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みんなちがってみんないい

その子に適した育ちを保障すること

保護者がその子の意思や実力に合わない目標設定をし、課題がクリアできなければ、「だめな子、うちの子じゃない」などと精神的な圧力をかけたりすることを「教育虐待」といいます。教育虐待を理解するキーワードは、「保護者のため」です。普通の虐待と違って、保護者は本当に「子どものため」と思ってやっているので、自分で自覚するのは案外難しいものです。それだけに、「気づき」が重要になってきます。様々な機会に、度がすぎたしつけや無理強いの学習は教育虐待であるという考え方を広げていく必要があります。

教育虐待が疑われる保護者には、単にアドバイスをするだけでは「私のことを邪魔する人」という誤解を引き起こします。それを防ぐポイントは、保護者の話を傾聴し、信頼関係を築くことです。その上で、「事業所で元気がなく、食欲もないようです。お子さんの調子はどうですか?」と、話を切り出してみます。この時、こちらの価値観を挟まずに、フラットな気持ちで事実のみを伝えます。

保護者に伝えるのが難しいと思った時は、早めに周囲に相談します。「自分で何とかしたい」と思うスタッフも多いのですが、連携できる人を確保しておくことも、スタッフの力量のひとつです。虐待対応は、一人で抱え込まないことが大切です。現実問題として事業所のサービス領域を超えた部分での対応が必要なことも多く、事業所内を飛び越えて相談事業所につなぐことも考えていきます。ただ、相談事業所の中には「関係者会議」や「連携会議」を設定することだけしか仕事前と考えていない場合もあるので、保護者や子どもにも直にアプローチしてほしい旨を伝えることが大事です。

「あなたのため」と言う言葉が、単なる強制になれば、自尊感情を傷つける心理的虐待や、体罰につながれば身体的虐待になります。こうしたことを予防するには、子どもがSOSを出せる環境を整えることが大事です。親子だけだとどうしても密室になってしまうので、保護者や子どもへの声かけが大事です。子どもに夜遅くまでの勉強を無理強いしているような場合、「睡眠は充分とれていますか? 充分な睡眠がとれていないと、翌日の成果が上がらないし、脳への悪影響があるともいわれています」と伝えます。保護者が、ふと我に返れるような声かけを、試行錯誤しながらも考えることが大事です。

認知に特性があるのなら特性を理解した育て方が必要です。保護者が、発達障害傾向のある子に対して「頑張れば普通になれる」と無理を強いることも一種の教育虐待です。このようなケースで大切なことは、保護者とスタッフが事実と目標を共有することです。漢字を何回も書いても覚えられないタイプの子がいるということを、いまだ知らない保護者はいます。保護者は、自分が頑張ればできたので、「頑張れば、大丈夫」と思っている方が少なくありません。少し手間はかかりますが、事実を伝え、保護者と共有できる目標を持つことは大事です。

マルトリートメントとは、「子どもへの不適切な関わり」と言う意味で、「教育虐待」を保護者以外の大人が行った場合に使われることがあります。発達障害の知識のない教師が一生懸命頑張り過ぎることが、マルトリートメントになることもあるので、注意が必要です。発達障害傾向のある子に対して、担任が「大丈夫です。私が何とかしますから」と頑張って指導していたことが、その子の過剰適応な生き方に繋がり、ひずみが青年期以降の生きづらさに出てしまうケースもあるからです。「教育とは、その子に適した育ちを保障すること」という視点を大事にしたいと思います。