みんなちがってみんないい
健康状態集約アプリ
集団感染の兆候つかめ企業や学校で健康状態集約アプリ
2021年2月4日 16時30分【朝日新聞】
新型コロナウイルスの集団感染の兆候をいち早くつかむためのスマホのアプリ普及を、長崎県が進めている。コロナにみられる症状の有無を毎日一人ひとり入力し、集団全体の健康状態を「見える化」する仕組みだ。介護施設をはじめ県内の1千超の企業や団体、学校が、無償提供を受けたアプリを活用。異変の兆しがないか注視を続ける。
昨年末、県内のデイサービス施設で、利用者1人の陽性が判明し、職員の間に緊張が走った。接触した可能性がある職員や利用者計約120人の陰性をひとまず確認した。だが、隠れた感染者が本当にいないのか、不安はぬぐえない。
そこで職員が頼りにしたのが、県が提供するアプリ「N―CHAT」だ。体温だけでなく、全身のだるさや頭痛など18項目に及ぶ症状がある人の増減をパソコン上でグラフ化できる。敷地内の別の施設も含め職員110人分の症状を毎日アプリを通じて集約し、観察し続けた。その後、異変はなかった。
職員の女性は「以前は検温でその日に異常がないかだけしか分からなかった。アプリで変化に注意できるようになった」と言う。
県提供のアプリは昨春、長崎港に停泊中の大型クルーズ船であった計149人の集団感染をきっかけに誕生した。チャット式で症状を入力するアプリを富士通(東京)の協力で開発。船内の乗員の健康状態をアプリを通じて毎日集約した。
厚生労働省クラスター対策班として対応に当たった山藤栄一郎・前長崎大熱帯医学研究所助教(40)=現福島県立医科大教授=は「発熱を訴えた人は初めの頃だけ。症状全般が減っていくのを見て、感染の広がりが収まったと確信できた。コロナは無症状の人がいる以上、ウイルスの侵入を完全には防げない。集団内の異変の早期発見に生かせると思った」と話す。
このアプリの効果を目の当たりにした長崎県は、県内での普及を決定。富士通と契約し、昨年8月末から無償提供を始めた。
地域医療の崩壊を防ぐには、高齢者施設でのクラスター(感染者集団)発生を抑えることが鍵だ。導入先の7割近くが介護施設。先のデイサービスを含む3カ所で感染者が出たものの、いずれもクラスターには発展しなかったという。
活用の幅は広がっている。長崎市の長崎歯科衛生士専門学校は昨秋、学生約100人の健康状態の把握のために導入。手書きと転記の手間が消えた。日本水泳連盟学生委員会九州支部(熊本市)や長崎県バスケットボール協会は、試合2週間前から選手らに健康状態を入力してもらい、開催可否の判断材料にした。他県から県に問い合わせも来ているという。
県はさらに普及を進めるため、無償提供を当面続ける予定だ。県福祉保健課は「『長崎モデル』が全国にも広がっていってほしい」としている。(小川直樹)
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一方で、感染拡大を防ぐ政府の「切り札」として導入された接触確認アプリ「COCOA」。利用者の約3割を占めるアンドロイド版が昨年9月末から4カ月以上、機能していないことが分かって大騒ぎになっています。原因はあまりにプライバシーの保護を厳密にした結果、不具合までがわからなくなったといいます。接触者情報が濃厚接触者でなくても反応してしまう不具合を直しているうちに、アンドロイド携帯用は濃厚接触にも反応しなくなったといいます。
海外の政府が提供する感染監視アプリではGPSで個人の追跡まで行うものがあります。プライバシーの保護が大事かクラスター感染で死者を出さないことが大事かという選択で、日本政府はプライバシー保護を選んだのです。これには憲法に国民の権利を一時抑制する国家非常事態宣言の条項がないからだそうです。ならば、仕方がないです。この憲法下ではプライバシーを守るために、結果的にはポンコツアプリしか提供ができなかったわけです。
ところが長崎ではこのプライバシーの垣根をやすやすと越えてしまうアプリが導入されていたのです。結局、自治体の長やその下で働く職員の本気次第だということかもしれません。役人が本気なら県民も本気で応えてくれるということだと思います。