みんなちがってみんないい
発達障害の子のためのハローワーク
「2/3 就労移行支援」では、「13歳のハローワーク 村上龍 幻冬舎 2010-03-25」を紹介しましたが、これはこれでビデオやゲームがあって楽しいのですが、発達障害向けではないのでそれに特化したものが出版されていたので、紹介します。
東京から全国展開している放デイ事業所グループTEENSの「発達障害の子のためのハローワーク」の本の中では発達障害の特性をもつ5人の子どもたちと、担任の先生、それぞれのお仕事の案内人が登場します。「鉄道のお仕事」や「出版のお仕事」などなど、約25業界、150種類以上の職種をそれぞれの子どもたちの向き不向きと合わせて紹介しています。この5人が各業界の中で自分に向いている職業を教えてもらいながら、今から頑張ったほうがよいことも教えてもらう、というストーリになっています。漫画や写真をおりまぜているので、字を読むのが苦手な子でも楽しめます。
通常の職業紹介と違うところは、「車掌さんってこんな仕事でこんな人に向いてるよ!」と職業内容で紹介されていることが多いですが、本書は職業マッチングの視野を広げるところに力点が置かれます。残念ながら発達障害のある子ども(中でも高確率で鉄道が好きで車掌さんに興味のあるASDの子)とは異なる人物像だったりします。発達障害のある子に限らず、職業の向き・不向きはあります。ただ、発達障害のある子は他の子どもよりも弱みが”見えやすい”ため、向き不向きだけの話になると「自分にはできないな」というあきらめにつながってしまいやすいです。確かに、臨機応変さが求められる車掌さんの仕事は、想定外のことに弱いタイプの子どもには難易度が高いですが、鉄道にかかわる仕事は車掌さんだけではありません。目立たない仕事でも多くの人の支えで日本の鉄道は動いているわけで、その中のどこかの役割で、向いているものがあるはずです。自分の知っている範囲の職業だけで向き不向きを考えないでほしい。たくさんの職業を知って、子どもたちが自分の興味関心と強みを結びつけてほしいという視点が本書のいいところです。
5人のキャラクターは、13歳、中学1~2年生くらいを想定しています。もともとはベストセラー『13歳のハローワーク』の発達障害版として作るという企画だったそうで、そのまま13歳に設定されたのですが、この年齢は発達障害の子どもにとって重要な時期です。定型発達の子の場合、大体9歳ごろから発達の個人差が大きくなり始めて、抽象的思考力の発達とともに自分を客観視する力がつき、他者と自己を比較するようになります。はっきりしたデータがあるわけではないですが、発達障害の子どもたちを見ていると、中2くらいからこれと似た様相を見せることが多いです。小学校の間は特に気にせず通っていた通級に行くことを恥ずかしがるなど、同級生と自分との違いを気にするようになります。テストの点数が露骨に成績に反映されるようになるため、自尊心もより下がりやすい時期でもあります。
もちろん、周囲との差異を感じ始めた子どもに、その子自身がもつ強みを伝えるのは大切です。しかし、青年期にさしかかった発達障害の子どもたちと対話するときに、弱みの部分から目を逸らして強みの部分だけ伝えても、なかなか信じてもらえなくなります。現実問題(誰にとってもそうですが)強みだけを活かして生きていける場所などはなく、苦手なこと・できないことをどう対処していくかというのは大切な能力です。その子の将来を真剣に考えるならば、弱みの部分は認めつつ、それに対処していくための手立て伝えつつ、強みを活かす方法を教えることが重要です。
そのため、この本の中では、それぞれのキャラクターの強みを踏まえて職業の紹介をしていますが、併せて懸念点や努力が必要なことも書かれています。それは工夫によって解決できることかもしれませんし、特性上難しいことかもしれません。ただ、それを隠すのではなく、本当の意味で子どもたちが自分自身と向き合えるように、できるだけフェアに伝えるように心がけられていることも良いところだと思います。
楽しく働くためのヒント&セルフアドボガシー
前回、発達障害の子どもたちと就労を考えていく「2/3 就労移行支援」を掲載しました。今実際に働いている人たちはどんな困りごとやその対策があるのでしょうか。
発達障害のある人は、仕事において一般的に「コミュニケーションが苦手」「ミスが多い」などの困りごとがあると言われてきました。しかし、問題はもっと具体的で、人によって違います。『まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル 楽しく働くためのヒント&セルフアドボカシー』(鈴木慶太:監修、株式会社Kaien:編著/合同出版)では、「発達障害応援企業」として当事者の支援を行なっているKaien社によって、実践的な事例がまとめられています。
例えば、「急に頼まれた仕事に対応できない」という困りごとは、「作業がゆっくり」「段取りを決めるのが苦手」といった特性が影響し、この困りごとが発生しているそうだ。解決策は「急に頼まれた仕事にすぐに対応せず、まずは優先順位と段取りを確認する」「急な依頼に対応できるよう、予め余裕を持っておく」などが挙げられています。本書では、困りごとがマンガで描かれていてわかりやすいです。困りごとが生じる場面、原因と分析、対策まで書かれているので、当事者だけでなく、職場の同僚や上司、支援者、さらには発達障害のある子どもを育てる親御さんも共通のビジョンを描けると思います。
他には「求められていることと異なる仕事をやってしまう」という困りごとが挙げられています。「業務指示の認識がズレる」「ニュアンスを読みとるのが難しい」といった特性により、後から「そんな指示していない」と驚いてしまう事態が発生しますだ。この場合、いわゆる「報連相」の中でも、特に「中間報告」が推奨されています。作業計画を立てた段階や最初の工程が終わった時点で報告し、チェックしてもらうことで、ズレを減らしていくことができます。この書籍のタイトルにある「セルフアドボカシー」とは、自分の状態を把握し、必要な支援を要請することを指します。この際、一方的に権利を主張するのではなく、穏やかに交渉する力が必要だと述べられています。
「権利を主張する側(当事者)も、その主張を聞いて受け入れる側(事業者)も、しばらくの間は練習が必要」です。そして「みんながハッピーに働くことは、結果的に、職場のパフォーマンスを上げることにつながります」とまとめにあるように、お互いにそんな簡単に分かり合えるはずがないということを、常識だと認識することです。ひとつづつ、分析し原因を調べ、歩み寄って対策を工夫しながら見つけて積み上げてこそ、みんながハッピーになれると本書は言います。
まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル: 楽しく働くためのヒント&セルフアドボガシー
監修: 鈴木 慶太 著: Kaien 出版社: 合同出版 発売日: 2019/11/30 ISBN: 9784772613989
小学生高学年の不登校に多い原因
下のグラフを見ても分かるように、不登校の要因で最も多いのは自分に関わる内的な問題です。高学年になると自意識が強くなってきます。不登校の原因にもそれが影響しているケースがあるようです。たとえば、自分のイメージが他人にどのように見えているのかに悩む、期待にこたえることができないなどから、友達や先生、親の前でうまく振る舞えないことがあります。また、成績が落ちることや、勉強についていけないことも不登校の原因のひとつです。これはいわゆる心理的原因です。
自信不足によって子どもは、さまざまな身体症状が出ます。たとえば、子どもの笑顔が減る、イライラしている、食欲がなくなるといったことが前兆やサインです。子どもに、いつもと違う様子が見受けられるようになったら要注意。子どもをきちんと観察し、それらの前兆やサインを見逃さないようにしてください。
前兆やサインに気づいたら、まずは子どもを誉めることばを探します。褒めることばには副作用がありませんので、かけ過ぎても問題ありません。「…お母さんうれしい」という愛情の言葉と、能力や個性を認める承認の言葉を子どもにかけます。そうすることで、子どもは自信をつけていき、身体症状が軽減され、やがて消えていく場合もあります。1日3つ以上褒める内容を探して褒めていきます。
やっかいなのは、病気かもしれないときです。心理的原因との区別がつきにくいからです。多いのは起立性調節障害と診断を受ける子です。起立性調節障害とは、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患のことです。起きることができない、動けない状態のため、登校できないのです。それらの診断を受けると、血圧をあげる薬を処方されることがありますが、薬だけでは回復しません。親の誉め言葉で自信をつけることが必要です。自身がつけば、症状が軽減されて再登校していきます。ただし、診断を口実に登校しない子もいます。そこは、ダメなものはダメと言える親の本気度が必要となってきます。
多動不注意衝動性の特性をもっている子は、その言動から学校や家庭で否定されることが多く、常に自信が不足しています。ですので、これらの子どもにも励まし言葉がたくさん必要です。誉め言葉で自信がつけば、素直に親や先生の話を受け入れ、心の安定を図ることができるようになります。また、どのような言動をとることが大切だったかを繰り返し教えることも大切です。
家庭で勉強をする場合は、「学校タイム」を設定しましょう。「学校タイム」とは、学校のある時間帯に勉強することです。これによって、学校の勉強に慣れるようにします。ここで気をつけたいのは、親が焦って勉強のことばかり誉めることです。勉強のことばかり誉めると、子どもを自分の思い通りにさせようと操作することになってしまいます。それは、子どもにとってマイナスです。親がなぜ勉強しないといけないのかをきちんと説明することが重要です。
勉強は習慣だということを、親が諭す必要があります。勉強の習慣のない子には、まずは親が一緒に勉強についてあげるようにしましょう。子どもは、誉め言葉で自信がつけば、自ら勉強を始めます。学習意欲の低下も、身体症状のひとつです。もし、そのような症状が出ていると感じるのであれば、親は、「学ぶとはどのようなことか」という学校で学ぶ価値を子どもにインプットします。また、具体的にどのような勉強をするのかを示してあげるようにしてください。
ディスレクシア
ディスレクシアは「字を読むことに困難がある障害」を指す通称で、ギリシャ語で「困難」を意味する「dys(ディス)」と、「読む」を意味する「lexia(レクシア)」が複合した単語です。日本では難読症、識字障害、読字障害など、他にも様々な名称で呼ばれてきました。読むことができないと書くことも難しいことから、読み書き困難、読み書き障害と呼ばれることも多いです。
発達期の特異的な読字障害は先天性のものであり「発達性ディスレクシア」(developmental dyslexia)と言われています。医学的な分類では学習障害(LD)に含まれることが多く、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5では読字の障害を伴う限局性学習症・限局性学習障害とも呼ばれます。ICD-11では発達性学習症の読字不全の症状です。
日本ではディスレクシアの割合を示す統計は発表されていません。日本におけるディスレクシアの発現率に一番近いものとしては、障害者白書内にある「児童生徒の困難の状況」のうち「知的発達に遅れはないものの学習面で児童生徒の割合」の4.5%だと言われています。日本語にはひらがな・カタカナ・漢字があり、詳細な発現率は分かっていません。また、知的な遅れが伴わないことや、海外に比べると日本はディスレクシアの認知度が低いことから、大人になるまで気づかないままでいた人もいます。
「文字を読む」というのは一見単純に見える行為ですが、まず文字を目で追い、その一文字一文字をまとまりにしてつなげ、音に変換し、それを脳で記憶している意味と結び付けて理解するという複雑なプロセスを経ています。つまり、文字を音と結び付けて読み上げる音韻処理や、文字の形を認識したり語句のまとまりを認識し意味と結び付ける視覚的な処理などが必要になります。ディスレクシアの人の場合、一人一人の偏りや特性は異なりますが、それらの処理をするための脳の部位に何らかの機能障害や偏りがあり、そのために読むことが難しいのではないかと言われています。
音韻機能とは最小の音単位を認識・処理する能力を指しますが、ディスレクシアの人の脳の特性として、音韻の処理に関わる大脳基底核と左前上側頭回という領域の機能異常があるという説が主流となっています。そのため音を聞き分けたり、文字と音を結びつけて「読む」ことが難しいと言われています。
■文字と音の変換が苦手
ひらがなの文字と音を結びつけて読むのが難しいことがあります。また小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」や音を伸ばす「-」などの特殊音節が認識できず読めないこともあります。
■単語のまとまりを理解するのが困難
たとえば「み」「か」「ん」などのひらがなやカタカナの一音ずつは読めてもそれを「みかん」というひとまとまりの言葉として理解するのが難しいことがあります。
■聴覚記憶が苦手
言葉を音として記憶しながら読んだり話したりしますが、ディスレクシアの人の中にはこの音韻認識が弱く聴覚的な記憶が苦手な人がいます。このように処理と記憶を同時に行うことが難しいことから読むことに困難な場合があります。
ディスレクシアの人の中には、視覚認識や眼球運動に偏りがあり、普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。全く読めないのではないけれど、読むスピードが遅いというディスレクシアの人もいます。周りから怠けていると勘違いされることも多くありますが、本人の努力不足などではなく、先天性の障害であるということを理解することが大切と言えます。
学校では板書が必須ですが、文字を読むのも書くのも苦手なディスレクシアの子どもにとっては困難な作業です。作文や漢字の書き取り、音読なども苦手なため、学校の宿題に時間がかかったり、できないことも多々あります。先生や本人、家族も気づいていない場合、注意不足などと叱られる子どももいます。
仕事においても、書類作成など文字を扱う業務が苦手で、何度間違いを指摘されてもミスを繰り返してしまうことがあります。また、素早くメモを取ることができないため、上司の指示を聞いたり、電話を受けた場合に困ることもあります。短期記憶も苦手な傾向にあるため、誰から電話が来たか忘れてしまったり、人の顔と名前を覚えられなかったりします。
就労移行支援
子どもに発達障がいを始めとする障害がある場合には、早い時期から自立が気になります。発達障害に限らずその子にとっての人生最初の仕事を選ぶために、大人と子ども自身が把握しておくべきことは、
1 子どもは何に興味があるか?(興味)
2 子どもに元々ある程度備わっている仕事をやる上での特徴とはなにか?(適性)
3 興味と適性の両方がある仕事があったとして、どうやってその仕事をやるか?(実現可能性)
何に興味があるのかを知るためには、世の中にはどんな仕事があるのか知る必要があります。多くの場合、自分の親の仕事とか、学校の先生とか、比較的自分の身近なところにある仕事に対して興味をもつようになります。それはそれで入り口としてはいいことですが、もっと広く仕事を知ることが必要です。手軽に仕事を知るための素材として「13歳のハローワーク 村上龍 幻冬舎 2010-03-25」があります。ドラマ化されたビデオ「13歳のハローワーク DVD-BOX 出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2012/07/25」もあります。30種類くらいの仕事を経験できるアドベンチャーゲーム「13歳のハローワークDS posted with カエレバ デジタルワークスエンターテイメント 2008-05-29 」もあります。このような素材を使いながら、子ども自身が「自分の興味の方向性」を知ることが大事です。
興味があるからと言って、その仕事に向いているかどうかはわかりません。向き不向きを表すのが「適性」です。具体的に適性というのがどのようにして表されるかというと、こんな感じに分類されています。
①知的能力:推測する、数を応用して考えるなどの力
②言語能力:語彙の多さ、前後の内容から推測する力
③数理能力:足す引く掛ける割るの計算力、応用的な算数
④書記的知覚:書いてある文字の意味を理解する正確性&速さ
⑤空間判断力:平面図、立体図を理解する力
⑥形態知覚:形や図柄を区別する力
⑦運動共応:見て手を動かすことの正確性&速さ
⑧指先:指先を細かく動かす器用さ
⑨手腕:腕全体を動かして作業する器用さ
これらが一般職業適性検査(略してGATB:General Aptitude Test Battery)で分かる内容です。この検査は比較的多くの発達障害当事者の方が「けっこう使える」と言う、主にハロワークで実施している適性検査です。これらの能力の組み合わせによって、様々な種類の仕事への適性が分かるようになっています。例えば、「電気設備の保守管理の仕事」には①知的能力、④書記的知覚、⑨手腕の3つが中程度のレベルで必要になる、というようなことが分かるようになっています。このようなやり方で、全部で40の仕事に対する適性が確認できるようになっています。GATBプラスコース(中学・高校生向け)があり、得点や他者との比較にとらわれすぎることなく、自分の強み、能力特徴に注目します。本人自身の各能力を比較してどの能力が優れているかを把握できるようになっており、将来を見据えた進路選択に役立ちます。(1名分420円)。障害の重い人ならTTAPというASD向けの就労移行支援テストが14歳からあります。
「13歳のハローワーク」に紹介されているような仕事だと、なりたいと考える子どもが多いケースが有るでしょう。例えば、パイロットになりたい子は多いでしょうが、実際の雇用の枠は、志望者の数よりもずっと少ないでしょう。性質として似ている仕事、その子の興味の方向性にあっている仕事、その子の適性に合っている仕事について調べてみます。そして、そういったもののなかで比較的仕事につきやすそうなものがないかどうか調べてみるというやり方があります。仕事のやりがいは、仕事を一緒にやる仲間との相性、仕事環境の文化、といったものも大きく影響してきます。まずは具体的に何かやってみることが大切だと思います。仕事選びには、「第一志望に入るためにがんばる」という受験勉強のような考え方はあまり適しません。実際に試行錯誤してみることが大切になります。
大人になってから発達障がいがあることがわかった方は「苦手なことをやった方がいい」と考えて頑張ってこられた方が少なからずおられます。そして結果的に体調を壊してしまうようなことも起こります。仕事をやっていくにあたって大切なのは、ここまでに説明してきた興味と適性がマッチしていることです。苦手なことより得意なことを軸に仕事を選ぶことは「逃げ」ではありません。そのようなことを含めて、子どものうちから教育していくことが大切なのだと思います。
公立高校入学試験の合理的配慮申請
公立高校の入学試験では障害のある志願者への合理的配慮を申請することが出来ます。自治体によって違いがありますが、子どもの特性を踏まえた措置をしてもらうことができます。2016年4月から障害者差別解消法が施行され、公立の学校については受験の際の配慮申請が通りやすくなっています。しかし、現実には入試においてなかなか当事者が望むような配慮は認められていません。私立学校の場合は合理的配慮は「努力義務」なので、各学校の裁量に依るところが大きいですが、公立の高校よりもむしろ私立学校の方が理解があり、別室受験や受験時間の延長などの対応をしているところもあります。そして、入学後の対応なども丁寧に行っているのも私立学校に多いようです。
高校入試のときの合理的配慮の申請に必要な書類の一般的な例ですが、高校入試の場合配慮の申請に必要なことや書類は以下のものです。
・医師の診断書・個別の教育支援計画(各自治体や各学校の様式に沿って作成)受験の際に支援の必要性を証明するために、校内試験でどのような支援を行っていたか記述したもの・中学校と受験先の高校との事前協議=ここで、認められる配慮の範囲について意見のすりあわせを行う。
入試の数か月前には中学校から受験先の高校との話し合いを行う必要があるようです。そのうえで、都道府県教育委員会に許可をとる必要がありますので、詳細については在籍している中学校や各教育委員会に問い合わせてください。学校に合理的配慮をお願いするときに大事なことにも書きましたが、それと同時に中学校での理解と配慮実績も必要になります。それを個別の教育支援計画や中学校での配慮事項などで、中学校での学習の仕方を高校へ伝えていく必要があるからです。
まだ大多数の中学校は、「高校入試の受験方法は特別な配慮がないので、中学校の勉強も皆と同じくする必要がある」と考えています。つまり、高校入試のために、普段の授業から慣れておく必要があるという考え方です。中学3年間などはあっという間に過ぎて行きますから、中学校との話し合いも中学入学時から進めていく必要があります。「学校の先生なら知っているはず」と思っていることでも、経験していなければ結構知らないことが多いです。「こういうことがあるそうですが」と、生徒や保護者の方から学校に伝えていく必要があります。正しい情報を伝えることで先生が動きやすくなることもあります。特別支援教育コーディネーターや進路指導、保健室の先生がよくご存じのはずです。
WHO公衆衛生上の緊急事態を宣言
新型のコロナウイルスの感染拡大を受けて、WHO=世界保健機関は専門家による緊急の委員会を開き、感染がほかの国でも拡大するおそれがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。WHOは医療態勢のぜい弱な国への感染拡大を懸念しているとしたうえで、ワクチンや治療法の開発を促進するとともに、そうした国への支援を行うべきとしています。
スイスのジュネーブにあるWHOの本部で、30日行われた緊急の委員会には各国の専門家や保健当局の担当者が参加し、中国を中心に感染が拡大する新型のコロナウイルスの状況について協議しました。委員会のあと記者会見したテドロス事務局長は、感染がほかの国でも拡大するおそれがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと宣言しました。
そして貿易や人の移動を制限することは勧告しないとしたうえで、医療態勢がぜい弱な国を支援すること、ワクチンや治療法、それに診断方法の開発の促進、風評や誤った情報が拡散することへの対策、データの共有などを行うべきだとしています。WHOは今月22日と23日にも緊急の委員会を開きましたが、緊急事態にはあたらないと判断していました。
緊急事態の宣言は、2009年の豚インフルエンザや2014年のポリオ、そして去年7月のアフリカ中部でエボラ出血熱の感染が拡大した際などこれまでに5回出されています。日本政府は、国内ではすでに今回のウイルスによる肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」などに指定しており、水際対策の強化や、中国・武漢に滞在歴がある人の健康状態の確認などを先行的に実施しているとして、これまで実施している取り組みを徹底するとしています。
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1週間前までは、インフルエンザと変わらない症状で予防法も同じだとたかをくくっていたのが、毎日毎日報道される内容が深刻になっています。わが国も感染者を強制入院できる政令を出したのは良かったのですが、周知徹底を2月7日までにしたことで、こんな緊急事態に1週間も丸腰なのかと大批判を受け、今日、実施を1週間前倒ししました。
また、致死率も2~3%で、インフルエンザB型の致死率0.05%からすれば50倍程です。インフルエンザのようにワクチンも治療薬(タミフル・リレンザ)もないので、感染者の隔離は重要です。症状のない潜伏期間中の2週間もウィルス感染をするので感染を完全に食い止めるのは難しいとWHOは言います。ただ、48歳未満の方の死亡例は今のところないとの情報が子どもにとっては救いです。引き続き手洗い給水、アルコール消毒に励みます。
生活保護
現在日本では、母子家庭の14%が生活保護世帯と言われています。生活保護受給額は自治体、子どもの人数や年齢、母親の状況にもよりますが、家賃を抜いてだいたい一人あたり7~8万前後が相場になります。母子家庭で子ども一人がいれば家賃抜きの生活保護支給額が、15万前後くらいが相場になると思います。それに合わせて児童手当などが総額月5万円くらい。それらを足すと年間で200万前後の額が支給されていることになります。母子家庭の平均世帯収入は197万円。およそ生活保護世帯とかわりません。
養育費がもらえない、収入がない母子家庭にとって、生活保護はとても重要な制度です。メリットは子どもの病気で仕事を休んだりしても、収入は減りません。働きづめじゃなくても最低限の生活が保障されるので、子どもとの時間がもてます。税金や病気のことを気にしなくても生活が保障されるので、精神的に安定できます。デメリットは、娯楽・ぜいたく品は基本禁止なので辛い場合もあります。子どもが思春期になってくると、働かなくてもお金がもらえることを悪い意味で捉える可能性もあります。留学や習い事等子どもにしたいことができたとき、簡単にさせてあげられない等が考えられます。
子どもが小さい間は、お金がなくても遊ぶ範囲もしれているので、なんとかなりますが、子どもが大きくなる連れ、周りの影響をうけながら娯楽などにも興味を持つようになるので、思春期になる頃くらいに、生活保護世帯だと、少し大変かもしれません。子どもの年齢によって、メリット・デメリットにも変化がでてきます。
生活保護は、最低限の生活保障であり、理由なくずっと受け続けるべきものではありません。ですが、母子家庭で収入が母親の労働収入しかなく、子どもが小さい・多いなどから仕事をどうしても休む日が多くなり、収入が安定しないなどの理由があるなら、生活保護を受けるべきだと思います。子どもが小さいと、就職自体も難しい場合もあります。小さい子どもを抱えた母子家庭が自立して生活するのは難しいです。ただ、子どもの成長に合わせて、母親も職業訓練や技能を身に着けながら、自立できる仕事を探すことも必要です。就労は賃金のことだけでなく、日々の生活のメリハリがつきます。フルタイムだと難しくてもパートで生保をもらいながら就労している保護者も少なくありません。生保を受けるか受けないかという判断ではなく、働ける時間は働いてみるという柔軟な生保の受け方もあります。
第62回グラミー賞
『第62回グラミー賞』の授賞式が、日本時間27日に行われ、米シンガー・ソングライターのビリー・アイリッシュが、主要4部門の「年間最優秀アルバム」「年間最優秀レコード」「年間最優秀楽曲」「最優秀新人賞」を独占する快挙を成し遂げました。同アワードで主要4部門を独占したのは39年ぶりだそうです。前回、「ビリー・アイリッシュ1/11」の記事で、彼女がトゥレット障害でカミングアウトしているシンガーとして紹介したところです。
ティーンを中心に絶大な人気を誇る18歳のビリーは、昨年3月29日に発売したデビューアルバム『WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』が英米を含む11ヶ国で1位を獲得。米シングルチャートでは14曲同時チャートインを果たし、カーディ・B、ビヨンセ、アリアナ・グランデらが持つ女性アーティストの同時チャートイン記録を更新しました。代表曲「Bad guy」は2000年以降に生まれたアーティストとして史上初の全米シングルチャート1位に輝き注目されています。
■主要4部門 受賞作/受賞者&ノミネーション
▽「年間最優秀レコード」部門
★Bad Guy/ビリー・アイリッシュ
▽「年間最優秀アルバム」部門
★WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?/ビリー・アイリッシュ
▽「年間最優秀楽曲」部門
★Bad Guy/ビリー・アイリッシュ
▽「最優秀新人賞」部門
★ビリー・アイリッシュ
保護者等向け放課後等デイサービス評価表
保護者の皆さんに、先週「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」を配布しました。これは年に一度事業内容を振り返って次年度計画に生かすものです。締め切りは今週末となっています。ご協力よろしくお願いします。以下に、今回の取り組みの意義を示しましたのでお読みください。
「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」及び「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」について
厚労省が作成した「放課後等デイサービスガイドライン」は、放課後等デイサービス事業所における自己評価に活用されることを想定して作成されたものです。事業者が自己評価を通してガイドラインに示された各サービスの内容を向上させる仕組みです。さらに、放課後等デイサービスを利用する子どもの保護者等による、ユーザー評価を活用することになっています。上記の2つの評価表は、事業所等でガイドライン項目に適時加筆削減して活用することになっています。2つの評価表の基本的な活用方法としては、以下の手順を想定しています。
ステップ1 保護者等による評価
○事業者から保護者等に対して、「保護者等向け評価表」を配布してアンケート調査を行う。保護者等からの回答は集計し、特記事項欄の記述を含めてとりまとめる。
ステップ2 職員による自己評価
○事業所の職員が「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」を用いて自己評価を行う。その際、「はい」「いいえ」などにチェックするだけでなく、各項目について「課題は何か」「工夫している点は何か」について記入する。
ステップ3 事業所全体による自己評価
○職員から回収した評価表を集計の上、職員全員で討議し、項目ごとに課題や工夫している点について、認識をすり合わせる。
○職員間で認識が共有された課題については、改善目標を立てる。討議の結果は書面に記録し、職員間で共有する。
○討議に際しては、保護者等に対するアンケート調査結果も十分に踏まえ、支援の提供者の認識と保護者等の認識のずれを客観的に分析する。
ステップ4 自己評価結果の公表
○自己評価結果の公表の仕方については、基本的には「改善目標」や「工夫している点」の主なものについて、できるだけ詳細に発信する(「はい」「いいえ」の数の公表を想定しているものではない)。
○保護者等のアンケート調査結果は、保護者等にフィードバックする(対外的に公表することまでは前提としない)。
ステップ5 支援の改善
○立てられた改善目標に沿って、支援を改善していく。
○業務改善に真摯に取り組む事業所ほど、公表される自己評価結果には、改善目標に関する記述が多くなされるものと想定しています。
○また、(地域自立支援)協議会や事業者団体において、これら評価表を使った自己評価結果の事例発表を行う機会を設けるなどにより、自己評価の取組が広がっていくことが期待されています。
温度差があった?
障害児がいじめられて転校 学校は当初認めず、後に謝罪
宮崎市立小学校の特別支援学級に通い、軽い知的障害のある5年生男児(11)が通常学級の複数児童からいじめられて不登校となり、今月転校したことが分かった。2年生の頃からいじめられていたという。学校は当初いじめと認めなかったが、父親の訴えを受けた市教委の指導後、事実関係を認めて謝罪した。
市教委や学校によると、男児は理科や社会などの教科を通常学級で学ぶ「交流学級」に参加。2年生の交流学級で複数児童から「キモい」と言われた。3年生では顔をつねられたり上履きを隠されたりし、4年生では上履きを水でぬらされた。5年生では理科の授業中に実験材料のマメを食べるよう迫られたという。
2年生時から父親が担任らに対応を求めた。だが、学校は加害児童からのみ聞き取り「児童間のトラブル」として、いじめと認識せず、加害児童への注意にとどめた。昨年4月、父親の訴えを受けた市教委が、いじめが疑われる事案として丁寧に対応するよう学校を指導。学校は5月、男児が2年生時からいじめを受けていたと認め、父親に謝罪した。だが、男児はその後不登校になり、今月、近隣の小学校に転校した。
昨年4月に就任した校長は「早い段階で真摯(しんし)に向き合っていじめを解消していれば、ここまでの事態にはならなかった。転校になって申し訳なく、残念だ」と述べた。市教委の押川幸広・学校教育課長は「2年生当時から、いじめを前提とした指導がされていれば長引くことはなかった。いじめ防止基本方針を2014年度に策定した市教委と学校現場の間に、いじめの認識で温度差があった」と述べた。
朝日新聞社 2020/01/26(伊藤秀樹)
教育委員会の認識が「いじめの認識で(学校と)温度差があった」などと平然と言っているから、2017年度の法改正後も訴えがあるのに学校が握りつぶす状況が後を絶たないのです。教育長や自治体の長そのものがこの法改正の趣旨と「温度差」のある認識だったと言うべきなのです。配下の職員が問題を起こしているのはトップの責任だという感覚の欠如こそ一番の問題です。
「いじめの防止等のための基本的な方針」は、いじめ防止対策推進法(2013)に基づいてすべての学校で決められている方針です。これは、2011年に大津市の男子生徒がいじめを受け自殺したことをきっかけに制定されました。いじめ防止対策推進法で定めている主なこの法律は3年後に見直すことになっており、2017年に改訂されました。「いじめの防止等のための基本的な方針」の改定のポイントは、学校のいじめ対策・いじめの情報共有の義務化、いじめの未然防止・早期発見できるよう指導の強化・変更、いじめへの対処の変更、重大事態へ対応できるよう組織の設置でした。
これは法律は初めて「いじめ」の定義を設け、児童等のいじめを明確に禁止しました。行為の対象となった児童が心身の苦痛を感じるものが「いじめ」とされ、被害者の主観によって判断されることが明確にしました。また、いじめが見つかったら、被害者と被害者の保護者のケアをすることが義務になっています。例えば、カウンセラーとの相談機会を設ける・いじめ加害者に別の教室で勉強させる・生命や身体の安全が危ないときは警察に通報するなどです。こうした取り組みによって、被害者や保護者のサポートをする義務を定めています。
いじめ防止対策推進法の第19条・第20条では、SNSなどインターネットを介して行われるいじめに対しても学校・親が指導し、防止に努めるよう定められています。また、実際にいじめに遭ってしまった場合、発信された情報の削除や発信者を特定するための協力を法務局または地方法務局に求めることができることも記載されています。
いじめの相談があったり、いじめが疑われるようなことがあったりした場合は、学校側がいじめの事実を調査することが義務としています。また、一定の重大事態に該当する場合には、教育長や学校長の下に組織を設け、調査を行うことが義務付けられています。実際には、調査の公平性・中立性の観点から、第三者委員会が立ち上がっています。また、調査結果は、いじめを受けた被害者や保護者に対して情報提供されます。ただ、いじめの調査方法が具体的に定められていないという問題点があります。
学校側は、いじめの重大事態があった場合、教育委員会を通じて地方公共団体の長に報告し、地方公共団体の長は、いじめの再調査を行ったり、また、地方公共団体の長や教育委員会は、再発防止のための措置を取ったりすることが決められています。いじめの加害者に対する処分として、停学処分や出席停止などが認められています。しかし、処分をするかどうかについては、第一次的には、校長や教員、教育委員会の判断となるため、加害者が厳重な処罰を受けないことが多いです。
いじめ防止のために、いじめの定義や、「いじめは犯罪である」、「人としていけないことである」ということを教え、「やさしさ」や「思いやり」を育むような道徳教育が義務になっています。弁護士が学校に出張して、いじめ防止授業を行うなどの取り組みも増えています。改正前は、「けんかやふざけ合い」がいじめの対象ではありませんでしたが、被害者がいじめだと感じる「けんかやふざけ合い」をいじめの対象に含めるようになりました。これにより、いじめの定義が以前より広がり、今まで「ただのけんかだった」「ふざけていただけ」と対象外になっていたいじめも対象になり、今まで対応できていなかったいじめについても、対応できるようになりました。
学校の教職員がいじめを発見した場合などは、学校内で情報を共有し、学校全体で対策を取ることが原則になりました。教師全体でいじめ問題の解決に取り組み、複数人による状況判断からの支援が可能になりました。これに伴い、学校では教職員が情報を共有しやすい環境を整えることが重要です。また、報告・情報共有を怠った場合、教育委員会から懲戒処分を受けることもあります。
いじめの未然防止として、未就学児・幼児期においても相手を尊重した行動が取れるよう指導を行うことや、授業においていじめを題材に取り上げ、生徒ひとりひとりが考え、議論できるような取り組みを行うことが定められました。早期発見に関する改定では、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置、いじめに関するアンケートの実施、子どもに周囲に相談することの重要さを理解させる取り組みなどが定められました。
いじめの再発確認期間を延ばしたり、いじめ後の被害者との面談などを実施したりすることも義務化されました。そのほかにも、被害者が、発達障害者や帰国子女・性同一性障害者・避難民などの場合に応じて、個別の対応をすることや、いじめ問題に対応するために、弁護士や教育委員会から派遣されるカウンセラーとの連帯を強めていく方針などが決められました。重大ないじめ問題が発生した場合、調査・判断できるように学校や地方自治体では、専門組織を設置することを推奨しています。また、学校だけではなく、地方自治体や教育委員会が連携できるような体制を整えることが重要です。
いじめ防止対策推進法に関して、2017年の基本方針の改正後も問題点が多いという指摘があります。実際、改正後もいじめはなくなっていません。以下は、いじめ防止対策推進法の主な問題点です。いじめ防止対策推進法では、加害者に対する任意の処分は規定されていますが、教員や学校に対する罰則が定められていません。そのため、いじめへの取り組みが甘くなってしまうというという難点があります。現場の教職員がどこまで責任を負うべきか議論が必要であり、必ずしも一教員だけの問題とは限りませんが、現にいじめを放置されている事案もありますので、改正論議が行われています。
いじめ防止対策推進法では、学校や地方公共団体が連携していじめ問題へ対処することが取り決められていますが、地方公共団体によっては、いじめ問題への取り組みが甘いという指摘があります。そのため、いじめが発生、放置されやすい地域があると言わざるを得ません。いじめ防止対策推進法では、いじめの調査を義務化していても、調査方法を具体的に決めていないので、地域によっていじめの認知数に差が出てしまいます。
いじめとは、特定の子どもが心理的・物理的に攻撃される行為のことです。周囲がいじめと感じないような行為であっても、加害者がいじめと感じたらいじめになります。しかし、前述した通り、加害者への処分が義務化されていなかったり、教員・学校への処分が明確に定められていなかったりするので、いじめが単なるトラブルとして扱われ、十分な対応をしてもらえないこともあります。実際、2019年3月には、広島の学校で重大ないじめがあったにもかかわらず、学校側が重大事態として半年も扱わなかったことが問題とされた事案もあります。
これらは学校や担任の責任ではありません。こうした学校や担任を生み出しているトップの責任です。傷ついた子どもに謝って済むようなことではないと思います。子どもに正義を示すべき大人はどうすればいいのか考えて欲しいものです。法律に罰則がなくとも、自治体の長に責任をとる決意さえあれば、誰も責任を取らないお役所天国は脱却できるものだと思います。
南海トラフ地震確率推計結果
政府の地震調査委員会は24日、南海トラフ地震による津波が今後30年以内に起こる確率を推計した結果を発表した。大津波警報の発表基準に相当する3メートル以上の津波は、太平洋側の10都県71市区町村に及ぶ広範囲で26%以上の非常に高い確率で襲来すると予測。5メートル以上は、静岡、三重、高知など7都県29市町村で26%以上の確率で起こるとした。今回の想定で津波の高さが最も大きい10メートル以上は、静岡、三重、和歌山、高知などの6県21市区町で6~26%の確率だが、26%以上の市区町村はなかった。
100~200年間で繰り返し発生しており起きる可能性が高い大地震を中心に想定した。政府が津波の被害想定を「確率」の形で示したのは初めて。調査委は今後、日本海溝・千島海溝周辺や日本海側の地震についても同様の手法で津波想定を行う予定。調査委によると、日本の太平洋沖に延びる海溝「南海トラフ」では、30年以内にマグニチュード(M)8~9の大地震が70~80%の確率で発生する恐れがある。政府の中央防災会議などは2012年、M9・1で最大級の「南海トラフ巨大地震」が起きた場合、津波は高知県黒潮町と土佐清水市で最大34メートルとなるほか、東海から四国の太平洋岸に20~30メートル級が来るとする被害想定を発表した。最悪のケースの死者数は最新のまとめで23万1000人に上るとしている。
しかし今回は、このような最大級の地震は「最近2000年間で起きていないまれな現象で、確率が計算できない」として対象から外した。1361年以降に発生した宝永地震(1707年)などM8~9の地震の記録を基に、起こりやすさを考慮して評価した。
その上で、30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が▽3メートル以上▽5メートル以上▽10メートル以上――になる確率を算出。それぞれの高さの津波が襲来する可能性について▽26%以上▽6%以上~26%未満▽6%未満――の3段階に分けて、津波が来る可能性が高い24都府県352市区町村について推計した。津波高は地形などの影響を受けるため、市区町村によっては区域で分けたり複数の確率を示したりした。調査委によると、26%は「100年に1回」、6%は「500年に1回」起きる確率に相当し、「26%以上は非常に高い。6%未満でも決して安全ではなく注意する必要がある」という。気象庁によると、津波高3メートルで木造家屋が流失し始め、5~6メートルで全壊の被害が急増するとされる。
平田直(なおし)委員長(東京大教授)は「最大級でなくても大きな被害が出る津波が高い頻度で起きることを認知してほしい」と話している。
1/24(金) 17:00毎日新聞【信田真由美】
今後30年間に7~8割の確率で大地震発生と言われても、「???」ですが、1年間で起きる確率は 5.263%、5年間で起きる確率は 23.687%、10年間で起きる確率は 41.764%、15年間で起きる確率は 55.559%。と確率計算すると、小1の子が成人したころまでに地震発生していなければ、発生確率は五分五分以上になっており流石に無視できなくなります。今後1年以内は5%ですから、人間5%くらいはまぐれにしか感じないのでまじめに考えません。また、内陸部なら津波が3mだろうが10mだろうが関心がなかなか向きません。ただ、海岸部に広がる工業地帯が破壊されるという事は、生産や輸送、送電や配管が大ダメージを受けることになります。その影響が被害の少なかった地域にも及びますから、どうしても長期戦が予想されます。保存のきく備蓄品は事業所でもできるだけ買いそろえようという話になっています。
コロナウィルス予防
中華人民共和国湖北省武漢市において、昨年12月以降、新型コロナウイルス関連肺炎の発生が複数報告されており、必要な情報の収集を感染症センターでは行っているところですが、800人以上肺炎感染して30名程死亡していること以外はまだ詳しい情報が中国から得られていません。コロナウイルスとは、人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスです。人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られていますが、深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)以外は、感染しても通常の風邪などの重度でない症状にとどまると言われています。
地元の保健所からは、コロナウィルス予防には入り口で手のアルコール消毒をと呼びかけてますが、これはインフルエンザなどの予防策と変わりません。当事業所では空気清浄機をフル稼働していますが、接触感染には効果がありませんので明日から入室時にアルコール消毒を実施します。ちなみに乙訓のインフルエンザ流行は昨年と同じような増加傾斜で、あと少しで警報が発令されるレベルに達しています。手洗いの感染予防に努めましょう。
学級崩壊
行く逃げる去る。3学期はあっという間です。来年こそはクラス替えをと思う子どもや保護者の声が大きくなってきます。その1番の要因は先生です。先生が子どもと性分が合うかどうかのこともありますが、保護者はそんなに深くは付き合わないので、クラスが安定して運営されているかどうかが評価基準です。安定してとは、学級崩壊の兆しがないかどうかが最低限の基準ということです。
学級崩壊が起きるクラスは、「教師が話を聞かせられないから、学級崩壊が起きた」のか、「学級が崩壊気味であるから、教師が話を聞かせられない」のかは、ケースバイケースです。けれども「子どもに話を聞かせられない教師」は、学級を確実に崩壊させてしまいます。学級での指導は、全て「教員の話」から始まります。学級でのルールを決めていくのも、良い行動を評価するのも、悪い行いを正すのも、まずは教師の言葉です。その言葉が子どもに通らない状態では、クラス全体をまとめていくことはできません。
「優しい先生」も「厳しい先生」も、学級崩壊を起こします。なぜなら、ルールが明確ではないからです。「優しい先生」は、優しすぎるあまり子どもの行動を全て認めてしまいます。「厳しい先生」は、厳しすぎるあまり子どもの行動を全て否定してしまいます。どちらも「先生目線」で事に対象しているので、その場限りの対応になってしまいます。結果、どちらの先生も子どもから見たら「気分によってルールが変わる人」と映ります。そうなれば、後は簡単。先生の目を盗んで、自分たちのやりたいことを通すだけです。一人一人の子が気分で事を通し始めていき、気付けば全体がバラバラになっています。
言っている事がその場限りで一貫性が無い場合、クラスは簡単に崩壊します。子どもたちは、自分が関わっている教師に対して、絶えず値踏みをしています。この人は信頼できるのか、この人は甘いのか、この人は自分のことをどこまで見ているのかなどです。その様々な価値規準の中で「この先生の前では嘘をつけない」と思われない限り、学級の安定は成り立ちません。指導に一貫性がない教師には、子ども信頼が集まりません。信頼されない教師は、あっとう間に子どもに見限られます。それは先生一人に限られたことではないです。その学年全体の先生の一貫性、その学校の枠組みの明確化、子どもに関わる全ての大人のチームワークが問われます。
これは別に、学級に限ったことではなく、放課後デイでも学童保育クラブでも、スポーツチームでも子どもが組織されているものならなんでも同じだと思います。まず枠組みをしっかり示して、その中で個性を認めて引き出してくれる指導者の存在が子どもたちの願いです。
愛着障害
虐待された子どもにとって世の中は、どこに危険が隠れているかわからない恐ろしい場所であり、彼らには見るものすべてが災いの種に映ると言われます。子ども時代、愛と慰めに満ちた安全な家庭で育つことは、健全な心を持った大人になるために大変重要なのですが、残念ながら現実はそうはいかない場合が多いようです。
自分ではまだ何もできない子ども時代に、基本的欲求を満たしてくれ、呼べば助けてくれ、心が傷ついたら愛を持って気持ちをなだめてくれる大人が、もし周りに一人でもいれば、その子どもは大きくなって、「困難な状況に遭遇してもなんとかなるものだ。人生を思うとおりに変えて、切り開いていく力を、自分は持っている。」という、自己肯定感を抱き、自己コントロール力を持てるようになります。自分の意志や欲求に沿って反応してくれる大人が周りにいるということは、周囲の環境と共鳴して生きるということで、これを経験した子どもは、たいてい、自己認識力や共感力を身につけ、人と調和し、社会に適応して生きていくことができるようになります。
虐待やネグレクトのある環境に育ち、自分の基本的欲求や感情的なニーズが満たされず、親または世話をしてくれる大人が自分に合わせてくれない場合、子どもは周りの大人の「子どもはこうあるべき」という概念に自分を合わせる以外なくなります。つまり、大人のニーズに自分を合わせることになり、これによって、「ありのままの自分ではいけないのだ、自分はどこか間違っているのだ」という観念を抱くようになります。虐待された子どもは、周りの人たちの声や表情にとても敏感ですが、それに共鳴するというより、そのサインを脅威とみなして反応する傾向があります。そのため、虐待された子どもは、防衛的になったり怯えたりしやすいといえます。そういう子どもは、やがて、強いふりをして内心の恐怖感を隠すようになったり、心を閉ざしてコンピューターゲームに一人で没頭するようになったりすることもあります。
回避型愛着(avoidant attachment)と呼ばれるタイプの子どもは、母親がいなくなっても泣かず、戻ってきても無視して、一見、何が起こっても知るもんか、というそぶりを見せます。けれども、実際のところ、子どもの身体の方は過覚醒(神経過敏で緊張が高まっている)状態にあります。このタイプの子どもの親は、子どもを触ったり抱いたりするのを嫌がる傾向が強いようです。回避型愛着タイプの子どもは、学校に行くようになると、しばしばいじめる側にまわり、大人になってからも、自分や相手の気持ちに無頓着である場合が見受けられます。
不安型愛着(anxious attachment)、またはアンビバレント愛着(ambivalent attachment)と呼ばれるタイプの幼児は、泣いたり、わめいたり、しがみついたりして、常に自分に注意を引こうとします。母親の姿が見えなくなると非常に取り乱しますが、かといって母親がそばに戻ってきてもあまり満足しません。不安型愛着タイプの幼児の不安傾向はしばしば大人になっても継続し、学校ではしばしばいじめられる側(=犠牲者)になります。
上記の二つの愛着型に加えて、世話をしてくれる大人自体が自分に苦しみや恐怖をもたらす原因である場合、子どもは混乱型愛着(disorganized attachment)という第三タイプに分類されることがあります。混乱型愛着の子どもは、生きるために依存しなければならない相手が、同時に身を脅かす危険な人物であるというジレンマに置かれます。逃げることもできず、つながることもできない、という手立てのない状態にあるわけです。結果として、誰が安全で誰に愛着を示していいかわからないこのタイプの子どもたちは、知らない人に過度に愛情深く接したり、または誰も信じなかったり、といった極端な愛着のしかたを見せるようになります。混乱型愛着を引き起こす要因はなにも虐待ばかりではありません。親自身が、家庭内暴力やレイプ、深刻な喪失などのトラウマを抱えている場合、自分の感情が不安定なために、親は子どもと向き合って安定した保護や慰めを与える場合ができないことがあります。親が感情的に引きこもってしまい、子どものニーズにこたえられない場合、しばしば役割の逆転が起こり、子どもの方が親のニーズを満たそうと懸命になります。こうして親の世話をせざるを得なかった子どもは、大きくなってからしばしば自分や他者に対して攻撃的になり、自分や人を傷つけるようになることがあります。
ただ、理想通り完璧な子育てができなくても、基本的部分で愛情がありさえすれば、子どもは親と適切なつながりを維持して育つものです。感情にまかせて怒ったり、思い通りに世話をできないことが時々あったとしても、本当は愛するわが子にそんなふうにしたくなかった、という思いがあれば、子どもが親に対する信頼を失うことはありません。そもそも「理想通りの完璧な子育て」というもの自体、存在しないです。誰しも、時折迷ったり後悔したりしながら、子どもを育てています。また、仮に、虐待やネグレクトにあって、辛い子ども時代を送ったとしても、その後社会に出て、愛情を感じる経験をしたり、本人の生まれつきの回復力(レジリエンシー)が強い場合、心の傷を自ら癒やして、健全な心をもった大人へと成長することは十分可能です。
DSM-5
前回のICD-11の説明でいきなりDSM-5(米国精神医学会:精神障害の診断と統計マニュアル第5版)の名前が出てきたので解説しておきます。発達障害についての世界的に使われる基準は前回示したWHOのICDと、米国のDSMです。2013年にDSM-5は、20年ぶりの改訂がされました。「神経発達症群」はDSM-5から新設され、いわゆる「広義の(知的能力障害群等も含む)発達障害」として捉えられています。前回も書いた通りICD-11は、DSM-5に沿って改訂されています。心理発達から神経発達に変えた考え方や自閉症のレベルを連続体としてとらえる「スペクトラム」の名称で、アスペルガー障害などをこの中に含むものにしたことなどです。
DSM-5「神経発達症群」における分類
1 知的能力障害群
知的能力障害・全般的発達遅延・特定不能の知的能力障害
2 コミュニケーション症群
言語症・語音症・小児期発症流暢症・社会的(語用論的)コミュニケーション症
3 自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症
4 注意欠如・多動症(AD/HD)
注意欠如・多動症・他の特定される注意欠如・多動症・特定不能の注意欠如・多動症
5 限局性学習症(LD)
読字の障害を伴う・書字表出の障害を伴う・算数の障害を伴う
6 運動症群
発達性協調性運動症・常同運動症・
7 チック症群
トゥレット症・持続性(慢性)または音声チック症・暫定的チック症・他の特定されるチック症・特定不能のチック症
8 他の神経発達症群
他の特定される神経発達症・特定不能の神経発達症
木村泰子さんの言葉
大阪の大空小学校初代校長の木村泰子さんの言葉にはパワーがあります。映画『みんなの学校』の舞台となった大阪の大空小学校は、発達障害と診断された子や不登校だった子など、さまざまな問題を抱えた子どもたちがともに学び合い、元気に卒業していきます。日本の教育システムが変わらない原因は何なのでしょう?社会は、人と違う考えや行動ができる「ふつうじゃない人」を求めるようになっているのに、大人が勝手に決めた「ふつう」の基準に当てはめて判断しようとします。社会が求めるニーズと教育現場が、どんどん乖離しています。本来、子どもの成長度合いを検査する目的は、その子の特性を知ったうえで、周りの子どもたちと安心してつながって、一緒に集団生活を送るためであるべきと木村さんは言います。以下、木村さんのインタビューです。ごく当たり前のことしか言っていないのですが、強烈なパンチ力があると感じるのは私だけでしょうか?
Qーーーー大空小学校に転校してきた子が、前の学校で体操服に着替えるのを嫌がり、「例外は認められない」という理由で、体育の授業を受けさせてもらえなかった話がありました。
Aーーーー体操服に着替えるのが嫌なら、そのままの服で体育の授業を受けさせればいいんです。子どもには学習権があります。憲法二六条は、「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めていますからね。子どもが学校にくる目的は、体操服を着ることじゃない。体育の授業を受けることですから。私がその子の親なら、「この子は自宅以外では着替えられないので、この服装のままで体育の授業を受けさせてください」と学校に言います。それでも「困ります」と言われたら、「憲法にある子どもの学習権についてはどうお考えですか?」と勝負をかける(笑)。体育の授業の目的は、運動をすることにあるのです。本当の公平は、体操服に着替えられない子がいても、「体育ができれば、その服のままでもええよ」と、その子の個性を認めて安心させること。そして、周りの子も安心して授業を受けられるようにすることです。「ふつう」ができない子どもがいても、お互いを認め合って尊重することを、子どもたち自身で学ぶ。その手助けをするのが先生の役割ですし、それこそが本当の公平な関係性なんですよ。例外を認めず、みんなと同じようにさせるのが公平という考え方は100パーセント間違ってます。
Qーーーー大空小学校では、さまざまな子どもたちが一緒に学ぶ環境でありながら、先生は定時退勤できていました。なぜそのような教育環境を作ることが可能だったのでしょうか。
Aーーーー私が9年間校長を務めた大空小は、全校児童260人中、「発達障害」と診断され(障害者)手帳を持っている子どもが50人を超えていました。そう聞くと「先生の負担が多くて大変そう!」と思われるかもしれませんけど、日常は勤務時間が終われば帰っていました。 じゃあ、なんで他の学校の先生たちは、いつ死んでもおかしくないほど長時間労働しないといけないのか?大空小では、一人一人の子どもが自分から学校へ来て、1日学んで、納得して家に帰ります。それは、私たち教師が子ども同士をつなげて、子ども同士で教え合ったり助け合ったりしているからです。大空小学校のルールはただひとつ。「自分がされていやなことは人にしない 言わない」。この約束を守ることだけです。子どもが学校生活を楽しんで納得できると、いじめも不登校もないし、親からクレームがくることもありません。教師は生徒や親の問題解決や相談事に時間をとられる必要がないから、本業だけやっていればいいんですよ。教師の働き方改革より、学び方改革をしないといけないわけです。
ICDー11
昨年、WHOの国際疾病分類は、ICD-10から30年ぶりに改訂されICDー11になりました。厚生労働省は、WHO承認後、国内への適用作業を進め、1〜2年で施行するという予定を案として公表しています。今回の改訂では、心理的発達の障害を神経発達症群とカテゴリー名を変えました。区分は米国精神医学会のDSMー5に沿った「神経発達症」の概念が採用されています。また、我が国ではDSMー5の翻訳の時からdisorderとdisabilityのどちらも「障害」と翻訳するのではなく、特に小児の場合は症状が変わるし治療で軽快する例も少なくないので「症」を使う方向性が示されています。
知的障害の名称は「知的発達症」で、軽度、中等度、重度、最重度の区分分けはそのままで、IQが相対的に高くても社会的適応能力が低ければ相対的に重い判定となるのも変わりません。
会話及び言語の特異的発達障害は「発達性発話または言語症群」となりました。詳細区分として、発達性語音症・発達性発話流暢症・発達性言語症に名称が変更になります。あとに出てくるLDの読字不全やASDを除外した発達性言語症の判別が整理されていないように感じます。
広汎性発達障害は、自閉スペクトラム症で小児自閉症やアスペルガー症候群などの下位分類が改訂され知的発達症や機能的コミュニケーションのレベルで分類されます。
学習障害は発達性学習症になり、読字不全・書字表出の不全・算数不全と詳細区分もDSM-5に揃えました。運動機能の特異的発達障害も、発達性協調運動症となりました。全て「発達性」で統一しました。
情緒障害の分類だったチック症は、神経発達症の分類へと移動しました。詳細区分に、トゥレット症候群・運動のチック症・音声のチック症が入ります。
AD/HD多動性障害は、注意欠如多動症で「欠陥」が「欠如」に変更されます。不注意優勢型・多動衝動性優勢型・混合型の分類はそのままです。
話は変わりますが、障害は理解できるが発達がわからない(?)という放デイ業界の方が少なくないと聞きました。ICDやDSMの神経発達のカテゴリーは発達の問題を扱った症状カテゴリーです。知的発達症は全般的な発達の遅れです。これに対して、ASDは社会性の発達、AD/HDは衝動性や注意の調整力の発達、LDは音韻・書字・数量処理の発達、つまり全般ではなく部分的な発達の遅れや凸凹を原因とした症状をさします。発達の遅れにはいろいろなバリエーションがあるという分類です。
それとも、発達がわからないというのは、子どもの通常の発達の順序性をよく知らないというのが同義でしょうか。例えば、数量認識が通常4歳頃で、まだ序数(数える量)段階なのに、繰り上がりな量の合成分解の操作をさせている間違いです。算数障害で量感覚がイメージできない場合も量の合成分解で躓きます。
「こぶた たぬき きつね ねこ」のしりとりは、単語を音に分解したり構成したりする能力(音韻操作)通常6歳の言語発達で完成することを知らずに取り組む現場。全般的遅れがなくても音韻意識に遅れがあれば就学年齢でも困難は続きます。結局、障害は分かるが発達が分からないというのは肢体不自由など目に見える障害は分かるが、目に見えない発達障害やは理解されてないという事でしょう。
社会性発達の順序性が無視された指導も少なくないです。通常6歳の自己認知の発達は経験を蓄積してだんだんできるようになる自分を認識して自尊感情を育てていく時期ですが、この大事な時期にやってもやってもできない課題を与えたり、逆にすぐにできてしまう課題を与えてしまう誤りなどです。発達には順序性がありその段階に合わせた指導をしたときに発達の伸長が望めるのです。ハイハイしている子どもには歩く指導ではなくたっぷり四つ這いできる環境と励ましを与えるのと同じ事です。
ただ、発達の順序性とは言うけれど、あくまでこの順序の子が多いと言うだけの話でしかありません。この平均の物差しで測っているに過ぎない事を忘れて、平均でない多様な子どもを理解したかのように思い込む人もたくさんいます。物理的に歩けない子には車椅子の操作を教えるように、聴覚記憶の弱い子には視覚情報で補う支援をします。車椅子の子に、平均は歩く事だという人はさすがにいませんが、絵カード支援を見て、特別な(平均的ではない)事をするから聞く力が伸びないと思い込み、子どもの才能と自尊心を悪意もなく潰し続ける人はまだいます。
大事なことは子どもにはみな凸凹の個性があり、その個性に合わせた支援にはあらかじめ決まったものなどないと、専門家なら心得ているはずです。子どもができない事を障害や発達の遅れに還元してしまわず、指導している自分のせいだという謙虚さがあれば、おのずと良い支援のアイデアは思いつくものですし、そのアイデアに必要な情報は自分で手に入れているものだと思います。
スマホ・ゲーム利用と不登校
不登校・・・スマホ・ゲーム利用「条例、ルール化を」 大阪市の松井市長
小中学生がスマートフォンやオンラインゲームに依存するのを防ごうと、大阪市の松井一郎市長は15日、スマホの使用時間を条例でルール化することも視野に、実効性ある対策を検討するよう市教委に指示した。
松井氏は同日市役所で開かれた会議で、不登校の要因の一つがスマホやゲーム依存であるとの実態が紹介されたことを受け、「夜は何時までとか、条例でルール化したらどうか」との考えを示した。
市内では旭区が平成26(2014)年に、スマホやゲーム機を午後9時以降は使用しないなどのルールを決定。校長判断で各校で適用されているが、市教委として統一したルールは定めていない。松井氏は、使用制限に強制力を持たせたり罰則をつけたりすることは難しいとの認識を示した上で「理念的なものにはなるが、(大阪市として)ルールを作ったよというのが(不登校を減らすのに)大事なのかもしれない」と述べた。
スマホやオンラインゲームの使用制限をめぐっては、香川県が子供がインターネットやゲーム依存になるのを防ぐ全国初の条例制定を目指している。今月10日の検討委員会ではスマホやゲームは「平日は1日60分まで」などとする条例素案が示されたが、ネット上でも賛否が分かれるなど物議をかもしている。
2020.1.15産経新聞--------------------------
この記事は、松井市長の言ったことがすぐさま条例化されるように見出しに書いていますが、市長の言ったこととはかなり異なり産経新聞の勇み足に読めます。ただ、前回も掲載したように(1/13ゲーム障害)オンラインゲーム依存が深刻であることは事実です。ただ、不登校の一因がゲーム依存なのか、不登校になる子がゲーム依存になりやすいのかよくわかっていないのも事実であり、ゲームだけを悪者にしても解決はできないと言われます。
重要なことは家庭での対応であることは間違いがなく、この支援を公の子どもが守るべきルールだよと言うだけでなく、ペアトレなど実質的な子育て支援を強め、学校でゲーム障害や睡眠障害の健康教育に力を入れるべきことは、大阪市や香川県だけでなく国民的に差し迫った課題であることは間違いがありません。
福祉事業所の働き方改革
事業体が生き残る戦略の一つとして、働き方改革を進めていかなければなりません。ポイントは、3つあります。
1)長時間労働をなくす
2)休暇取得に向けた環境づくり
3)誰もが働きやすい雰囲気づくり
長時間労働をなくしていくためには、管理職の意識改革や、非効率な業務プロセスの見直し、従来慣行(利用者や関連事業所に対する非効率な業務)の改善が必要です。これは、結果的には生産性向上というメリットをもたらします。意識改革や業務設計・役割分担といったソフト面からのアプローチと、ITツールの活用・ペーパーレスといったハード面からのアプローチが「両輪」となります。
厚生労働省のヒアリングによると、年休取得が進んでいる法人では、一週間ごとのミーティングにて業務の進捗状況を所属長や同僚と共有し、仕事を個人ではなくチームで行うことによって労働者が休暇で不在となっても業務が回るよう、取り組んでいる事例がありました。労働者一人ひとりが責任感をもってしっかり仕事をすることは勿論重要ですが、仕事をチームで行い、チームの中で仕事の進行状況について情報共有することで、休みやすい職場環境へと変わってゆくのです。
トップが主導となり、休暇の取りやすい雰囲気や働きやすい環境づくりを行っていくことが大事です。
福祉現場での働き方改革の視点
離職率の低下、採用難の解消、労働生産性の向上、長時間労働の是正は、介護業界全体の共通の課題です。福祉現場における離職防止に向けた取り組み 5つのポイント
(1)「心身の不調」へのケア…腰痛予防、メンタルヘルスケア
(2)「支援観の違い」への対策…理念・指針の浸透
(3)「働き方」への固定概念の払拭…短時間勤務、時間単位年休、時間帯の固定
(4)「就労後ギャップ」の防止…入社前に誠実な情報の開示
(5)「持ち味の理解」と「承認」…多様性を許容し良い所に着目。事実+意味づけ
離職につながる長時間労働の是正については、昨今の働き方改革の流れもあり、一定の改善がみられている事業者もあるようです。単なる業務の削減はサービスの低下に直結する懸念があり、見直しを行う業務は慎重に検討するべきです。特に利用者に接する部分は、過剰と思われるサービスを除き、施設の「魅力」や「付加価値」になりますので、そこの見直しは必要最小限にとどめ、申し送りや会議・書類の作成といった、利用者に接遇しない業務や運営管理に関する部分について、手順を踏んで着実に業務効率化を推進していくことが大切です。
福祉現場における長時間労働の是正 5つのポイント
(1)「過剰サービス」の削減…「したい」と「できる」の見極め
(2)スタッフの意識改革…奉仕の心による「自主的な残業」の功罪
(3)デジタル化、ペーパーレス…効果絶大!
(4)申し送り、会議の短縮化…重要事項のみとし、残りは各自で確認
(5)定時退社の為の工夫…「仕事の再分配」と「職員間の連携」
中でも、デジタル化、ペーパーレス化による業務効率化は、介護福祉業界においては特に効果が大きいものと思われます。有給休暇の消化や、勤務間インターバル制度の施行などによって、従業員の勤怠の管理が複雑になります。デジタル化による管理の効率化は、今後多様なスタッフが納得して働いていく環境をつくっていくにあたり、従来以上に有力な切り札になります。働き方改革は、福祉業界にとっても待ったなしの経営課題です。全職員で改善状況の進捗を共有しながら、粘り強い取り組みが必要です。