったという事です。待ったらできると交渉していたのに、公園に行けと交渉を破棄したのかというふうに誤解したのです。生活の中にはよくある出来事ですが、一生懸命タイマーに従って待っていたCちゃんにとっては、「公園で暇をつぶして来たら?」という指示は難しすぎるのです。良かれと思って横から出した助け舟は、大きなお世話となり沈没したというわけです。

この場合は、使っている子どもはCちゃんの事も理解できる子もいるのですから、「5分で交代してください」くらいの交渉で良かったのです。Cちゃんにはその時間を少しづつ伸ばす取組が必要ですが、いきなりは難しいですし、目の前にない場所を指示されることは、交渉は決裂したと誤解してしまうのです。というわけで、パニックは起こるべくして起こったと言う結末でした。悪気はなかったとは言え、Cちゃんごめんね。

 

 

 

フラッシュバック?

みんなで向日神社に初詣に行きました。小学生が真剣に手を合わせている姿をみると微笑ましいです。神社の参道はいつもは静かなものですが、さすがにお正月期間は人出も多く、ざわついた感じです。するとB君が1年ぶりくらいに走り出しました。B君の注意喚起行動は以前は毎回のようにあって、職員の注目がなくなると事業所を抜け出して、近所のマンションのエレベーターを目的に逃げ回ると言う行動です。

このB君の行動は昨年の今頃を境にして消滅していました。職員が対応を変えたからです。それまでは、自立を目的に自分のスペースで余暇を過ごしたり自立課題に取り組んだりという大人の注目を減らす取組でした。でも、B君は注目が欲しいのですからこの方略では利得がありません。たしかにサイダーやラーメンは好きですが、強化子が大変少ないのでいつもサイダーやラーメンと言うわけにもいきません。

最大の強化子が大人の注目なのだからと思い切って彼の適切な行動はどんどん注目するという作戦に変えたのです。結局、逃げないようにマンツーマン体制が必要なら、積極的にマンツーマンを生かしていこうという作戦です。作業や課題ができたら必ず褒めるというただそれだけの事ですが、大変効果がありました。要するに私たちは、もう中3なんだから自立してよと突き放すことが多かったのですが、彼にしてみれば中学だろうと高校だろうと無視しないでよと言いたかったのだろうと思います。

良い行動に良い注目のサイクルが出来上がると、B君の飛び出し行動がピタッとやみました。お手伝いや身の回りの準備など適応行動も増えていき、B君は注目は逃げなくても得られるとわかったようです。この実践例は私たちも大変うれしかったのと、目からうろこの実践だったので、昨年の成功例の中でも何度か繰り返し報告しています。

今回の参道での飛び出しは、神社の警官詰め所の中にエレベーターが見えたのが大きな原因なのと、お参りの人出の喧噪で周囲がやかましいと言う不快感がかつての不適切行動をフラッシュバックさせたのかもしれません。他にも年末お正月をはさんでの初めての通所で新しい職員がついているというのも少し緊張感があったのかもしれません。エレベーター室が施錠されていたのと、職員も派手に追いかけるという対応をしなかったので事なきを得ました。

フラッシュバック行動のあるASDの子どもは他にもいますが、今の文脈とは全然関係ないのに、不快感情が生じると繰り返してしまうのは本人もつらいだろうと思います。適切な社会行動を増やし安心して過ごせる環境の準備と、不快な事も表現できる表出コミュニケーションのトレーニングを積み重ねていくことが最も効果的だと思います。ただ、道のりは長いです。伴走者としての支援者の腕の見せ所です。