みんなちがってみんないい
楽しく働くためのヒント&セルフアドボガシー
前回、発達障害の子どもたちと就労を考えていく「2/3 就労移行支援」を掲載しました。今実際に働いている人たちはどんな困りごとやその対策があるのでしょうか。
発達障害のある人は、仕事において一般的に「コミュニケーションが苦手」「ミスが多い」などの困りごとがあると言われてきました。しかし、問題はもっと具体的で、人によって違います。『まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル 楽しく働くためのヒント&セルフアドボカシー』(鈴木慶太:監修、株式会社Kaien:編著/合同出版)では、「発達障害応援企業」として当事者の支援を行なっているKaien社によって、実践的な事例がまとめられています。
例えば、「急に頼まれた仕事に対応できない」という困りごとは、「作業がゆっくり」「段取りを決めるのが苦手」といった特性が影響し、この困りごとが発生しているそうだ。解決策は「急に頼まれた仕事にすぐに対応せず、まずは優先順位と段取りを確認する」「急な依頼に対応できるよう、予め余裕を持っておく」などが挙げられています。本書では、困りごとがマンガで描かれていてわかりやすいです。困りごとが生じる場面、原因と分析、対策まで書かれているので、当事者だけでなく、職場の同僚や上司、支援者、さらには発達障害のある子どもを育てる親御さんも共通のビジョンを描けると思います。
他には「求められていることと異なる仕事をやってしまう」という困りごとが挙げられています。「業務指示の認識がズレる」「ニュアンスを読みとるのが難しい」といった特性により、後から「そんな指示していない」と驚いてしまう事態が発生しますだ。この場合、いわゆる「報連相」の中でも、特に「中間報告」が推奨されています。作業計画を立てた段階や最初の工程が終わった時点で報告し、チェックしてもらうことで、ズレを減らしていくことができます。この書籍のタイトルにある「セルフアドボカシー」とは、自分の状態を把握し、必要な支援を要請することを指します。この際、一方的に権利を主張するのではなく、穏やかに交渉する力が必要だと述べられています。
「権利を主張する側(当事者)も、その主張を聞いて受け入れる側(事業者)も、しばらくの間は練習が必要」です。そして「みんながハッピーに働くことは、結果的に、職場のパフォーマンスを上げることにつながります」とまとめにあるように、お互いにそんな簡単に分かり合えるはずがないということを、常識だと認識することです。ひとつづつ、分析し原因を調べ、歩み寄って対策を工夫しながら見つけて積み上げてこそ、みんながハッピーになれると本書は言います。
まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル: 楽しく働くためのヒント&セルフアドボガシー
監修: 鈴木 慶太 著: Kaien 出版社: 合同出版 発売日: 2019/11/30 ISBN: 9784772613989