すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

声のレベルメータ 了解!

Yちゃんは、声がでかくて音に過敏な先輩たちの頭痛の種です。学校つながりのZちゃんがちょっかいなどを入れてくると、もう「全員避難!」みたいな大声で叫び続けます。お願い勘弁して、スタッフもたまらずYちゃんを連れて室外に誘導します。

でもYちゃんはこの間いろんな事がわかってきて、行先パニックやらヘイトスケジュールやら少なくなっています。きっと声のレベルメータとかも理解できるんじゃないかと、スタッフが教えてみました。このツールは(声のメータ表 2019/06/10)で掲載したものです。

「Yちゃん、お部屋の中では2の声でお願いします」「2の声の人はご褒美です」と示すと、「うん わかった・・・」といきなり小さな声で応えてくれました。まさかこんな簡単に理解してくれるとは思いませんでしたとスタッフ。それでも次の日になると忘れていて、毎回お願いを繰り返すことにはなりますが、先輩たちは少し胸をなでおろしているだろうと思います。

できることを提供しましょう。

X君が弁別課題ができないことと、弁別認知の有無は別の問題だと以前書きました弁別と教材 02/03。人は動機がなければ行動しないということを、スタッフがどれほど理解しているかが問題です。つまり、X君は弁別課題ができないのではなく、スタッフが作った課題そのものに込めた意味が分からないのです。「▲を△の型に入れる?そーですか」と、仮にX君が「◆ではないは▲」を理解していても「で、それがどうした?」と思っていると話は前に進みません。

X君は10種類以上あるおもちゃやおやつのカードの貼ってあるBOOKの中から自分の欲しい物のカードを弁別して「探し出して」スタッフに確実に渡してきます。弁別力は十分にあるのです。しかし、スタッフの無味乾燥な課題を「完成させる意味」が分からないのです。通常なら大人に褒めてほしいなど共感を求めて子どもは完成しようとします。共感性の乏しい人でも、型通りの枠型にスパンとはまった快感を得たいと思う子も完成させようとします。

しかし、X君は違うのです。「それがどーした」なのです。だったら、スタッフは同じ事ばかりやるのではなく、X君が「なるほどー」と思うような教材や作業を開発したほうがお互いのためです。プットインに弁別過程があるとプットインの中身が広げられるというのが初めの狙いなのですから、わずか一例の弁別課題ができないから、別のプットインが作れないという事ではないのです。できないことを何度も提供するより、できる中身を考えて「できたー」の気持ちや「グッジョブ」の声掛けの回数が自尊感情を育てる基礎になると思います。

 

 

ススメ!電波少年!

W君は「西山に行って第2鉄塔のある最高点まで行こう」などとスタッフがと言うと「俺は体を鍛えるためにここにきてるんと違うんや。パソコンもしたいし本も読みたい。鉄塔却下!」と叫んで外に出ることを好みません。ところが、最近W君は電波チェックにはまったようで、短波ラジオで北朝鮮の放送や北京放送の日本語放送を聞いたり、電離層の反射で遠い海外から飛んでくる短波放送を聞くのを楽しみにしています。

アマチュア無線をやっていたスタッフから、「遠方の局が聞きたいなら妨害電波や高い建造物の影響を受けない高い山頂がいい」と教えてもらったので、嫌いな西山の第2鉄塔に行ってみたのです。アンテナを伸ばしてみると、航空機のエアバンドからも交信がかすかに取れるし、遠方のラジオ局も平地よりクリアに聞こえました。

「もう僕あそこに住む」と言うくらい満足して帰ってきました。今彼はアマチュア無線の丸暗記本を借りて勉強しています。小学生で合格している人は結構います。今はやりのFPV(First Person View:空撮無線映像を見る)ドローンを操縦するには4級アマ免が必要で、そのために多くの小学生が受験しています。電気工学は中学生くらいでないと理解できない内容ですが、4択で24問の丸暗記で対応できるので小学生でも合格できる可能性があるわけです。さて、W君はどうなるでしょうか。進め電波少年!

お山登りまーす!

Vちゃんは、1か月ほど西山に登るのを嫌がっていました。まだ、コミュニケーションスキルが低くて、とにかく大騒ぎをすれば要求は実現するとVちゃんは思っているので、送迎車の前で大泣きをし、登り道でもしばらく大騒ぎでした。しかたがないので、「こんなに嫌がっているんだからもうやめようか」とスタッフが言うので今日行ってダメだったら次回考えましょうと言うことになりました。

ところが、今日は車に乗る前からニコニコで山道もなんにもなかったかのように「お山登りまーす!」と歩きます。今までの拒否はなんだったの?とスタッフもあきれ顔。何かがVちゃんの中で吹っ切れたのかもしれません。結局理由は分からずじまいで、次回の山登りもご機嫌なら問題ないんじゃないのということになりました。理由を話せない子どもたちのことを私たちはあーでもないこーでもないと話しますが、わからないことも多いです。毎日子供たちに振り回されている感じも否めません。少しでも分かり合えたらと言う思いで、コミュニケーションスキルに取り組んでいます。

移動カード

移動カードはトランジションカードと言ってスケジュールに戻るときに言葉のわからない生徒に渡すカードのことです。トランジションカードとこのブログ内で検索してもらえばわかるように今年度に入ってほぼ2か月に1回触れています。最近はトランジションカード 2020/11/06で書きました。すてっぷではトランジションカードをやめたのです。U君たち言葉をうまく理解できない人たちに身体プロンプトでスケジュールに戻ったり行先にいくようにしています。確かに誤解はなくなり、自分で考えようとしている姿が2か月過ぎからみられるようになっています。

スケジュールを自分で見てもらうようにするには最初は支援があったにしてもその後その支援をどう減らすかを考えておく必要があります。声掛けで「スケジュールを見なさい」と言おうが、トランジションカードを渡してスケジュールを見に行かせようが、やっていることは同じです。人的介入で行動のきっかけ(プロンプト)を作っているのです。

大事なことは、この介入をどうやってフェードアウトしていくかなのです。カードよりヴォリュームがだんだん落とせて発音数を減らせる声の方がまだましかもしれません。カードをだんだん小さくしても視覚的プロンプトは最後まで残ります。それに引き換え身体プロンプトは後ろから触るだけですし、自分で行動ができるようになればそれでプロンプトしなくていいのです。どう考えても、身体プロンプトの方がフェードアウトはしやすく誤解も少ないです。

ではなぜ、トランジションカードが我が国で20年以上続いたかなのですが、結局、スタッフ側の支援「満足感」なのだろうと思います。カード渡すことによって子どもがスケジュールに戻る姿はスタッフにはいい気分なのです。スケジュールを子どもが自分で理解するにはどうしたらいいのかということも、エビデンスをもとに説明したものはPECSのマニュアル以外に見当たりません。

結局、2005年初版のPECSをよく読んだら書いてあったということなのですが、本がぶ厚すぎて286ぺーにまでたどり着いていない人が私も含めて多いという事です。それと、改めて応用行動分析理論については、対人サービスに関わる人すべてが学ぶようにカリキュラムに入れるべきだと思います。