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スペシャルズ!

映画は“世界の見方”を変えられる。「最強のふたり」監督コンビの最新作「スペシャルズ!」

2020.09.11【朝日新聞デジタル】

大ヒット作「最強のふたり」を生んだ、フランスの2人組監督エリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュの最新作「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」が公開中だ。長~い副題が示す通り、フランスに実在するケア施設の奮闘を臨場感たっぷりに描いたヒューマンドラマ。四半世紀かけて実現にこぎつけた作品への思いを、トレダノ監督に聞いた。(文・深津純子)

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自閉症の子供たちのケア施設を手弁当で運営するブリュノは、助けを求められるとノーと言えない男。受け入れ先が見つからない重度の子供たちを次々と預かり、日夜その対応に奔走する。外出先で介助者を振り切って駆け出す少女、駅の非常ベルを鳴らして電車を止めてしまう青年……相次ぐ非常事態も、彼にとっては日常の一部だ。

そんなブリュノの頼れる相棒が、ドロップアウトした若者の自立を支援するマリク。施設は若者たちの職業訓練の場にもなっている。社会からはじき出された若い世代を一手に救おうとする2人だが、無認可で赤字経営、しかもスタッフの多くが無資格ということで、監査局から厳しい査察を受けることになる。

駆け出し時代の運命的な出会い
息つく間もない施設の日常に圧倒されるうち、いつしか緊密な人間関係に引き込まれていく。モデルになった2人の福祉活動家と監督たちが初めて出会ったのは、まだ学生だった1990年代半ば。献身的な活動に共鳴し、資金集めのためのPR映像作りを引き受け、監督デビュー後にはテレビのドキュメンタリー番組も制作した。

「でも、僕らが本当にやりたかったのは彼らをフィクションで描くこと。2人の立場になって人々と寄り添い、そこから見える世界をじっくり考えたいと思っていました」とトレダノ監督は語る。

「私自身もいとこが自閉症なので、支える家族の苦労はよく知っているつもりです。だから、関係する人々の人生に映画でオマージュを捧げたかった。とはいえ、深刻な題材だけに、ひるむところもありました。映画はコミュニケーションの言語ですが、駆け出し時代の我々は語彙(ごい)も文法もまだ不十分。試行錯誤しながら足りない部分を補い、やっとできると思えるまで20年以上かかったというわけです」

脚本完成の1年前に出演交渉
ブリュノを演じるのはハリウッドでも活躍するスター俳優ヴァンサン・カッセル。クールでゴージャスなイメージから一転、情に厚いが女性とは縁の薄いブリュノの悪戦苦闘を見事に演じ、新境地を開いた。

マリクに扮したのは、「涙するまで、生きる」や「永遠のジャンゴ」で知られるレダ・カテブ。ともにフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞の受賞歴もある名優コンビと、自閉症の当事者や本物の介助者ら素人キャストが織り成すアンサンブルもこの作品の大きな見どころだ。

「先週まで別の作品に出ていた俳優が、いきなり現場に来て演じられる役ではありません。自閉症の子供たちや介助の人々と実際に触れ合い、学んでもらうことが不可欠。なので、ヴァンサンとレダには脚本完成の1年前に、実際に施設を見学してもらった上で出演交渉しました。『脚本はこれからなんだけど……』と切り出すと、異口同音に『脚本なんか無くてもいいよ。一緒にやろう』。その後も何度も施設に通って、本当に熱心に準備してくれた。レダはアフリカの施設まで足を運んでくれました。そんな人たちが演じてくれたからこそ、真実味が出たのだと思います」

コミュニケーションが困難な現実だからこそ
ブリュノは野球帽の下にキッパという小さな帽子を被ったユダヤ教徒。一方のマリクは敬虔(けいけん)なイスラム教徒。文化や宗教、立場の違いを超えた信頼や連帯の力は、この監督コンビが過去作でも繰り返し描いてきたモチーフだ。

「フランスには様々な宗教や文化的背景の人々がともに暮らしています。経済格差もあるし、社会からはみ出てしまう人もいる。健常者同士でもうまく意思疎通できないのが現実です。だからこそ、コミュニケーションに困難を抱える自閉症の人々と、様々な困難を抱えた健常者が力を合わせて前に進もうとする姿を描きたかった。そこから学ぶことがきっとあると思うのです」

「マクロン大統領がエリゼ宮(大統領官邸)で上映会を開き、施設への支援を呼び掛けてくれたことも、自閉症の人々が抱える問題を広く知ってもらういい機会になりました。当事者の家族から『今までは閉ざされた世界で孤立していると思っていたが、この映画で救われた』などの反響をいただいたのもうれしかった。私たちは世界を変えることはできないけれど、世界の見方を変えることはできると信じています」

「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」
出演:ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ
監督・脚本:エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ

9月11日から、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
公式サイト

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エリック・トレダノ
1971年パリ生まれ。共同監督のオリヴィエ・ナカシュとは、95年に短編映画の監督・脚本を共同で手掛けて以来、コンビを組んで活動する。2005年に長編劇映画デビューし、11年の「最強のふたり」で東京国際映画祭グランプリを受賞。無職の黒人青年と障害がある白人富豪の友情を描いた同作はフランスで歴代観客動員数3位を記録し、日本でも大ヒット、19年にはハリウッドでもリメイクされた。主な作品に国外退去を命じられたアフリカ系移民と白人女性の連帯を描く「サンバ」(2014年)、引退目前のウェディング・プランナーの最後の仕事を追った「セラヴィ!」(18年)などがある。

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昨日から映画ネタですが、これはメジャーな監督と俳優で作った自閉症映画です。とはいいつつも、京都のTOHOシネマズではやらず小規模劇場の京都シネマで上映しているので、そんなに収入は見込んでいないのかもしれません。ハリウッド発の自閉症映画というと、レインマンを筆頭にアイアムサム、フォレストガンプやマーキュリー・ライジング、最近だとリチャード・ジュエルとたくさんあります。韓国映画ではマラソン、中国映画では海洋天堂、邦画ならぼくはうみがみたくなりました・山田洋二の学校3等です。フランスはフロイトの精神分析が主流だったので自閉症の理解がうまくいかず、2次障害としての行動障害が昔は少なくなかったそうです。このドキュメンタリー風映画は、私たちが自閉症の人に初めて接したときの「あるある」がたくさん描かれているといいます。