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小児科医に聞く 子どもにも多い「ビタミンD欠乏症」
小児科医に聞く 子どもにも多い「ビタミンD欠乏症」が身体に与える影響は?
6/29(火)【ベネッセ】
子育て食についての本を著した小児科医の伊藤明子先生は、子どもの発達障害の研究とビタミンDの研究をしているドクターでもあります。そこで今回は、ビタミンDの働きと健康の関係について、お伺いしました。
増え続けている子どものビタミンD欠乏症
日本の0~15歳の「ビタミンD欠乏性くる病」と診断された子どもの数がここ数年で、3倍以上増えています。原因は2つ、太陽光を浴びていないことと、動物性タンパク質の摂取不足ではないかと考えられています。
近頃の保護者のかたは、太陽によるシミ・シワを嫌がったり、皮膚がんリスクをおそれるあまり、お子さまが日光浴するのを避けたり、かつ日焼け止めをしっかりと塗布するかたが多く見られます。これに加えて、卵や魚などの動物性タンパク質の摂取量が少ないと、「くる病」のリスクはどんどん高まってしまいます。
「我が家は、日光浴させています」というかたの場合も注意が必要で、保護者のかたが子ども世代だった当時は、例えば、冬場は1時間日光にあたっていればビタミンDが生成されると言われていましたが、現在では温暖化などの地球の環境の変化により、東京以北では十分ではない*(コラム下参照)ことが、環境省の発表で明らかにされています。
ビタミンDは体全体に関わる要素
ビタミンDが不足しているのは、子どもだけではありません。
日本では、まだ大人のビタミンD欠乏に関する正式がデータは発表されていませんが、日本と似たようなライフスタイルで暮らす韓国では、調査対象の7割超がビタミンD欠乏症だったというデータがあります。私のクリニックに不調を訴えていらっしゃる患者さんの血液検査をすると、およそ9割のかたがビタミンD欠乏症であることがわかります。実感としては、日本でも同じくらいのビタミンD欠乏症のかたがいるのではないかと思っています。
ビタミンDは骨だけではなく、全身にかかわる要素なので、皮膚や免疫、メンタルやがんにも関係しています。ビタミンDの数値が低い人は、女性の場合は乳がん、男性の場合は前立腺がんのリスクも高いということもわかっていますし、結核などの感染症にもなりやすいのです。
また、メンタルの面でも、うつや精神疾患との関係も研究で出ており、ビタミンDの数値が低いお子さまに発達の課題がある子が多いことや皮膚トラブルが多いことなどを示す研究もあります。
ビタミンD不足の解消は健康的な食事から
一方で、ビタミンDの量は一般的な健康診断の血液検査では項目として含まれていません。気になるかたは、栄養療法をおこなっているクリニックなどに相談するのがおすすめですが、まだ日本全国には行き渡っていないのが現状です。
ですで、まずは直接口に入れる食べ物から、ビタミンDを摂取してほしいと思います。どのような食べ方がよいのかは、「小児科医が実践している、健康レベルが決まる食事法とは?」を参考にしてみてください。
食生活を変えることで、家族全員がもっともっと元気になれるといいですね。
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「暑いし、中で遊ぶ」子どもの口癖です。そのたびに(外遊びの科学的根拠:2020/12/02)で書いたように外で遊んで背を伸ばすビタミンDを体内に生成しようと外遊びを促しています。それを聞くと「しゃーない(しかたがない)なー」としぶしぶ外に出ていく子どもたちです。これから暑い日ばかりですから、本来ならプールや水遊びが熱中症を防ぎながらの遊びには最適なのですが、まだ水場はコロナストップが解除されていません。
学校や公共施設で水遊びができるようにして、子どものビタミンDの生成を支援し、夏休み明けの子どものうつ病等を原因とする不登校を防止しようと言う行政関係者はいないものでしょうか?いつまでも世界からすればさざ波程度の陽性者数の増減ばかりに注目せず、子どもにとっては鼻かぜ程度の症状なのですから、子どもの生活や健康を維持することも考え、決めたことでも状況によっては変更して、柔軟でバランスのいい施策をしてほしいものです。
*大気の対流でオゾンは低緯度から高緯度に運ばれ、オゾン生成のもっとも盛んな太陽直下の低緯度上空よりも、高緯度上空のほうが高密度となる。これが、温暖化によってさらに加速され、高緯度の紫外線量が低下する。