ドライブ・マイ・カー アカデミー賞4部門ノミネート 作品賞は初
2022/2/8 【毎日新聞】
米映画界最高の栄誉とされる第94回アカデミー賞(映画芸術科学アカデミー主催)の候補が8日に発表された。濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が最高峰の作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞(旧外国語映画賞)の4部門にノミネートされた。日本作品が作品賞にノミネートされたのは初めて。受賞すれば、英語以外の作品としては韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)以来2年ぶり2回目の快挙となる。
また、日本作品の監督賞ノミネートは黒沢明監督の「乱」以来36年ぶり、脚色賞は初めてで、受賞すればいずれも初。国際長編映画賞でのノミネートは「万引き家族」(是枝裕和監督)以来3年ぶりで、受賞すれば「おくりびと」(滝田洋二郎監督)以来13年ぶりとなる。
ドライブ・マイ・カーは村上春樹さんの短編小説が原作。妻を亡くした演出家(西島秀俊さん)が、専属運転手となった女性(三浦透子さん)らとの対話を重ね、妻の死と向き合っていく姿を描いた。脚本は濱口監督と大江崇允さんが手がけた。今年1月の第79回ゴールデン・グローブ賞で日本作品として62年ぶりに非英語映画賞に選ばれるなど、米国内外で受賞ラッシュが続いている。
受賞発表と授賞式は3月27日(日本時間3月28日)にある。【ロサンゼルス福永方人】
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まだノミネートだけですが筆者も興味のあった映画です。昨年、カンヌ受賞の後京都シネマに来ていたのですが、タイミングが合わずに観ることができませんでした。アカデミー賞ノミネートのおかげでアマゾンプライムでも配信が始まり先日観たところですが、アカデミー賞の発表が待ち遠しい作品です。
この映画は、村上春樹の短編小説に、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』を劇中劇として取りこんだ作品です。この点で、チェーホフの村上春樹的解釈であるだけでなく、村上の原作を超える解釈をした映画かもしれません。パク・ユリム(ソーニャ役)は、聴覚障害者で韓国手話を使う女優役として舞台へ参加します。
ポリティカルコレクトネスとダイバーシティを狙ったと最初に観客は思うかもしれません。しかし、終盤での劇中劇でパク・ユリムは圧倒的な存在となり、そんなことは快く忘れてしまいます。また、パク・ユリムが、エレーナ役のソニア・ユアンと、屋外で立ち稽古するシーンの素晴らしさも圧巻です。
妻を喪失した失意の中で西島秀俊がワーニャ伯父さん役で本番の舞台を立ち、そのクライマックスで、ソーニャ役パク・ユリムの手話の語りは、ただただ美しく、静まり返った中での彼女の手話はスクリーンを超えて観客の心を温めます。
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生きていきましょう。長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。
運命が送ってよこす試練にじっと耐えるの。
ほかの人のために、今も、年を取ってからも働きましょう。
そしてあたしたちの最期がきたら、おとなしく死んでゆきましょう。
そしてあの世で申し上げるの、あたしたちは苦しみましたって、涙を流しましたって、つらかったって。
すると神様はあたしたちのことを憐れんでくださるわ、
そして、ワーニャ伯父さんとあたしは、明るい、素晴らしい、夢のような生活を目にするのよ。
そうしてようやく、あたしたち、ほっと息がつけるんだわ。
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村上春樹がモチーフとした、ビートルズの"Drive My Car"(1965, アルバム"Rubber Soul"収録)が、この原作タイトルです。ジョンとポールは、ジョークに満ちたこの曲で
「あなた、私の車を運転しなさいよ。そうよ、私はスターになるわ。そしたら、あなたの事好きになるかも。」
と歌います。「Drive My Car / 車を運転すること」とは、「愛すること」「生きること」だと、西島と霧島・三浦・朴の3女優が演じていきます。3時間は長すぎましたが、たぶんアカデミー受賞だろうなと思わせる映画でした。パク・ユリムの美しい韓国手話(日本手話とよく似ている)を観るだけでも値打ちがあると思います。