みんなちがってみんないい
読み書き障害の簡単な指導方法
Dyslexia には音韻処理障害を背景とする解読(文字を音に戻す=デコーディング)の障害があります。従って、まずは平仮名一文字が楽にスムーズに読めるようにする解読指導を行います。もっとも簡単な方法は五十音順指導です。「あ、あいうえお。あか、かきくけこ。あかさ、さしすせそ。・・・」と五十音表を意識して暗唱します。どこでつまづいたかフィードバックしてもらい。その後50音ひらがなと50音カタカナを書きます。これを3回繰り返して終了です。こつは読むも書くも流暢さを目指すことです。半年で効果が表れるといいます。
さらに精度を上げた訓練法は、解読指導は平仮名一文字を書いたカードを準備し、それを順不同に子どもに示して音読させます。なるべく早く読むように教示して、スムーズに読めた文字を A、少し考え込んだり、間違えて言い直したりしたものを B、正しく読めなかったものを C に分類して記録しておきます。そして B と C だけを何度も音読する練習をします。
1 日 1 回、 5 分を目安にします。練習の最後にもう一度すべての文字を読ませて、同じように分類し、「A が何枚増えたね、 B と C が何枚減ったね」と練習の成果を示すなどして励ますとよいです。この解読指導は 3 週間を目安にして毎日練習します。様々な研究で効果があることが確認されています。この解読指導によって習得していない文字を覚えますし、曖昧に覚えている文字の誤読を減らすことができます。症状の重い症例では、拗音を外した直音だけで練習し、そのあとで拗音を加えるとよいです。これを簡便にするための音読アプリも提供されています。アプリの検索で、「音読指導アプリ」と検索すると見つかります。iPad やスマートフォンで簡単に指導ができます。
解読指導によってある程度、音読が上達したら、今度は語彙指導をします。語彙指導は、国語の教科書に載っている単語や語句のなかで、指導を受ける子が知らない単語や語句を選び、その読み方を聞かせ、意味を教え、例文つくりをするというものです。文章独特の単語や語句をしっかりと覚えることで、文章を読むときの速度が向上することが期待できます。これも研究で確認されています。教材は学校生活の様子などを描いたSST関連の絵カードが良いと思います。
つまり解読指導によって誤読を減らし、語彙指導によって音読速度を改善します。語彙指導の効果が表れるには時間が必要です。症例によっては 1 年以上かかることも少なくありません。焦らず、あきらめず、根気よく続けます。また本の読み聞かせが言葉と言葉のネットワークを形成するのに役立ちます。ご家庭で絵本の読み聞かせを毎日すると、このネットワークが形成されて意味を理解しながら読むことを大いに助けますし、その延長として子どもが本好きになり ます。本が好きになって自分で読み始めることが最終的なゴールとなります。
dyslexia は音韻処理障害を背景とする常染色体優性遺伝の疾患です。本来は医師が診断し言語聴覚士が治療すべき疾患です。しかし、まだまだ学校教育の問題としか見られていません。小児や精神に関係する医療関係者にも、行動の問題だけでなく、読み書きの問題に関心を持って欲しいと思います。