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クラウドファンディング

最近、クラウドファンディングで資金調達をする個人や団体が多くなってきました。ちょっと古い話では、2016年お笑い芸人キングコングの西野さんの絵本展への資金調達が有名です。入館料を無料にして子どもにも見て欲しいと寄付を求めたのです。目標金額180万円に集まった資金は49日間で4600万円でした。他にもカヤックで石垣島まで行くからと投資を求めたり、新しい機器を開発するからとプロジェクトは多種多様です。銀行のような金融業では相手にしてくれない内容は、その目的に賛同してくれる人から資金調達するという個人に開かれたネット時代の発想です。

クラウドファンディングは、インターネットの普及に伴い2000年代の米国で始まります。先駆的なサービスが次々と誕生し、市場は急速に拡大していきました。代表的なサービスには、『Indiegogo』や『Kickstarter』などがあげられます。また、日本で初めてクラウドファンディングサービスが提供されたのは2011年。その年の3月に『Readyfor』がリリースされ、6月には『CAMPFIRE』がリリースされるなど、日本で本格的な展開がスタートしました。

2011年当初は東日本大震災の年だったこともあり、新たな資金調達の手段としてだけでなく寄付をする際の新たなチャネルとして急速に浸透しました。その後、IT企業サイバーエージェントの子会社が運営する『Makuake』が参入、2014年の東京都知事選に『ShootingStar』で約740万円の資金を集めた候補者が出て話題になるなど、サービス事業者も利用用途も多岐に渡り市場拡大は続いています。現在はさらに多くの事業者が存在しており、クラウドファンディングの形式も基本的な「寄付型」、「購入型」、「融資型」、「株式型」、「ファンド型」の5つと最近新たに生まれた「ふるさと納税型」を合わせて6つのタイプが存在しています。(2019年4月現在)

ちなみに、「クラウドファンディング」という言葉自体は比較的新しいですが、不特定多数の人から資金を募り何かを実現させるという手法自体は古くから存在していました。海外では美術品などのアート分野で寄付を募る取り組みや、日本では寺院や仏像などを造営・修復するために個人から寄付を求める「勧進(かんじん)」などがその例です。

クラウドファンディングといえば、購入型や寄付型が広く知られていると思いますが、市場規模という点では融資型クラウドファンディングが大半を占めています。2017年度(2017年4月~2018年3月)の国内クラウドファンディング市場規模は、新しく生まれたプロジェクトの支援額を元に見ると、前年度と比べて127.5%増の1,700億円と推計されます。このように、手軽に参加できる購入型・寄付型の認知の広がりが寄与し、前年度と比べて倍増した延べ137万人の支援者が、合計15,321プロジェクトに支援しました。こういった市場拡大の背景には、元々よく利用されていた融資型がさらに拡大したこと、株式型クラウドファンディングのサービス提供が2017年4月から始まったことなどがあげられます。今後も地方自治体でのクラウドファンディング活用の広がりに加え、大手メディアや運輸業、製造業、物販業などからの新規参入、事業者と金融機関との事業連携などが進むことが想定されています。クラウドファンディングは、様々な団体・個人にとって資金調達の新たな方法として定着しつつあります。

では、このクラウドファンディングは従来の借金や投資とどこが違うのでしょうか。起案者と支援者の立場から考えてみると以下のようなことが言えそうです。

起案者のメリットとしては、従来の手段では資金調達が難しかったものを、クラウドファンディングによる調達可能性が広がったことは大きなメリットと言えます。また、市場に製品が出回る前にユーザーの反応を知ることができるため、テストマーケティングの場として活用することもできます。
デメリットは、クラウドファンディングの実施方式によっては、目標金額に達成せず資金調達できない可能性があります。
クラウドファンディングを始める前に、プロジェクト成立確度はどれくらいか、成立させるためにはどれくらいの人から支援を見込めそうか、それ以外に資金を集める方法はないか、といった情報を事前に調べておくことが重要です。

支援者のメリットは、クラウドファンディングでは、プロジェクトの公開前にクラウドファンディングサービス提供サイトから審査を受けているため、透明性のある仕組みの上でプロジェクトが公開されています。起案者のプロジェクトページや活動報告、SNSの発信を見ることで、一般的な通販サービスなどの取引よりも、作り手の顔が見えることにより双方向のコミュニケーションに繋がることもあります。
デメリットは、プロジェクトが目標金額に達成した際も、予期せぬトラブルでリターンが提供されないという可能性があります。国内の事例においても、商品が届かないといった支援者の声があがるケースもあるそうです。このようなケースに対応するため、「クラウドファンディング保険」というサービスも提供されています。プロジェクト支援時の不安を減らすため、安心してプロジェクトを実行・支援できる環境が整備されていく必要があると言えます。