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みんなちがってみんないい

消去と強化を組み合わせる

おさらいです。人は起こした行動に対する結果が望ましいものだと、以降もその行動を繰り返しやすくなります。この望ましい結果(ごほうび)を与えてその行動を増やすことを「強化」と言い結果のことを「強化子」と言います。お菓子や、おもちゃ、褒め言葉など本人が喜ぶものはどのようなものでも強化子になります。

人は行動のあとにごほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが「負の弱化」=「消去」です。罰には積極的罰と消極的罰があり、ごほうび(快)を取り去るのが消極的罰です。ここまでが前回の掲載でした。でもそんなに上手くいかない現実の問題にどう対応するのかと言うのが今回のお題です。

ABAを心得ている現場では、原則は罰の手続きだけを用いることはありません。罰を与える人がいない時に不適切行動が増えたり、他の不適切行動が増える可能性があるからです。このようなときは、環境調整(強化子のない場所)などによって対応していくほうがよいと言われています。消極的罰を用いるのは、子どもが幼く、困った行動が起きてから期間がたっていない場合などに限ったほうがいいと思います。

不適切行動に対応するには、問題行動を減らしつつ、望ましい行動を増やすことが重要です。つまり、消去と強化の両方を使うのです。消去は、「求めているものを与えない、もしくは与えられない」という状況を作ることですので、例えば、欲しい物があって泣き叫んでも毅然と無視し「欲しいものが手に入る」という強化子をなくします。これまでの「泣く」→「欲しいものが手に入る」→「泣く」という負の循環を断ち切ります。消去を行う時は、一時的にその行動が悪化する「消去バースト」(泣く強さが強くなる、暴れるようになるなど)が発生します。これも大人が反応せずにいるといずれ消去バーストは収まります。他者の迷惑にならない場所に連れて行き、泣きやむで待ちます。

時間がかかる場合もありますが、要求に反応してしまうと、逆効果なので一貫した態度で対応します。消去バーストが起きた時に完全に無視し続けることができないと、その困った行動を強化してしまうことがあるからです。例えば、要求が叶わず大泣きしても無視しているとします。そこで、物を倒したり傷つけるなどして無視し続けることが難しくなり対応してしまうと、より派手で影響が大きい行動をすれば大人に無視されないと学びます。そうすると、次回以降は最初から影響が大きい行動をするようになります。それが予測できるなら「要求の起こる場所に行かない」「別の場所で過ごす」などの環境調整で対応するほうが無理なく困った行動を防ぐことができます。

不適切行動を減らすと同時に、望ましい行動ができた時に褒めたり、ごほうびを与えることで強化を行います。強化には、様々な方法がありますが、今回は「別の適切な行動を強化する」という方法を例にあげます。「泣かずに○回行動できたら要求を叶える」というルールを設定し、事前に子どもと契約します。このルールを子どもにわかりやすく伝えるために、ノートやメモ帳を使って、適切な行動が終わるたびにシールが貯まる仕組みを作りましょう。このように、ポイントが貯まることでほうびがもらえる仕組みのことを「トークンシステム」と言います。トークンが一定数たまったら、要求が叶うご褒美(強化子)を用意し、実際にルールを守って行動ができたときには褒めてあげながらシールを貼り、揃った時はごほうびをあげます。このトークンの数は子どもと交渉しないほうがいいです。交渉するとトークンが減ると言う行動が強化されてしまうからです。何をトークンにするか、多い少ない増やす減らすは現場のセンスが問われます。一気に核心に迫らず、成功しやすいものから徐々に取り組むことがセンスを磨く初心者にはおすすめです。

子どもの特性はひとりひとり異なること、また問題行動の種類や状況は様々であるため、対応の方法は全て異なりますが、これらの手法により、どのような原因があるのか、どう行動を起こすべきなのかが具体的になります。不適切行動には、大声を出し合ったり嫌味の言い合いをしたりと子どもと同じレベルで力比べのような対応をするくらいなら、その膨大なエネルギーを無視とアイデアと褒め抜く根気に使っても損はないと思います。そう周囲の人たちにも最初から言って回ればどうでしょう。そして、少しでもうまく行った時は同じく周囲の人に喜んでみせるのです。笑顔を否定する行動は倫理に反するので弱化され減って行きます。あなたを直接否定する声は減って行くはずです。そして、よかったねと言ってくれたらありがとうと感謝して励まし行動を強化するのです。消去と強化を組み合わせると言うのが今回の提案でした。ご意見、ご質問お待ちしています。