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知的障害者対象に「農業科」 奈良県立高が新設、全国初

知的障害者対象に「農業科」 奈良県立高が新設、全国初の試み

7/13(火) 【日本農業新聞】

相互理解へ学科超え実習
奈良県は2022年度、知的障害のある生徒が農業を学べる学科を県立高校に新しく設ける。全国初の試みで、3年間茶や野菜の栽培などを学ぶ。障害のない生徒も同学科の生徒と実習などに取り組み、障害の特性などへの理解を深める。農福連携が広がる中、その担い手育成に乗り出した格好だ。(本田恵梨)

4月から県立山辺高校(奈良市)に「自立支援農業科」を新設する。同校には現在、農業が学べる「生物科学科」と、県立高等養護学校(田原本町)の2、3年生で農業を学びたい生徒が通う分教室があり、両校の生徒で野菜栽培などに取り組むこともあった。一方で、分教室では教育課程が異なり交流程度にとどまってしまう、高校卒業資格が取れない、などの課題があったという。

県学校教育課は「共通の授業や実習の機会をこれまで以上に充実させることによって、農業知識はもちろん、コミュニケーションも一緒に学んで相互理解につなげてほしい」と話す。

農福連携の担い手育成
新学科では、養護学校のサポートを受けながら、それぞれの障害の程度に応じて指導していく。分教室は段階的に移行。生物科学科は「生物科学探究科」として新たに設置する。

農福連携で生産した食品を認証する日本基金が18年度に行った調査では、多くの農業者が障害者の農業技術習得や障害者とのコミュニケーションに課題を感じているという。基金は「農作業経験のある障害者や障害特性に理解のある農業者が育成できれば、農福連携の広がりにつながる」と話す。

農水省によると、農福連携に取り組む農業経営体などは19年度末時点で4117。国は、農業高校などでの農福連携学習や特別支援学校での農業実習などを推進し、新たに取り組む組織などを24年度までに3000増やす目標を掲げる。

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農福連携は、障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組です。農福連携に取り組むことで、障害者等の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もあります。近年、全国各地において、様々な形での取組が行われており、農福連携は確実に広がりを見せています。

ライフステージで考えていくと、支援学校高等部の進路実習に農作業を提供する農業団体との連携があり、成人期では福祉施設と農業団体の農作業の事業委託の連携、そして、農業団体が実際に障害者を職員として雇用していくという流れがあります。先の高校の話は、農村地域での公立高校の定員割れ、支援学校高等部への発達障害生徒の増加という全国的な傾向の中での新しい高校教育のあり方の一つとして、インクルージョンと農福連携を模索している姿と言えます。

農業は作業の種類が多く、作業の内容も異なることから、障害者一人ですべての農作業をするのは困難です。しかし、農作業を切り分け、複数の障害者が一つのチームとなって、能力に応じてそれぞれが得意な作業を行うことで農作業も可能となります。更に、農作業をマニュアル化したり、農作業・農器具を工夫することで、障害者ができる農作業の範囲は拡大します。これから農業の経営も実際の農耕の作業もAI化が進み、人間の仕事は農場の整備や自動化できない収穫作業などに変わっていきます。

AI化には大規模化が必須となります。そうなると、今の個人経営では農業は成り立たず、自ずと団体経営や法人経営に変わっていきます。しかし、人口減による人手不足から、今でも外国人労働者を農業研修と言う名目で雇用していますが、これもある程度の規模の農地でないと雇用できません。人手を失った農地は手つかずの休耕地として年々増えています。傾斜地の棚田は、斜面の崩壊を未然に防いできました。また、水田は洪水や地すべりも防止しています。人手不足による農地の喪失は私たちの大切な環境資源を失うことにもつながります。

このようにして、農福連携は単なる障害者雇用の促進施策というより、先祖から引き継いできた農地を守り環境を守る大プロジェクトです。その一環として、後期中等(高校)教育のあり方を障害のある人も含めて考え変えていくことは大事な取り組みだと思います。