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感染情報、身内にも秘密に 鹿児島市教委が口止め

コロナ感染情報、身内にも秘密に鹿児島市教委が口止め文書児童生徒や保護者対象に学校へ連絡

2021/01/29 08:20【南日本新聞】

新型コロナウイルスを巡り、鹿児島市教育委員会が、感染者が確認された学校に対し、その事実やPCR検査受診を「身内にも口外しない」旨を児童生徒や保護者に伝えるよう文書で連絡していたことが28日、南日本新聞の取材で分かった。学校現場からは「過度な情報統制は不安の増大につながる」と対応を疑問視する声が上がっており、市教委は「誤解を招いたのなら改める」として文書見直しを検討する考えを示した。

市教委によると、文書は、市保健所の助言を受けて送付。市保健所の吉住嘉代子参事は「不要な不安をあおるのを防ぐために適切な対応。身内の範囲は人それぞれ」との考えを示し保育所や企業などにも身内へ他言を控えるよう助言したと認めた。

市以外の県内13保健所を管轄する県は、親族に事実関係の口外を控えるよう指導はしていないとしている。

市教委などによると、遅くとも昨年秋ごろから感染者が出た学校に文書を送付。「身内をはじめ、地域住民や他の保護者らへ他言しない」との内容。市教委保健体育課の池田隆課長は「誹謗(ひぼう)中傷を防ぐためで、身内としては同居しない親族を想定」とした上で「保健所と協議し、改めて学校側に連絡する」と話した。

市内の学校では、PCR検査を受ける児童の保護者に対し、祖母ら親族にも伝えないよう連絡した教員もいた。感染者が確認された学校には、保護者から「会社に伝えていいのか」などの問い合わせもあった。市教委の文書に従った学校長の一人は「検査結果が出ないまま、あいまいな情報が広がることを懸念した。配慮に欠けていた」と釈明した。

感染症による社会的影響に詳しい関西福祉大学の勝田吉彰教授=渡航医学=は「身内と情報を共有しなければ、さまざまな情報が出回り、逆に不安や臆測が広がる」として中傷防止につながらないとの見解を示した。

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鹿児島の1/27の陽性者数は10名で、100万人当たりの陽性者数では日本は3000人、鹿児島県は約3分の1の979名です。それでもテレビ中継は東京から全国ネットで配信される番組がほとんどですから、地方の視聴者でも東京の事態を自分のことのように受け止めるのかもしれません。また、お年寄りと同居される家族が多い地方では感染には皆がナーバスになるのも分かります。だから祖父母にも知らせるなと言う教員もいたのでしょう。以前にも書きましたが、武漢風邪の症状や感染分類、感染防止策についてはいろいろな意見がありますが、これだけマスメディアに恐怖感をあおられてしまえば、知らせないことが集団パニックの引き金になります。

まだ検査結果も出ていないから知らせないという配慮のつもりが、学校は感染を隠しているという中傷につながります。SNSが誰にでも使える現在、情報漏れだけでなく、情報が捻じ曲げられたり、捏造されてばらまかれることも少なくありません。そこに煽って大騒ぎしてくれることを楽しむ愉快犯も便乗してきます。こういう時は、トップが正確な情報を発信して、その都度、感染に関わる人権侵害が生じている事態も伝えながら、感染はお互いさまで個人を責める問題ではないとアナウンスし、冷静に事態の対処をしている態度を見せ続け、市民に信頼を得ることが大事なのだと思います。

教育再生へ大きな宿題 東須磨小暴行

「学校組織改革を」神戸の教育再生へ大きな宿題東須磨小暴行

2021/1/27 21:55【神戸新聞NEXT】

どこの学校でも起こりうる-。神戸市立東須磨小学校の教員間暴力の再発防止策として、専門家委員会が27日発表した報告書。教員の気質や職場の風土に踏み込み、「学校組織を変えていくべき」と迫った。社会に衝撃を与えた問題から1年余。神戸の教育再生に向け、学校現場や教育委員会に大きな宿題が課せられた。

■「まさか先生が」
「教員間のハラスメントは起こるという前提に立ち、システムで抑止するという『フェイルセーフ』の考え方に立つ必要がある」報告書に記された「フェイルセーフ」という言葉は、鉄道や航空機などの設計で使われる。万一のトラブルがあっても、安全を保つ考え方だ。

「『まさか先生がそんなことしないだろう』というように、間違えない『無謬性』にとらわれていたのが学校という組織。フェイルセーフの考え方は妥当」組織論が専門の同志社大の太田肇教授は感想を述べた。「教員が積極的に市民の中に入っていくことも必要。他地域や私立学校との人事交流や専門家の招聘など、流動性が高い組織に変えていくべきだ」

■管理職への期待
報告書では「管理職のマネジメント力不足」も指摘された。一般社団法人「職場のハラスメント研究所」の金子雅臣代表は「管理職が校長と教頭だけであとは横並び。権限や責任が一部に集中している組織はマネジメントが機能しづらく、問題も起きやすい」とする。「主幹教諭など中間管理職的なポジションを増やすなど、学校組織を内側から変えていく視点もいる」と話す。

神戸市内の小学校長(60)は「今でも管理職は山ほど仕事がある。働き方改革を後回しにしないと、求められることは到底できない」と漏らす。「校長や教頭がやりがいのある仕事と思えるかどうかが鍵」と説く。

■特効薬はない
一方、家庭訪問や生徒指導など手厚く行ってきた神戸の教育については、「一定の効果を上げたが、教員同士の関係性を濃くし、公私の領域を混在させてきた」と指摘された。元市教委参与で、神戸親和女子大の洲脇一郎教授(72)は「神戸の学校が誇ってきた長所が時代や環境の変化に適応できず問題になっている。信頼回復に全力を挙げてほしい」と期待を込めた。

数々の再発防止策について、市教委の担当者は「どうすれば実効性の高い取り組みにできるのか、正直難しい。すぐに改善できるという特効薬もないし、優先順位を付けるのも難しい」と頭を悩ませる。外部講師による研修の実施などすでに取り組む内容も多い。「さらに改善するよう求められているということ。地道に積み重ねていくしかない」と話した。

(斉藤絵美、井上駿、長谷部崇)

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どこの学校でも起こりうる???読んでいて、頭がクラクラします。人の目に異物を入れるのは傷害罪。人の車の上を飛び跳ね車体をへこませたら器物損壊罪。上司に訴えたことを脅して止めさせるのは脅迫罪。義務のない行為を無理矢理に行わせたら強要罪です。しかし、悪質性の高い行為を行っていた元教諭については、警察としても刑事裁判への立件を視野に入れていたのに、すでに懲戒免職処分となり、社会的制裁を受けていることから立件を見送ったといいます。学校の中で教職員の犯罪が見て見ぬふりをされ、隠蔽されてきたのであり、ハラスメントがどうのこうのと言う話ではないと思うのです。

その犯罪が、校内で長く生じていたことについて、「神戸の学校が誇ってきた長所が時代や環境の変化に適応できなかった」等と「良いところもあるのだから頑張ればなんとかなる」というような感覚でこの事件を見るべきではないだろうと思います。そういう感覚でいるから、時間がないからできないなどと平気で言う管理職が出てくるのです。犯罪は告発して処罰すべきだし隠蔽も犯罪なのです。学校は治外法権ではないのです。

不正請求の2業者を指定取り消し 京都市

放課後デイサービス、不正請求の2業者を指定取り消し 京都市、自治体の指導追い付かぬ実態

2021/01/26 16:51【京都新聞社】

京都市は25日、市内の放課後等デイサービス2カ所で給付費の不正請求などがあったとして、運営する2事業者に対し、指定取り消し処分を行った。市は両事業者に対し、給付費の返還を求め、利用児童計32人の受け入れ先を調整するよう指導している。

処分を受けたのは、放課後等デイサービス「ChauChau」(東山区)を運営する株式会社SEIBU観光企画(同区)と、「なちゅらるはうす」(伏見区)を運営する株式会社トゥルー・セルフ(京田辺市)。ともに通報を受けた市が昨年から監査を行っており、指定取り消しは4月1日付。

「ChauChau」は、指定申請時に常勤が不可能な職員を管理責任者として届け出たほか、職員の配置基準を満たしていなかった。また個別支援計画などの不備に伴う減算を適用せず、給付費を不正請求していた。加算金を含めた返還請求額は約636万円。

「なちゅらるはうす」では、退職した管理責任者の印鑑を用いて個別支援計画が適切に作成されたかのように偽装し、給付費を不正請求していた。返還請求額は約1874万円。

市によると、両事業者とも不正の事実を認め、給付費を返還する意向を示しているという。

放課後等デイサービスを巡っては、開設が相次ぐ一方で自治体の指導が追い付いていない。国は新規事業所は開設から1年、その他は3年に1度程度の実地指導を自治体に求めているが、今回処分を受けた2事業者は開設から2年以上たつが、1度も実地指導は行われていなかった。市は「通報が先にあり監査を行う結果となったが、本年度中には指導予定だった」と説明している。

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京都市は相談事業所が少なく保護者の作成したセルフプランを行政が直接受けて支給量が決定します。支給量は保護者が正当に必要とする申請がほぼ認められますから、月27日という支給量の方も少なくありません。京都市は所得の制限がありますが、ほとんど人は1割負担上限額の月4600円のうち2300円以上の補助があることから利用者も多いのです。支給量が多いという事はサービス提供量も多いので放デイ事業所もたくさん必要です。需要があるかぎり供給側は増えますから、中には不届き者も出てくるという図です。

今回の不正は、相変わらずの職員配置基準を満たさないままの運営と、支援計画を形式的に作成して存在しない責任者の認印を押印して偽造文書を作るという悪質なものでした。放デイの事業検査の仕組みは2年目と以降3年に1回の保健所の実地指導ですが、これは半日ほどの書類検査と面談なので、悪意のある不正文書は見抜くことが難しいです。結局、ほとんどの不正は内部告発で発覚しているそうです。

福祉の世界に会社法人が参入してくるから儲け主義になり不正の温床となるという方もいますが、どんな法人形態で経営しているかは関係ないと思います。むしろ、社会福祉団体の既得権益を改革していく90年代の福祉の構造改革があったから、様々なサービスが生まれてきたのも事実です。現在、保護者や従業員アンケートから自己評価を行っているように、利用者の意見公開を義務付けることで運営の透明性を担保しようとしています。しかし、収益の9割を税金で賄う制度ですからもう少し公的オンブズマン制度のような査定を行う第三者機関を制度として位置づけることが必要だと思います。

外出自粛でゲーム依存の相談急増

外出自粛でゲーム依存の相談急増「成績下がり、学校に行けなくなった」

2021/01/26 10:43【読売新聞】

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響で、パソコンなどのゲームにのめり込む子供らが増えてゲーム依存症が拡大する懸念が高まっている。依存症患者の支援組織には親からの相談も相次ぐ。

大阪市の主婦(43)は、昨春の一斉休校を機に小学1年の次男(6)がゲームをする時間が増えたと心配する。兄が使わなくなった携帯ゲーム機で遊ぶようになり、学校再開後も毎日1~3時間ほど必ず手にとる。

外で遊ばせるのが心配な上、現在は学校や習い事に行く前にゲームをやめ、宿題も真面目にこなすため、静かに見守るが、「将来スマートフォンを持ち始めると親のコントロールができなくなるかも、と考えてしまう」と不安を漏らす。

ゲーム依存症からの回復支援などに取り組む「MIRA―i(ミライ)」(東京都)ではコロナ禍の影響で昨夏以降、子供のゲーム依存に悩む親の相談が2倍ほどに急増した。「ゲームから離れられず、生活リズムが戻らない」「成績が下がり、学校に行けなくなった」などの声が寄せられる。

国民生活センターによると、オンラインゲームの課金絡みのトラブルも増加。2020年4~12月の関連相談は4544件と前年同期比で1・3倍に増えた。

ゲームやネット依存の専門外来がある国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県)が昨年5~6月、通院患者80人(12~44歳)を対象に実施した調査によると、感染拡大前の昨年2月に3・9時間だった1日平均のゲーム時間(オンライン)が5・4時間になり、半数前後は「ひきこもり」や「睡眠障害」などが悪化したという。

厚生労働省研究班の17年度の調査では、ゲームやネットに依存しているとみられる中高生は93万人と推計される。センターの樋口進院長は「依存症患者の実態は不明だが、外出自粛で在宅時間の増加が続けば、患者数はさらに増える可能性がある」と指摘する。

世界保健機関(WHO)は19年5月、ゲームにのめり込んで生活や健康に深刻な影響が出た状態を「ゲーム障害」と名付け、ゲーム依存を、アルコールやギャンブルなどの依存症と同じ精神疾患と位置づけた。▽時間や頻度を制御できない▽他の生活上の関心事よりゲームを優先する――などが主な症状の特徴だ。

「MIRA―i」でカウンセラーを務める臨床心理士の森山沙耶さんは「子供の頑張りに目を向け、コミュニケーションをとりながらゲームの時間を決めるなど、一緒にルールを作ることが大切」と助言する。

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ここ数年PCゲームをあまり見ていなかったので`久々に見てみました。とてもおもしろいです。描画や動きも超リアルになっています。大人でもなかなかやめることは難しいなぁと感じるゲームも多いです。親の言い分はいろいろあるかもしれませんが、オンラインゲームの無料提供で一度体験してみると子どもがはまってしまうわけも分かると思います。

オンラインゲームに火をつけたのは、2017年リリースのフォートナイトです。世界で3億5000万のユーザーがいると言われる世界規模の巨大ゲームです。スイッチにもプレステにも移植されダウンロードさえすれば基本プレイは無料なので子どもたちが群がるわけです。

子どもの外遊びは誰も自粛せよなどとは言っていません。むしろ外に出て外気に触れましょうと文科省も学校も進めています。今回の自粛ではさすがに公園の大型遊具を禁止する自治体もなくなりました。家籠りをあおっているとすればテレビをはじめとするマスメディアです。

また、ほとんどのオンラインゲームはWiFi環境が必要なので家庭用Wifiルーターを保護者がコントロールすることは可能です。子ども用の端末にはWiFiが通じないようにもできます。こういうことを全く知らずに子どもにネットワーク環境を提供してしまっている保護者は少なくありません。

子どもネット環境の管理は保護者の責任だという前提のもとに、大人向けのWiFi管理講座などを無料で学校や自治体が主催してゲーム管理は大人の責任であることをリードして伝えていくべきだと思います。デジタルネットワーク社会に対応する保護者や大人の課題であるのに、子どもの成績や生活態度が乱れる原因までもがデジタルゲームの責任にすり替えられているように思えます。

再任用教員ツイッターに差別投稿

「障害者の子、いない方がまし」特別支援学校教員が投稿

2021年1月21日 18時53分【朝日新聞】

群馬県西部の特別支援学校に勤務する60代の女性教員が、ツイッターに障害者を差別する内容の投稿をしていたことがわかった。県教育委員会も事実を把握し、女性教員の処分も含めて検討している。

県教委によると、女性教員は昨年10月中旬にツイッターのアカウントを開設。「障害者や犯罪者が子供でいたらいない方がまし」「労災にならないように気をつけます。いきなり強くつかんだり殴ったりする障害のある人」などと投稿。校内の取り組みにも触れ、上司や同僚の実名を挙げて批判していた。

問題の投稿が発覚したのは今月中旬。女性教員の同僚が、知人からの指摘で投稿を知ったという。学校側は勤務記録や投稿内容などから女性教員を特定した。学校や県教委の調査に対し、女性教員は投稿の事実を認め、県教委の指導で問題の投稿を19日に削除した。「個人的な記録として投稿していた」「誰でも読める認識がなかった」と話しているという。

女性教員は定年退職後に再任用され、2019年からこの特別支援学校で勤務しているという。県教委学校人事課の鈴木佳子課長は「指導する教員の立場にある者が差別的な内容の投稿をしたことは非常に不適切であり、あってはならないことだ」と述べた。県教委は今後、SNSでの投稿について注意喚起をするとしている。(中村瞬)

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この再任用教員が特別支援学校経験者なら論外ですが、経験がないなら採用に無理があったのかもしれません。支援学校には行動障害のある子どももいますし、言葉が通じない子どももいますから、通常学校の指導方法では通用しない場合もあります。それなのに、通常学校でクラス指導がうまくできない教員が支援学校に異動してくることも少なくないですから、再任用でも同じことがあるのかもしれません。現場での指導能力がなく毎日の仕事が不安な人なら、障害者を要らないものとする思いが生じるのかもしれません。

モラルの問題としてはあってはならないことですが、行動問題のあるの子どもを見てこんな認識になる教員でも支援学校に再任用されていることの方が深刻です。おそらく周りの職員も管理職も気が付いていたと思われます。再任用は年金制度支給年齢の改定とあわせ、無年金期間を補完する役割で民間会社をまねて作られたものです。

でも、この採用制度は競争がなく希望すれば採用しなければならないのです。採用競争にも耐えられない教員でも再び学校に戻す可能性を残している制度といわれても仕方がありません。わいせつ教員に対する教員免許の再交付を、実質無期限にしようとする教員免許法改正ですら断念・見送りとなるくらいの国ですから、この程度はどうしようもないという事かもしれません。

クラスター確認の佐賀工高生に誹謗

<新型コロナ>登校中に「なぜ学校に行くのか」クラスター確認の佐賀工高生に誹謗、専門家「批判筋違い」

1/21 8:45 【佐賀新聞】

佐賀県内の小中高校で初めて新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が確認された佐賀市の佐賀工業高で、学校や生徒に対して「なんで学校に行けるの」「どんな指導をしてきたのか」などの誹謗(ひぼう)中傷が寄せられている。専門家は「感染した人を敵視したり、批判したりするのは筋違い」と話している。

佐賀工業高には19日午前中から、数十件の電話が寄せられたという。学校が生徒に行った聞き取りでは「通学する列車の中で避けられた」「制服で佐賀工業高の生徒だとすぐに分かる。周囲からの目線が気になった」などの声が上がった。保護者から「職場にしばらく来ないでくれと言われた」という連絡もあったという。

同校は19日から、感染が確認された1、2年生をオンライン授業にしたが、20日からは3年生でも実施するように切り替えた。生徒たちには、会員制交流サイト(SNS)で誤解を招く内容を書かないことなどを指導していくとしている。副島政史校長は、これまで以上に感染対策を徹底していくとした上で「安全で安心した生活を早く取り戻せるようにしていきたい」と話した。

■「自分事として捉えて」

人権問題を研究する佐賀大教育学部の吉岡剛彦教授(法哲学)は「感染した人をウイルスと同一視する傾向がなかなか改まらない」と指摘し、「誰が感染してもおかしくない状況で、自分が攻撃対象になる可能性もある。自分事として捉えてほしい」と警鐘を鳴らす。(小部亮介)


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<こちら報道部>学校名、報じる理由感染拡大防止へ正確な情報

1/21 9:29 【佐賀新聞】

新型コロナウイルスに関し、佐賀市の佐賀工業高でクラスター(感染者集団)が発生したことを伝える記事(19日付20面)で、複数の読者から「なぜ学校名を出したのか」「大きく報道されたことで、生徒たちが変な目で見られる」といった意見が寄せられました。

新型コロナは県内でも感染が拡大傾向にあり、1月に入ってからは学校や保育所などでもクラスターが発生しています。コロナ報道に関しては当初から「正しく恐れ、防ぐ」というスタンスで、感染拡大を防止するための正確な情報を出すように努めています。

学校名を報じた今回を含め、感染確認の情報については佐賀県の発表に基づいて記事化しています。特にクラスターに関しては関係者が多くなるため、学校名などの情報を伝えることで、気になっている人が外出を控えたり自ら検査を受けたりして感染拡大の抑止につながると考えています。正確な情報を示すことで、誤った情報の拡散やデマを防ぐことにもつながります。

興味本位で個人を特定する動きや当事者らに対する誹謗(ひぼう)中傷は、あってはならないことは当然です。一方で、情報を社会で共有しておくことも重要です。

報道部では人権に配慮しつつ、常に当事者がいることに想像を巡らせながら、今後もさまざまな視点で感染抑止に向けた情報を伝えていきます。(報道部デスク・林大介)

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関西地方は武漢風邪のテレビ報道について、煽りすぎではないかという自重ムードがまだあるのですが、地方局は全国ネットで東京からの放送がそのまま流れてくることで、東京ほど深刻ではないのに東京と同じように視聴者が考えてしまう傾向があるそうです。それにしても感染はお互いさまだというように考えられないところが不思議ですが、自宅で高齢者と生活していて心配のあまりの言動かもしれません。

でも、専門家でなくても筋違いなことはわかるので、生徒や学校をバッシングする原因を作ったのは、新聞社の学校クラスター実名報道のせいだと、佐賀新聞にもクレームがあったのです。それに対し新聞社は「感染拡大を防止するための正確な情報を出すように努力している。県が公開しているものを報道しただけで、実名を隠せばかえって誤った情報が流れる可能性がある。」と言います。

後者の事実を報道するメリットについては正しいと思います。しかし、感染の仕組みや事実について正しい情報を報道しているとは思えません。都会の満員電車の中ですら感染していない事実や、休校すれば解決するような感染状況ではなく休校のデメリットが大きいとしているWHOやユネスコ、政府発表の事実を学校クラスタ報道で同時に取り上げてはいません。日本は欧米の4パーセント弱の感染状況であることもあまり報道は触れません。実名報道が悪いのではなく、実名報道するなら今回のような誤解が生じないように徹底的に報道するメディアの責任を感じていると書くべきだったと思います。メディアが開き直ると民主社会は腐っていきます。

 

同じ問題を繰り返しても意味がない

最新科学が出した正しい学習法とは
「同じ問題を繰り返しても意味がない」子どもたちをダメにする間違った学習習慣3つ

2021.01.19【プレジデントオンライン】

独自のカリキュラムと最新の科学に裏付けられた学習法で、オンラインの学校でありながら、全米トップレベルの進学実績を誇る学校がある。スタンフォード大学・オンラインハイスクールだ。校長を務める星 友啓さんは、「誰もが良かれと思ってやっている学習法の中には逆効果のものも多い」と指摘。間違った学習の常識とは――。
星 友啓『スタンフォードが中高生に教えていること』(SB新書)の一部を抜粋

間違った学習習慣1 「ストレスをさける」
(略)
間違った学習習慣2 「テストで理解度や能力を測る」
(略)

間違った学習習慣3 「同じ問題を反復練習させる」
多くの子どもにとってテスト同様身近なのが、学習ドリルによる反復練習です。

足し算、引き算、図形、文字の練習。世界中でさまざまな学習ドリルが存在し、教育者や保護者、子どもたちが手に取ります。各ページに似たような問題が並び、繰り返し解いていく。特定のスキルや知識を身につけるのが目的で、特に幼児や小学校などの教育で用いられ、さまざまな学習効果が確認されています。

しかし、この「似たような問題を何度も繰り返し解く」という当たり前の学習方法が近年見直されつつあります。なんらかの反復練習は学びに欠かせないプロセスであることは間違いありません。しかし多くの学習ドリルは、反復の回数や速度を強調しすぎています。

正しいだけではなく、速くできないといけない。
10回ではなく、20回、さらにそれ以上やることで、その問題に「慣れて」素早く解けるようになる。同じような問題を解くことで、パターンに慣れて、より速く答えを出せるようになるのは疑う余地のない事実です。しかし、単純な計算や記憶問題を素早く答えていけるような能力だけでは、理解力や思考力は高まりません。

むしろ、同じような問題を同じような考え方で解いていく癖がついてしまい、柔軟な考え方や、違った視点で物事を見る力が未発達になってしまいかねません。早くできることとじっくり深く考えることは、脳科学的にも違う活動なのです。

スタンフォード大学の教育学ジョー・ボーラー教授はこの点を指摘するのに、何人かの大数学者の例を挙げています。数学の「ノーベル賞」といわれる「フィールズ賞」受賞者の中にも、子どもの頃計算が遅く、学習障害や数学苦手のレッテルを貼られた学者たちがいるというのです。

考える力をつける計算問題の解き方
それでは、どうすればじっくり考える力がつくのでしょうか?ボーラー教授が勧める学習方法で、それぞれの問題を違う方法や考え方で解いていくやり方がおすすめです。アメリカの教育現場でもだいぶ浸透してきています。

例えば、算数でいうと、ドリルから20問同じような問題を解くのではなく、5問だけを選んで、それぞれの問題を4つずつ違う解き方で解いていくようなイメージです。違った考え方で同じものを理解しようとするこのやり方で、学習の効率が上がることが脳科学的にも実証されてきました。

また、一つのことを違うやり方でできるようにしておくことで、柔軟な考え方をすることができるようになり、あるやり方で行き詰まっても他のやり方を試そうとする癖がつくのです。それから、常に違ったやり方を模索しながら考える心の習慣も養うことができます。

「はかどってる感」の恐ろしさ
20問ずつガンガン解いて、進んでいくことで、はかばかしい。ページをめくって、進んでいる気がして、やる気につながる。親も子どもも、量が多い問題をすいすいと進めていくと、「はかどってる感」が得られるので、ついついドリルに頼りがちです。

しかし、問題を解いた数とか、めくったページの数が多ければ、良い学びに繋がりやすいというわけではないのです。何事もバランスです。考える力や深い理解は、反復練習を素早くこなしていくことだけでは身につきません。多様性のある学び方を取り込んでいくことを心がけましょう。

星 友啓(ほし・ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
哲学博士、EdTechコンサルタント。1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士を修了。同大学哲学部の講師として教鞭をとりながらオンラインハイスクールのスタートアップに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。全米や世界各地で教育に関する講演を多数行う。著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)がある。

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学習ドリルによる反復練習は宿題の定番です。ルーティンワークでできるから、その子が理解している課題なら自学自習が成立します。こなす分だけ「やった」感もあり自尊感情も高まるかもしれません。ただ、当コラムで何度も書いているように、内容が十分理解できていないのは論外ですが、理解できていても当事者にとって量が多すぎたり、課題の狙いと違うところ(読み・書き)でエネルギーを使い果たして目標が達成ができない等の宿題は時間がかかるだけでなく、当事者の自立心や自尊感情を削ぐことになり自学自習にはなりにくいということです。

そして、今回の記事では、反復トレーニングは速さや流暢さの獲得が目的だが、思考力は育てないので出題のバランスが大事だという事でした。他には、間違った学習習慣1 「ストレスをさける」は、ストレスは避けるのではなく、ストレスをポジティブに解釈していくことで子どもの学習能力を最大限に引き出せると説明されていました。また、間違った学習習慣2 「テストで理解度や能力を測る」は、テストの点数は、どれだけテストに慣れているかの指標でしかないが、長期的な記憶や学習効果の向上にはつながるので、ショートテストや思い出し練習は有効だという事です。

 

iPad届いたのに制限だらけ

iPad届いたのに制限だらけ学校間で広がるIT格差

2021年1月18日 22時07分【朝日新聞デジタル】

各地で新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が出され、一部の学校でオンライン授業をするところも出てきた。さらなる感染拡大に備え、文部科学省は小中学生に1人1台の端末を配る「GIGAスクール構想」の前倒しを急ぐ。だが、整備はなかなか進まず、端末が届いた現場からも「制限が多すぎて使いにくい」という声があがっている。

東京都世田谷区では昨年11月、小6と中3全員に、先行で約1万台のキーボードつきiPadを配布した。もし、休校になった場合、優先して授業を進める必要がある学年だ。今月から中2、中1への配布も始めている。ただ校内の通信環境などの整備が追いつかず、学校での活用は限られているのが現状だ。

マイクロソフトの文書ソフトなどはあるが、アカウントが配布されておらず、使えない。一方、家庭で動画は見られるため、夜中にこっそり自分のスマホより大きな画面でユーチューブを見る生徒もいる。中3生の母親(51)は「iPadを買ってあげられない家庭にとっては、キーボードを打つ姿を見るだけでうれしい。ただ、なぜこの受験前に……とも思う」と複雑な心境を明かす。

ある小6生は学校で「履歴はチェックできる」と言われたため、怖くて、家では指示された学習アプリしか使わない。小6生の母親(50)は「なんだかちぐはぐ。制限を厳しくかける必要はないけれど、配布と同時に勉強も含めいろんな形で使えるように教えてほしい」。

同区教委は「最低限の制限はかけた上で、学校でも家庭でも使わせることが学びへの近道と考えている。業者も手いっぱいで端末も通信も整備がなかなか進まないが、もし休校になっても、配布された端末は、学校と家庭との連絡手段としては使える」と説明する。

東京都足立区でも昨年末、中3生にクロームブックの配布が始まった。だが、区内の男子生徒は月1回土曜に「Zoom」のリモート授業で使うだけで、それ以外は家にしまったままだ。会社員の父親(46)は「本来は文書共有やクラウドなど様々な機能が使えるのに。何のための1人1台か」と嘆く。

文部科学省は一斉休校を受けた昨年3月、GIGAスクール構想の目標達成の時期を2023年度から今年度中に前倒しすると決定。昨年8月末の同省の調査では、納品済みは36自治体(2%)にとどまり、昨年末に489自治体(27%)が、年度内に1280自治体(70・6%)が納入予定と回答した。だが、遅れている自治体も少なくない。

萩生田光一文科相は7日、首都圏4都県の緊急事態宣言に先立ち、端末やネットワーク通信の業者約40社に対し、学校への納品前倒しや端末の貸し出しなどを要請。13日には要請する地域を拡大する通知も出した。

端末が届いた学校からは、制限が多すぎて「使いにくい」との声もあがる。

千葉県の公立中に勤務する20代の男性教諭は昨年11月、全生徒に配られたノートパソコンの仕様にがっかりした。「無いよりいいけど、これじゃ不便」。Gメールや表計算ソフトなどほとんどのアプリが使えず、USBメモリーも認識しない。文書の共同編集も、生徒とのチャット機能も教育委員会の方針で無効化されていた。男性教諭は「(車が)公道を走れても時速20キロしか出せない感じ。ゼロリスクは不可能なのだから、子どもの学びのため縛りなしで使わせてほしい」。

「メールの送受信は一切できないよう教育委員会で設定しております」。高知県の私立土佐塾中学・高校の野崎浩平教諭(40)は昨年末、地元の公立小が出した通知文に驚いた。県内でグーグルの教育者グループを立ち上げており、端末の機能制限で先生が混乱している話をよく聞くという。全国20校余りの教員らに独自調査したところ、半数程度でメールやチャットの機能が制限されていた。「学校と家庭の連絡や情報管理にも便利なツールなので、あまり制限をかけないでほしい」

保管も課題だ。関西地方の男性教諭(48)が勤める公立中では、9月に1人1台配備され、グーグルのアカウントも全生徒に配布された。だが、盗難や破損への懸念から、全端末は空き教室の保管庫に入れて施錠され、管理職が鍵を管理。通信環境も整っていないため、10分の休み時間に鍵を借りて出し、全員でログインすると授業までにつながらない。「授業の妨げになるので賢い教員は使おうとしない。改善するには一つひとつ折衝しなければならず疲弊する」と嘆く。

首都圏の特別支援学校の40代の教諭も、授業で使う端末を保管庫から取り出すのに使用目的の記入と鍵が必要で、夕方までに返却していないと責任を問われることに、疑問を感じている。「これでは教員側も萎縮して授業準備もできない」

愛知県の公立小に勤める60代の男性教諭は機材環境を不安がる。遅い回線速度、電気容量が足りず時々落ちるブレーカー……。保管庫近くに電源がなく換気扇から取っている教室も。「モノは来たけど整備が追いついていない感じ」という。端末も児童にはiPadが配布されたが、教師に割り当てはなく使い回しのウィンドウズ機だ。「端末が違えば教材研究にも支障が出る。システム全体を考えて通信環境や電源など必要な整備をしないと、このままでは宝の持ち腐れになる」と危惧する。

一方、先進校はどうか。千葉県印西市立原山小学校は市の情報教育推進校で、昨春には5~6年生全員にクロームブックを配布。一斉休校中にオンライン授業をした。GIGA導入も先行しており、昨年10月には全学年に端末を配り終え、大半のソフトや機能は自由に使えるようにしている。手渡す時に「デジタル空間にもう一人の自分ができるんだよ」と伝え、ネット上の言動や振る舞いに注意するよう教えた。家庭にも持ち帰らせている。松本博幸校長は「最初からきつい制限や枠はかけない方が、学びの幅や可能性は広がる。『善きデジタル市民』になるための指導をしながら、子ども自身が学ぶ自主性を大事にしたい」と言う。

国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授は、気負わず普段使いするところと、しまい込んだまま全く活用できないところの差が広がることを懸念する。混乱の原因について、「学校も教育委員会も、ビジョンがないまま端末を配備したところも多いことだ」と指摘。「何のための道具かを第一に考えてほしい。どんな時も子どもと学校をつなぐツールであり、家でも学校でも子ども自身が使いこなせる学びの道具にしていく必要がある。リスクを恐れすぎれば『文鎮化』してしまう」と話す。

今が、日本の子どもたちが世界のデジタル時代にふさわしい教育に追いつくラストチャンスともみる。「今回は多額の国費が投入されたが、更新時には各自で端末を買うBYOD(Bring Your Own Device)に変わる可能性もある。学びに不可欠なものだと親子に納得してもらえるような使い方ができるか。教育委員会も学校もこの数カ月が正念場と思い、頑張ってほしい」(西村悠輔、宮坂麻子)

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予想通り導入時は様々な問題が各地で沸き起こっているようです。先日も01/15 熱海市、全小中学校に端末配備の件で書きましたが、教材として使う前の端末管理のところで大混乱を起こしているようです。管理する側は、できるだけ勉強以外に使えないように制限をかけようとします。しかし、記事を見ているとそれ以前の問題として、生徒にアカウント(端末を使う権限ID)を与えていないとか、逆に生徒に与えているアカウントがIT国際独占大企業のものだったりして手を抜きすぎだと感じます。

せめて、各県単位の教育委員会で管理サーバは置くべきだし、アカウントはそこで一括管理されるべきです。少なくとも教員の端末は建前上そうなっています。もちろん、教員のメールサーバーやクラウドサーバーもIT国際独占大企業のものを契約している教育委員会が多いので偉そうなことは言えませんが、少なくともドメイン名(どこの組織化の表記)は各組織名で発行されていますし、各組織の職員か委託業者が管理しています。

日本の教育制度のややこしいところは建前上、各自治体の教育委員会の権限で地方教育は成立することになっているので、小さな自治体はお金がないが小回りは効く、大きな自治体はお金はあるが気が利かない、両者の特徴をそのまま学校に持ち込むことになります。端末の導入もそんな教育制度の建付けの問題で格差が生じているように感じます。ただ、教科書検定等では、細々とした統一性を求められるのですから、端末も全国同じような仕様規則で運用すればこれほどの混乱は生じなかったかもしれません。

しかし、発展途上のデジタル教材の可能性は無限ですから、統一的な細々した規則は馴染まないというのが正しいのだと思います。結局、ICT教育に熱のある自治体は良いシステムを導入でき、右になれの自治体ではICT教育を端末無料配布の事業程度にしか考えられず結果現場は大混乱します。そうして、制限の多いシステムや頓珍漢なICT教育は自然に淘汰され、良いものが広がっていくには時間がかかるのかもしれませんが、つまらない規制や制限でICT教育発展の芽を摘むよりはましかもしれません。それにしても、アカウントくらいは教育委員会発行のものを最低限与えてほしいと思います。日本の教育が国外の勢力に乗っ取られたり盗まれたりする隙を与えないことは安全保障上重要だと思います。何度も書きますが、端末管理の人件費や委託費は絶対必須です。

療育システムの記事に反響

「子に寄り添っていない」療育システムの記事に反響初診待ち常態化

2021/1/15 15:30 【西日本新聞】

福岡市の未就学児の療育システムについて取り上げた本紙記事(昨年12月27日付朝刊:療育施設に通えず、空白の4カ月福岡市で長期手続き常態化)に反響が寄せられた。当事者家族の声も複数あり「子どもに寄り添う制度ではない」と不満がつづられていた。現場を担う施設の一つ、市立心身障がい福祉センター「あいあいセンター」(中央区)の中満達郎・療育課長に改めて市の意図を尋ねた上で、早期療育の在り方について全国発達支援通園事業連絡協議会会長の近藤直子さんに聞いた。(本田彩子)

他の機関と連携、柔軟対応を
未就学児に療育を行う国の「児童発達支援事業」は各自治体が療育の必要性を判断して受給者証を発行する仕組みだ。厚生労働省の見解では医師の診断は不可欠ではなく、乳幼児健診などを担う保健師の意見書でも可能とされる。地方には専門医が少なく診察を受けられない地域もあるため、全国どこでも支援が受けられるようにするためだ。

一方で福岡市などの大都市は専門医が一定数いることから、指定医の診断を必須とする自治体が多い。地域拠点である療育センターに専門医を配置することは発達障害に限らず医療的ケア児や重度心身障害児を支える上で大事だ。だが、医師の診断を受給者証発行の「踏み絵」にしてはならない。

全国的にも、指定医の診断を求める自治体のほとんどで2カ月~半年の初診待ちが常態化し、問題となっている。そのため名古屋市では本年度、医師の診断を待たずに療育を始める取り組みを試験的に始めた。

発達障害の子と親が求めているのは医療だけでなく、子どもの行動や気持ちをきちんと理解してくれる人を周りに増やすこと。そこで重要なのは療育センターと保健所、幼稚園や保育所の3者の連携だ。それぞれが互いに子どもの状況を把握しながら、子どもが楽しく過ごせて、親の不安も取り除く仕組みを築く。縦割り行政の垣根を越え、情報を共有して議論できる場を作るべきだ。

今回の事例では、福岡市はもっと柔軟に対応すべきだったのではないか。診断や手続きに時間がかかるなら、それまでに子どもが通える場所を別につくる。療育センターだけで対応できないなら、地域の子育て支援センターなどで診断待ちの子に対応する曜日を設けてもいい。システムが硬直化してはいけない。

全国的に未就学児の療育のニーズは急増している。福岡市の現在の仕組みと施設数では対応しきれないだろう。民間事業者の参入が増えれば療育の質の問題などが生じる恐れはあるが、だからといって封じるのではなく、全体を底上げするための研修や連携の仕組み、施策を市が責任をもって考えるべきだ。これまでの知見を生かし、関係機関が皆で知恵を絞って、全体として親と子の求めに応える体制を築いてほしい。(談)

近藤直子(こんどう・なおこ)日本福祉大名誉教授。専門は発達心理学。大阪府や名古屋市などの保健所で40年以上、乳幼児の発達相談を担当。NPO法人あいち障害者センター理事長。

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前回このコラムでも「受け止める施設がどこも空きがないというならわかりますが、手続きの段階でこんなに待たせるというのは人権侵害だという感覚が担当者にない」のではないかと書きましたが、全国でも同じように感じている人が少なくないという事です。

この記事は、医師の診断が必須だからと手続きが硬直化していると書いていますが、福岡の件は「予約の空きが出て9月末に受診が早まり「自閉スペクトラム症」と診断されたが、その後の手続きがなかなか進まない」まま年末にやっと行先が決まったというもので、診断待ちの問題ではないです。医師の診断を終えているのに療育が3か月も受けられない原因は担当者の怠慢だという記事でした。

そのため、相談にかかわる担当者は襟を正してほしいという主張をしました。ただ、民間の相談事業所も相談者利用者が満員で、利用者に負担をかけていることを書きました。解決方法は相談事業の収入の一部固定制(新規増額部分)を取り入れるなどの改革を提案しています。しかし、何よりも大事なのは事業を運用する関係者がチャイルドファーストの視点に立てるかどうかという事だと思います。

就労継続支援B パラeスポーツ

パラeスポーツに夢追う秩父の男性ら、技術磨き群馬・太田、就労支援事業所/埼玉
2021年1月16日【毎日新聞】

コンピューターゲームの腕前を競う「eスポーツ」に特化した障害者向け福祉作業所が群馬県太田市に開設された。選手の育成、ゲーム動画の配信や、関連イベントでの活躍を目指す上で必要な技術を習得する機会を提供。拡大するeスポーツ市場で夢をつかみたいという利用者を後押しする。

太田市の就労継続支援B型事業所「ワンゲーム」で2020年10月下旬、動画配信イベントが開かれた。ゲーム大手セガのプロデューサーをオンラインで招き、利用者がパズルゲーム「ぷよぷよ」で勝負。「おっと、この場面はつらい」「圧巻の勝利です!」。別の利用者が実況で盛り上げ、白熱した雰囲気に包まれた。

イベントの司会を務めたしんじさん(24)=秩父市=は難病で手足の筋力低下と感覚障害があり、14歳から車いすに乗っている。指が動かないため、手のひらでコントローラーを操作し、ゲームを楽しむ。「趣味を仕事につなげたい」と20年8月、ワンゲームに通い始めた。目標は技術を高めて動画を配信し、プロの大会に出ること。「早く実力を上げたい」と熱っぽく語る。

eスポーツは全国で競技大会が開かれ、選手や観客が増えて市場規模が拡大。ワンゲームは20年6月に開設し、選手を養成するほか、実況や解説、映像・音響などeスポーツ関連で求められる技術を磨くコースが用意されている。

同じく選手を目指す太田市の男性(25)は約5年前、発達障害と診断された。当時通っていた専門学校で、一部の課題に向き合えずに苦しんだが、ゲームや小説には夢中で取り組めた。「できないことを欠点と捉えるのではなく、視点を変えて長所を伸ばしたい」。男性は集中して物事に向き合う特性を仕事に生かしたいと考える。

ワンゲームを運営する「ワンライフ」(前橋市)最高経営責任者(CEO)の市村均弥さん(33)は「何かに挑戦して成功体験を得ることで自信につなげてほしい。100人いれば100通りの選択肢がある社会にしたい」と話した。
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なるほど、目からうろこでした。障害者就労支援制度にゲーマー養成とは、時代は変わるものです。確かにパラスポーツの選手養成があるのですから、パラeスポーツの選手養成は不思議ではないです。プロ選手なのですから就労という枠組みに入るのも頭ではわかります。しかし、そんな理屈で就労支援のB型をと開設した運営者には脱帽です。就労Bと言えば、施設内で生産作業をしている障害者を思い浮かべていた既存イメージを彼らは軽々と乗り越えていったのです。

実際にここからどんな選手や、イベンター、解説者が出てくるのか楽しみです。子どもたちともう少し詳しくeスポーツを調査してみたいと思います。