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放課後デイサービスは2類型へ厚労省方針

障害児が通う放課後デイサービスは2類型へ厚労省方針

10/26(火) 【福祉新聞】

厚生労働省は10月13日、学齢期の障害児が通う放課後等デイサービスについて、2類型に分ける方針を固めた。現行の運営指針にある創作活動など四つの活動をすべて行う「総合支援型」と、理学療法など専門性の高い支援を提供する「特定プログラム特化型」の二つに整理する。それぞれの機能を明確にすることで、支援内容のバラツキを是正する。

同日の障害児通所支援の在り方に関する検討会(座長=柏女霊峰・淑徳大教授)に報告書案を示し、大筋で了承された。今後、関連する法律や障害報酬に反映する。

親の就労を支えることも重視し、支援時間の長短も報酬上の評価に反映する。学習塾やピアノ教室のような事業所は、障害特性を踏まえた支援になっていないと判断された場合、給付の対象外とする。

放課後デイは6歳から18歳までの学齢期にある障害児が通う事業所。現在は年齢に応じてどのようなサービスを提供するかは事業所に委ねられ、その内容のバラツキがかねて問題視されていた。

インクルージョン(包摂・参加)の観点から、障害児以外の子どもと過ごす時間を増やすことも促す。通う場所を放課後デイから学童保育に移したり、それに向けて併行利用したりすることは現在も行われているが、実績は多くない。

今後、それを増やすため標準的な手法を確立し、障害報酬でも適切に評価する。

都道府県による事業所指定の拒否(総量規制)については、住民の身近な生活圏域ごとのニーズと供給量をみて判断する仕組みに改める。

未就学児が通う児童発達支援事業所についても放課後デイと同様の考え方で2類型に分け、保育所との併行通園なども促す。総量規制の仕組みも同様に改める。

2020年度は放課後デイの事業所数が月平均で1万5408カ所、児童発達支援の事業所数が同様に7722カ所。12年以降急増し、障害福祉全体の給付費増大の要因とみられている。

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雨後の筍のように増えている放デイにも、淘汰の時期がやってきたようです。看板で発達障害に対応と打ち出していても、フォーマルアセスメントもできない放デイは学習塾と見なされ、給付の対象から外されていくのでしょう。逆に言えば専門的な支援をしている事業所は淘汰された事業所の子どもが流れ込んでくる情勢とも言えます。ただ、学習塾の「ような」事業所は切っていくという理解を地方行政がした時に、学習障害の捉え方が気になるところです。

この掲示板に何度か書きましたが、発達障害の一つに学習障害があるのに、学習とついているので学習のケアは学校教育の管轄だと誤解している行政関係者が結構いるように感じます。その結果、相談事業所の職員までもが行政の誤解に右慣れしてしまう傾向があるのではないかと危惧しています。学習障害は生まれつきの脳機能の障害で、親の育て方や本人の性格の問題から生じるものではありません。身体が動かないように、目が見えないように、耳が聞こえないように、文字や文が流暢に認識できなかったり出力できなかったりするのが発達性ディスレクシアを中心とする学習障害なのです。

学校や家庭で通常児の学習方法で学ばせようとしても、学習成果があがらないのに、それは家庭か学校でやれば良いというのは全く違います。まず、知的な遅れがないかどうか知能検査をして、知的な遅れがなければ次は読み書きの検査をして発達性ディスレクシアの傾向が認められた上で支援が始まります。

ところが、発達障害に対応しますと大きな看板を上げながらも、中に入ると売っているものが何もないような事業所もあるのです。検査によるエビデンスもなく、コグトレ(認知力を高めると言われる訓練:人によって違います)のプリントをさせて支援をしていますというのはまだ良い方で、従来のやり方で宿題に付き合ったり、ICT支援をしますと言いながらタブレットの学習ソフトを使わせるだけに終わっているところが散見されます。

一方で、地域には発達障害に対応している学習塾もあり、臨床心理士による発達検査(1~2万円)を行ってから支援計画を立て、週1回個別指導60分5千円を相場にして入会金も含めると年間30万近い授業料が相場です。対して放デイの保護者負担は1割負担の方がほとんどですから先の学習塾と同じ利用時間でも年間8万円ほどです。しかし、事業所への収入は40万円ほどになります。つまり同じように支援している学習塾よりも収益は高いのです。放デイの方が収益が多いからと適切な支援もせずに胡坐をかいている事業者を淘汰しようというのは良いことですが、真面目にやっている学習障害対応の放デイまでが駆逐されたのでは、角を矯めて牛を殺すことになります。

「なぜ勉強できないの?」 学校を追われたアフガン少女たち

「なぜ勉強できないの?」 学校を追われたアフガン少女たち

2021年10月26日【カブールAFP=時事】

アフガニスタンのアメナさん(16)は、通っていた女子高校が今年5月、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の爆弾攻撃を受け、同級生数十人の死を目の当たりにした。それでも教育を受け続ける覚悟だった。

ところが、中等教育を受けているほとんどの女子と同様、アメナさんは今、授業からまったく締め出されている。アフガニスタンで政権を奪還したイスラム主義組織「タリバン」は9月に学校再開を命じたが、女子生徒は除外された。

「勉強したいし、友達に会いたいし、明るい未来がほしいです。でも今はそれができません」。首都カブール西部にある自宅でアメナさんはAFPに語った。「最悪の状況です。タリバンが来てから、とても悲しいし、怒っています」

国連児童基金(ユニセフ)の幹部が15日に語ったところによると、タリバン暫定政権の教育相は同機関に対し、すべての女子生徒が中等教育を受けられるようにする枠組みを近く発表すると述べたという。だが今のところ首都カブールを含むアフガン全土で、女子生徒の大部分は授業を受けられていない。

一方、小学校はすべての子どもに対して再開した。また私立大学には女子も通うことができるが、服装や行動について厳しい制限が課せられている。

■「希望がない」
アメナさんはジャーナリストになることを夢見ていたが、今では「アフガニスタンに希望はない」という。

家ではきょうだいに勉強を助けてもらっている。学校襲撃で心に傷を負った妹はカウンセリングを受けている。アメナさんは時折、このカウンセラーからも勉強を教わっている。
「兄弟が本を家に持ってくるので、それを読んでいます」と語る。「それから、いつもニュースを見ています」

なぜ男子だけが勉強することができて、女子には許されないのか、理解できないとアメナさんは訴える。「社会の半分は女子で、残りの半分が男子。なんの違いもありません」
「なぜ私たちは勉強できないのでしょうか? 私たちは社会の一員じゃないのでしょうか? なぜ男子だけに将来があるのでしょうか?」

■消えた夢
米軍主導の多国籍軍が旧タリバン政権を追放したのは、2001年。それから何年もたって生まれたザイナブさん(仮名、12)は、タリバンの5年におよぶ圧政の記憶もなく、学校通いを楽しんでいた。それも復権したタリバンの命令が出るまでだった。

先月、男子だけが学校に戻る様子を窓から見てがく然とし、「恐ろしい気持ち」になったという。「毎日、どんどん悪くなっています」とザイナブさん。身の安全のために本名は伏せて取材に応じた。

姉のマラレーさん(仮名、16)は涙ながらに「絶望と恐怖」を感じていると明かした。今は掃除や皿洗い、洗濯など家事を手伝って過ごしている。母親の前では涙をみせないようにしている。「母はたくさんのプレッシャーを背負っていますから」と説明した。

マラレーさんは女性の権利を向上させ、彼女の権利を奪う男性たちを説き伏せることを夢見ていた。「学校、そして大学に行くのは私の権利です」とマラレーさん。「私の夢や計画はすべて、消えてしまいました」

【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕

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アフガニスタンの女子への差別は、以前(タリバンは女性の権利守るのか、アフガンに渦巻く疑心暗鬼: 08/19)でも書きました。タリバントップの約束と違うのは、タリバンが嘘をついているというよりも、その程度の統率力しかないということでしょう。ややこしいのは、アメリカが撤退したことでISも息を吹き返し、首都でのテロを繰り返してタリバン政権の脆弱さをあぶりだすのに一役買っており、それが更に政権トップの求心力を失わせるという悪循環に陥っているということです。

2001年以前のアフガンの多くの女子はマラレーさんのように考える事は少なかったかもしれません。しかし、今は20年間続いた男女同権の蓄積があります。今更、男女同権の思想をなかったことにするのは不可能です。もちろん、体制批判についての表現や思想信条の自由については、中国共産党政権によって弾圧が続いていますし、ロシアでは暗殺の恐怖を感じながら報道の自由を守ろうとしているノーベル平和賞のドミトリー・ムラトフ氏らの戦いもあります。

それでも、どんなに弾圧されても、必ず自由は勝利すると歴史は教えています。自由主義社会はアフガンの行方をずっと見ています。がんばれアフガン女子!

家庭でも学校でもない、疲弊する子どもに必要な「第3の居場所」とは

家庭でも学校でもない、疲弊する子どもに必要な「第3の居場所」とは

2021年10月28日 【京都新聞】

少子化が進む一方で、貧困や児童虐待、ヤングケアラーなど子どもを巡る問題が深刻化している。31日投開票の衆院選でも各党が子どもに関わる公約を打ち出している。そんな中、福祉の専門職として京都府内の小中学校で活動するスクールソーシャルワーカー(SSW)が学校現場から見た疲弊する子どもの実情を明かし、家庭や学校以外の「第3の居場所」の充実など、国全体で解決策を考えるべきだと訴えた。

「問題を抱える子どもは、家庭も社会から孤立している。子どもを助けるためには、家庭も含めた生活環境に働きかける支援が大切だ」。SSWの60代女性は実感を込めて語った。

女性は拠点の中学校で週2回勤務し、近隣の小中学校も年間に数日間だけ派遣される。社会福祉士の資格を持ち、貧困や児童虐待などの問題に「かじ取り役」として学校外の機関とも連携して対応する。例えば不登校の子どもで発達などの障害があると判断すれば、市役所の福祉部署を通じて放課後等デイサービスの利用や障害者手帳の取得などを促す。家庭の貧困が絡む場合は、子ども食堂や社会福祉協議会の学習支援につなげる。

子どもの問題は現代社会のひずみが影響している。「新型コロナウイルスの影響で親が自宅待機や在宅勤務になり、狭い家庭空間で一緒に過ごす時間が増えて虐待が起きるケースもあった。仕事を失ったひとり親から『他人に言いづらい内容のパート勤務となり就労証明書をもらいにくいため、子どもを学童に通わせられない』と悩みを聞いたこともあった」と明かした。

18歳未満で家族の介護や世話をするヤングケアラーの問題もあるといい、「ある中学生は親が弟を保育園に送迎しないため代わりに自宅で世話していた。別の中学生は、障害のある親の代わりに家族の食事を作っていた」と語った。スマートフォンも子どもの世界に影響し、「知らずに膨大な課金をしてしまったり、男女間トラブルに陥ったりすることもある」とした。

衆院選も終盤戦に差し掛かり、女性は「社会がひとつとなって子どものことを考える雰囲気を感じない。もっと子どもにお金をかけてほしい。学校の施設だってボロボロの所は多い」と各政党に求める。

SSWの課題も指摘する。女性が受ける相談事案は年間百件を超す。しかし、府教育委員会のSSWは68人のみで、全員が非常勤。府教委は全校カバーの態勢を2017年度に整えたとするが、常勤化にはほど遠く、女性は「それぞれの問題にじっくりと対応できない」と嘆く。

また、家庭や学校の環境が厳しい子どもにとって、異年齢の子や多様な世界を見せてくれる大人と出会える第3の居場所の存在は大きいとし、「子ども食堂に行くように勧めても断られることもある。例えば、児童相談所に民間と連携した居場所を設けられないか。子どものショートステイや家庭へのヘルパー派遣の拡充など、日常的な受け皿が増えてほしい」と求めた。

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放デイを居場所にしている子どもは少なくありません。学童保育だと子どもが多すぎてゆっくり話を聞いてもらう事もできず、中学年以降は大人が決めたルールに縛られることを嫌がって行こうとしなくなります。放デイなら、自分の特性も見抜いて接してくれる職員や、同じような傾向のある仲間がいて、安心して生活ができるのかもしれません。今大事なことは、子どもの周りに理解者である大人の人垣をどう構築するかという事です。

昔は、隣近所の大人が気にかけてくれたものですが、そんな地域はとっくの昔に消滅してしまいました。今地域での子どもの関りと言えば小中学校と福祉サービスくらいしかありません。福祉サービスの関係者が子どもの人垣となるなら、あまり杓子定規に基準を決めてしまわず、ゆとりを持たせて受け止めたいものです。子どもの理解者を家族以外に作るためには「子ども食堂」等の篤志家の登場を待っていても仕方がありません。今あるサービスを人垣にしていく地域毎の福祉デザインこそが求められているのだろうと思います。

自閉症の息子へ 主演の加賀まりこさんの提案で監督が加えたシーン

自閉症の息子へ 主演の加賀まりこさんの提案で監督が加えたシーン

2021年11月2日 【朝日新聞】

自閉症の息子がいる母親が主人公の「梅切らぬバカ」が12日から全国公開されます。親子の絆を軸に、親子と近隣の人とのかかわりや、障害のある人たちが暮らすグループホームが抱える課題も描かれています。持病のてんかんを他の患者と語る「ぽつラジオ」も配信する和島香太郎監督(38)に、映画に込めた思いを聞きました。

ドキュメントでは描けなかった
――この映画を作ろうと思ったのはなぜですか。

数年前、自閉スペクトラム症の男性が主人公のドキュメンタリー映画の編集をしたことがありました。男性は親が残した家で、親族や福祉サービスの力を借りながら1人で暮らしていました。そうした交流は記録されている一方で、隣人には取材ができず、編集作業では映り込んでいた隣人を画面の外に出す作業をしました。

完成後、男性の置かれている状況や障害を、近隣の人にも理解してもらいたいという思いで映画を見てもらったが、「あなたたちは障害を肯定的に描きすぎていないか」という手紙が届きました。

長年にわたる男性の障害による予測のつかない言動で、近隣とは修復困難なあつれきが生まれていたんです。ドキュメンタリーでは描けなかったこの部分を、フィクションだったら表現できるのではないかと考えました。

――ご自身のてんかんも関係しているのでしょうか。

14歳でてんかんを発症しました。僕も含めて患者は、家族から「病気のことは誰にも言うなよ」と言われてきた人が多く、学校や勤務先で症状に悩んでも相談できる人が周りにいなくて、孤立してしまいがちです。病気のことをオープンにしながら社会とつながっていくためにどうしたらいいかを模索している人もいて、障害がある人が抱える課題と通じる部分だと感じています。

迷惑をかけることで、障害への理解広がることも
――脚本にあたって、どんなリサーチをしましたか。

自閉症など障害がある人の家族、地域でグループホームの建設に失敗した人たちに話を聞きました。どういうプロセスで進めて、どんな人に、なぜ反対されたのかを取材しました。

この映画では、一つ問題が起こることで、逆に理解が進むことがあるということを描きたかった。障害がある人にかかわる人から、「人に迷惑をかけることで存在が認められて、障害が理解されることがある」と言われて、そういうことも大切だと伝えたかったんです。

――母親の山田珠子役を演じる加賀まりこさんの「このまま共倒れになっちゃうのかね」というせりふが印象的です。

撮影の直前に、加賀さんと同年齢で、自閉症の息子を1人で育ててきた女性から話を聞きました。「このまま息子の住む場所が見つからなければ、一緒に死ぬしかないかもしれない」と打ち明けてくれました。いくら周りに支援者がいたとしても、当事者は困難な現実の中で生きていると感じました。

プレッシャーから救ってくれた加賀さんの存在
――加賀さんからの助言で生まれた場面があるそうですね。

珠子が、息子のちゅうさん(塚地武雅さん)を抱きしめて、「ありがとう」と言うシーンがあります。最初はこのシーンはなかったんですが、脚本を読んだ加賀さんから、「(息子に)『ありがとう』と言った方がいいよ」と言われたんです。

僕は、「珠子さん、そんなこと言うかな」と半信半疑でしたが、先ほどの自閉症の息子がいる女性からも、同じことを言われたんです。障害がある子を育てる人を、38歳の僕が描こうとしていること自体、かなりのプレッシャーなんですが、加賀さんの存在で救われるところがありました。

――地域で障害のある人が暮らす上で、課題と感じることはありますか。

障害者施設の建設・運営に反対する人たちが「子どもたちの安全を守る」と掲げることがあります。それは危害を恐れての本音でもあると思うが、子どもに偏見がなければ、大人の差別活動の口実に自分たちが利用されていると、子どもは感じると思うんです。

障害者への偏見を子どもに植え付けていくことにもなるし、将来、大人たちと同じように差別することも懸念される。教育の観点から、共生の可能性を模索してもいいんじゃないか。

子どもたちの安全を守るということを盾にしているのが、一番引っかかっている。僕が取材した町では、そういう大人に不信感を持った子どもがそのことを作文に書いて、注目されたということも聞きました。「梅切らぬバカ」に子どもが出てくるのは、そうした部分を伝えたいという思いも込めています。

ぽつぽつとてんかん語る「ぽつラジオ」
――ユーチューブやポッドキャストで、てんかん患者が出演する音声番組「ぽつラジオ」を2017年から続けています。

最初は、てんかんをテーマにしたドキュメンタリー映画を作りたいと思っていたんです。てんかんだと周囲に明かさずに働いている人たちの悩みをテーマに扱いたかった。でも、彼らにカメラを向けたら、「クローズ」ではなくなり、テーマと矛盾してしまう。顔は出せないけれど、伝えたいことは山ほどあるんです。匿名で出演してもらい、声で思いを伝えてもらえる手段として、「ぽつラジオ」を始めました。

以前は知り合いに出演を頼んでいましたが、最近は、ツイッターで知り合った人に依頼することが多いです。意外に思われるかもしれませんが、「日本てんかん協会」の存在を知らない患者さんもいるんです。子どもの頃から、誰にも言うなと育てられ、病気で人とつながることがありえないと思っているため、つながる機会が少ないんです。僕も、30歳を過ぎてから、主治医から「他の患者さんと話してみませんか」と言われました。

――映画監督の仕事をする上でも「ぽつラジオ」の存在は大きいですか。

大きいです。仕事場で発作を起こしたことをきっかけに、職場の理解を得られた人の話も「ぽつラジオ」で聞きました。でも、仕事を辞めるまで追い込まれたり、面接で落とされたりする人もいます。それでも模索して、タフに生きている人がいるのも事実で、「ここでだめでも、他のところで映画を撮れるんじゃないか」と思えるようになりました。

監督という仕事をしていく以上、発作のリスクを周囲と共有できないと、自分自身も不安なので、徐々に伝えていくようになりました。僕が発作を起こしたら現場が止まり、人件費などで負担を負わせてしまう。

今回の撮影前には、スタッフとてんかんのリスクを共有しました。すると、撮影場所の近くにホテルを取ってくれ、僕は自宅からではなく、ホテルから通うことで移動時間を短縮できました。睡眠時間を確保できれば、発作のリスクを減らせます。スタッフがきちんと対応をしてくれたことで、僕自身が、周囲の人がてんかんをどう見るかを決めつけて恐れていたことに気づかされました。

――映画を見る人たちへメッセージを。

映画の始まりと終わりで、ささやかな変化が起きていて、それがどういうものかを注目して欲しいです。小さな変化が積み重なっていくプロセスを見てもらえたら。(及川綾子)

映画「梅切らぬバカ」は12日から全国公開
占いをなりわいとする母親(加賀まりこ)が、きちょうめんで馬好きの息子「ちゅうさん」(ドランクドラゴン・塚地武雅)と閑静な住宅街で暮らす日常を描く。庭にある梅の木は伸び放題で、引っ越してきた隣家から苦情が届いていた。ちゅうさんは母親と離れてグループホームに入居することになったが、ホームは住民とのあつれきを抱えていた。ある日、ちゅうさんはホームを抜け出してしまう――。

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今回も、障害のある人と暮らす家族の物語です。前回はきょうだいの関係性でしたが、今回は親子の関係性です。ただ、塚地さんはドラマ「裸の大将」の山下清のイメージが強すぎて、シリアスなテーマではベタな感じになりはしないかと一抹の不安もあります。親亡き後の障害のある一人息子への片親でもある母親の思いがどう描かれるのか注目しています。前回掲載した、映画「僕とオトウト」では、兄が小さな時期から笑顔で蓋をして言えなかった怒りを父親に爆発させて、「オトウトを撮り続ける」事でカタルシスを得ていこうとする過程が描かれました。兄は親に思いをぶつけられますが親の場合となると考えさせられます。

また、福祉施設と住民との関係性で「近隣とは修復困難なあつれき」について監督の映画製作の経験から描かれるというのも重要な見どころだと思います。私たちが運営している事業所を近隣者はどう感じているのか、面と向かって口に出す人はいませんがマイナスの感情が必ずあるはずです。時折聞こえてくる子どもの奇声や大声、道端に派手に座り込む姿、職員より背の高い子どもが大人と手をつないで歩く姿、小さな子どもが遊ぶ公園で大きな人がブランコを思いっきり漕ぐ姿等を住民が見て思う事はたくさんあるはずです。これは、映画だからこそ描けるものがあるのだろうと思っています。

久々に、大スクリーンで上映される障害者をテーマにした映画ですから多くの方に見てほしいと思います。この映画は54年ぶりの主演となった加賀まりこさんと人気芸人・塚地武雅さんが親子役で共演する映画としても観たい映画です。また、監督・脚本を務めた和島香太郎監督が、2008年に「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加し短編映画を製作後、2019年に実施されたndjc「90分程度の映画脚本開発」に『梅切らぬバカ』で応募し研修生に選ばれた経緯のある映画なので、文化庁のいわゆる監督育成事業の成果発表として観る価値もあると思います。

T・ジョイ京都(京都駅前)『梅切らぬバカ』 11/12公開

危険な「放課後デイ」送迎サービス…障害児へのわいせつ行為横行

危険な「放課後デイ」送迎サービス・・・障害児へのわいせつ行為横行

2021/11/04 【読売新聞】

障害のある子供が利用する「放課後等デイサービス(放課後デイ)」で職員による子供へのわいせつ行為が相次いでおり、車での送迎中にわいせつ行為に及ぶ手口が横行していることがわかった。自力での通所が難しい障害児に欠かせない送迎サービスが、悪用されている形だ。

動画も撮影
読売新聞の全国調査では、放課後デイで2016~20年度に少なくとも職員25人が、39人の子供にわいせつ行為をした疑いのあることが明らかになっている。

「男の勤務態度は真面目だった。まさかそのような意図があったとは……」。9月上旬、取材に応じた関東地方の放課後デイ代表の男性(74)は、苦い表情で口を開いた。

数年前、男性が代表を務める施設で、40歳代の職員の男が知的障害のある女児らにわいせつな行為などをしたとして、強制わいせつ容疑などで逮捕された。

男は面接時、「子供に関する福祉の仕事をしたい」と熱意を語った。障害児施設での勤務経験もあり、人手不足から採用を決めた。だが、男は女児にばかり近づこうとし、子供と接しない業務へと配置換えをした。

ある日、男は送迎車に添乗員として勝手に乗り込み、運転席の後ろで女児の下半身に触れ、動画を撮影。帰宅した女児が両親に伝え、発覚した。男は、別の女児3人にもわいせつ行為をしていたとして、強制わいせつなどの罪で懲役7年の判決を受けた。代表の男性は「被害者には大変申し訳ない。二度と起きないよう徹底したい」と謝罪した。

犯行1年半
送迎サービスでは、同様の事案が各地で起きている。

静岡県内では19~20年、放課後デイに勤務していた元保育士の30歳代の男が、送迎中に知的障害などのある少女3人にわいせつな行為をし、その様子を動画で撮影。男は約1年半犯行を重ね、静岡地裁沼津支部は今年6月、男に懲役12年の判決を言い渡した。

19年にも、石川県内の放課後デイの職員の男が送迎中の車内で、当時7~11歳の障害がある女児6人にわいせつな行為を繰り返した。金沢地裁は昨年7月、「被害を訴えることが困難な女児の特性につけ込み、職員という立場を悪用した」などと指摘し、懲役7年の判決を言い渡した。

厚生労働省障害福祉課障害児・発達障害者支援室は「送迎中のわいせつ行為という手口は把握していなかった。あってはならず、遺憾だ。事業所には、わいせつ行為など虐待防止の職員への周知徹底を求めている」としている。

放課後デイ事業者でつくる「全国放課後連」の真崎 尭司たかし 事務局次長は「子供は被害を訴えにくく、障害があればなおさらだ。利用できる施設も限られ、泣き寝入りしているケースもあるだろう。放課後デイは、低賃金や新規参入しやすいといった構造的な問題もある。行政にはこうした問題の解決や新たな研修制度など対策を進めてほしい」と話している。

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利用者を顧客だと思っていないからできるのでしょう。見てやっている、世話をしてやっている、教えてやっている、教育や福祉の仕事で陥りがちな感覚です。子どもを顧客だと考えることは、公立だろうが民間だろうが同じです。「させてもらっている」というサービス感覚は子どもと接する職員に教えなければ身につくものではないです。「わいせつ事件」は職員全体にそうした感覚が薄い職場に多いのではないかと思います。

低賃金で人手不足とか利用施設が少ないとか、そういう問題ではないと思います。賃金も待遇も福祉職より良いにも関わらず、教員のわいせつ事件も後を絶たないのですから待遇の問題ではないと思います。わいせつ事件も虐待事件も職場規律の弱いところに多いように感じます。規律と言うと職場の管理が強くて働きにくいのではと勘違いする人がいますが、顧客である子どもに対してリスペクトするように職員教育がされていれば、子どもや保護者への向かい方は自ずと変わってきます。

子どもを大事にするというのは当たり前の事ですが、職場規律がないところは、子どもを大事にしない言動を抑止することができません。送迎の密室性の問題のように記事は書きますが、大事なことは事業者の顧客・子どもへの姿勢の問題だと思います。研修保障や賃金アップは大事な課題ですが、別の問題だと思います。