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みんなちがってみんないい

DV防止法

7月12日千葉地裁は、千葉県野田市立小4年の栗原心愛さん=当時(10)=が1月24日に自宅浴室で死亡した虐待事件で、父勇一郎被告(41)の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告(32)に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した判決が確定したと明らかにしました。求刑は懲役2年でしたが、地裁によると、10日が控訴期限だったが検察側、被告側の双方から控訴がなかったので刑が確定したということです。母なぎさ被告も夫からDVを受けており、一部の意見には夫のDVの中で母親は子どもを守る判断力を失っているのだから母に刑を科しても刑の効果は薄く、保護と治療が必要というものもありました。

通称『DV防止法』が制定されたのは、2001年(平成13年)のことです。“夫婦喧嘩は犬も食わない”と限度をこえた夫婦の問題に対して、行政は関与することを長年控えてきたのです。ある面、他人が入り込むことを遠慮してしまう家庭という空間。法律がそこに踏み込むことで、辛い環境に耐えてきた女性達を救い出したことは、大きな意義があると思います。「DV」とは、ドメスティックバイオレンス(Domestic Violence)、略して「DV」です。ドメスティックは、「家庭的な」。バイオレンスは、「暴力、暴行」です。正式名称は、『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律』です。

一般的には「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」と書かれています。「配偶者からの暴力」に対する定義として、身体に対する暴力だけではなく、『心身に有害な影響を及ぼす言動』つまり言葉の暴力も含むということです。相手に危害を与える暴力は、圧倒的に男性から女性に及ぼすものが多いですが、言葉の暴力は、男性女性関係なく起こりえます。一年間のDV件数は、2015年(平成27年)には、63,141件の相談が寄せられています。検挙状況は、7,914人が刑法犯として検挙されました。DV防止法制定により、年間これだけの人が罪に問われ、同時にほぼ同数の被害者が救われていることになるので、法律ができた意義はとても大きいといえます。

法の前文には「配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する」とあり 家庭内の問題だからといって、今までのように放置しないで、しっかり対処しますよという法律になっています。『配偶者暴力相談支援センター』は、以下のことを行います。
○相談や相談機関の紹介 ○カウンセリング ○被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護 ○自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助 ○被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助 ○保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助です。DV相談件数は10万件超えの相談が寄せられています。他には、裁判所が配偶者に対して、保護命令を出すケースもあります。具体的に、被害者への接近禁止命令や住居からの退去命令が出されます。もし命令に違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。また、発見者による通報という項目があります。配偶者からの暴力を受けている人を発見した人や医療関係者は、すすんで警察や配偶者暴力相談支援センターに通報することを推奨しています。このようにDV防止法によって、様々な行政の支援体制が整ってきています。

DV防止法改正内容 2001年にDV防止法が制定されたことで、家庭内で暴力を受け、沈黙していた多くの女性達が、救われることとなりました。配偶者からの暴力も犯罪であるということ。閉ざされた家庭空間で、「暴力をふるわれるのは、私にも問題がある」という被害者の錯覚が明らかになったこと。 それらをDV防止法が、私たちに気づかせてくれたのです。DV防止法は2001年の制定・施行以来、18年の歳月が経ちましたが、その間に三度の改正が行われています。法律は、極論すれば、人々が幸福で安寧な暮らしをするために存在するものです。。まだまだDVはなくならないとはいえ、以前はDVについて議論すら許さない風潮があった時期を思えば、やっとここまで来たという感があります。

ソーシャル・ストーリー

ソーシャル・ストーリーとは、米国のキャロル・グレイが開発した「身の回りのものの性質や様々な場面でのふさわしい言動はどのようなものなのかなどをASDの子どもにわかりやすい形で伝えるためのコミュニケーションツール」です。

ASDの人は社会的な暗黙のルールのようなものを察することが苦手です。子どもたちが自然に身に付ける暗黙のルールですが、自閉症スペクトラムのある子どもたちは、認知上の偏りや興味関心の偏り、他者の感情の読み取りが苦手、情報の取り込み方も違うために、丁寧に教えてあげないと自然に学ぶことが非常に難しいと言えます。しかし、周囲の人たちはそうした事情を知らないので、問題児だとか、何を考えているのか理解できない子ども、などと思われることも少なくありません。

ソーシャル・ストーリーは、様々な知識や暗黙のルールを丁寧に教えることによって、ASDの人たちの理解力を高めて、自分自身で適切な行動をとっていけるように書かれた文章です。ソーシャル・ストーリーについての本は、「ソーシャルストーリブック」と「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」の2冊が有名です。この本には多くの文例が載っていて、そのまま使える文例集です。日常生活や学校生活で必要な様々なスキルや情報が網羅されています。

ただ、ソーシャル・ストーリーは本来一人一人にオーダーメイドで作る文章なので、自分で書く場合には「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」が必要です。「ソーシャルストーリーブック」だけ読んで、書き方について不完全な理解のまま新しいソーシャルストーリーを書くのはやめた方がいいです。

幼稚園・保育園の年少の幼い子どもでもわかりやすい内容では「マイソーシャルストーリーブック」が良いです。「ソーシャルストーリーブック」に比べ、一つ一つの項目が丁寧に書かれていています。子どもが小さいうちはこちらを先に読む(読んであげる)と良いと思います。

ASDの子どもは社会的な暗黙のルールを自然に習得してくのが苦手なので、特に教えなくてもよいような簡単なことを、大人になっても理解していないということがあります。このような理解不足は、幼稚園・保育園や学校または職場での生活トラブルの原因になります。

ソーシャルストーリーは、ASDの子どもに、肯定的な表現をしながら様々なことを教えるので、自尊感情を損なわずに理解力を高め、子どもの成長のためには必要なツールです。子どもの発達によってはすべての項目は必要ないかもしれませんが、ある部分だけごっそり取りこぼしている可能性があるので、読み物としてすべての項目を読んでおくのも無駄ではありません。

また、大人がソーシャルストーリーの語り口を知っておくことは、普段の生活で、子どもとのコミュニケーションに非常に役に立ちます。ASDの子どもには、ソーシャルストーリーのように説明をすると理解しやすいので、子どもに理解できるように話せるからです。子どもにこちらの意図がちゃんと伝わり、お互いに不要なストレスを抱えることがなくなります。ソーシャルストーリーは、こちらの伝えたいことを子どもにわかりやすい言葉と文字で伝える支援方法と言えます。次回は他者の内面が読みにくい子どもへの支援として、コミックストーリを掲載します。

コミック会話

今回は、コミュニケーションをスムーズにする、コミック会話についてです。コミック会話も先に書いたソーシャルストーリ―の開発者である米国のキャロル・グレイが発案しました。開発の順序はコミック会話(comic strip conversations)の方が先です。ASDの子どもは、うまく状況を理解できなかったり、周りの人たちと違った捉え方をしてしまうことがあるのですが、そうした困っている状況を言葉で表現して、周りに説明するのが苦手です。コミック会話は、ASDの子どもが、今どんなことに困っているのか、どんなことを考えているのかを理解する手助けをしてくれます。また、彼らの周りで起こっている状況を的確に伝えるための手段としても、使うことができます。コミック会話の手法を使うことで、コミュニケーションをスムーズに取ることができるようになり、お互いの理解が進むのです。

コミック会話の方法は、子どもに書きながらコミュニケーションするのは良い方法だという理解を得て教えていきます。棒人間を描き、その人が言ったことを吹き出しに書き、感情を雲型の吹き出しに書くといった方法で状況を説明します。従って、文字や絵が描けることが前提です。このルールを徹底するのでマンガを描くのとは違い、表現ルールを覚える練習が必要になります。普段の会話をコミック会話を使って行うのです。たとえば、 今日、学校でどんなことをしたの?という、普通の日常会話です。こうして、普段から日常会話にコミック会話を使っておくことで、なにか困ったことがあった時にも、コミック会話を使って、スムーズに状況を説明できるようにしておきます。基本的にコミック会話は、ASDの子どもが、自分の気持ちなどを説明するために使うので、主に描くのは子どもです。

練習段階では、大人が質問をしながら、コミック会話を書き上げていくことになりますが、慣れて書き方がわかれば、子ども一人でも表現することができるようになります。会話ですので、子どもが書き、大人が書きと、続けていくことで、お互いの理解を深めていきます。

ノートを使うか、ホワイトボードを使うか、どんな筆記具を使うかは、様々なものを試せばいいです。ただ、筆記具に関しては、8色で感情な表現をするので、色のある筆記具を用意します。大きめのノートに色鉛筆、水性ペンなどを使う人が多いです。

コミック会話ができれば、状況や感情表現に非常に役に立つツールになります。話し言葉より先に文字に興味を持つタイプの方はコミック会話はとても分かりやすいようです。今の状況を周りに伝えられることでストレスが少なくなり、周りの大人も、子どもの考えていることがわかれば、どんな支援をすればよいのかがわかります。コミック会話がうまくいけば、かなり気持ちの面で穏やかになる方が多いです。ただし、コミック会話では子どもの誤解や間違いもたくさん発見できるので、間違いを指摘したくなりますが、それはNGです。表現することで役に立った、聞いてもらえてよかったという実感が大事です。

ここの、ブログを前からお読みの方はもうお気づきかと思います。ソーシャルストーリが理解コミュニケーションで、コミック会話は表出コミュニケーションです。他者のことがわかるだけではなく自分のことも相手にわかってもらってこそバランスが取れた暮らしというものではないでしょうか。理解だけ進んでも表出手段がなければストレスが溜まって行き詰ってしまうのは当然だと思いませんか。

応用行動分析を支援に生かす

発達障害のある人の行動問題について、前回はその支援の一丁目一番地は表出のコミュニケーションだと述べてきました。行動問題の解決と予防に必要なものはは、表出コミュニケーションと理解コミュニケーション(視覚的構造化含む)、3番目には応用行動分析(ABA=applied behavior analysis)だと考えられます。

ABA理論は人間の行動の分析の仕方と法則を扱っている心理学理論です。ちょうど、化学反応の法則を導き出すことと似ています。水は電気分解すると水素と酸素になります。人は褒められるとその行動を繰り返そうとします。単純化すればのたとえ話ですが、このように化学反応と行動変容はよく似た表現をします。表出のコミュニケーションに取り組むPECSもABA理論に基づいています。激しい不適切行動も、成長の過程で周りの人たちの対応を含む環境によって強められた結果であることが多いです。まず、不適切行動が強まる例をABC(三項随伴性と言います)分析の枠組みで整理して示します。


<例1>
①(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)外出ができる
②(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)「後でね」と言われて外出できない
③(A)外に出たい→(B)窓ガラスをたたく→(C)母親に叱られるが外出できる
『課題からの逃避』の機能を持つ行動が強まる例は
<例2>
①(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了される
②(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了されない
③(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)課題が終了される
④(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)席に戻され課題が終了されない
⑤(A)課題が嫌(B)作業課題を投げる→(C)課題が終了される
⑥(A)課題が嫌→(B)作業課題を投げる→(C)課題が戻され終了されない
⑦(A)課題が嫌→(B)作業課題を破壊する→(C)課題が終了される


例1の先行条件(A=Antecedent)で子どもが求める結果(C=Consequence)は外出できることであり、例2では課題を終了することです。例から分かるように同じ結果を得るために行動が順に変わり強まっています。同じ行動でも段々強度が増していき(激しく、時間も長くなっていく)、下に進むほど対応が難しい行動になっていることが分かります。例1の『③窓ガラスをたたく』、例2の『⑦作業課題を破壊する』という行動(B=Behavior)は、対応する側としてはこどもの要求を通さざるを得ず、無視できない行動です(関係ない人を叩くといった他害行動が見られることもあります)。このような強力な行動を早い段階から行うこともありますが、不適切行動は例1、例2のように段階的に強度を増していくことが多いです。


ではな不適切行動の強度は増していくのでしょうか。決定的には適切な表出コミュニケーションができないことですが、強度が増すのはある行動を行うことで要求が通っていても、段々同じ行動では要求が通りにくくなるからです。保護者や対応する人が慣れてきて少々泣いても気にせず課題をすすめようとなったり、忙しくて対応できなかったり、「教育的」に外出の回数を制限するよう計画したりと理由は色々あります。

そして、ある行動を行っても要求が通らなくなり、または、通り難くなると、要求を通らせるために不適切行動をより激しく、より長く行います。これを消去バースト(消去時の爆発)と言います。この段階で要求が通ってしまうと、より激しく、より長く不適切行動を行うと要求が通るということを学習し、以前より不適切行動が強力になっていきます。それでも要求が通らなければ、要求が通るような行動を色々試し、自分のできる行動の中から要求が通りやすい行動を行います。そこで要求が通ると、新たな不適切行動が形成されるということです。このような仕組みで、不適切行動は強度を増し、対応せざるをえない行動に変わっていきます。これは障害のあるなしに関係なく、どんな人でもこのツボにはまると負の連鎖は繰り返されます。たまに要求がかなえば、例えばパチンコ通いのように次は成功するかもとお金をつぎ込むように、不適切行動をつぎ込んで要求が叶うまで繰り返します。次回は日常生活で不適切行動を強めないため何が必要かを考えます。

強化と行動

ある行動を行い、望ましい結果が伴えば、その行動の頻度は高まります。例えば、『(A)夕食後→(B)宿題をする→(C)母親に褒められる』と『(B)宿題をする』という行動が増えます。これを“強化”と言い、その際の望ましい(C)結果を“強化子(きょうかし)”や“好子(こうし)”と呼びます。

この強化は応用行動分析(ABA)の基本であり、とても大切です。強化子というのは嬉しいものであるとは限りません。直前の行動を維持し、強める結果のことです。ドアノブを回すとドアが開きますが、この『ドアが開く』という結果は『ドアノブを回す』という行動の強化子となっています。ドアが開いてもそう嬉しいわけではないですが、ドアが開くという結果がドアノブを回すという行動を維持します。

基本的には望ましい結果、嬉しい結果が強化子となることが多く、その内容は人それぞれです。保護者や先生の賞賛、お菓子、おこづかい、ゲームができる、遊びに行ける、微笑みかけられる、休憩時間が伸びるなど、その子どもが喜ぶものは基本的に強化子として考えることができます。やりがいや達成感を感じるということも同様です。ある行動を増やしたければ、その行動の直後に強化子を与えることで、その行動が強化され頻度が高まります。不適切行動も同様であり、不適切行動の頻度が高く維持しているようであれば、その行動はその子にとって望ましい結果によって強化されていると考えます。

計画を立てる際によく見られる誤りは、お菓子などの特定のものを強化子と決めつけることです。お菓子が好きな子どもならお菓子が強化子になり、お菓子をそれほど好きでない子どもならお菓子は強化子にはなりません。また、お腹がいっぱいの時はお菓子を別に欲しくないので強化子にはならず、その時の状態によっても強化子は変わってきます。

次に、ある行動を行い、望ましくない結果が伴えば、その行動の頻度は減少します(ご飯中におしゃべりをして母親に怒られる、など)。これを“弱化”または“罰”と言います。その際の望ましくない結果を“嫌子(けんし)”または“罰子”といいます。この嫌子も人それぞれです。叱られる、叩かれる、空腹、喉の渇き、極度の暑さ寒さ、周囲からの批判などです。

弱化にも2つの条件があり、ある行動を行って嫌子の結果となる正の弱化と、ある行動を行って強化子がなくなる負の弱化があります。後者の代表的なものはタイムアウトで、望ましくない行動を子どもが示したら、子どもを強化子から遠ざけるという手続きです。ゲームを取り上げられる、減点されるのも強化子から遠ざける負の弱化です。

この強化と弱化、そして4つの条件によって、行動が増えたり、減ったりすることの多くを説明することができ、行動を修正したり形成したりすることが可能となります。

<正の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子(好きな事)が得られ
 3. その結果、その行動が増える
<負の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子(嫌な亊)がなくなり
 3. その結果、その行動が増える

<正の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子が得られ
 3. その結果、その行動が減る
<負の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子がなくなり
 3. その結果、その行動が減る

結果が好きな事か嫌な事が消えるならその行動は増え(強化)、結果が嫌な事か好きな事が消えるならその行動は減る(弱化)ということです。そして、行動の形態や種類に関係なく、この強化の原理は人の行動なら何にでも適用されるということです。良い行動であっても、悪い行動であっても、日常的な行動であっても、奇異な行動であっても、同様です。子どもに不適切行動が見られるならば、その行動により子どもにとって何か望ましい結果が得られていて不適切行動が強化されていると考えることができます。従って、不適切行動を予防するには適切な行動が増える好きな事か嫌なことが消える結果を探し、不適切な行動を減らすには嫌なものか好きなものが消える結果を探して取り組めばよいことになります。

しかし、弱化はなかなか難しいのです。子どもの好子はかなり強力なものが多いですから、少々の弱化、つまり嫌な亊を与えたり好きな事を奪っても持続的な効果はすぐには見えず、逆に消去バースト(行動がさらに強くなる)を前に怯んでしまいます。また内容や程度にもよりますが、弱化は倫理的に考えて躊躇しやすいからです。つまり大人のほうが効果と言う強化子がなかなか得られず、倫理的という同調圧力の言葉で取組行動が減ると言う負の弱化が成立します。ではどうすればいいか次回に考えて行きます。